【習作】ビルドダイバーズ系の戦闘物を書いてみた。   作:アルカミレス

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【習作】ビルドダイバーズ系の戦闘物を書いてみた。

 シートに深く座り、溜息を吐く。両手がそれぞれ握る操作スティックには熱がなく、硬い感触を伝えてくる。

 手汗で滑る等と愚痴を零した翌日には本皮製の半指グローブを自作して持ってきた変態の顔を思い出し、苦いものが口の奥に広がる。なんの為にそんな技術をと思えば、ガンプラの関節部をレザー製の素材で覆った作品を見せられ頭痛を覚えた事を昨日のことの様に思い出せる。

 変態と言えば今自分が使うガンプラもそうだ。以前一度見られた自分のガンプラ、その日から1ヶ月後それと同じ塗装を施された現在未発売のMGサイズをスクラッチして渡してきた。ナチュラルに人の心を折りにくる畜生であるが、当人としては至って善意。本当に人心を理解しない畜生である。

 しかし、ビルダーの腕はこれまたムカつく事に確かだ。

 

『君はファイターの才能に優れて居る。何故伸び代を伸ばさないでビルダーにしがみついて居るんだい?』

 

 顔面に拳を入れた自分は悪く無いと思う、コレにムカつかないのは聖人君子のそれだろう。もっとも、あの変態畜生にとっては名人とかプロモデラーとか呼ばれる人達も総じて【凡人】なのだろう。事ビルダーとしての腕を見るなら本物の天才なのだ、あの変態畜生は。

 

『試合開始まで残り30秒』

 

 物思いに耽って居る間に随分と時間が経っていた様だ。3分は有った待機時間が残り僅かになっている。

 設置されたガンプラをスキャンして取得されたステータスが画面に映る。さっと目を通して異常の無いことを確認。もっとも、武器は手持ちの一つだけでバーニアも最低限なこの機体にそんな大層なステータスは存在しない筈なのだが。

 

『試合開始まで残り10秒』

 

 操作スティックを今一度握り直す、掌にはじっとりと汗の感触が有る。

 

『5』

──大きく息を吸う。

 

『4』

──止める。

 

『3』

──歯を噛みしめる。

 

『2』

──目を閉じる。

 

『1』

──耳を済ませる。

 

『Open Combat!』

 

 目を開くと同時、瞬時にモニター内のマップを確認しスティックを前に倒す。機体は一気に駆け出し、進路を修正しつつ最寄りの敵目掛け加速する。スラスターを全開にし、機体を覆う布地──ABCマントがはためく中で間合いを測る。慣れていないのであろう、敵は奇襲じみた此方の攻撃に反応出来て居ない。マップに映っている筈の此方の認識すら覚束ないで、回避行動も迎撃行動にも移れていないのが読み取れた。

 スティックのトリガーを引く、それに合わせて機体がその手に持っていた武器を大きく振りかぶった。

 機体全長を越える物理大剣、銘を【ヴァルキュリアバスターソード】。眼前の敵機、恐らくはガンダムキマリスベースのカスタム品に全力で振り抜く。硬質な衝突音、遅れて破壊音。一刀の下両断された敵機からファイターの悲鳴が聞こえ、マーカーが赤から灰になるのを確認する。

 先ずは一機、バトルロイヤルルールによりまだまだ敵機は居るが幸先の良いスタートと言えるだろう。密集地帯、ステージが密林で有るのも機体としては追い風だ。

 一息吐こうとした瞬間に機体が軽い衝撃に襲われる。どうやらビームによる狙撃を受けたらしい。ABCマントが20%程耐久値を削られている、もっともあの変態作で無ければ今のでABCマントは使用不可になってた可能性が高いが。

 ビームが飛んできた方向にカメラを向ければ迷彩塗装を施されたスローネアイン、右手にはスナイパーライフルを持っている。

 即座にスティックを傾け旋回しつつブーストを掛ける、スラスターは遅れる事なく火を吹き比我の距離を詰める。敵はそのまま2発、3発と此方に射撃を続けるがABCマントを削る事しか出来て居ない。そも、このABCマントはあの変態が『此方の方が格好いいだろう!?』と無理矢理着けてきた物で有り、この機体にはそもそも必要性が皆無だ。……大剣とボロボロなマントの組み合わせに格好良さを見出してしまった事には悔しいが同意してしまうが。

 背部スラスターと脚部バーニアのみによる加速とは思えない程の速度を出し間合いを詰め、トリガー。大剣が真一文字に振るわれる。しかし、相手はGNドライブ搭載型の機動力で直前で空に上がって行った。最も、此方の振りが相手の想定以上の剣速だったのだろう、両足を膝下から両断してやったが。

 相手は上空で武器を換装、背部にマウントしていたのであろうバズーカを構え此方に放つ。ABCマントを引っ掴み、眼前で振る。ビームバズーカである可能性を考慮した行動だがどうやら賭けには勝ったらしい。ABCマントは耐久値を失ったが、機体は無傷だ。

 

『な、ヘルムヴィーゲ・リンカー!?』

 

 相手が此方の機体を確認し、思わず零した様だ。型式番号:V08Re-0526ヘルムヴィーゲ・リンカー、機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズに登場する見た目は格好いいのだがいまいち活躍の無い機体である。自機は外装を銀で塗装し、縁に金をあしらった隠密性皆無の代物だ。

 上空で固まる相手に向け、武器を振りかぶる。生憎とこの機体には空を自由に動ける様なスラスターは着いていない。……そんなことを零せばあの変態は嬉々として背中にトールギスのスーパーバーニアと腰部にGP-03のテールバインダーを増やして来るだろう、アイツのお気に入りだし性能も良いから。

 益体もなく逸れる思考をそのままに、スティックの特殊兵装ボタンを押し込む。次の瞬間には槍投げの要領で全力で【ヴァルキュリアバスターソード】を投擲し、スローネアインの胸にその大質量を突き刺す。

 

『へ?』

 

 何が起こったのか理解出来ないまま、スローネアインが爆散する。コレで2機、全30人の参加者が居るが中々のペースだと思われる。

 

「うわぁ……」

 

 そのまま爆風で煽られ回転しながら地に落ちてくるバスターソードを追い掛けて、落下した先でたまたまその近くを通過しようとしていたジムスナイパーカスタムを脳天から串刺しにしている光景を見て思わず声が漏れた。不運過ぎる。

 相対することも無く、流れで脱落したジムスナイパーカスタムの残骸に突き刺さったままのバスターソードへ向けスラスターで加速して向かい、すり抜け際に柄を握ってその場から離脱をはかる。スローネアインの爆発を見た敵が此方へ向かって来ている可能性を考慮し、奇襲に対する警戒を忘れない。射撃が苦手と言う一言のせいでライフルは勿論の事牽制用のバルカンすら積まれていないのだ、元の機体からして大剣一本しか持たされていないのもどうかと思うが。

 

「……少し減ってるな」

 

 事故も有ったが己が撃破した3機以外にも早々に撃破された者達が出たらしい、マップを映すモニターの残りの参加者を示す数字には22/30と表示されていた。

 密林マップ、更にランダムで配置されるとは言え己を含めて4人の参加者が固まっていた。有利な場所で穴熊を決めている者も居るだろうが、積極的に近くの参加者へ攻撃を仕掛ける自分の様な者も少なくは無いはずだ。

 周辺マップには敵を示すマーカーも出ていないが、コレは機体のセンサー感度に依存するからあまり信用出来ない。先のスローネアインの様に索敵範囲外からの狙撃には対応出来ず、完成度の高い00系列のGNドライブ搭載機にはGN粒子によるジャミングが有り、W系列のガンダニュウムは電磁波を吸収する性質を持つ上にハイパージャマーと言うMSのカメラすら欺瞞する機能を持つ機体も有る。ステージによってはミノフスキー粒子やニュートロンジャマーの影響でセンサー関連が使い物にならない設定の物まで有る。

 更に言えばバトルロイヤルは遭遇戦の側面が強いルール故に、意図して接敵する事が難しいステージでは試合開始から15分掛けても一桁台の脱落者数なんてこともよくある。最初に遭遇したガンダムキマリスのファイターと同じレベルのファイターが多ければ、5分前後で10人弱の脱落者なら相当に速いペースかだろう。

 

「うぉ!?」

 

 少し思考に耽って居たら側面から衝撃を受けて機体が揺れた、スラスターのブーストによる影響で浮き気味だった機体がバランスを崩して地面に転がる。咄嗟にスラスターの噴射を止め、木々を巻き込みながら転がりつつ衝撃を受けた方面にカメラを向ける。

 

「くっそ、カメラやセンサーが誤魔化される迷彩とかやめてくれよ」

 

 思わず悪態が溢れる、ミリタリー迷彩を施されたザクベースのカスタム機が硝煙を構えたバズーカの砲口から燻らせている姿が見えた。機体のダメージはそこまで大きくは無いが、直撃を受けた左肩部のナノラミネートアーマーがやや剥がれている。物理的な衝撃に対しても一定の防御性能を発揮するが、受け続けると剥がれてしまう原作の設定が適用され光線に対する防御力を失ってしまうのだ。今の直撃程度ならまだ問題無いが、同じ様な衝撃をあと5・6発受けたら流石に不味い。

 機体を相手から遠ざける様に転がし、バスターソードを盾にする様に体勢を取らせる。次弾を撃ってきたのだろう、直前まで機体が寝ていた箇所に着弾したらしく地面を抉った際の土砂が機体に被る。バスターソードを盾に、そして杖にしつつ機体を立ち上がらせスラスターを吹かせた。変態畜生が近接戦闘に活かせる機能として組込んでいたクイックブーストと称される機能が稼働し爆発的な加速力を生み出す。キマリスやスローネアインと相対した時を遥かに越える速度でザクとの距離を縮めていく。

 相手はバズーカでの射撃から命中精度を捨て、添えていた左手に腰部に取り付けていたマシンガンを持ち牽制射撃を仕掛けてくる。盾にしたままのバスターソードに連続した衝撃が走るが、ブーストの推力に物を言わせて小揺るぎもせずに突っ込んで行く。

 止められないと見るや、ザクのファイターはバズーカとマシンガンを機体の前に構え盾の代わりにし、己の機体はそこにバスターソードの盾ごと体当たりした。大質量の高速突撃による衝撃はザクのバズーカとマシンガンを見事にへし折るが、ザク自体にはそれらがクッションとなり大きなダメージは与えられず更には機体操作で衝撃を流されてしまう。

 機体に急制動を掛けつつアポジモーターで機体を旋回させてザクをモニター正面に捉える、ザクは左手に後ろ腰から抜いたヒートナイフと背部ウェポンラックからスナイパーライフルを右手に持ち構えた。型から察するにスナイパーライフルはガンダムデュナメスのGNスナイパーライフルだろう、ビームライフルならば此方のナノラミネートアーマーが優位だ。しかし、油断は出来ない。ブーストタックルが流される様な操縦技術持ち相手に、多少の優位性は無い物と考えた方が良い。GNスナイパーライフルを搭載しているのならば、此方から見えていない背面にはGNドライブのコーンが存在している可能性がある。そうなれば基本的な機動性は相手の方が上だろう、下手をすればデュナメスをベースにガワをザクのそれにするような改造をしている可能性も有る。ナノラミネートアーマー相手にビームサーベルの有用性が読めない故にヒートナイフを抜いているだけで、ビームサーベル等の近接武器を持ってないとは限らないのだ。

 互いに身を沈ませ、飛び掛かろうとしたその時にアラートが響く。咄嗟に背後にショートジャンプ、ザクも同じ挙動を取った所に2機が立っていた間に特大の爆発が発生した。思わずバスターソードを盾にし、衝撃が収まるまで構える。衝撃が収まり、構えを解けば此方とザクの間の空間にクレーターが出来上がっていた。何事かと思いセンサーが感知した方向を向けばフルアーマーZZが確認出来た。ハイパー・メガ・カノンの代わりに載せられた特大のバズーカランチャーが冷却の為に排熱を行っている、と次の瞬間にはバックパックからマイクロミサイルを放ちつつハイパービームサーベルを抜いて突撃してきた。

 機体をフルアーマーZZへ向け迎撃体勢を取ると、ザクも先に排除対象と定めたのであろうビームがフルアーマーZZに突き刺さった。アーマーに施された対ビームコーティングにより減衰はしているが、続けて放たれたビームがバズーカランチャーに当り破壊する。咄嗟にランチャーを投げ捨て誘爆を避けたフルアーマーZZに向け、冷却が終わっていたスラスターで再度クイックブーストを起動した。

 マイクロミサイルの間を縫いバスターソードの鋒を相手に向ける突きの姿勢による突撃、迎撃しようとするフルアーマーZZがハイパービームサーベルを機体を回転させつつ振りかぶるが、ザクによる狙撃は保持していた左腕の肘を撃ち抜きそ半ばから吹き飛ばした。それに対して腹部のメガ粒子砲を咄嗟に使用しようとした判断の速さは驚愕に値するが、悠長にその砲撃を許すほど此方は遅く無かった。増加装甲ごと相手のジェネレーターを貫き、爆発する前に自機をバーニアで回転させつつ刀身から振り払う。やや離れた所に落ちたフルアーマーZZは、程なくして爆発した。スラスターによる推力が限界に達してミサイルの着弾跡が目立つ地上に降りた時には、既にザクはその姿を消していた。やはり持っていたのがGNスナイパーライフルであった事から不利な戦況を継続するよりも、此方の消耗を待った方が良いと判断したのであろう。フルアーマーZZの肘を正確に撃ち抜いた技量と言い、かなりの手練れだと思わせるザクのファイターに背筋を寒くしつつその場から離れる。

 マップを映すモニターを確認すれば、参加者を示す数字は12/30となっていた。ザク、そしてフルアーマーZZを相手にしている僅かな時間で9人脱落していたと言うなら、残っているのは手練ればかりだろうか。そんな事を考えて居る間にセンサーに感知、カメラを向ければフェイズシフトダウンを引き起こしているらしいストライクフリーダムとインフィニットジャスティスが相対している姿を見た。核動力によるエネルギー実質無限の設定を持つこの2機がフェイズシフトダウンしている事に一瞬疑問を持つが、悲しいかなガンプラの出来で性能に直結するこのガンプラバトルシミュレーターはこういう事がよく起こる。センサーの性能も大分低いらしく此方には気付いて無い様子なので、機体をそちらに向け加速。そして残ったビームサーベルで切合を始めようとした2機を纏めて撫で斬りにする。

 

『は?』

『へ?』

 

 2機から間抜けな声が聞こえて来るが、そのままそこから離れる。少しして爆発音が背後から聞こえて来た。悪いがバトルロイヤルでは油断は禁物だ、目前の敵に集中し過ぎて横から漁夫の利的に纏めて片付けられても文句は言えない、その為のセンサーとアラートなのだから。まぁ、ザクのファイターに奇襲を許した自分も人の事は言えないのだが。と、咄嗟にバスターソードを降るう為にトリガーを引いた。センサーは何も感知していなかった、しかしマイクが木々をなぎ倒す音を拾っていた。何かがバスターソードとかち合い、衝撃を自ら後ろに跳ぶことによって逃がした様だ。カメラの先に片膝を着く姿で居たのは黒と深紫のアストレイフレーム、斬り掛かって来たのは右手に構える黒い刀身のガーベラストレートだろうか。ゆらりと立ち上がり、刀を鞘に納める。

 抜打ち、抜刀術による高速斬撃。正直バスターソードとの相性は頗る悪い、相手の方が速い上に実体剣は鉄血作品では明確に相手にダメージを与えられる装備だからだ。幸い、アストレイフレームにはバーニアの増設等は見受けられ無い故に変態畜生製のこのヘルムヴィーゲが推力で負ける事は無いとは思う。が、単純な小回りや近接戦闘のモーションで上回れたら首を落とされる可能性が高い。

 

『──奇襲による不躾を失礼した、某はクロフネ。一手所望す』

「……本当に不躾だな。ヘルムヴィーゲ・ベルセリオス、受けて立つ」

 

 先程、自身がストライクフリーダムとインフィニットジャスティス相手に不意打ちをかました事は棚上げにしつつ。

 時代掛った名乗りを上げる相手に釣られて名乗りを返し、そして退路を断つ様にその決闘を受けて立った。奇襲を仕掛ける輩では有るし、なんならクロフネ自身が不利になったら逃げられる可能性も有る。が、それでも自分から逃げるのは何か気に食わなかった。

 スラスターを点火し、距離を詰め──クイックブーストを起動してクロフネの真横をすり抜ける。クロフネが戸惑いその場で思わず立ち止まった瞬間、その身体を鉄杭が貫いた。

 

『ぬわぁぁぁぁ!?』

 

 クロフネから悲鳴が上る、そこに連続してビームが叩き込まれクロフネが爆散した。ビームが飛んできた方向を見れば、ダブルエックスらしきシルエットが見えた。ツインサテライトキャノンの代わりに鉄血のガンダムフラウロスからダインスレイブを2基搭載しリフレクターの代わりに予備弾倉を着け、ガンダムXディバイダーからビームマシンガンとディバイダーを持って来たその姿。ダインスレイブが此方に対して有利な武装である所に思わず舌打ちする。

 

『悪いな、余りにも隙だらけで横槍入れちまった』

 

 悪いとも思って無さそうな声だった。何だろう、一緒のチームを組んで試合に出たら背中から撃ってきて『騙して悪いが仕事なんでな』とか言い出しそうな気がする。自分以外が全て敵なバトルロイヤルルールではむしろ必要なメンタルかも知れないが。

 実弾射撃武器の中でも最速の弾速を誇る電磁加速砲に分類され、特殊な弾頭により最上級の攻撃力を有するダインスレイブ。クロフネがアストレイと言う比較的装甲が柔らかい機体をベースとして居る故に直撃でも即死は無かったが、装甲が硬くなればそれだけこの武装は衝撃を発生させ二次被害を増す。鉄血のMSには殊更特効で、ビームに対して圧倒的な防御を誇るナノラミネートアーマーとレアアロイ製の頑強なフレームは内蔵機器に致命的な衝撃を伝えやすい。関節が千切られる場合はむしろ運が良く、主機やモーターに異常が発生して動きが止まれば針鼠にされるのは想像に容易いだろう。

 

『大人しくリタイアしてくれねぇかな、無駄弾撃ちたくねぇんだ』

 

 その言葉を聞くか否かの刹那、地面にバスターソードを突き立てスラスターを点火し跳躍。剣の柄頭で片手倒立の体勢を取らせた直後、剣の側面を火花を散らして何かが削って行った。遅れて向かい合っているダブルエックスの方から発砲音、先程の火花の正体は音速の何倍もの速度で放たれたレアアロイ製の鉄杭……ダインスレイヴである。会話で集中を僅かに乱しそこに撃ち込んでくる、中々に卑怯な戦法だった。

 

「リタイアを許すつもりも無いじゃねぇかこの野郎!」

『避けといてほざくなや!』

 

 クイックブーストを起動、静止状態から一気に最高速度へ。空中にて左肩を前にする形で、ダブルエックスに対して半身を取らせる。被弾面を極力減らし僅かでも直撃する可能性を下げた。ダインスレイヴが肩に懸架固定される形の武装である為、細かな狙いを付け難いであろうと言う咄嗟の分析は当たっていたらしく、ダブルエックスは身体を大きく動かす事が出来ず握っていたビームマシンガンを手首を返す形で掃射してきた。ナノラミネートアーマーのビーム耐性、そして満足に腕を動かせない故の狙いの甘さも手伝い一足飛びに間合いを詰める。ディバイダーのハモニカ砲は現在の姿勢からは殆ど役に立たないと予想も当り、口径の小さなマシンキャノンも此方の体勢を崩す威力は無い。間合いに入りトリガーを引く……直前に衝撃と共に機体がバランスを崩した。咄嗟に目を向けた機体の状態からは左肩のアーマーの信号が消えていた、半ば直感に従いバスターソードを盾にする。直後に更なる衝撃が走り、カメラには盾にした剣を貫く杭の先端が見えた。ギリギリ剣の芯を外してはいたが、貫かれた箇所から罅が走っている。あの変態作の超硬度レアアロイ製と認識される刀身がまさかの破損状態になっている、続いてもう一回の衝撃と共に一本杭が増えた。リロードの速度がかなり早い、特に直近の弾は直前までのペースからは考えられない速射である。見ればダインスレイヴの砲身が赤熱し外装が溶け出している、排熱を無視した使用がダインスレイヴを自壊に近付けた様だ。

 

『死ねよや!』

 

 残ったダインスレイヴの砲身を此方に突き付けてくる、その射線は此方のコクピットだ。咄嗟にその砲口に側面から頭突き。接触の衝撃、直後に発砲音。試合中最大の衝撃が機体を襲い、カメラがホワイトノイズで染まる。機体の状態に目を走らせれば頭部にエラーが集中している。カメラは復旧していないが、全身のスラスターを全力可動させ機体を旋回。カメラもセンサーも頼れはしないが、直前まで敵と接触していたのだから届くはずだ。トリガーを引く余裕は無く、バスターソードを推力で得た勢いで技もなく振り切る。衝撃と共に何かが割れる音が響く、僅かに回復したモニターからダブルエックスの左腕と右ダインスレイヴの砲身そして剣の鋒から三分の一程の刀身が中を舞っているのが見えた。ダインスレイヴに貫かれた刀身の罅がそのまま広がり、刀身を割った様だ。その為ダブルエックスを両断する事が叶わず、左腕と胸部装甲の一部にダインスレイヴの砲身の先端を斬るに留まったらしい。

 

「運が良かったな、だが!」

 

 そのまま残った刀身を振り下ろす、体勢を崩していたダブルエックスは避ける事が叶わず頭頂部からコックピット部まで割れたバスターソードが裂いた。どうっと倒れるダブルエックスのコックピットを念の為追撃し、その場から離れる。

 

「今回は勝たせて貰う、じゃあな」

 

 届いているかは分からないが、そうマイクに向けて言葉を放つ。カメラとセンサーは4割程の性能で復旧しているが、頭部のダメージから考えてこれ以上は回復しないだろう。ダインスレイヴに頭突きを決めその直後の発砲を受けた結果、右眉上部の辺りから左頬に向けて裂傷が入っている。右カメラアイが完全に破壊され、ヘルムヴィーゲの特徴であるブレードアンテナも右部が折れた。鉄杭から伝わった衝撃の影響で頭部の機器に影響が出たのだろう、遠近感も取り難く動作にも多少のラグが出ている。唯一の武装であるヴァルキュリアバスターソードは刀身の三分の一を失い、左肩の装甲も失った。ビームマシンガンの掃射を受けて吶喊した故に左半身のナノラミネートアーマーも何割か剥がれて居る。コンディションは悪いが、まだ試合は終わってない。

 マップに目を走らせると索敵範囲が5割程に落ちている、やはりセンサーがダメージを受けた影響が大きい。参戦者の箇所には07/30の文字、残りはだいたい5分の1にまで減っている。現状であのザクスナイパーに狙われれば瞬殺されかねない、余程の不運が無ければあのザクスナイパーが撃墜されているとは思えない……変態製のセンサーを欺瞞する様な迷彩が簡単に破られるとは考えられないのだ。ヘルムヴィーゲ・ベルセリオスの製作者であるあの変態は、悔しい事にビルダーの腕だけなら本当に常識外れだ。自作のガンプラで今試合に参加していたらスローネアインと相対した時点で負けていた可能性が高い。ABCマントとナノラミネートアーマーがこれ程高い効果を発揮していたか怪しいからだ。盾としても活用しているヴァルキュリアバスターソードもビームや実弾によく耐えてくれている、ダインスレイヴを受けるまで刀身に致命的な損傷を生じさせ無かったのはひとえにあの変態の腕が良かったからだ。本当、口と性格が終わってなければ良いビルダーなのだが。

 そんな風に考えて集中を切らしていた報いだろう、次の瞬間凄まじい衝撃と共に遅れて来たアラートが自分を襲ったのは。風に翻弄される木の葉が如く揺らぐ機体、スピーカーからも大音量の爆発音が響いてくる。吹き飛ぶ機体のバランスもマトモに取れず、ヘルムヴィーゲは地面を滑り地表を抉る。余りの振動に吐気を覚えるもその感覚を飲みこみ、揺れる視界を押さえ付けカメラを衝撃を受けた方向に向ける。

 グレーを基調とした現実の軍用機を思わせる塗装を施された鈍重さを感じさせる様な重装甲。背面に伸びる2本のスラスターユニット。総重量を支える為に肥大化した下半身。煙をくゆらせる筒を保持する六本の腕。ゼク・ツヴァイ、ガンダムセンチネルに登場する大型MS。媒体に拠ってはラスボスも務めて居る機体だ。

 ゼク・ツヴァイはアームで保持していた筒、恐らくシュツルム・ファウストの発射筒を捨てメインアームに新たな武器を持たせる。複数の刃を繋げ動力で回して樹木の伐採を目的とした工具の転用武装、所謂チェーンソーである。悲しいかな、押し付ければナノラミネートアーマーを削れる鉄血MSに対して有効な武装である。シュツルム・ファウスト六本の一斉射撃を受けたダメージはまだ抜け切れていないが、動かなければトドメを刺されるだけ。機体を起こしゼク・ツヴァイに向ける。

 折れたバスターソードの刃を向ければ4本のサブアームが背後に伸びブルパップマシンガンを4丁保持して此方へ向けてくる。背面にウェポンラックを積んでいる辺り、もしかしたらサイコザクのバックパックを転用しているかも知れない。しかし、正面からではマトモに確認は出来ないし残り一桁に至った試合の現状から武装の大半を使い切っている可能性だって有る。実弾兵器の縛りとして特に大きい弾薬の問題は機体重量との兼ね合いも有り解決が難しいのだ、大型で重量が増えればそれだけ被弾し易くなり炸薬が誘爆する可能性も増える。

 ゼク・ツヴァイのチェーンソーが回転を始め、金属同士が擦れ合う甲高い音が届く。宇宙世紀の核融合炉で稼働するチェーンソーなど現実では考えたくない代物である、そしてサブアームのブルパップマシンガンが此方へ向け一斉に火を吹いた。ブーストを稼働させ真っ直ぐ突っ込む、確かにチェーンソーは恐ろしいが、サブアームの狙いは大分甘く横に移動するよりも正面突破の方が被弾が少なくて済む。更に言えば、ゼク・ツヴァイはその装甲の肥大化に伴い関節部の可動域がどうしても狭まる。故に、懐まで飛び込み先に剣を打ち込んだ方が勝率は高い筈。問題は、その重装甲を万全とは程遠いこの剣を用いて一撃で持って貫けるかだ。コレでPS装甲なぞ取り付けられていた場合は完全に詰む、分が悪すぎる賭けだが乗り越え無ければ勝利は無い。肩に担ぐ様に剣を構える、クイックブーストの起動で一気に加速し勢いを付け剣を振り降ろそうとして……次の瞬間目の前に現れたゼク・ツヴァイに強烈なブチかましを食らった。

 ゼク・ツヴァイの機体データにて見落としていた物、それはその本体重量を問題なく運用させる為に大出力かつ大量のスラスターが備えられている事。故に見た目の鈍重さからは想像出来ない程に軽快な機動力を誇る……そんな設定を忘れていたのだ。出鼻を挫かれ、機体重量差から一方的に吹き飛ばされた。ブルパップマシンガンの弾丸も当たり、内部にダメージが蓄積される。更に弾切れになったブルパップマシンガンを捨て去り、ウェポンラックに備付られてた掌大の何かをサブアームと片方のメインアームから投げ付けてくる。ダメージで反応が遅れた機体にそれが接触し、連鎖的に起爆した。

 寄りにもよってジオン軍謹製の手投げ弾のクラッカーを5個投げ付けられ爆発をモロに受けてしまった。熱でセンサーとモニターが塞がれ、更に蓄積されたダメージで機体が殆ど動かない。そして、本命の一撃が訪れた。

 ゼク・ツヴァイが接近し、此方にチェーンソーを押し付けて来る。凄まじい勢いで装甲を削る音とその証明と言わんばかりに火花が散る。コクピットハッチに押し付けられたチェーンソーは少しずつその先端を装甲に埋めていく、このままでは後10秒とせず装甲を抜かれるが機体の復帰が遅い。背面に飛ぶ等の動きはほぼ不可能、ならばと比較的マトモに動いてくれた右腕一本で剣を高く掲げ上段から打ち下ろす。ゼク・ツヴァイのチェーンソーを保持する右腕の肩を狙った一撃はしかし、ゼク・ツヴァイが身体を動かした事でその左の鎖骨辺りに当り止まる。装甲に食い込んだ刃を逃さぬとばかりに無事なサブアームで剣を押さえ付けられた。

 幸いだったのはゼク・ツヴァイが体勢を変えたことでチェーンソーの先端がズレ、コクピットハッチから一旦離れた事だろう。時間的な余裕が生まれた、ならばまだ勝機は残っている。左手でゼク・ツヴァイの右肩を掴み、彼我の距離を縮める。チェーンソーが再び押し付けられ装甲が上げる悲鳴が強くなる、だがコレでギリギリ何とかなる。

 武装のコンソールを素早く叩き、武装のパージを指示。次の瞬間、ヴァルキュリアバスターソードの鍔付近から炸裂音が響く。ボルトが弾け飛ぶ中、剣を引く。装甲に食い込み抑えられた刃はそのままに、スルリと柄が滑る。そして、勢い良くソレをゼク・ツヴァイのコクピットに向けて突き入れる。ハッチの隙間を縫うように装甲の薄くなる箇所を通り、深々とゼク・ツヴァイを貫いた。火花を上げていたチェーンソーが止まり、ゼク・ツヴァイのカメラアイから光が消える。掴んでいた手を離し、ヘルムヴィーゲが数歩後ろに下がる。

 ゼク・ツヴァイのコクピットを貫いたそれが姿を見せる。ヴァルキュリアバスターソードに比べれば細く薄い刃だった。幅はMSの拳一つ分、長さは二の腕から指先程だろうか。分類としては恐らくブロードソードに区分されるであろうソレが、ヴァルキュリアバスターソードの芯金代わりに仕込まれていた隠し武装だった。ハンドガードやその他もパージされ、飾り気の無い剣の姿になった唯一の武装を軽く振るい感触を確かめ、機体の状況を精査する。

 シュツルム・ファウストとクラッカーによる爆発でナノラミネートアーマーがかなりの部分剥がされている、更にコクピットハッチの装甲は十字に傷が入り厚みの3分の2に届く深さまで削られていた。此処まで来てしまってはビームライフルやサーベルの直撃を受けたらその時点でアウトになるだろう、何とか切り抜けたがギリギリも良いところだ。

 機体に蓄積しているダメージで稼働に問題が出ている、ある程度抜けるまではこの場を動けそうに無い。シュツルム・ファウストとクラッカーの爆発音で他のファイターが近付いて来ているのだろうが、逃げられない現状に不安が強くなっていく。センサーの精度から考えて奇襲を許してしまう事だろう、勝率は一桁有るか無いか。コンディションがレッドからイエローになり機体が動ける様になった直後、まるで狙ったかの様なタイミングで熱源の探知。

 咄嗟に機体を地面に倒す、その直後に収束された高出力のビームがそれまで機体の上半身が有った空間を貫いた。空恐ろしい事に、かすりもしなかった筈のビームで背面のナノラミネートアーマーが焼けているとアラートが告げている。ビームに対して圧倒的な防御力を誇る筈のナノラミネートアーマーが、だ。ビームが来た方向にカメラを向ければ、それは悠然と現れた。マッシブな上半身、大型のバックパック、ブースターになっている両脚。Sガンダム、ガンダムセンチネルの主人公機であり宇宙世紀で過剰火力の代名詞とも言えるMSだ。本来宙間戦闘用である筈のブースターユニット装着型が大気圏内で稼働していると言う状況、カメラを拡大して確認すれば足先のブースターからは炎では無く緑の粒子が放たれている。つまり、ツインGNドライブ対応機。

 

「どんだけ盛ってるんだよコイツ……」

 

 宇宙空間限定とは言え、Sガンダムのブースターユニット装着型はミノフスキークラフト搭載機に次ぐと言われる高機動を誇る機体だ。加速時に掛かるGは10Gに届くとされ、流石のトールギス等のトチ狂った加速力には劣るがそれでも有数の加速力と言える。

 それがGNドライブにより重力の軛から解き放たれている、何の悪夢だ。両脚のブースターユニットも意匠が本来の物とやや違う、本来は両脚丸々ブースターだった筈だが目前のユニットは膝から下がブースターユニットになっていて、ニーアーマーが見えている。その意匠から推察すると、ニークラッシャーでは無くインコムが装着されている。つまり、Sガンダムでは無く強化ユニット装着型のEX‐sガンダムのブースターユニット(GNドライブ)装着型なのだろう。

 カメラから入る情報を信じるなら殆ど消耗も無い状態で相対している、此処まで穴熊を決めて居なければ今大会で間違いなくトップのファイターだろう。あのザクスナイパーのファイターと何方が上だろうか? そんな益体もない事を考えて現実逃避する、自在に空中を舞う相手に地を駆ける事を主とする自機は圧倒的に不利だ。挙げ句推力でもクイックブーストを使用したとして負けるだろう、ビームに対して正面から吶喊しても軽減し切れず焼かれる可能性が高い。状況は最悪、だが諦める訳にもいかない。

 装甲の残っている右半身を前に出す様に半身の構えを取る、掠りもせずに背面のナノラミネートアーマーを焼く程の高出力のビームを放つ相手に気休めになるかも不明だがやらないよりはマシで有る筈だ。クイックブーストの使用を検討するが、直前までの戦闘で積み重なったダメージによる機体の出力低下は最高速度を3分の2まで落として居る上に持続時間が半分以下と相手への吶喊を難しくする状況を招いていた。相手が近付くメリットが無い射撃向けの機体で有る故、此方からスラスターを吹かせながら接近しギリギリの距離からクイックブーストで一気に仕掛けるのが唯一とも言える勝機だろう。機体を突撃させる為に身を屈ませる、その際何かが下げた左足に接触した。サブカメラが拾った映像のソレは、奇襲をする上で有利になり得る物で有るが回収する方法が浮かばない。状況が好転しない事に歯噛みする中、カメラがEx-sの動きを捉える。膝のユニットから2基のパーツが外れ、粒子を撒き散らしながら展開する。本来ならEx-sの膝に付いている武装は有線式のインコムユニットである、粒子を放ちながら展開するとなればソレは──

 

「くそ、やはりファングか!」

 

 本来0Gまたは低G状況下でしか使えないファンネルやドラグーン等のビット兵器に対し、00で登場したファングはGN粒子の特性により重力下でも使用が可能な反則的な武装である。本来ならナノラミネートアーマーを相手にビット兵器程度の低出力ビームは恐れる物では無いが、ゼク・ツヴァイの攻撃により剥がされてしまった箇所の有る現状では当たりどころ如何では撃墜の可能性も出る。構えを解きつつ回避に専念、砲口の位置と向きから攻撃先を割り出しランダム機動での回避を行う。ファングから放たれるビームに合わせ、Ex-sからも背面ビーム・カノンからの射撃を向けられる。更に、リフレクターインコムの特性を持たせていたのかファングがビーム・カノンの射線を曲げて先の読めない偏向射撃を行ってくるためインコムの側から離れる為にEx-sとの距離が開く。ビームスマートガンを撃たない事から、チャージに相応の時間が必要なのだと希望的観測を持ちつつ対処法を考える。戦法は先程と変わらない、しかし近接攻撃の為には先ずファング2基をどうにかしないといけない。撃ち落とす為の射撃武器は無く、斬り落とすしか対処法らしい対処法は無い。早々に失ったABCマントが恋しいが、あの時ビーム・バズーカ相手に浪費したのは自分の落ち度だ。回避を続け、撃墜したゼク・ツヴァイの背後に回った。そして視界に入るモノに意識を取られる、間違いなく逆転に使える物だ。迷う時間も惜しいとゼク・ツヴァイの背中に取り付く、直後Ex-sのファングとビーム・カノンから一斉に射撃を向けられるがゼク・ツヴァイの装甲を大部分削るに止めその背後に居る自機にまで届いて来ない。ブロードソードを地面に突き刺し、ゼク・ツヴァイの背面武装ウェポンベイからソレを取外し狙いを定める。ロックオンシステムなど当然積んでは居ないが、問題無い。細かい狙いなど考えず銃爪を引ければこの武装は役割を果たせるのだから。スティックのトリガーを引く、それに応えソレは束ねられた銃身を回転させ僅かな間の後に弾を吐き出し始めた。詳しい詳細は覚えてないが、秒間で100を越える様な勢いで放たれる実体弾がファングを1基破壊する。ゼク・ツヴァイの背面に取り付けられていた武装、新機動戦記ガンダムWエンドレス・ワルツに登場したサーペントの主武装であるツインガトリングが弾幕を張る。思わぬ反撃で動揺したのか、Ex-sの挙動が乱れもう1基のファングが此方への攻撃を緩める。その瞬間、ツインガトリングを放棄しゼク・ツヴァイ自体に手を伸ばす。尋常では無い機体重量、此方も関節部に悲鳴を上げさせながらゼク・ツヴァイ本体を持ち上げる。エイハブ・リアクター機の出力に物を言わせた文字通りの力技、そしてハンマー投げの要領で軽く遠心力を発生させEx-sに向けてゼク・ツヴァイをぶん投げた。即座にブロードソードともう一つ落ちていた物を拾い、スラスターを全開にして接近を開始する。向かってくるゼク・ツヴァイに動揺が隠しきれないEx-sがビーム・スマートガンを放つ、直撃し数秒もせずにゼク・ツヴァイに大穴を空けたがその先には自機は無い。ゼク・ツヴァイを目眩ましに更に近寄り遂に一足一刀の間合いに入る。クイックブーストを使用、自機が更に加速する。彼我の距離を縮める中で見えた、Ex-sの変化。放出されていた緑の粒子が赤くなり機体全体を同じ色に染める。GNドライブ搭載機の切札、トランザムである。ビームスマートガンを此方へ構えるEx-s、その先端からビームが発振する。此処に来てEx-sが行ったのはビームスマートガンによるZガンダムの必殺技の一つであるハイパービームサーベルだ。超超高出力のビームをサーベルの形に集束する事で更に威力を増した文字通りの必殺技。

 此方は向けられた砲口に対しブロードソードソードを突き入れる。拮抗は一瞬、砲口に届く前に鋒が溶けそのまま剣ごと右腕が消し飛ばされた。その直後ビームスマートガンもエネルギーが尽きたのかビームが消失、Ex-sは背面のビーム・カノンを此方に向けて発射する。その直前、事前に設定していたコマンドを起動、自機の全身で炸裂ボルトが起動し全身の装甲をパージする。重装甲を脱ぎ捨てクイックブーストの負担が減り、加速力が上がる。ビーム・カノンが装甲に阻まれている中、スラスターを吹かせEx-sの頭上に機体を踊らせる。残された左腕を振りかぶる、その手に握られているのはヴァルキュリアバスターソードの柄尻に備えられていた副武装、ショートクラブだ。最初にEx-sと相対した際に足に当たったものがこれだ、ブロードソードを警戒され対処された場合の為にゼク・ツヴァイを投げ付けた直後に回収した物を直前まで機体の影に隠れる様に気を使った。落下の勢いを込めて振り下ろす、そうトリガーを引いた直後に左肘を背後から撃ち抜かれる。サブモニターから伝えられる左腕消失のシグナルに一瞬呆然となる、サブカメラが捉えたのは残してしまったもう1基のファングだ。そして、Ex-sのファイターはその時に決着を付けに来た。両脚のブースターから勢いよく粒子が吐き出され、此方に正対し左手を突き出してくる。左腕のレーダードームがズレ、その下から武装が現れた。鈍色の鉄杭、その後ろに備え付けられた炸薬と撃発させる機構。

 

「……ここに来てパイルバンカーとか、ロマン詰め込み過ぎたろ」

 

 そんな負け惜しみが苦笑と共に口から溢れ、次の瞬間には炸裂音と共に機体に衝撃。モニターはブラックアウトし、その後白字でYOU LOSEの文字。

 スティックから手を離し脱力してシートに背を預ける。変態畜生作のガンプラ故にどれだけ壊れても心は痛まないが、負けた事実が悔しかった。思わず台パンしたくもなるが、流石にマナーが悪いし八つ当たりするのも格好悪い。情けない姿は思春期男子として見せたくはない、例えこの場が個室であったとしても体調急変の際に即座に対応する為に内部はモニターされているのだから。

 一つ息を吐き、メインモニターを観戦モードに切り替える。参加者の箇所には2/30の文字、優勝者争いである。

 見覚えの有る機体が戦闘状態だった。ザクスナイパーとEx-s、何方も相対し片方は自分にトドメを刺してくれた相手だ。縦横無尽に飛び回る2機、Iフィールドの代わりにGNフィールドを張りザクスナイパーのビームを弾くEx-sと牽制射撃をしつつヒートナイフで近接戦を仕掛けようとするザクスナイパー。やはりザクスナイパーのファイターは凄腕だった様で、弾かれるビームを目眩ましにして一瞬の隙を突きビームスマートガンを破壊した様だ。Ex-sの攻撃手段をどんどんと削っていってる。いよいよ進退極まったEx-sがトランザムを発動、機動力と出力を増し距離を開きビームサーベルを抜く。対してザクスナイパーはヒートナイフを逆手で持ち構える、GN系統の武装を有していたから予想はしていたがその背部にGNドライブのコーンが確認出来る。そこから放出する粒子量が増し、オーバーブーストモードを使用した事を伺わせる。ツインGNドライブ機に対して機動力で劣るだろうに、何故ここでトランザムを切らないのか理由は分からない。だが、あのザクスナイパーのファイター程の腕なら何か考えがある事は予想出来る。

 次の瞬間、尋常じゃ無い速度でEx-sが突撃を仕掛けた。観戦モードだからこそ追えているが、試合中に万全ではないあの状況下で使われていたら流石に見えなかったかも知れない。Ex-sがザクスナイパーとの距離を詰めビームサーベルを振るおうとしたそのタイミングで、ザクスナイパーも動いた。持っていたヒートナイフを投げ付け、その刃をEx-sの肘に突き刺す。そしてオーバーブースト状態の自機と相手の相対速度を利用した膝をその柄尻に叩き込む。あり余る勢いで肘を切断し、胸部に突き刺さるヒートナイフ。そしてその位置はEx-sのIフィールドジェネレーターの位置でもあった。

 GNフィールドを失う事になったEx-sの頭上、ザクスナイパーはクイックドローで抜いたGNハンドガンの銃爪を引きビームの雨を降らせた。防御手段を失ったEx-sはそのままビームが貫通し、機能を停止。ここに今大会の優勝者が決まった。




文章の誤字脱字報告有れば幸いです。
ルビとか特殊演出する人達って凄い(小並感)
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