この素晴らしい世界にシナリオ(HO有り)を!   作:石鹸を食え!

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HO2:青きもの(※カズマ視点)

 拝啓、お父さん、お母さん。

 いかがお過ごしでしょうか。

 

 俺は今、異世界にいます。

 さっきは日本人の女の子と知り合うことができましたが、彼女は金が必要だと言ってどこかに消えていってしまいました。

 

 なんというか、第一印象からして、すごく真面目そうな女の子だった。

 きっと彼女は冒険者とかじゃなく、何らかの方法で堅実に稼ぐつもりなのだろう。

 

「……ともあれ、先に酒場に行っておこう」

 

「酒場?お金なんてないのに?」

 

「異世界の定石だ。金も情報も必要だろ?行くぞ!」

 

「引きこもりの癖になんて頼もしいの!わかったわ!けど私の事はアクア様って呼んで!」

 

 やはり失礼な事を言ってくる駄女神を他所に、俺は酒場を目指す。

 その後、女神が道を全く知らなかったり、などと紆余曲折あったが、俺が機転を効かせた事でなんとかギルドまで辿り着くことができた。

 

 そして、今。

 

「……金?」

 

「はい。登録料として千エリス必要です」

 

「……アクアさん。持っておりませんこと?」

 

「あの状況で呼び出されたのよ?あるわけないじゃない!」

 

 俺は、早くも詰みかけていた。

 登録料。……そうだ、確かに、何をするにも金は必要じゃないか。

 

「どうすんだコレ。当面の生活費すら見通しが持てなくなったぞ。ゲームと違いすぎるだろ……」

 

「……早くも頼りなくなったわね。ともあれ、ここから先は女神様の出番って所かしら?」

 

「その必要はありません!」

 

 頭を抱えていると、聞き覚えのある声と共に、冒険者ギルドの扉が勢いよく開け放たれた。

 

 そこに立っていたのは、茶色い川袋を手にした水瀬さん──イザナミ、なるそれは本当にものすごい名前をしており、下の名前で呼ばれるのはすごく嫌がった──だった。

 

「先にギルドに向かったのですが……お金が必要と言われたので、急いで工面して参りました!」

 

「マジか!?さすが水瀬さん!」

 

「私、また何かやっちゃいました?」

 

「すごいわ!もう最高!あなたってばお金の女神!その真っ黒いロングコートもすごく似合ってるわ!」

 

「ふむ。この世界では金を稼ぐのは難しいのか……?」

 

 すごくイキった発言を無表情でしてらっしゃるが、本当に凄いので今はただ、讃えるほかない。

 

 そんなこんなで拍手している俺たちだが、ふと彼女の金の出所が気になった。

 

「……ところで参考までに、どうやって金を貰ったんだ?」

 

「何って……ただ子供からカツアゲしてたチンピラを石で気絶するまで殴り、身包み剥がして全財産没収しただけだが?……このコートとかナイフも、それで手に入れました」

 

「前言撤回!この子、本当にすっごく頭が終わってるわ!

 

 ……申し訳ないが、今回ばかりはこの女神の発言に同意だ。

 よく見れば手に持っていた金貨袋からも血が滴っており、彼女の手もほんのりと、古い校舎で飲む水のような臭いがした。

 

 初日。ノータイムでチンピラを殴りにいく判断は、昔TRPGのオンラインセッションでやった「何にでも《こぶし》振るやつ」という形で既視感を抱かせる。

 

 ……いつかの『身内宅』のキャラみたいだけど、リアルでやられると若干恐怖を覚えるな。

 

「……ふぅ。これで『HO:なろう主人公』は完遂です。五千エリスをゲットしました!お疲れ様です!」

 

 そう言うなり、魔法を解いていい笑顔になる水瀬さん。

 彼女の横から、魔力でできたと思わしき、文字が書かれた一枚の紙切れが出てくる。

 

『HO:テンプレ主人公

あなたは異世界転生した主人公である。

あなたは弱者に手を差し伸べる優しさと、悪者に容赦しない残虐性、その二つを併せ持っている。

 

あなたの目的は、『弱者を救う事』、そして『チンピラをボコボコにする』事である。

また、『イキった発言』を3回行う必要がある』

 

 ……なるほど。それが理由でボコボコにされたのか、チンピラの人。

 

「……まあ、子供を助けた事は評価する。主人公ポイントすごく高いと思うぞ、うん」

 

「そうですか?……私、考えるより先にが動くタイプなので!」

 

「そっか。頼むから、殺人だけはしないようにしてくれよな」

 

「しませんよ!……そうなったのは、あの時の私が『主人公』だったからに過ぎません」

 

 死ぬほど落ち込んでるだろうな、けど俺も不良嫌いだしな、なんて色々と考えてはみたが、口から出てきた言葉は単純なものだった。

 

 けどこの子、主人公にしては若干血生臭い気がする。

 

 とはいえ、納得はできた。現代日本からやってきた割にすぐチンピラをボコボコにできたのは、『自分に役柄を与えるスキル』のお陰だったのか。

 

 確かに、『勧善懲悪』のためといえどビビらず動けるのは、平和な世界で生きてきた現代日本人としてはレアな部類のスキルか。

 

 黒いロングコートを纏い、腰からはナイフを提げ、足には紐をきつく締めた黒いブーツ。

 そして、その両手は真っ白い包帯で固められている。

 

 ハッキリ言って、俺の中の中学2年生がぴょんぴょんする服装だった。

 

「……その怪我人みたいな包帯だけでも外したら?」

 

「おい!なんて事言い出しやがるこの駄女神!……いいんだよアレは!カッコいいから!」

 

「あはは……実は生まれついてのハードパンチャーで、こうしてないと拳を怪我しちゃうんです」

 

「……え?」

 

 なんか、随分とイメージに似合わない単語が聞こえた。

 気のせいだよな、とか考えて首を傾げていると、そんなに巨乳でもない方の職員さんの方に並んでた彼女の方が先に呼ばれ……

 

 『例の水晶』に、その手をかざす。

 

「なるほど。平均よりちょっと高い知力を除けば、概ね冒険者としては平均くらいのステータスです。……ですが、突出して『筋力』が高いですね!魔力があまり高くないので、戦士系の職業に向いているかもしれません!」

 

「そうなんですね。【盗賊】でお願いします」

 

「えっ!?……あ、あなたがそれでいいならいいと思いますが……」

 

 受付嬢のおすすめをガン無視してステータスに合わない職業を選択した彼女は、すごくいい笑顔でスキルカードを持って帰ってきた。

 ……いや、よく考えたら彼女は俺より一回り体が大きいし、初期ステータスでチンピラをボコボコにしていた。

 筋力が高くても、不自然とまでは行かないだろう。

 

 ……それにしても、ハードパンチャーか。

 現世においては割と神様から与えられた、と呼べる程度にはチートスキルの類なのかもしれないが、しかしここは異世界である。

 

 まだ、俺の方が強い可能性も残されているわけだ。

 ……肉体はともかく、魔力とか。あと知力とかで。

 

 というか、そうであってほしい。女の子(ヒロイン)の手前、カッコつけられるステータスじゃないと困るからな。

 

「さて。……お二人はどうなりますかね?」

 

「おいおい、水瀬さんってばテンプレをご存知ないのですか?こういうのは女主人公なら『回復に秀でた属性』なんかを持ってて、男主人公なら『圧倒的な魔力』なんかがあるのが王道なんだよ!」

 

「あはは……私は見事に物理型だったので、カズマさんは魔力型だと嬉しいです」

 

 頬を掻き、彼女はスキルカードの『筋力』の欄を指差してくる。

 ……比較対象がいないからわからないが、この数値を超えるステータスは全て『すごい数値』と考えていいのだろう。

 

「ふっふっふっ……!」

 

「……どーしたのカズマさん。頭でもおかしくなっちゃった?」

 

「ちゃうわい!この駄女神!そうなってたらお前のせいだからな!」

 

「はぁ!?ちゃんと()()()()()()って説明責任は果たしたじゃない!」

 

「私聞いてないですよ!?」

 

 失礼な女神と口喧嘩をしているうち、説明責任を果たさなかったアクアが胸ぐらを掴まれたりして、なんやかんやで俺の番がやってきた。

 俺は少し背が低いが、自分で言うのもなんだが頭がいい方だ。

 

 とはいえ運動神経は悪くないので、きっと魔法戦士あたりにもなれるはずだろう。

 

「それじゃあ……運命の!ステータス……オープン!」

 

「全能力普通で、基本職業の【冒険者】にしかなれませんね。知力と幸運は少し高いですが、それも冒険者としてはあんまり意味がないような……」

 

「ちくしょおおおお!」

 

「まぁ、ご安心ください。……ステータスは低いですが、いろんな職業のスキルをバランスよく取れますから……ステータスは低いですが」

 

「2回も言われた!?」

 

 あまりの酷い言われように膝を落とす俺を見かねたのか、水瀬さんはそっと俺に手を差し伸べてくれた。

 

 ……なんて、優しい子なのだろうか。

 

 たとえこの手がチンピラを再起不能になるまでボコった鉄の拳だとしても、君は天使のように優しい人だ。

 それも、人の死因とかいう不謹慎ネタで笑う女神様なんかより、数億倍は優しい天使だ。

 

「世の中の半分はリアルINT、よってステータスが全てじゃないです!!……それに、クトゥルフのルールを知ってるならわかるかもしれませんが……全部の技能を職業技能Pで取れるのは普通にチートです!!

 

「え……あ、ああ。そうか?……そうだな。いや、そうかもな!ありがとうイザナ──水瀬さん!」

 

「やっぱり、下の名前でもいいです。……ふふっ。カズマさんは、話してて楽しい人……ですから」

 

 思わず口が滑りかけてしまったが、意外にも彼女は下の名前呼びを許してくれた。

 照れたように、ほのかに頬の赤くなった笑顔は、少し背の高い彼女の覗き込むような姿勢とも合わさり、そういう経験のない俺を石の塊に変えるには十分な破壊力を持っていた。

 

 ……やべぇ。俺、既にこの子の事好きかもしれない。

 

「ああ、そっか?ま〜、まぁ、アンタも俺の死因を笑わなかったからな。()()()()だよ、()()()()

 

「あはは……人死に(ロスト)が笑えるのって、本当にゲームの世界だけですからね!」

 

「ああ、違いな──「ものすごいステータスです!」──ッ!?」

 

 ゲームの話題に安心して笑っていると、背後から既視感のあるセリフが聞こえてきた。

 

 まさか。……いや、まさかも何も、そういえばアイツは女神だった。

 

「……お前かよ!お前がチートなのかよ!!」

 

「え?アクアさんはカズマさんが持ち込んだ特典(チート)ですよね?……それが最強(チート)じゃなかったら困りませんか?」

 

「そうだけどさぁ……!釈然としねえ!」

 

 そういうイベントは俺か、最低でもイザナミに起こるものだと思ってたし、そうであって欲しい気持ちはあった……が。

 

 まぁ、現実は「女神(チート)だから強い(チート)」なんていう理不尽(チート)で、なんとも夢のない結末だった。……まぁ、ある意味では夢だらけとも言えるかもしれないけど。

 

 まあ、何はともあれ。

 俺の異世界での冒険者生活は、この瞬間に始まったのだった。




HO2:あなたは水の女神である。
元は天界にいたのだが、ある転生者に巻き込まれて異世界に落とされた。
力の一部を失えど水の女神であるため、水を浄化する力を始め、人が持ちえぬ力をいくつも持っている。

あなたの目的は、『魔王を倒し、天界に帰る』事である。
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