この素晴らしい世界にシナリオ(HO有り)を!   作:石鹸を食え!

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HO3:ハーレム野郎/ぼっちの子

 あの後、カズマさんも女神も、冒険のための資金稼ぎのため日雇いの仕事を探しに行ってしまった。

 

 それはいいのだが、となると私には一つ、やらねばならない事がある。

 

「……『パーティメンバー募集。真面目に仕事をしてくれる方。初心者でも大歓迎!』……っと。こんな感じですか?」

 

「いいと思いますよ。こちらで掲示しておきますね!」

 

 羊皮紙、慣れないアナログにしては、そこそこいい感じに書けたポスターを、受付の人に渡す。

 

 そう、目下の課題は、これだ。……私と組んでくれるパーティメンバーを、急いで探さなくてはならないのだ。

 

 一応、依頼として狙いを定めているものはある。

 『ジャイアントトードの討伐』というもので、報酬こそそれなりだが、一人でやるには少し不安があるものなのだ。

 

「──あれ?もしかして、この依頼を受けようとしてた?」

 

「キョウヤ!?シーフなんて私だけで十分でしょ!?」

 

 と、掲示板の前で立ち止まっていたところ、後ろから一人の青年に声をかけられた。

 キョウヤ。その響きから察するに、またしても日本人だろうか。

 そんな風に色々考えて思わず無言になっていたが、女性二人のこっちを見る目に気づき、慌てて首を振る。

 

「いえ、一人だと流石にキツイかな、と……」

 

「そっか。じゃあ、もしよかったらだけど、僕らと組まないか?」

 

「いいんですか?私は助かりますけど、お二人は……」

 

「「キョウヤ!?」」

 

 やいの、やいの、と騒ぎ出す少女二人に苦笑いしつつ、私は3人の格好を見た。

 

 恐らく戦士。恐らく盗賊。あからさまに勇者。

 

 なんというか、アンバランスなパーティだ。

 ……ワンマン系の、勇者一点豪華型のパーティだったりするのかもしれない。

 

「ほら。私、さっきカードを貰ったばかりなんです。なので、ごめんなさい。

 

「大丈夫さ、()()()()。全部、僕が教えてあげるよ!」

 

「……私は初対面ですが、すでにあなたの事が嫌いです。それでも本当に、本当にパーティを組めますか?」

 

「何故だ!?」

 

 あえて言おう。私は、初対面で人を下の名前で呼んでくるやつが嫌いだ。

 それは、その行為自体が礼儀がなっていない未熟者であるという事が露呈しているからであり、年下なら名前を呼んで辱めるなどと年上に対して不敬な行いをしていることになり、同級生以上ならその年齢でキラキラネームの被害者に配慮ができない幼稚さを露呈させていることになるからだ。

 

この男は、どう見ても年上だ。その癖して下の名前で呼び捨てにしてきた。

 

 その上、スキルカードを見せた時は勝手に名前まで読んだあたりもいただけない。私はスキル欄だけ指差した筈だ。

 

 こういう礼儀知らずは卓にも入れたくない。

 だって、高いステータスでシナリオ壊すようなRPとかしそうだし。

 他所のハウスルールを都合よく持ち込んできそうだし。

 

 あと、キャラシ欄に長々とキャラ設定のSS書いたりしそう。……それは別にいいけど。

 というか、読むことでシナリオと脳内で擦り合わせやすくなるからむしろやって欲しいけど。

 

「さて。では、改めて聞きますが……礼儀を忘れるのは辛うじて理解できるが、貴様は自分の名前すら忘れたのか?

 

態度変わりすぎじゃないか!?……わかったよ。嫌がる子もいるんだな。本当に、すまない」

 

「……はい。許しましょう」

 

 ……謝罪はいただけた。

 とりあえず、何が悪いかもわかっている以上、今回は許すことにしよう。

 まぁ、同郷のよしみもあるし、ここで無駄に意地張ってクエストに行くのが遅れたりしても困る。

 ならば、私も大人しく応じておこう。

 

「では、改めて自己紹介をしましょうか。水瀬(ミナセ) 伊邪那美(イザナミ)、クラスは盗賊です。特別なスキルは『役割付与(ハンドアウト)』です!」

 

「あ、ああ……うん。僕は御剣 響夜(ミツルギ キョウヤ)、クラスはソードマスター。武器はこの『魔剣グラム』、僕にしか使えない最強の剣さ!」

 

 特別なスキル、そして武器。

 互いの転生特典を明かし合い、早くもクエスト前の会話に入る。

 

 どうやらミツルギは超が付くほどの近接型らしい。

 チート剣士。戦士。盗賊(シーフ)。辛うじて(シーフ)

 

 ……これは、かなりバランスの悪いパーティじゃないだろうか。

 というか、シーフとシーフで被っちゃったぞ。

 

「ミツルギさん。TRPGの経験は?」

 

「あるさ。……とは言ってもキャラ中心系のシナリオばかりで、探索や謎解きなんかは君に頼ることになるだろうけど……」

 

「いえ。私の能力への理解は早そうで、むしろ安心しました」

 

 改めて、後ろの二人を確認する。

 ……ぶっちゃけ、殴り合いなら二対一でも勝てそうなくらいの、普通の女の子に見えた。

 

「お二人にも説明しますと、私の能力は役割(ハンドアウト)の付与。触れた相手は『邪神』から『お姫様』まで、ありとあらゆる(ロール)をするため……記憶や能力を与えられます」

 

「それって結構……すごい能力よね」

 

「はーい!私、キョウヤのお姫様になりたい!」

 

「あっ!ズルい!」

 

 あはは、と頬を掻いて困ったような笑顔を浮かべるミツルギさんは、慣れた様子だった。

 ……まぁ、そういう役割(ハンドアウト)だと戦闘時にすごく弱体化するのがTRPGの定番だが、その辺は黙っておく。

 

「……ふむ。すごい能力だけど、君はここに来て日が浅いよね。あまり使い慣れてないんじゃないかな?」

 

「確かに、そうかもしれません」

 

「僕で試してみるかい?」

 

「確かに!いいかもしれません!」

 

「「キョウヤ!?」」

 

 後ろの二人がすごい悲鳴を挙げていたが、ともあれ能力のテストだ。

 私はまず、空中に浮かんだ魔法の紙に、指先でスラスラと書いていく。

 

「『HO1』!『ミツルギ=キョウヤ』は、『私に千エリス貸しており、目標はその回収である』!」

 

「……ッ!さっき君にお金を貸した、ような気がしてきたな。……少し確認してもいいかな?」

 

 何やら思い立ったように、ミツルギはテーブルに金貨を並べる。

 一枚、二枚、と丁寧に数えていき、それが終わるとミツルギは首を傾げた。

 

「ひい、ふう、みぃ……変動なし。つまり、貸してない。やけに鮮明だが、これも偽りの記憶か……」

 

「こっちも、増えてないことが確認できました!死にそうな敵に『金を貸している』という役割を付与して無限に財産を絞る、なんてことは出来なさそうですね……」

 

「酷い事を考えるな、君は!」

 

 物の変動が存在するHOでも、あくまで存在しない記憶を植え付けるのみのようだ。

 

 財布に金貨を戻していると、今度は緑色の髪をした女性がこちらの手をとってくる。

 ……ちなみに、ずっと視界の端でイチャイチャしてるばかりで頼れる所の片鱗の鱗粉すら見えていないので、彼女への好感度は今のところ最低だ。

 順番段階でも緊張感を持って欲しい。TRPGにおける戦闘の5割は準備パートだろっての。

 

「じゃあ、次は私にやって!……設定は、その……キョウヤの彼女で……」

 

「あっ、ずるいよ!」

 

「……『HO2』!『戦士ちゃん』は『男の娘である。あなたの目的はクエスト終了まで、誰にもバレない事である』!」

 

「えっ……!?」

 

 そこまで言ってから彼女の方を確認するが、HOを付与するための紙が戦士らしき少女の体に入って行かない。

 ……なるほど、名前を認識していなければ付与できないのか。

 

「なるほど。付与するので、お名前をお伺いしても?」

 

「クレメアだよ。あと、性別変更は本当にやめてね……『魔法使い』とか、そういうのでお願いできるかな?」

 

「はい、構いませんよ。……『HO2』!『クレメア』は『魔法使いである。天才的魔法使いの生まれで、様々な魔法を覚えていることを自慢したいあなた。あなたの目標は、クエスト中に6つの魔法を使うことである』!」

 

「これで魔法が使えるようになったのね?……じゃあ、試しに……『テレポート』!っ……!」

 

 彼女は魔法を使ってミツルギの背後に瞬間移動するも、その後、力が抜けたようにミツルギの背に倒れ込んでしまう。

 

 何があったのか。

 ……いや、クトゥルフで見た事がある。

 おそらくは、MP切れの症状だ。

 

 どうやらこのテレポートなる魔法、相当な魔力を消費するらしかった。

 

「キョウヤ……私、動けない……」

 

「申し訳ありません。……職業の技能は付与できても、ステータスは増強されない、という事でしょうか。」

 

「いや、君は悪くないさ。……フィオ、クレメアを介抱してくれるかい?」

 

 ミツルギの言葉に、こくり、と頷く盗賊の少女。

 ……マズい、みるみるうちにパーティメンバーが二人だけになってしまったぞ。

 

「さて、どうするかな……」

 

「ねぇ、キョウヤ。それなら、『静謐の(あか)』を頼るのはどう?」

 

 と、頭を抱えていたところで、フィオと呼ばれた女の子が端っこのテーブルを指差す。

 ……なるほど。あの一人でチェスをやってる、黒髪に赤目の女の子か。

 

「……『偉大なる緋(スカーレット・ワン)』の事かい?だが、彼女は孤独を何より好む一匹狼だと聞いているよ。過去に見たけど、スキルだって一人で戦うための……水瀬?話を聞いているのかい?水瀬?」

 

「失礼します。ちょっと、お時間頂けますか?

 

「水瀬ェ!?」

 

 彼女が座っている側と反対、『白』の駒を手に取ると、そのままナイトでビショップを取ってみる。

 すると、その少女の顔が上がり、はっ、としたような顔で私の方を見てきた。

 

「えっ!?……え、あぁ……私に話しかけてるんですか!?」

 

「はい。冒険者の水瀬(みなせ) 伊邪那美(いざなみ)と申します。……あなたのお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

「あっ、はい!水瀬さん!私は、私は……」

 

 ぱあっ、と明るい表情になった後、突然少女の方が下を向く。

 そこでふと気づいた私は、手を出して少女を静止する。

 

「なら、お名前は大丈夫です。二つ名の『偉大なる緋(スカーレット・ワン)』で呼ばせてください」

 

「……っ!いえ!名乗ります!……な、名乗るので!笑わないで聞いてください!」

 

 笑わない。笑うくらいなら再び死んでやる。

 固い決意と共に少女の目を見ると、私は小さく頷いた。

 

──来い。

 

 どんな名前でも、歯を食いしばって、歯茎を食い千切ってでも耐えてやる。

 

「……あの、怖いです。その、鬼のような形相だけはやめてもらえませんか?」

 

「フーッ、フーッ!……おがまいなぐぅ!」

 

「わ、笑わないで聞くためにそこまで……?こほん……」

 

 私の全力で歯を食いしばり、力強く目を見開いた顔を前に若干萎縮していたが、彼女はどこかで見たことがあるようなポーズと共に、名乗り始めた。

 

「……我が名はゆんゆん。アークウィザードにして上級魔法を操る者。やがて紅魔族の長となる者……!……面白いの期待してたかもだけど、あんまり面白くなくてごめんなさい!」

 

「フーッ……!……PL名としては普通な類ですね。安心しちゃいました……えへへ」

 

「よ、よかったぁ……!パーティの話ですが、是非に!」

 

 互いに胸を撫で下ろし、安心したように笑顔を向け合いながら、ひとまず息を吐く。

 

 ナルシスト気味の最強剣士、自分の名前を恥ずかしがる魔術師。

 そして、最後に変わった能力を使う、私。

 

 今回のクエストのメンバーは、なんともTRPGらしい、大変に濃いメンツで固まったのだった。




HO3:あなたはハーレム野郎である。
くっそムカつくが、あなたは大変にモテるのである。

あなたの目標は、セッション中に『さすが』と3回言わせることである。

秘匿HO:あなたはぼっちである。
しかし、一人は寂しいものだ。

あなたの目標は、セッション中に友達を作ることである。
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