スティル「その…ごめんなさい...」
ミキサー「まあ、誰だって間違いはするからな。許してやれ、テイオー。」
テイオー「…ヤダ…カイチョーからの贈り物だったのに…」
ミキサー「まったく、何でこうなった?」
スティル「それは…」
数時間前、トレーナー室に誰よりも早くやってきたスティルは先に用事をすませようとしていると
スティル「あら?こんなところにドーナツが。トレーナさんの差し入れでしょうか?」
スティル「……少しぐらいなら食べても大丈夫ですかね。」パクッ!
スティル「おいしい…」パクッ!パクッ!
スティルがどんどんドーナツを食べているとガラッ!と勢いよく扉が開き、
テイオー「ヤッホー!トレーナー!…って誰もいないじゃん。」
スティル「あの…テイオーさん…」
テイオー「ワー!?スティルいたの!?ビックリした!」
スティル「…申し訳ありません…驚かせてしまって…」
テイオー「いやいや、こっちもビックリしてゴメン!」
スティル「お詫びと言ってはなんですが…」
テイオー「ナニナニ!このドーナツくれるの!アリガトー!」パクッ!
テイオー「ん~!おいしー!これ、スティルがもってきたの?」
スティル「いえ、置いてあったものです。」
テイオー「フ~ン、さてはトレーナー、一人でこれを食べようとしていたな!」
スティル「そうでしょうか?」
テイオー「まったく、トレーナーは。じゃあ、ボクはカイチョーがくれたお菓子でも食べようかな!スティルにも少し分けてあげる!」
スティル「ありがとうございます。」
テイオー「おかしいな~確かに名前を書いてここら辺に置いたはずなのに…」
スティル「…あの…テイオーさん。もしかして…お探しのものは…これですか?」
スティルが差し出した箱の蓋には『トウカイテイオー』と大きく書いてあった。
テイオー「それそれ!どこにあったの?」
スティル「…その…申しにくいのですが…」
そういいながらスティルは先ほどまで食べていたドーナツの箱を差し出した。
一瞬、固まったテイオーだがすぐに正気に戻り、
テイオー「アーー⁉」
テイオーが気づいてから数分後にやってきたミキサーはトレーナー室で泣いているテイオーとひたすら謝るスティルを見て、困惑しつつもスティルに訳を聞いて今に至る。
ミキサー「なるほど、だからテイオーがこんな状態なのか。」
テイオーに引っ付かれながら話すミキサー。
テイオー「ムーー!」
ミキサー「テイオー、スティルも謝っていることだし許してやれ。」
すると見守っていたスティルがテイオーに対して、
スティル「テイオーさん。本当にごめんなさい。お詫びと言ってはなんですが…」
そう言ってスティルはハチミーを取り出した。
ミキサー「え!?いつ行ってきたの!?」
スティル「つい先ほど。」
ミキサー「でもずっとここにいたような気がしたんだけど…」
スティル「影が薄いですから…」
自分のことを卑下するスティルを横目にハチミーを勢いよく飲むテイオー。
テイオー「ハ~~!おいしい!」
ミキサー「機嫌が直ってきたようだな。あと引っ付きながら飲むな、ハチミーがくっつくだろ。」
テイオー「いいじゃん、別に。それにまだ機嫌よくなったわけじゃないから。」
そう言うとスティルの方を向いて、
テイオー「スティル、一緒に全力で併走しようよ!」
スティル「!」
ミキサー「おいおい、テイオー。さすがにそれは…」
テイオー「え~だっていつも本気で走ってくれないんだもん!ね!いいでしょ!」
スティル「…分かりました。そのようなことでよろしいなら。」
テイオー「ホント!?ヤッター!それじゃあ、先に行ってるね!」
喜んだテイオーはトレーナー室を飛び出して行った。
ミキサー「まったく、なかなかな無茶振りをするなぁ。今日のトレーニングを全部変更しないと。」
スティル「すみません…」
ミキサー「まあ、大丈夫さ。こういうことはトレーナー側としてはよくあることさ。ただあんまり間食は摂りすぎないでくれ。」
スティル「はい…気をつけます…」
ミキサー「でも意外だったな。テイオーの話にのっかるとはな。」
スティル「…確かに今の"私"ではテイオーさんと勝負にならないでしょう…ただ…」
ミキサー「ただ?」
その時、寒気をミキサーを。いや、むしろ恐怖に近いものを感じた。その感覚はシンボリルドルフやメジロラモーヌのレースを初めて見た時と同じ感覚だった。
スティル「あの情熱的な目…あぁ…喰らいつきたいッ…!」
ミキサー「あの…スティルさん?大丈夫?」
ミキサーの言葉で我に返ったスティル。
スティル「す、すみません。はしたないことを…先にグラウンドに行ってきます…」
逃げるようにトレーナー室を出ていくスティル。
結局、その日は2人の併走だけで終わってしまった。テイオーが満足するような走りをスティルが出せなかったから、いや、"出さなかったから"である。テイオーの機嫌は今度、一緒に出かけることで納得してくれた。
ミキサー「しかし、あれは何だったんだろうか。」
トレーナー室で残業しながらスティルのことについて考えるミキサー。
彼女には秘めた才能があると考えていたからこそ今日、見せてくれたものが本当の彼女かもしれない。ではなぜそれを出そうとしないのか?まるで出したら暴走してしまうから出さないような気がしてならない。
ミキサー「ここで考えても意味ないな…やっぱり本人に聞くしか…」
そう言いながら帰宅の準備をしていると机の上の資料の中に何か置いてあるのに気づいた。
ミキサー「何だ?」
手に取ってみるとそれは袋に入ったドーナツだった。しかしそれは今日問題になったものとは大きさが違っており、別のものであることが一目で分かった。
そのドーナツの入った袋の後ろにはメモ用紙がついており、そこには『無理をせずに』と書いてあった。
ミキサー「さてはスティルだな。わざわざ用意してくれるなんて。」
自分は変に考えすぎていたのかもしれない、こんなにいい子が走ることで暴走するとは思えない。まあ、少し影が薄いということはあるが自分が先走って考えすぎただけだろう。
そう考えて戸締まりをするミキサー。
ミキサー(そういえばスティルは今日休みにしていたような、それにトレーナー室も鍵で閉めていたような…まあ、閉め忘れていて彼女も間違えてきただけだろう。)
そう考えて彼女に教えていない自分の好きなドーナツを食べながら帰っていった。
だいぶ自己解釈なところがありますがスティルさんはどうしても早く書きたかったので。ちなみにテイオーとは調教師さんが一緒だったので同じチームにしてみました。ゲームでも絡みが見れたら嬉しいな。