鋼の軍勢が進む、見渡す限り同じ所属であるとわかるメカの群れ、その数はあまりにも圧倒的だ。強大な相手と戦う事を覚悟している者でなければその軍勢が自身に突撃してくるという事実は絶望の光景に違いない。
工場に鎮座するその存在、「慈悲深き苦痛を持って断罪する裁定者」ケセドは敵対者である12使徒へと機械兵を差し向けた。
支配者の命を受けて一斉に突撃する機械兵、数というのは力でありそれを用意出来る者こそが勝者と言わんばかりの圧倒的な物量だ。ドローンを18機、オートマタを15機、ゴリアテを3機のハイローミックス30機で構成される部隊が50隊存在する、それだけで一人相手には十二分どころか余りにも過剰な戦力。
しかし─この場にいるのは只の生徒ではない。『トリニティの12使徒』だ、12人揃えばこのキヴォトス広しともいえども相対出来る者などあまりにも少ない、聖なる鉄骨の君、ゲヘナのデーモンロード、全霊を尽くしたアビドスの副生徒会長…そんな人というよりも最早災害に近い規格外とたったの12人で拮抗できる、嵐が12分の1になったとしても人間にとっては変わらぬ脅威であるように─それが『トリニティの12使徒』という存在なのである。
そしてケセドと相対している生徒は12使徒の一人だ、雑兵の数十ごときでは傷つける事すら叶わない、銃弾は体に命中すれどなんの意味も無く、砲弾は翼で弾かれる。
普段ならティーパーティーの証である純白の制服に汚れなど許されない、しかしこの場はあくまでも再現だ、ここでどんな戦法を取ろうとも現実の制服には埃一つ付かない。
その制限が無い12使徒にとっては雑兵など雑草に等しい、草刈りの如くケセドの軍勢は瞬く間に刈られていく─当然だ、砲弾を防ぐ羽根、空は自由に飛び回る事が可能な12使徒のフィールド、いくら数を揃えようとも12使徒の神秘を貫通出来る威力が無ければ無意味に等しい、それでもシュミレーター上で再現されたケセドに『逃走』 という概念は無く機械兵達が蹴散らされていくその間に新たな機械兵を呼び隊列を整えて送り出す、それがケセドに可能な戦闘行動なのだから。
ストームバードの銃口が光る、12使徒の狙いは極めて正確だ、銃弾一発を確実に機械兵の弱点に命中させて戦闘能力を奪う、一つのマガジンで機械兵部隊の一つが消え去る、その間に別の機械兵部隊が12使徒を狙って銃弾を発射するも─いとも簡単に躱される、空中でのブースト・カバンによる加速を不規則に繰り返されれば完璧に統制された機械兵部隊でもまず銃撃一つ当てる事からして難しい、配置されている砲台も無意味だ、攻撃は基本的に躱されて万が一命中したとしてもダメージにはなり得ない、不条理の塊だがそれは動かぬ事実、それが12使徒である。
一人の生徒が1500の雑兵等一蹴出来る程に心技体を鍛え上げた、ただそれだけの事なのだ、12使徒の一人がケセドに辿り着くまでは大した時間はかからなかった、彼等に強き意思の一つでもあればもう少し稼げる時間は伸びただろうが─機械兵たる彼等は強き意思を持って限界を越える事など不可能だ。
丸い巨体に侍る機械兵の軍勢、ケセドが12使徒の射程圏内に入った、機械兵達は銃撃をもって迎撃するが─全て無意味だ、12使徒の鍛えられた神秘の守りは砲弾でさえも無意味と化す規格外の物、為す術無く12使徒の正確な銃撃によって倒れていく軍勢、ケセドの外殻は規格外の堅牢さを誇る故に12使徒でもストームバードだけでは撃破に時間がかかる、アメミットやアンサラー等の特殊兵装でなければ速やかに撃破は出来ない、だが幾度かの戦闘においてその鉄壁の守りが下がってしまう条件は共有されている。
それはケセドが直接指揮する機械兵を相当数撃破した時だ、ケセド自ら機械兵を操りその性能をアップ出来るがその際に機械兵が倒されるとケセドにもフィードバックが発生する、ただでさえフル稼働して現在進行形で機械兵を増産しているのにその対処をするとオーバーヒートを起こしてしまう、その際にコアを露出してしまうのだ。
ケセドの指揮するドローンが撃ち抜かれる、12使徒に通常の弾丸は無意味だ。
ケセドの指揮するオートマタが倒される、12使徒の狙いは正確無比だ。
ケセドの指揮するゴリアテがスクラップと化す、12使徒の神秘を込めたストームバードの銃撃は単純に強力だ。
ケセドの指揮する砲台が砕け散る─12使徒の射程範囲に入った一瞬の早業だ。
そしてケセドはフィードバックで自らの許容量を超えてしまった、硬い外殻が開きコアが露出する、そこにすかさず撃ち込まれる12使徒の銃撃、加速度的にケセドのコアが損傷していく。
どうにかケセドがフィードバックの処理を終えた時にはもうコアはボロボロだった。しかしまだ撤退粋に達してはいない、ケセドは外殻を纏いすぐに戦闘を続行しようとした─それを見越した12使徒が発射したのはグレネード、外殻を纏う直前に放たれたグレネードはケセドの外殻とコアの密閉された隙間で爆発、閉所での爆発は威力が増大する、ケセドはコアに致命的な損傷を受けて撤退していった。
「…ターゲット撃退完了」
シュミレートではあるもののデカグラマトンの預言者、ケセドは12使徒一人で撃退可能という結果がミレニアムのデータベースに蓄積された。