とある工場郡
パパパパパパパパパパパパパパパパ!
ドオン!ドオン!バキッ!
ぐあっ!?うわ!ぐうッ!ごへッ!ぎゃ!
闇夜の最中に銃声が鳴る、悲鳴が上がる、連射音と単射音、そしておまけに打撃音。
「音は此方だ!第8班行くぞ!」
ザッザッザッザッザッザッ…
「何処だ!何処に行った!」
「通信が映像室に繋がらない!」
「クソッ!一体何処の連中だ?」
「確かに銃声はした筈なのに…」
"ハッ…ハッ…ハッ…ハッ…ハッ…ハッ…
二人の少女が走り、肩で息をしている、しかしその走り方は音がせず、二人三脚の如く揃っている。
「チッ…やられてやがる…」
「これで6班目かよ…」
「この銃声は4回目の筈だが…」
「やはり、他に居る…」
「マジですか?」
「そうでなければ倒れていない」
「ど、どうします班長?」
「映像室への通信は?」
「未だに繋がりません…」
「一旦警戒姿勢で待機だ、引きずり回されるだけだろう…この工場の警備は合計で20班だったな…下手をすればもう半数以上やられていてもおかしくはない…」
「俺たちが見つけただけで6班ですもんね…」
「常時5人班を20組、つまりは100人警備につける時点でマトモな物では無いのだろう…それで恨みでも買ったのかもな…」
「最近出来た工場なのに数の増やし方も早いですしね、なんか電子部品らしいっすけど…」
「じゃあ襲撃してきてるのはミレニアムですかね?」
「違うだろう、それなら今頃証拠ごと工場が吹き飛んでる…この手口はSRTの特殊部隊に近いとは思うが、もう潰れてるからな…」
「今手持ちの携帯で朝時間帯の同僚に連絡しようとしましたが繋がりません…」
「電子妨害の可能性が高くなったな…ここの監視機材はミレニアムの最新型のハッキング対策システムが積まれた機器類だった筈だが…」
「か、勝てるんでしょうか…は、班長の下なら…」
「職務に準じれば【それでもやれ】以外の言葉は出ないがな…だがおそらくもう無意味だろう…」
「ど、どういう事です?」
「8班、全員銃を捨てろ、チェックメイトだ」
「わ、わかりました!」
「…見てるんだろう?我々の処遇を決めてくれないかな、何処かの特殊部隊さん?」
「…まあ、流石にね?」「…動いたら頭を撃ちますけど…」
ザッザッ…
闇から銃を油断無く構えて現れたのは猫耳を着けた桃と緑の小柄な生徒二人だ。
「…こんな小さな生徒二人が…?」
「まだ他に居るんだろう?」
「ん~…貴方達には流石に教えられないかな~」
「さて、要求は一つです、違法電子ドラッグの証拠の場所を教えてください」
「ふむ…工場見学の案内くらいはしてあげよう、だが私は警備員だ、重要事項なんてのは知らされてないよ」
「…わかりました、他の四人は拘束します」
「手を出さないなら良いだろう」
「では…ホラ、お姉ちゃんも手伝って」
「まだ居るかもしれないじゃん、見張ってるよ」
「ユズとアリスがもうやってくれた…報告ちゃんと聞いてなかった?」
「き、聞いてたし!でも警備員さんに伝えられてない戦力があるかもしれないじゃん!」
「それならヴェリタスがハッキングした時に出てくるでしょ、警備員混乱させるために走り疲れて捕縛が面倒だからって私に丸投げしないで」
「攻撃ちょっと食らってるから許してよ…というか面倒じゃない、苦手なんだ」
「もっとダメじゃん…」
目の前の存在は見た目こそ脅威に感じないが、実態はこの通りである、世の中にはどうにも出来ない事がある、班長は改めてそれを学んだ。
「よ~し、仕事終わり!ゲーム買いに行こ!」
「お姉ちゃん、C&Cへの報告まだでしょ…てかこの時間店開いてる訳無いし…」
「う、そうだった…」
「クエスト完了です!パンパカパーン!アリスはスニーキングスキルのレベルが上がった!」
「これで成果不足で部活解体は遠のいた…時間をかけて色々できる…」
工場郡から少し離れた場所、そこは本格的な戦闘に備えて待機していたC&Cとの合流地点である、そこで今回の成果を渡して報告する事になっているのだ。
「あ!お疲れ~みんな~!」
「おう、来たかチビども、その様子だとバッチリだったみたいだな」
「今回私達は本当にスコープ越しに見てるだけだった…もう調査が前提なら貴方達の方が上だね…」
「もうメイドとしての技能を磨けばC&Cに本格入部できますね、成長がとても楽しみです」
「い、今はメイドに興味は無いです…あんまり人前は…ちょっと…」
「メイド勇者へのクラスチェンジのお誘いは嬉しいのですが、まだやっていないゲームがあります!今はそちらを優先します!」
「まあ、メイドの事は一旦置いておいて、トキさん、これ、今回回収してきたデータです」
「受領…リオ会長に送信しました」
「いや~工場長にアリスの防火シャッター剥がしを見せたらちゃんと言ってくれて楽だったよ~」
「良い脅しの道具が見つかったな、お前らは迫力もタッパも無いから追い詰めても嘗められる事が有ったがその問題も解決した、良かったじゃねえか」
「説得の際の行動コマンドが増えました!」
「まあ、流石に今日は遅い、全員さっさと帰るぞ」
「はーい!」
「わかりました」
「アリス、宿屋に向かいます!」
「やっとロッカーに戻れる…」
次の日、放課後のゲーム開発部部室
それはモモイがシナリオを書こうとしてパソコンに向かっていた時の事だった。
「あれ?メール来てる…」
「どうせ広告かゲームへの批評か何かでしょ、それよりお姉ちゃん早く序盤のシナリオ完成させて」
「いや、何かトリニティの聞いたこと無い部活からみたい…」
「キリコ達からですか?」
「それなら直接電話してくるでしょ、えーと部活の名前は…」
「特別保安警務隊だってさ、何か強そうな名前だね」
「アリスは12使徒の方がカッコ良いと思います!」
「だよね~」
才羽モモイが今振り返ってみれば、まさかこのメールがその日から決戦の日終了までの期間はミレニアムが最も忙しかった期間だと確信できる程の大騒動になった原因であるとはその時は全く思わなかった。
15班はユズの強化スニーキングスキルとアリスの暴力の前に為す術も有りませんでした。