ウマ娘とクローントルーパーの日常   作:歴山

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菊の花に響く一撃を

菊花賞直後、ライスシャワーは控え室で落ち着けていなかった。レース後の観客の声に動揺していたのである。

フォックス「大丈夫か?ライス。」

ライス「…うん。大丈夫…。」

明らかに大丈夫ではない声量で返事をするライス。それに気づかないはずがなく

フォックス「本当に大丈夫か?難しいならライブは出ない方が…」

ライス「ダメ!!」

大きな声をあげて立ち上がるライス。しかしその足は震えており前に進むことはできていなかった。足の怪我による震えではなかった。一度ヘルメットをとり、直接目を合わせてライスに話しかけるフォックス。

フォックス「怖いのか?ライス。」

静かに頷くライス。レース後のバッシングは周りを幸せにしたい気持ちで走っていたライスにはダメージがデカすぎたのだ。その事に気づいているフォックスは普通なら優しく話しかけるところを、

フォックス「ライス、今の君ではライブに出ても周りに迷惑をかけるだけだ。出るのはやめなさい。」

ライス「でもお兄さま!!…」

フォックス「それともそんな状態で満足に踊れるのか?」

黙り込むライス。

フォックス「確かに君を批判する声は多い。中には心にもないことを言うやつだっているだろう。けど全員じゃない。君の走りに感動した人もいるだろう。その人たちからしたら君はヒーローだ。」

ライス「ライスは…ヒーローなんかじゃ…」

フォックス「いいや、君はヒーローだ。周りに比べて小さくとも勝ちたいという気持ちは誰よりも大きい。そんな君がヒーローでないはずがないだろ。」

ライス「…」

するとドアをノックする音が

スタッフ「ライスシャワーさん、そろそろお時間ですが大丈夫でしょうか?」

見つめ合う2人。

ライス「…お兄さま、本当にライスはヒーローだと思う?」

フォックス「ああ、そうだよ。」

そうして再び立とうとするライス。足はまだ震えていたが震えながら歩けていた。そしてその足で会場に向かおうとしていた。

フォックス「ライス!」

ドアに触れたライスに話しかけるフォックス。

フォックス「俺は君がヒーローでいるためにヒール役になる覚悟だってある。だから君は心配せず自分の信じる道を進みなさい。」

ライス「それってどういう…」

フォックス「ほら、時間がきてるぞ。早く行け。」

何か言いたげなライスを急かすように出すフォックス。スタッフに連れていってもらうのを見送ってフォックス自身もライブ会場に向かう。

 

ライブ会場に着いたフォックスはセンターが見えるところに立っていた。するとそこに2人ほど近づいてきた。

ファイブス「お!今日の主役はこんなところにいたのか。」

フォックス「なんだ、CT-5555とCC-2237じゃないか。」

ファイブス「だから俺はファイブス!こいつはオットボール!何で名前で呼ばないんだよ!」

オットボール「いつものことだろ。」

そう言いながらフォックスの両側に立つ2人。

フォックス「何でわざわざここなんだよ。他にもいいところあるだろ。」

オットボール「いいじゃないか、俺たちの担当も今日はメインなんだから。」

オットボールの担当の子は3位のマチカネタンホイザ。そしてファイブスの担当は2位のミホノブルボン。なかなかに複雑な心境である。

フォックス「しかしお前とは縁があるもんだな。」

ファイブス「皮肉か、さすが俺を撃ったやつは違うな。」

フォックス「まだ恨んでるのか?」

ファイブス「さすがにもう恨んでねえよ。それよりもあんたの担当は大丈夫なのか?」

フォックス「大丈夫だよ。」

ファイブス「…あんまり言いたくはないがもう少し優しい言い方もあっただろ。」

フォックス「聞いていたのか。」

オットボール「俺たちの部屋、横並びだからな。」

フォックス「まあ、確かに言いすぎたところはあると思う。けどなあ、周りを見てみろ。」

そう言われて周りを見渡す2人。ライブを待っている人たちの話している声があちこちから聞こえるがほとんどがブルボンの三冠を見れなかったことに対しての落胆の声だった。

フォックス「勝ったものに対してあんな風に言うやつだってたくさんいる。そんなやつらに負けないためにも俺が厳しくする必要があるだろ。」

オットボール「だからと言って…」

言いかけのところでステージから彼らの担当3人が出てきたのである。観客席から歓声があがる。しかしその歓声はほとんどは勝者にではなく

観客A「ブルボン!よくやった!」

観客B「次のレースも頑張れ!」

観客C「応援しているよ!」

観客D「タンホイザもよくやった!」

会場の声援はライスではなくブルボンに向けられていた。

オットボール「まさかこんなにもあるとは…」

ファイブス「トレーナとしてはあんまりいい気持ちにはならないな。あんたはどうなんだ?」

フォックス「これが世間の評価として受け入れる以外特にない。」

フォックスの態度に不満を持つファイブス。そのままライブは進んでいき、無事歌いきった後に事件がおこった。どこからか垂れ幕がついたバルーンが上がってきたのだ。そこには"三冠達成"という文字が書いてあった。間違って上がってしまったようだがその文字はライスにはダメージが強かった。

ファイブス「おいおい、これは何とかしてもらった方が…」

そう言いながらフォックスの方を向くとDC-17ハンド・ブラスター2丁出してバルーンを狙っていた。

オットボール「ちょ!待っ…!」

止めようとする2人。しかし1歩遅くブラスターから2発、夜空に向かって発砲された。1発はバルーンに直撃して、もう1発は垂れ幕の三冠と書いてあるところのど真ん中に当たった。

フォックス「よし。」

ファイブス「全然良くねえよ!なにやってんだよ!?てかどこからそんなもの持ってきたんだよ!?」

フォックス「グダグタ言うんじゃない。まあ、見てろ。」

そう言って観客全員に聞こえる声で話し始めた。

フォックス「他の観客もギャアギャアうるさい。今日のレースを勝ったのはライスシャワーであってミホノブルボンじゃない。勝者を称えられないやつらはレースを見るんじゃない。」

淡々とした声で話すフォックス。周りの観客は最初は呆気にとられるも徐々にフォックスへの反感の声が沸いて出てきた。それでも話続けるフォックス。

フォックス「それとも何か?"レースに絶対はない"という言葉を知らないのか?確かに無敗三冠誕生の瞬間を見て見たかった気持ちは分からんでもない。ただ見れなかった憤りを勝者にぶつけるのはどうなんだ?」

会場に無音が走る。フォックスの言うことに反論しようとする者は誰も現れなかった。

フォックス「批判したいのならせめてこの場でなくてもいいだろ。やるならネットのところで勝手に書き込んでろ。」

言いたいことを言いきったフォックスは固まってしまっているライスを連れて去っていった。去り際にファイブスとオットボールの方に謝罪の意味で手を合わせたが2人は敬礼で答えた。

 

翌日、フォックスの行動はネットや新聞で引っ切り無しに報道されていた。そのほとんどは彼の周辺を気にしないで発砲した事に対しての非難だった。バッシングも多くトレーナー免許を剥奪すべきという意見も出てきていた。しかし当人は謹慎を言い渡されても全く気にする様子を見せていなかった。むしろ彼の担当であるライスシャワーの方が気にしていた。そんなライスに、

フォックス「ライスが気にすることじゃないさ。あれは俺が勝手にやったことだから。」

ライス「でもそのせいでお兄さまが不幸に…」

フォックス「言っただろ?俺は君のためにヒール役をやるって。そのお陰がどうかは分からないが君への批判はほとんどない。」

実際、ライスへの批判はほとんどなくむしろトレーナーが常識のない人で可哀想という評価になっている。

フォックス「まあ、俺が望んでいた評価ではないが批判よりはましだな。」

ライス「でもお兄さまは悪くない。悪いのは…」

言いかけたライスの言葉を止めるフォックス。

フォックス「自分を卑下しすぎるのは良くないぞ、ライス。もっと自分に誇りを持ちなさい。それに文句を言うやつらは結果で黙らせればいい。」

ライス「お兄さま…。分かった、ライス頑張る!」

そうして2人は年末の有馬記念に向けて動き出すのであった。




クローンがブラスターを持っているのは生徒を守るためという特別に許可されているという設定です。
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