透き通った声の君に   作:血濡れの人形

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完走できる気はしませんが、続きの投稿です。あらすじにも記載したのですが、この世界には魔力とか魔法とか人以外の種族が一定数います。


見えない君を見える僕

翌日、僕は学校終わりに昨日の公園に向けて走っていた。少しでも速く彼女の歌が聴きたくて、不思議といつもより速く走れているような気さえする。

公園につけば、彼女の姿はないかとキョロキョロする。すると、別の入口から彼女が入ってくる姿が見えた。しかし、周囲にいる子どもも含め、彼女を気にする人はいない。

少しだけ暗い表情の彼女に、僕は小さく手を振る。気がついてくれるかという不安はありつつも、何故かそうしないといけないと思ったからだ。

そんな僕に気がついたのか、彼女は先程の表情を消して、少し嬉しそうな雰囲気を漂わせながらこちらによってきた。

「本当に来てくれたんですね。ありがとうございます!」

そういう彼女の表情は本当に嬉しそうで、そんな彼女に、僕は思わず尋ねる。

「ふと思ったんだけど、碧生さんはなんでそんなに周りの人から注目されてないの?普通、碧生さんくらい可愛い人いたら、誰かしら気がつくと思うんだけど」

彼女にとって、その質問はあまり聞かれたくない話題だったのだろう。少し顔を曇らせてしまった彼女に、慌てて話題を変えようとする。そんな僕を遮るように、彼女は話し始めた。

「実は、私が持ってる魔力の量が多すぎて、周辺の人には認識できないようになっているらしく、私が歌っているとき以外は、本当にごく一部の人を除いて、私を認識できないんです。それに、歌ってる時は声に魔力が乗ってしまって、私の意思に関係なく、魅了の効果が出ているんだとか」

悲しげな笑みを浮かべそう話す彼女に、申し訳ない気持ちになる。言いたくもないだろうことを聞いてしまった自分に嫌気が差す。

実際、彼女の言うようなケースがないわけではないらしい。もっとも、ある程度成長して、魔力が操作できるようになれば無くせるようなものらしいのだが。

ただ、目の前の彼女を見るに、それらの技能を持っていてもおかしくはないように見える。外見だけで言えば、僕と同年代位だろう。異種族である彼女が見た目通りの年齢であるかどうかがわからないので、迂闊なことは言えないのだが。それはそれとして、新しく疑問が浮かぶ。

「それじゃあ、昨日、歌が終わったあとに聞いていた人たちが見れなかったのはなんでなんでしょうか?」

歌に魔力が乗って、魅了をばらまく、ということは、それだけ多く魔力を消費しているはずなのだ。それであれば、歌っているときに彼女が確認できるようになる理由にも説明がつく。

ただ、そうして消費した魔力が、歌い終われば完全に回復する、なんてことは、普通はありえない。竜人の友人も、魔力を完全に使い切れば、最低でも半日はたたないと回復しきらないと言っていた。魔力の生産量が多いとされている竜人ですらそうなら、他の種族はもっと効率が悪いはずなのだ。

「えっと、詳しくは知らないのですけど、私の種族がもともと歌に消費する魔力が少ないっていうのと、それに加えて、歌を聴いた人から魔力を勝手に奪ってしまうことが原因らしく、消費に比べて回復が多いせいで見えないままなんじゃないか、と言われました」

「魅了、歌に使う魔力が少なくて、魔力を吸収・・・セイレーンだったんですね」

そういう僕に、驚いた表情を浮かべる彼女に、首を傾げる。

「今の情報だけで言い当てられるとは思いませんでした」

「趣味で異種族のことに関しては詳しいんですよね。しかし、周囲から認識されないほどの魔力を持つセイレーンなんて、どの文書にも記載されていないレベルでレアですね。最初見た時は天使かと思っていましたが、なるほど、そういう特性であるなら、確かに注目されない理由にも納得がいくというもの」

ちょっと早口で言い始める僕に、さらに驚いたように動きを止める彼女、やらかしたとは思う。俗に言う、オタク特有の早口みたいになってしまった。顔を赤くし、どこか恥ずかしげな彼女と僕の間に、何とも言い難い沈黙が流れる。

「・・・え、えっと、気が付いたらこんな時間ですし、せっかく覚えてきた歌もあるので、歌っちゃいますね!」

恥ずかしさをごまかすようにそう宣言する彼女に、うなずいて返す。それを見た彼女は、公園の中央付近にある遊具の近くで、少し声出しをしている。俗にいうチューニング、という奴だろうか?そんなことを考えていると、彼女が大きく息を吸い・・・

世界が、塗りつぶされたような気がした。




というわけで、ねのちゃんが認識されていない理由の説明回でした。作中でも話していますが、あとがきにて追加で説明させていただきます。詳しい設定などに興味がない方は、流していただいて構いません。一応、最後のほうに箇条書きで記載させていただきます。もしよければ、そちらだけでもご覧いただければと思います。
まずねのちゃんが周囲から見られない理由ですが、この世界では、魔力が多い存在が視認しにくくなる、という特殊な世界です。というのも、膨大な魔力が漏れ出た結果、周囲の認識をゆがめて、まるで存在しないかのような錯覚を起こす、という形ですね。わかりやすく言えば、魔力が勝手に認識疎外の魔法を発動させている、とでも言いましょうか。もちろん、魔力を制御できるようになり、外部にあふれる量を少なくできるようになれば、それを軽減させることもできます。
次に、本人は自覚していないですが、歌っているときも、周囲の人は彼女を認識できていません。彼女がいるほうを向いている理由は、作中に話していた魅了の力によるものです。通常に比べて魔力を消費しているため、本来よりは視認しやすくなっていますが、それでもうっすら誰かがいるな、という程度のものになります。魅了の力によって、この方向から魅力的な何かを感じる、という感覚から、周囲にいる存在がそちらのほうを向いている、ということですね。そんな中、主人公が視認できている理由ですが、いまだに作中では明かしていない設定ですが、彼の持つ魔眼による効果になります。この世界における魔眼とは、様々な効果を持つのに加え、膨大な魔力による認識阻害を確定で弾くことができるものです。これによって、主人公はねのちゃんのことを視認できているわけですね。
長々と書きましたが、簡潔にまとめますと、
・ねのちゃんからにじみ出た魔力が認識を阻害している
・主人公の目は魔眼で、それをはじくことができる
ということだけ思えていただければ大丈夫です。ここまで書いてなんですが、本編的にはまじめにここ以外あまりかかわりないです。それでは、長々と失礼しました
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