《三次創作》トリニティの12使徒 番外編   作:ねねと

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放課後スイーツ部の冒険

 

 

 

 

放課後スイーツ部の部室

 

「さてと、確か今日の予定は特に決まってなかったよね?マカロンはこの間食べたから私は食べられるけどとりあえず優先度低めで…」

 

「そうだね…チョコミントも前に食べたし、みんなは何か意見有る?」

 

「まあ、私は特にこれといった意見は無いけど、最近暑いから冷たいものが食べたいわね…」

 

「放課後スイーツ部の諸君、私はアイス系統で良さげな店を見つけてきた、発表して良いだろうか」

 

「え、まあ、いいけど」

「どんな店なの?」

「存在しない店だとか、あんまりにもアホ過ぎる事だったら最終的には手が出るからね?」

 

「今度のスイーツ部の遠征先としてはこの店、『亞威末殺・不死門』(アイス屋・シナモン)を所望する、美食研究会が合格点を出している、そして減点項目も「店主の接客態度」のみというなかなかロマンが有る店らしい、位置はゲヘナの南地区のここだ」

 

「は?、ゲヘナ?嘘?!」

 

「う、うーん…味は確かなんだろうけど…流石に…」

 

伊原木ヨシミが驚いた声を、栗村アイリが難色の声をあげる、それはそうだ、ゲヘナ学園が無法地帯なのはキヴォトスでの常識と言っても良い知識だ、その店にたどり着けるかすら少し怪しい…普通ならば。

 

「何故店がゲヘナだからといって狼狽える必要があるのかね?我々放課後スイーツ部には居るではないか、このキヴォトス広しとも言えども早々居ない最強の切り札の存在が…」

 

「最強言うな、強い奴はまだまだ居るっての」

 

「いや端からみても動き凄いし…」

 

「すっごく強いよね、カズサちゃんは、それなら問題は無い…のかな?」

 

杏山カズサ 

 

キヴォトスの一年生という年齢でお互い目視出来る範囲、武器は銃のみでの全力戦闘では最強の存在と言って良い程の強さを持つ放課後スイーツ部の部員だ、かの12使徒との関わりで得た力はこのキヴォトスでも上位の戦闘能力を獲得するに至っている。

ゲヘナの不良等一薙ぎなのは間違いないが、それはそれとして無限の不良相手の非戦闘員3人を護る護衛戦闘は少し手間がかかるのもまた事実。

 

「んー…まあ、戦闘に関して全員私の言うこと聞いて言い出しっぺのナツが盾持って後ろに張り付くなら良いよ、前は私がやるから」

 

「うむ、スイーツのためなら体を張る、その過程を経て得たスイーツの価値はとてもロマンが有る…」

 

「あそこの不良共は空崎ヒナが居るから(どれだけ鍛えても無意味)なのかあんまり真面目に鍛えようとはしないからね、そこまで手強い相手じゃない」

 

「え、マジで?行けるの?」

 

「おお…すごいね、カズサちゃん」

 

「アイリもヨシミも行きたいなら私は問題無いよ」

 

「いやまあ、行きたいし出来るだけ手伝うけどさ」

 

「うん、行ってみたいかな」

 

しかし協力が出来れば特に問題ないというのもまた事実である、ただでさえ友達のためならば部を擲って正義実現委員会に突撃する少女達だ、戦闘のプロフェッショナルの友達の指示に従う、それだけの事。

 

「で…ナツ、壁を背にしろ、絶対に二人から離れるな、常に盾を構えろ、攻撃は一切考えるな、この四つを暗唱出来るくらい覚えておけるなら私は行く、でもただでさえ公共交通機関があんまり宛にならない遠出と戦闘で時間を食うのに遅刻でもしてこようものなら気が抜けてる=戦闘は出来そうに無いと判断して私もみんなも集合時間でさっさと帰る、そしてこの話はなかった事になる…オッケー?」

 

「むう…流石はゲヘナ、君でも万全の状態で望まなければならないのだな、ならば私もそれに従おう」

 

「あ、戦闘は前提なのね…」

 

「私としては殲滅しておいた方が気が楽なだけ、その方が帰りは楽になるだろうし」

 

「それじゃあみんな、決まりってこと良い?」

 

「もちろん賛成よ!」

 

「無論だ、行こう、ロマンを求めて…!」

 

「賛成…んで、行くのは明日、今日は各自の銃の整備とか弾薬補充とかの準備に充てる。みんなもトリニティの制服以外の汚れても良い動きやすい服で来て、トリニティの制服だと目を付けられる、私は適当なぼろ切れ探しとく、それを着て戦闘する事を頭に入れておいて」

 

「了解した、スイーツ部最強、盾の整備をしなくてはならないな…」

「わかった!古着を引っ張り出してくる」

「うん、あんまり余計な荷物は持てないね…」

 

 

 

 

 

1日後 トリニティ=ゲヘナ間境界

集合時間1時間前

風紀委員会警備地区

 

 

「あ、すみませんゲヘナ風紀委員会の皆さん」

 

「学生証の提示をお願いいたします…トリニティ総合学園の1年生、杏山カズサさんですね、ご用件は何でしょうか」

 

「この『亞威末殺・不死門』(アイス屋・シナモン)って店に行きたいんですけど、その際もしかしたらトラブルが起きてしまうかも知れないんで…勿論こっちから手を出すなんて事はしませんが、その際襲ってきた不良を一人残らず叩きのめしてしまっても問題は無いでしょうか?」

 

「普通の生徒さんなら特に問題は有りませんが…正義実現委員会の方がゲヘナで暴れるとなると…」

 

「ああ、いえ…私は特に正実所属じゃ無いです、『放課後スイーツ部』っていう四人だけのスイーツを食べる部活に所属してるだけの普通の生徒ですよ、中学じゃ特殊戦術研究会に居たもんでその辺の不良よりは腕っぷしはある方ですけど、私だけならともかく3人連れが居るもんで、どうしても襲ってきた奴は逃げた奴も全員潰さないと不安で…」

 

「!…12使徒の…なら問題は有りません、もし不良の山が出来ても我々と救急医学部で対応しましょう」

 

「本当にありがとうございます」

 

 

集合時間

トリニティ自治区境界近く

 

「ナツ、ちゃんと覚えてる?」

 

「壁を背にしろ、二人から離れるな、常に盾を構えろ、攻撃は一切考えるな、ロマンを忘れるな…だった筈だ」

 

「なんか余計なのがあるけど覚えてるなら良いよ」

 

「いよいよゲヘナ行きね…カズサも居るし準備もしたけどなんか緊張してきた…」

 

「うん…まあでも、カズサちゃんが問題ないって言ってるんだからきっと大丈夫だよ!」

 

「まあ、ナツが迷わないかの方が心配よね」

 

「さ、いろいろ注意点を説明しておく。歩いた時に音が出る物は全部このテープで押さえる、銃は何時でも撃てる状態に、大声でのおしゃべりも出来ない、そして行く最中はこのボロ布を纏って貰う、一応洗濯はしたから臭いは無いよ」

 

「うわ、聞いてはいたけど…」

「本当にボロ…」

「シナモンアイスのためなら仕方がない、これもロマンのための試練だ…」

 

それは本当に襤褸切れだった、辛うじて服ではあると解るが、カズサが洗濯をしていなかったら…ゴミ箱に入れていただらう。

 

「まあ、良い物身に付けてたら誘拐だのカツアゲだので絡まれるからね、いかにも『お金なんて持ってません、襲ってきたら全員殺します』っていう雰囲気を出すためだよ」

 

「まあ、これもカズサちゃんがいたからこその貴重な体験と思って!」

 

「あんまり良い経験では無いけど、まあ下手に絡まれるよりかはマシね」

 

「襲われたら『放課後スイーツ団』の名乗りをあげて突撃…それもロマンがあるものだ」

 

「ナツ、私が言った事忘れた?」

「ロマンがあるというだけで実践など出来る筈も無い事くらいは流石に解っている、私は盾を構えて亀になっているのがせいぜいで最善だ、杏山カズサは戦闘がとても得意だが放課後スイーツ部は不良への対応を学んだ戦闘部隊でも何でもない」

 

「なら良し、んじゃ行こう、『亞威末殺・不死門』(アイス屋・シナモン)へ」

 

 

 

 

 

ゲヘナ自治区

 

 

 

 

「……」

「……ねえ…」

「ん?何か?私は牛乳を飲もうとしているが…」

「ねえカズサ…」

「何?」

「いやなんかめっちゃ見られてない?」

 

あまりにも『いかにも』な襤褸を着た四人組である、普通の不良はもう少し何処かから奪ってきて襤褸よりはマシな物を着る、今の所は杏山カズサの眼光を見て関わらないようにしているが、少し物珍しいのには変わらない。

 

「…まあね」

「大丈夫?これ?」

「仕掛けられてないから大丈夫」

「だと良いけど…」

「でもちょっと失敗だったかな…」

 

不良が数人近づいてくる、カズサの眼光にも一切動じていない、気づいていないだけかもしれないが…恐らく良い目には会わないだろう。

 

「失敗って…カズサちゃん、どういう事なの?」

「ここは弱いものをぶん殴るのに躊躇が無い奴が多いって事…みんな、そこの壁を背にして」

「わかったわ」

「うん」

「私の盾の出番か、今ストローを差してしまった牛乳は戦闘中にでも飲むとしよう」

 

スイーツ部の三人は事前に伝えられた動作を無駄無く実行した、カズサの強さを知る故に余計な手出しは無用である。

 

「よおそこの貧乏人さん達よォ…」

「…何?」

 

カズサが拒絶を示した声をあげる、しかし相手を弱者と見なした不良達は止まる事等ある筈も無い。

 

「ウチらさあ、最近ムシャクシャしてるんだよね~」

「そうそう、憎き風紀委員共のせいで暴れることなんて出来やしねえ」

「お前達、ゲヘナの外から来たな?足音は四人の筈なのに三人分、銃も盾もしっかり整備されてるのにその服…何より『貧乏』のオーラが無い…」

「……」

 

チッ…少しは頭が回る奴だったか…

 

「んでお前ら、ちょっくらウチらの射的の的になれや、それなりに楽しめそうじゃねえか」

「嫌だと言ったら?」

「そんなの決まってんだろ?オイ!お前ら出てこ」バキッ!「い!?」

「な」バキョ!「ぐえ!?」

「この」ドゴ!「が!?」

 

「さて、一人一人潰していくか…」

 

不良30人以上が集まってくる、普通の生徒ならば逃げる以外の選択肢は無い、しかし今この場に居るのは杏山カズサである、それがどんなに絶望的な事かを不良達は思い知ることになった。

 

 

ドガバキゴス!グシャグシャ!ドゴオン!ズドオン!

 

『ギャアアアアアアアアア!!』

 

銃すら使わない攻撃で次々と不良が沈んでいく、あまりにも戦闘能力が隔絶していた。

純粋な身体能力、身につけた技術、格上かつ多数相手の戦闘の経験、その全てが揃っている、それが杏山カズサという女だ、その強さ故に彼女が暴れるのを確認された際には剣先ツルギの出撃が最優先になっている、選抜小隊4人では確実に被害が出てしまう故の対応だ。

それ程までの規格外とすら言って良い存在なのである。

 

「ひ、ひいいい!?」

「なんだコイツ!?」

「ふざけんなよ!?」

 

まさに阿鼻叫喚の地獄絵図、20秒も経っていないのに明らかに10人以上は倒れている。

 

「ひ、怯むんじゃねえ!撃て撃て!」

 

ダダダダダダダダダダダ!!

 

しかし不良達もただやられる訳ではない、遮二無二銃を撃つ、10人程が撃つ相応の弾幕がただ一人に向けられる、躱しきれる生徒はそうそう居ないだろう。

しかし今この場にいるのは杏山カズサである。

 

フッ…

 

「な…!?どこに行った!?」

 

確かに目の前に居た筈なのだ、しかし事実としていつの間にか居なくなっている。

 

ドカ!「がはッ!?」ドッ!「ごべ!?」ドカ!「ホゲ!?」

 

そして倒れていく不良達、そこで漸く『格が違う』事に気づいたリーダー格。

 

「ま、待て!降伏する!するから…!」

「んじゃ、射的の的にでもなりな?」

「ひっ…!ごは!?」

「あ、今の嘘、射的なんてしてる暇無いわ、アンタら程度に弾使うの勿体ないし」

 

「に、逃げろおおおおお!」ゴス!「おご…」

「こ、殺される!」ゴッ!「あ…」

「止めてええええ!」ゴシャ!「えあ…」

 

怪物から逃げられる筈も無い、射的をしようとした不良共は射的の的にすらなれない因果応報の結末を迎える、風紀委員会に捕らえられて救急医学部で治療を受けるまでは何も出来ないだろう。

 

「たく…鈍ったな…んじゃ行こ」

「うわあ…」

「自業自得ね」

「うむ、今日も牛乳の時間は良いものだ」

 

 

それから数度の戦闘をして『亞威末殺・不死門』(アイス屋・シナモン)に着いたスイーツ部、襤褸を仕舞って入店するとそこは量に対応したお金を払えば幾らでもシナモンをかけられるスイーツ店だった。

 

バニラソフトクリームにシナモン、ストロベリーパフェにシナモン、ショートケーキにシナモン、シュークリームにシナモン、フルーツケーキにシナモン、チョコミントクレープにシナモン、ショコラアイスにシナモン…それはもうシナモン漬けだった、シナモンがゲシュタルト崩壊を起こしそうな程のシナモンである。

 

もちろん店の看板たる『シナモンアイス』『シナモンロール』も美味だった、シナモンに少し飽きが来ていなければもう一つ頼んでいた位の逸品だった。

 

ナツは『シナモンミルクセーキ』『シナモンクリームチーズ入りクレープ』『シナモンミルクレープ』『シナモンミルク』等を食べて味覚が麻痺したのか、最後には持ち込んだシナモンが入っていない筈の牛乳を飲んで「…なんだかシナモンの味がする」と言う始末である。

 

流石に『シナモンの元』というシナモン粉になる直前の物体があったのは驚きだった、そして極めつけは『シナモン』という本当に小皿に山盛りのシナモンである、流石にこれはスイーツ部は注文しなかった。

 

シナモンスイーツを沢山食べたのもありもうシナモンの狂気の沙汰で腹が膨れてしまった…メニューの後ろに『シナモンカレー』という文字が見えたのは見なかった事にした。

 

あくまでここにはシナモンアイスやシナモンロールを初めとした美味しいシナモンスイーツを食べに来たのであって決してシナモンが入ったゲテモノを食べに来た訳ではないのだ。

 

 

トリニティ自治区

 

「いや~…うん、シナモンだったね…」

「美味しかったね!シナモンチョコミントアイス!」

「まあ、特にフルーツケーキは美味しかったわね…シナモンだったけど」

「たしかにシナモンがあった店だった…間違えた、ロマンがあった店だった…」

 

美味なのは間違いないがまさに味覚を殺すようなシナモンの店であった。

 

「まあ美味しかったけど当分シナモンは良いかな…」

「私も…」

「そうだね…」

「きっと今夜の晩御飯もシナモンの味がするだろう…」

 

「マジでやめてよそういうの…」

 

「昨日買った鳥肉がシナモン味かあ…チョコミントクレープシナモンが頭から離れない…」

 

「待って!?お米もシナモン味になるのこれ!?」

 

「勿論牛乳もシナモン味だと思われる」

 

「うわ…ただでさえ好きじゃ無いのに…いや、少しはマシになるのか…?」

 

「…まあ、シナモンが恋しくなったら来れば良いんじゃない?」

 

「私はもう一月は勘弁よ…」

 

「なんだか半年分のシナモンを食べた気がする…チョコミントがシナモンになりそう…」

 

「まあ、総括してロマンがある良き店に出会った、と言うことで良いんじゃないかな」

 

「まあ…それでいいと思うよ」

 

「インパクト強すぎて来年も覚えてるわ…」

 

「うん…そうだね!とっても美味しいスイーツ店だった!」

 

「それじゃ、流石に皆は疲れてるだろうからそろそろ解散する?」

「そうね、このまま話してると頭がシナモンになっちゃうし」

「うん、今日は解散で!」

「また一つロマンを発見した…また会おう」

 

 

それぞれ駅やバスに歩いていく放課後スイーツ部、あらゆる意味で刺激的な体験だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

カズサが届いていたメールを見る

 

mail:調印式の日について

 

「……オッケー、と…さて、流石に少しは錆を落とさないとね…」

 

 

 

 

 

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