地平線には砂、砂、砂…そして砂に埋もれた街が有る、このキヴォトス広しとも言えどこれだけ発展した都市が災害に飲まれるのは稀だろう、都市とは本来そのような災害を避けて創られる物である。
しかしこの砂だらけの場所にも学校は有る、所属人数こそたったの5人だが、しかし暴力といった意味でならそこらの学園など平然と上回って見せるであろう力量とこんな状況でも学校を廃校にさせぬという尋常ではない強き意思を持つ5人だ。
最大戦力たる小鳥遊ホシノが居なくともカイザーコーポレーションというキヴォトス屈指の大企業、それもPMCという軍事の部門の重要拠点に攻め入り、12使徒、トリニティの砲兵隊、ゲヘナ風紀委員、便利屋68、先生…それらの強力な援護もあり囚われた小鳥遊ホシノを奪還した。
そしてアビドスを苦しめる借金の利息はマトモな物になり、それまで妨害もあり利子の支払いだけで精一杯だったがようやくマトモに借金返済に取り掛かったのである。
ブラックマーケット
バババババババババババ!!ドォン!ドゴォン!
今日も今日とて銃撃音と爆発音が絶えない治安の悪いブラックマーケット、普通はやり過ぎるとマーケットガードが派遣されてくるのだが、今回は少し違うようだ。
「まったく…一丁前に数だけはいるんだから…」
「ん、弾幕がウザイ…」
「私の制圧射撃でもやってる間に撃たれちゃいそうですね~」
「では私がドローンで爆弾を投下して注意を引きます!」
「そんじゃーそれに合わせておじさんが前に出ようかな~?どう思うシロコちゃん?」
「ならそれで行こう」
「準備できました!」
「んじゃ行こっか~、3、2、1…」
ドオオン!!
「後方から爆発!?」
「な、マーケットガードか!?」
50万の賞金首の一団の後方にアヤネのドローンによって爆弾が落ちる、リーダーはマーケットガードの介入を疑い、一団は一瞬後方に意識が逸れる─その一瞬が命取りだった。
「盾だよ、集まって~」
「お仕置きの時間です~♠️」
「ドローン、機動」
「許さないんだから!」
ズドォン!ズドンズドンズドンズドン!
ガガガガガガガガガガガガ!
ドゴォン!ドオン!ドゴォン!
ドオン!ドオン!ドオン!ドオン!
『グアアアアアアア!!』
アビドスの総攻撃が決まる、仮にも同じ方向を向いていた集団が見事に総崩れだ。
「く、来るなっ!」
部下を倒された賞金首のアサルトライフルが火を吹くが。
ガガガガガガガガガガガガ!!
「そんじゃーおじさんはこれ防ぐので疲れたから、後よろしく~」
このアビドスの盾にならんとする小鳥遊ホシノを正面から打ち倒せるのは12使徒の影響があるこのキヴォトスでも限られる。
「相変わらずホシノ先輩はのんびり屋…」
バキ!「ぐえ!」
「いやはや、良いキックだね~」
「それより~速く捕まえちゃいましょう?」
「同感よ、マーケットガードが来て面倒な事になるわ」
「そういえば最近はブラックマーケットでの賞金首確保の際にマーケットガードが介入してこないような…反応からして今も遠くから監視に留めていますね」
当たり前の事である、因縁有る12使徒の情報はブラックマーケットの者なら収集しない筈が無く、アビドスに数少ない『全員出撃』した際、その前後の状況もマーケットガードは知っている。
空崎ヒナが居なくとも天雨アコ、銀鏡イオリ、火宮チナツ率いるゲヘナ風紀委員会を撃退し、小鳥遊ホシノが囚われた際にもカイザーPMCの侵攻を跳ね返し、カイザーPMCの理事がゴリアテ改修型を使っても打ちのめしているのである、そしてこの戦果は最大戦力たる小鳥遊ホシノが居ない状況で成された物、先生と便利屋68の助けがあったにせよこれが並みの生徒4人の戦闘能力の筈が無い、現在進行形で数十人を5人で圧倒している戦力─賞金首の確保が終わればさっさと帰る者達にメリットも勝ち目も無いのにマーケットガードが殴りかかる筈も無かった。
「ま、おじさんにとって楽なのは良いことだよ~」
「ん、ならさっさと帰ろう」
「たい焼きでも買って帰りましょうか?」
「ノノミ先輩ったらマーケットガードに目をつけられてるのに呑気すぎない?今も監視されてるんでしょ?」
「まあ、弾薬もまだまだ残ってますし、トラブルが無ければ大丈夫かと…」
12使徒に訓練されたスケバンやヘルメット団もその嗅覚故に襲いかかる様なことはしなかった、数十人を鎧袖一触ならば百人集めても出来るのは時間稼ぎ程度、勝っても50万の賞金首は手に入るが割に合わない相手だということを見せつけられた。
アビドス高等学校
アビドス廃校対策委員会部室
「うへ~、なんだか疲れたね~昼寝でもしたくなっちゃうよ~」
「ホシノ先輩も私たちもそんな激しく戦ってないでしょうが…」
「まあまあセリカちゃん、買ってきたたい焼きでもたべますか?」
「いやもう帰りに一つ食べたから良いし…」
「取り敢えず、次の手頃な賞金首でも探そう、それと銃の整備も」
「はい、それでは探して…あ、私達にトリニティから依頼が来てますね…」
「ん…?トリニティから?どういう依頼?」
「…これです…」
これはトリニティ特別保安警務隊からアビドス廃校対策委員会への依頼だ
前金…100万円
成功報酬…100万円
エデン条約当日の警備依頼、位置は当所東1キロメートルの指定箇所
何事も無ければ上記の報酬を受け取った後に解散、しかし下記の不測の事態が発生する可能性有り、その際成果報酬有り。
エデン条約の会場への襲撃者の捕縛
ガスマスクの着用や無加工の銃器を所持した生徒を付近に配置してあるトリニティ総合学園の校章が付いたトラックに捕縛して運ぶ、一人につき10万円。
推測戦力…100人単位
高性能ミッド級戦闘マシンの撃破
襲撃してくる銃弾を無効化する電磁装甲二枚と大型武装四門、脚部にローラーを装備した機動性に優れる戦闘マシンを撃破する、一機撃破するごとに1000万円。
尚この電磁装甲は瞬間的な衝撃に対しては12使途の銃撃を防ぐ程極めて堅牢ながらビルを破壊出来る格闘等持続的な衝撃に対しては防御性能が低くなる事が確認されている。
推測戦力…最大44機
その他上記以外の撃破対象…ミレニアムのドローン等信頼できる機材で撮影出来た映像記録の元審議する。
アビドス廃校対策委員会へ…貴方達の実力は把握している、その力を以て借金完済にどうか一歩近づいて欲しい、貴方達と共に柴関ラーメンを食べるのを楽しみにしている。
PS…この依頼を承けてくれればその確認次第追加の依頼をさせて貰う、決戦の場に介入しても良いならば相応に報酬の準備をする、此方も借金返済に役立てて欲しい。
「特別保安警務隊って…どこ?12使徒の子なら知ってたりするかな?」
「ん、トリニティを騙る偽物だとしたら許さない、叩き潰す」
「まあシロコちゃん、取り敢えずどんな所かまずは調べてみましょう?」
「…調べるまでも無いよ、これを偽装するなんてそれこそトリニティに正面から喧嘩を売る行為だ」
「へ?どういう事?ホシノ先輩?アヤネちゃん?」
「…このトリニティ特別保安警務隊っていうのは12使徒の正式名称の事なんです、もう私達が12使徒に関わっている…というか物凄く助けられているのがニュースで話題になったのにこの文面を送ってくるのが偽物ならリスクがあまりにも高すぎます…これがもし偽物だったらこれをトリニティに送った瞬間その偽物はトリニティから徹底的なマークを受ける…そして送られるのは12使徒でしょう」
「うっわ怖っ!ホシノ先輩を助けるための時に12使徒の子達の戦う所見てたけど…アレが襲いかかってくるとか想像したくないわよ…」
「うん、翼で戦車砲弾いてた…しかもローラーで」
「戦車を銃撃で爆発させてましたね~」
「まあ、私は直接見てないけどさ、トリニティに確認してこれが本物だったら承けよう」
先輩ならそうするだろうから
「というかおじさんを助けてもらったのに承けなきゃちょっとアレじゃ~ん」
「まあ、報酬もめっちゃ良いしホシノ先輩がそんな言うなら承けるけどさ」
「ん、トリニティとやり合おうとするだけあって強敵の予感…この戦闘マシンを見つけて殲滅してそれ以外の脅威があったら積極的に狩ろう、強そうなら追加報酬も高そうだし」
「5分とはいかなくても上手く此方に来てくれれば3時間で1億くらいいけそうですね~♠️」
「それでは、皆さんこの依頼を承けるということで宜しいでしょうか?」
「「「「うん」」」」
「受諾と送信しました…ではこれより準備を始めしょう!」
「ん、覆面を持っていく」
「何で!?別に必要無くない!?」
「トリニティにはヒフミがいる、同士…いや、覆面水着団のリーダーが居る所への『正装』、それこそが覆面」
「ヒフミさん、普通に嫌がってませんでしたっけ…」
「中々良い腕してたし良いんじゃなーい?」
「あっ!でもそれだと報酬がヒ…ファウストにも払わなきゃならなくなるんじゃ…」
「問題ない、これは覆面水着団への依頼ではなくアビドス廃校対策委員会への依頼、100…いや、20万円も払えばリーダーへの警備依頼の分け前としては適切」
「ファウストちゃんを20万でこき使うって言うのも何ですし、100万で良いと思います それで襲撃者を10人追加で捕まえられたりマシンを一機多く壊せれば儲けものですね~」
「役に立ちそうな物を考えよう、取り敢えず捕縛用の丈夫なワイヤーから…」
「打撃攻撃なら少しは効き目が有るみたいですから…良い感じの鉄骨でも背負っていくのも良さそうですね♠️」
「あと、普通に銃の整備もしておきましょう!このあとバイトだから私は明日以降だけど!」
「ドローンに搭載する回復物資や爆弾の調達もしなければなりませんね…」
「私のドローンのミサイルも調達しなきゃ…」
「銃弾を入れる箱も持っていきましょう、300キロくらい入る箱を探したいですね~」
…この依頼、運が良ければ1億以上稼げるかもしれない、私が「本気」になれば借金返済は大きく進むのは間違いないだろう、一瞬装備を引っ張り出すことを考えて…
「ん、便利屋68にも連絡しよう」
「あ、それ良いかも!流石にゲヘナの指名手配犯には依頼してないだろうから…」
「あくまでアビドス廃校対策委員会への依頼ですから報酬の取り分は此方が決められそうですね~」
「いや、恩人なんですから騙すような真似しちゃダメですからね!?下手したら撃ち合いになりますよ!?」
「それはまあ、あっちが最初襲ってきたのを盾にして報酬の分け前を…いや、うん…なんかやめとこ…」
この楽しい時間を不意にするような事も興醒めだ、私がいれば暴力という土俵ならどうとでもなる、しかし後輩が成長しようとしているのならばそれを助けるのは当然の事だ。
先輩ならきっとそうする
「あ、便利屋から返信が来た、もう北の方の警備依頼を承けたらしい」
「…まあ、報酬の件で揉める事は無さそうね!」
「12使徒の子達って便利屋さん達にも依頼出してるんですね~」
「まあ、エデン条約はそもそもトリニティとゲヘナ間の物ですからね…その一環だったりするのかもしれません」
こうしてアビドス廃校対策委員会は日常から非日常へと移り変わっていく