【習作】ビルドダイバーズ系の戦闘物を書いてみた。 作:アルカミレス
「盛大に負けたねぇ」
やや間延びした様な喋り口でそう宣う変態畜生、事実では有るが他人に指摘されるとやはり傷付くし苛立ちも生まれる。
キッチンにて鍋に向かっている変態畜生が牛乳を注いだ後にお玉をかき混ぜ、大匙一杯の白砂糖を入れている。甘味が出るのかと前に聞いたが、曰くコクが出るらしい。脳が糖分を欲すると言ってコーヒーや紅茶に大量の砂糖を投入しているのを知っている身としては、どんなものにも砂糖をぶち込んでる印象を抱いてしまう。かき混ぜた鍋がひと煮立ちしたのを見てコンロの火を止める変態畜生、鍋に蓋を乗せてから此方へ向かってくる。出来たてよりも少し時間を置いた方が味が馴染むのだと言っていたが、コイツの場合は猫舌で熱い物が苦手と言うのも理由として有りそうだ。
「射撃武器は苦手だからオミットしていたが、やはり機動力が貧弱過ぎるんだろうねぇ。バルキリーバスタードソード1本と言うのも駄目だったかもねぇ、ダガーやショートソードくらいは持たせていた方が良かったかな?」
「そうは言っても機動力確保とか言ってアホみたいな加速力と推進力積んで壁に激突した事を忘れてないからな? お前の作るガンプラでマトモな機動力してる方が少ないだろうが」
「手厳しいねぇ……ちょっとお気に入りのパーツ追加した物を渡しただけでこの言われようなんて」
「リアルでゼクスの台詞が口から溢れるなんて欠片程も考えた事は無かったぞ」
スーパーバーニア搭載機の悲劇は忘れられないトラウマで、あの時溢した『殺人的な加速だ!?』はガンプラバトルシミュレーターなのに本当に死んだと思ったからだ。半分泣いてたんだぞあの時は。
「それと、バルキリーバスタードソードじゃなくてヴァルキュリアバスターソードだ」
「細かいねぇ……ヘルゲミーネの武器と伝われば十分だろうに」
「ヘルムヴィーゲだ、本当に名前覚えないなお前」
「正直、横文字を並べられるとどうしてもねぇ」
この変態畜生はどうにも名前を覚える事が苦手らしい、そこそこの付き合いだがMSや武器の名称を一発で覚えた姿を見たことが無い。横文字とコイツは言ったが、俺の名前も結構な頻度で間違える。
「そんで、武器の追加だったか?」
「そう、それだ。正直巨大な剣1本で勝てるなんて思っていなかったんだが……単騎で10機前後の撃破数って言うのも正直引いたけどね、それでも途中敵機の射撃武器を追い剥ぎして弾幕を張る必要も有っただろう? 命中率や集弾性を度外視した、そうだな……散弾銃みたいな武器が必要じゃないかな」
「追い剥ぎ言うな、事実だけどさ」
変態畜生の言っている場面はゼク・ツヴァイからガトリングを回収してファングへ向けて撃った時の事だろう。動体かつ小型の物体だった為に持っていた剣や、仮にスローイングダガーが有ったとしても当てられなかったと判断した結果だ。しかし、仮に大多数のガンダムが有しているヘッドバルカンを積んでいたのなら? もっと対応出来る場面は増えていたかも知れない。
「まぁ武器を増やしたとして肝心要の機動力不足を何とかしないと、根本的に解決が出来ないとは思うけどねぇ」
「クイックブーストも初見で対応されたしな、相手優勝者だったけど」
「あの突進をいなしたのは正直言って引いたねぇ……」
ザクスナイパーとの接敵した時の事だ、最後のEx-sとの一騎打ちを見る限り俺との戦いは手を抜いていたと思われる。トランザムを使われなかった事からそう予想したが、GNスナイパーライフルを抜いた時点で此方が読んだ事を気取られていたかも知れない。
「乱入者の肘を撃ち抜いたのは勝ち目が見えなくなったねぇ」
「あのZZのファイター中々に強かった筈なんだけどな、スナイパーがそれ以上に強かった」
「まぁ、あのスナイパーは射撃武器が通じないキミを嫌がって退散したけどねぇ」
「そもそもがナノラミネートアーマーが正常に働いてる相手だって想定して無かったかもな、ヘルムヴィーゲだから実弾バズーカを取敢えず使ってた可能性も有りそうだ」
撃ち込まれたバズーカが実弾だったから直撃を受けて機体のバランスを崩したが、アレが仮に通常のビームならナノラミネートアーマーに弾かれて殆ど影響は無かった筈である。一撃で鉄血のMSにダメージを与える射撃武器はそれこそヒルドルブの30cm砲やザメルの680mmカノンの様な砲撃用の装備だろう、熱に弱いと言う事からヒルドルブは原作同様ナパームを使用出来るならかなり有利になる筈だ。まぁ、ビームで焼き殺す方向ならそれこそバスターライフルやサテライトキャノンなんて言う余波で消し飛ばされそうな武装も有る。何より、自分が負けたEx-sはライザーソードで此方の耐熱性を無理やり上回って右腕を蒸発させる芸当をしてみせたしビームスマートガンで瞬間的にナノラミネートアーマーを焼く程の出力を持っていた。
「しかし、ナノターミネーターは物理耐性も有るのだしヒートナイフ1本で不利になるものかねぇ?」
「ナノラミネートな、なんだが厳つく強くなってそうな間違え方すんなし。そもそも連続した衝撃と熱に弱いナノラミネートじゃヒートナイフの熱で剥がされる可能性も有るし、あのファイターの腕なら関節部狙ってダルマにするくらいは出来そうだろ」
物理耐性が常軌を逸しているPS装甲持ちでも、関節部までそうなっている機体は3機しか居ない。故に関節部へ実体剣を叩き込んで破壊する事も理論上は出来るし、成せるファイターも居る。あのザクスナイパーのファイターなら鉄血のマクギリス宜しく関節部へ的確に攻撃を当てる事だって出来そうである。
「運動性は多少落ちるが、関節部のシーリングも視野に入れるべきかねぇ」
「可動部は摩擦で塗装が剥げるし、やっても意味無さそうだけどな」
「それなら初期エルシアみたいな柔軟性の有るカバーを使用するのは?」
「エクシア、な。手では有るが……いや、耐久性が大して変わらないなら運動性を取るな」
「ふむ、関節部の対策は暫く見送りだねぇ」
補足すると、初期エクシアは関節部に直接被せるカバーは無い。当時の技術では人間的な動きを再現するのに制限が有り、肩と太腿に補助する為の柔軟性が高い部品を使用していると言った設定だった筈だ。目の前の変態畜生はソレを関節部に被せる様な改造を施そうとしている模様だが、如何せんそこにナノラミネートアーマーを再現しても素材自体が柔らかければそこまで防御力は無く、武器の取り回しが鈍るだけだ。それなら現状のままの方が良い。
そんな会話を続けて居ると変態畜生のスマホからアラーム音が鳴った。いそいそと席を立ち、キッチンへ向かった変態畜生は炊飯器からご飯を皿によそうとその上に鍋から掬った白いシチューを掛ける。トレーの上にシチューの皿と水を注いだコップを二組乗せて此方に戻って来るが、トレーを置いた後別の場所へ向かいバターロールの袋を持って来た。
「君はパンが良かったんだよねぇ?」
「あぁ、シチューにライスはどうも馴れなくてな」
「和製シチューはご飯に合う様に出来ているからとても美味しいんだけどねぇ」
変態畜生作のクリームシチューが目の前に用意される、テーブルの上には調味料として胡椒入りのミルも用意されていて味変にも対応済みだ。『いただきます』と声を揃えて挨拶をした後、シチューを1掬いして口元へ。
とろとろになった玉ねぎと柔らかくなった人参、そして歯応えを残すマッシュルームが濃厚なルゥと混ざり豊かな味わいを醸し出す。最初に感じるのは甘味、野菜の成分を熱して化学反応を起こした後に見せるクドさの無いそれだ。次に牛乳が由来のコク、ルゥのとろみと合わさり口内を満たしていく。そして最後に肉から抽出された濃厚な旨味、曰く手羽元を使って鶏ガラからも出汁を取るスタイルらしく深みが段違いだ。次に掬ったのはじゃがいも、舌で軽く押すだけで簡単に潰れてその奥に溜め込んだ旨味を思い切り爆発させた。ルゥのとろみを一段階上げ、より舌にその味を擦り込んでいく。熱と味で支配された口内を一休みさせるべく、水を口に含む。ただの水ではなくレモン水だ、ボトルに切身を入れ冷蔵庫の中で時間を掛けて抽出された柔らかな酸味が口の中をサッパリさせるのが小憎らしい。
次に掬ったのは若い身体が欲してやまない動物性蛋白質の代表、肉だ。骨付きの手羽元を口に運び、面倒なので骨ごと含む。口の中で転がせば、骨に付いていた肉が、それどころか軟骨もほろほろと剥がれていく。行儀は悪いが指で骨を摘み口から引き抜きティッシュに置く、その間咀嚼は止めない。半ば繊維質のようになった肉はまだ脂を残していたのか、それとも野菜の旨味を取り込んでいたのか強い甘味を舌に感じさせる。肉特有の歯応えは有るが、苦も無くプチリと簡単に噛み切れてしまう。咀嚼を繰り返し嚥下すれば、水で冷やされた喉を熱が通り過ぎていく感覚。コレがまたたまらない。次を掬う前にバターロールを一つ取り出す、市販の物だが奇を衒った物よりこう言う食べ慣れた物の方が個人的には好きだ。端を少し千切り、シチューのルゥに浸す。垂れない様に元のバターロールを受け皿にしながら口に運び、喰む。バターロールはスポンジの様にルゥを吸い、口内へ純粋にその味を振る舞う。野菜の食感を抜きにして先ほど感じた甘味や旨味達に舌鼓を打ちつつ、バターロールの中身をくり抜く。そこにシチューのルゥと野菜、そして手羽元以外にも入れられていた肉──ベーコンを入れる。変態畜生曰く、シチューにベーコンを入れると手軽に味が深まって楽との事。この手の煮込み料理は食材を増やせば増やす程にその味を深めていくし、種類を増やせばそれだけ複雑な味わいになる。茹でたブロッコリーやアスパラガスも食感で飽きを遠のかせる役割を担いつつ、味に深みを与えてくれる……いや別にこの2食材が嫌いって訳じゃないし。本当だぞ。
シチューパンとなったバターロールを一口、焼いた小麦特有の芳ばしさの後に口に広がるクリームシチューの旨味。口いっぱいに頬張る事で先程よりも複雑な食感が口内を満たす。すぐに潰れるじゃがいも、それに比べればやや歯応えを残す人参、とろとろと溶けていく玉ねぎ、変わらず抵抗を残すマッシュルーム、そして柔らかく歯応えを残すベーコン。燻製の味の深さはある意味別格だ、燻しその旨味を内に内にと溜め込み熟成させる。煮込んだ事で旨味が逃げた? いや、そんな訳が無い。程よく旨味を伝播させ、新たな旨味を取り入れているのだ。豚の脂特有の鶏に比べて濃い目の味わいに、共に煮込まれた野菜と鶏ガラの旨味を足した物が美味くない訳が無い。
黙々と食事を続けていき気付けば完食。おかわりをしようか迷ったがこのシチュー、目の前の変態畜生が冷凍して1週間程で食い切る物だったりする。曰く2週間くらいは同じ物を3食続けても慣れるだけで飽き無いらしい、食に拘りが無いと言う事は無いだろうが面倒臭がりなんだろう。
「ごちそうさまでした」
「おそまつさまだねぇ」
食後の挨拶を済ませたらそそくさと食器を洗いに行く変態畜生、下手に時間を置いて固まると後々面倒との事。食洗機を使えばと以前言ったら細かい所に汚れが残る物が多く、そうでは無いものは値段が高いから手を出せないとの事。序に手でやった方が速いらしい、そこらの機微は分からない。
「さて、強化プランの為の振り返りを続けようか」
「食った直後で頭動く気がしねぇ……」
変態畜生は早速切り替えて話の続きをしようとする、此方も腹八分と言ったところだが満足感で頭が動くか分からない。変態畜生が淹れた麦茶を口に含みつつ、話の続きを思い出す。次に話すべきは──
「ダインスレイヴ対策、と言うかニードル武器関連への対策か」
「まさかキャノンを外して2基積んでくるのが居るとはねぇ」
「アレと戦った所からダメージが増えて行ったな……」
ガンダムダブルエックスのツインサテライトキャノンをダインスレイヴに載せ替えた相手、ヴァルキュリアバスターソードを割り頭部センサーと片側のショルダーアーマーを破損させた相手。ヘルムヴィーゲの弱点と言うか、苦手な物の集合体と言うならゼク・ツヴァイの方がそうでは有るがあのダブルエックスは面倒なことこの上無かった。
「いやさ、アレはショートクラブ抜けば対策出来たのでは?」
「ショートクラブ積んでるって話聞いて無かったんだが?」
「え、渡す時に原作再現は完璧って伝えただろう?」
「アレそう言う意味だったの?」
ファイターとビルダー間での意思の摺合せは大事、会話ってむずかしい。
「とは言え、やはり取り回しの良いショートソードとかも必要かねぇ」
「鞘とかはどうするんだって話だな、ウェポンベイは増設出来るって言ってたが咄嗟に抜ける位置としたら腰になるが……正直ヘルムヴィーゲのアーマー的に腰から抜くにもパーツが干渉して腕が回らん」
「逆手で抜くのは?」
「リーチが短いから相手に届くなら体当たりした方が有効ってレベルになる」
「ふむぅ……いっそ腰部にテールバインダーの増設とアンカーでも仕込むかねぇ?」
「お前の趣味だろ、GP-03のテールバインダー」
「プロペラントタンクや武器を仕込むのにも有効なんだよ? あの形状」
「有効なのは間違いないが……出力上げすぎてトールギスの二の舞いは嫌だぞ俺」
目の前の変態畜生と出会った時の話だ、ファイターとして才能が有ると言われ試しにコイツの作った【好きな物を詰め込んだMS】のガンプラを使ってガンプラバトルシミュレーターに挑んだ結果、操作不能でシミュレーターの天井に突撃して爆散した。スーパーバーニアと腰部テールバインダーだけの推力で出せるレベルを越えて居たと思った。しかもこの変態畜生、よりにもよってその後に言ったのが『君には高機動タイプは無理だねぇ』である。その場で折檻した自分は悪く無いと思う。あの場に居た他の人達なんてモロに同情的な視線送って来たからな、誰が扱えるんだあんなもん。正直、今回の大会で戦ったEx-sのトランザム状態と比べて尚、贔屓目無しに上回っていたと思える加速力と推力だ。ガンプラバトルシミュレーターのステージが地上から大気圏外まで繋がっていたなら普通に突破していただろう、なんで第ニ宇宙速度を越える速度がMSで出せるんだロケットかよ……いやエンドレスワルツでトールギスⅢが普通にやってたな。
「ヘルゲミーネのバルキリーバスタードソードを最大限活かす為には加速力と推力が要る、と言うのはある意味当然の帰結だけどねぇ」
「ヘルムヴィーゲとヴァルキュリアバスターソードな、まぁ推力不足とは思いたく無いが正直クイックブースト級の推力は常に欲しいな」
「やはりバーニア、ブースター、スラスターの増設が要るねぇ……ヘルゲミーネから乗り換えないかい?」
「ヘルムヴィーゲだ……と言うか、乗り換えると言っても何に乗れと?」
「同じ格闘機だとヘルシアとか」
「エクシアだ、ヘルシアとか飲み物じゃねぇか」
「ならハルパス」
「バルバトスか? ハルパスってかハルファスはGジェネオリジナルに在るけど」
「ヌプスセクスになるやつの方」
「それは間違って言ってるのかネタで言ってるのかどっちだ」
ファンに怒られる様な言い方はやめろ。
「正直、ガンダムフレームの双発イシュメール・リアクターの方が出力上がって手軽だと思うんだよねぇ」
「それはエイハブ、イシュメールは白鯨の語り部だ。まぁガンダムフレーム……鉄血のMSは悪く無いが」
阿頼耶識だと反応も上がる、とは聞いている。しかし、反応が上がっても変態畜生の機体が操れるとも思えない。正直、暫くはブラッシュアップを重ねたヘルムヴィーゲで十分な気もする。アレを上手く操れる様になってから、次に進むべきだとも思ってる。
「装甲の配置をイジるかい? 肩のバーニアとかもう少しフレキシブルに動かせたりすれば、運動性は増すと思うけど」
「それで防御性能落としたら機体コンセプトと真逆だろう、それなら高機動の機体にした方が手っ取り早い」
「君には高機動タイプは向いてないけどねぇ」
「まだ言うかそれ」
変態畜生が次々と案を出して行くが、あまり気乗りがしない。ビルダーとしての腕は信用出来る、しかしコイツが手を入れる事で別の問題が発生しかねない。干渉を減らす為に可動部や装甲の厚みを変えるくらいは問題無いだろうが、ナノラミネートアーマーはあくまでも塗料であり剥がされたらその下の装甲が物を言う。余程の硬度を持つ素材、それこそガンダニュウムでも無ければ軽量化は機体の弱体化を招きかねない。
「ふむ、装甲素材をガンダニュウムにすると言うのもイイね」
「やめろ」
ガンダムWにてガンダムと定義する上で使われる素材、ガンダニュウム合金。兎に角硬くて軽い、コレで造られたガンダムはMSにしては異常とも言える10t未満と言う重量を誇る。ヘルムヴィーゲの外部装甲なら同じ厚みで有りながら圧倒的に軽くなり、機動力は爆発的に増すだろう。しかし、格闘機だと良いとも言えない。
「格闘戦は質量の殴り合いだ、機体を軽くしたら下手したら押し負ける」
「ふむぅ、下手したら剣に振り回される可能性も有るかねぇ」
ガンダムWの世界ではビーム兵器の出力で押し勝っていたが、生憎此方は質量兵器である実体剣だ。速度を出して振り切る必要が有るし、武器より機体が軽すぎれば操りきれない。
「なら、武器の素材を変えるとか? 00の結晶素材とか」
「アレでぶっ叩いたらへし折れないか?」
「多分、大丈夫……とも言えないねぇ」
物質で有りながらビーム兵器並の熱で溶断するとされているガンダム00に出てくる新素材の熱変換クリスタル素材、触れた先から瞬時に熱を伝播させ実体武器なのにビーム兵器と同じ攻撃が可能という設定だ。正直、SEEDのPS装甲や鉄血のナノラミネートアーマーに対して有効な武器では有る。有るにはあるのだが……あの構造が頑強であると言う印象が無い。まして、ヴァルキュリアバスターソード並の大きさで造られている作品は……あ。
「一番外側、刃の部分だけなら採用出来るか……? グラハムエクシアみたいに」
「そう言えば、でかい剣をもっていたっけねぇ」
丸々刀身に採用は出来ないが、刃だけなら問題無いかも知れない。それでもGN粒子による重量軽減効果が無い故に衝撃は強いかも知れないが、エイハブ粒子にも重力干渉する効果が有った筈。それならば一撃で剣が折れる様な事も無い筈だ、その代わり盾の様に使うのは憚れると思うが。
「まぁ、何方にせよヘルゲミーネは暫くレストアだけどねぇ。盛大に壊れたから1から作ったほうが早いくらいだし」
「なんか、すまん」
外部装甲どころかフレームそのものが致命的な破損状態にまで至っている、との診断だった。あのヘルムヴィーゲ、目の前の変態畜生がフレームからスクラッチした代物であり性能の高さは殆ど意味不明なレベルだ。先端から三分の一が折れていたとは言え、ヴァルキュリアバスターソードを片手で振り上げるなんてのはガンダムフレーム並の出力が必要な筈でリアクター単発機のヘルムヴィーゲで本来出来る芸当ではない。好奇心に負けて装甲をバラした事が有るが、内部フレームの出来が実在する本物をそのままスケールダウンしたかの様な代物でビビって触れ無かった。曰く、PG以上のパーツ総数でMGサイズではコレが限界との事。PGだったら殆ど実物みたいなパーツ総数で作れるらしい……間違い無く変態の所業だと思うぞソレ。
プラフスキー粒子はガンプラの完成度によりその性能を引き上げる特性を持つ、とは言え原作以上の出力を発揮したヘルムヴィーゲはプラフスキー粒子の恩恵を尋常ではないレベルで受けていた事になる。もっとも、目の前の変態畜生がヴァルキュリアフレームと偽ってガンダムフレームにしていたなんて仕込みをしていなければ、だが。
「まぁ、あのバーンブレイブ搭載機対策はショートクラブやその他の取り回しの良い武装の追加。それと機動力の強化辺りかねぇ」
「単純に俺の腕を上げる、ってのも対策では有るがな。それとダインスレイヴだ」
「確かに、剣を盾にしていたから両断出来なかった場面は有ったねぇ」
「正直に言うと、ヘルムヴィーゲの肩幅が広すぎる……」
「まぁ、アーマー込みとは言えマッチョだよねアレ」
半身になって的を絞らせない様にしたが、正直肩のアーマーにもバーニアが仕込まれている為に片側を失えば機体のバランスが崩れる。最終的にクイックブーストは背面のメインスラスターと脚部のサブだけで突撃した為に初期程の推進力は無かったのだ。それ故に最後は装甲をパージして機体重量を低減させてスラスターの負荷を軽減させて推力を得た。それで総重量で肩のスラスター込みの加速力とほぼ同等、どれだけアーマーが重いのかよく分かる。
「まぁ僕としては、あの頭突きは正直どうかとおもったけどねぇ」
「仕方ないだろ、あの距離で射線外させる為にはアレくらいしか無かったんだから」
「その後の戦闘能力低下具合見て言ってるのかい?」
「……まぁ正直、腕で払えれば良かったとは思ってる」
直感的に頭で打ち払ったが、正直左腕でかち上げる事も出来たかも知れない。あの時ショートクラブの存在を知ってさえいれば、左手で抜いて下から打ち上げる形でダインスレイヴにぶつける事も出来ただろう。
「頭部に受けたダメージで機体の動作にラグが出来ていたみたいだし、センサーも有効範囲が狭まって居ただろう?」
「ゼク・ツヴァイの奇襲はセンサーさえ生きていれば対応出来ただろうな……」
シュツルム・ファウストの一斉射を受けて先制を取られたあの場面、本来あの武器の射程距離なら変態畜生製のセンサー範囲内だった筈だ。アレはそこまで長距離を狙える武器じゃない、中距離でも遠いと思う程だ。誘導性能が無い武装な上に弾速も遅い、本来は対艦等に使う物でMSに対しては殆ど当てられない。ソレを直撃に近い範囲で一斉に起爆されたのだ、あの時機体のコンディション確認の為に足を止めていたとは言え奇襲を許す理由には出来ない。
「しかし、あのゼク・ツヴァイはブチかましとチェンソーの印象がなぁ……」
「機体重量で完全に負けていた上に、装甲に対してメタみたいな武器出されたのはねぇ」
ヘルムヴィーゲの公表されている本機重量が約44t、対してゼク・ツヴァイは本機重量だけで88t越えとヘルムヴィーゲの2倍以上、全備重量は約152tと大きく差が出ている。多少武装を使用し軽くなっているかも知れないが、それでも2倍以上の重量はどうにも出来ない。アレでスラスターを大量に備えているが故に、機動力も確保しているのだから始末が悪い。あの衝撃により悪化していた機体制御が一時的にエラーを吐き出し、機体が行動不能になったのだ。地上であの機動力を出す為にもしかしたらミノフスキークラフト辺りを仕込んでいるかも知れない、流石に自由に動くには機体が重すぎるだろうがスラスター点火に際して少し浮かせるくらいの事が出来れば問題は無いだろう。とは言え、実際に確認しない事にはあくまでも予想でしか無いが。
そして、近接武器として用意されていたチェンソー。コクピットハッチの装甲をナノラミネートと共にガリガリと削られ、アレが実機に乗った状況なら漏らしていた自信が有る。完全にサスペンスホラー等で追い詰められている場面そのものだ。
「格闘戦は致命的に不利、射撃戦も不可能……逃げの一手だねぇ」
「逃げられたのならそうしたかったよ、ダメージが嵩んで出来なかった」
「それは分かってるさ、正直あそこで負けると思ったくらいさ」
生き汚く足掻いて、相手の肩にバスターソードを叩き込んだ。そうして出来た時間的余裕で何とか次の武器を選べたのだ。
「あのブロードソード、よく用意してたな」
「あぁ、アレかい? アレは偶然の産物だからねぇ」
「え」
変態畜生曰く、バスターソードを造る際にプラ版を重ねて成形したら重量に柄やその他が耐えられなかったらしい。悩んだ末に内部に芯金になる金属製のプレートを仕込む形になり、結果としてそれがあのブロードソードだったのだとか。スチール素材で作っていたらしく、細身でも頑丈で幅もある為にバスターソードを支えられたのだとか。
「感心すれば良いのか飽きれればいいのか」
「でも役にはたっただろう? あの薄い刃で無ければコクピットハッチの隙間から刀身を突き入れるなんて無理だっただろうしねぇ」
「それは確かにな」
パイロットをピンポイントで排除する事でゼク・ツヴァイの主機やその他を破壊せず、無力化する。正直核融合を破壊して爆発させていたらその時点でOUTだっただろう。制御を離れたチェンソーも直ぐに止まってくれたから生きながらえた。
「そしてラストのアレか……」
「正直、射撃武器と機動力上げる以上に対策は無いねぇ」
最後に相対したEx-s、此方が万全ならばまだ手は有ったかも知れない。しかしそれは、初期からアレと相対すると言う事。
「ABCマントを早期に失くしたのが痛かったかもねぇ、ビームバズーカクラスなら問題なく耐えれていた筈だよ」
「無茶言うな、初手のライフル直撃で20%は削られてたぞ」
「意外に削られたねぇ」
GNファングのビームは正直言ってナノラミネートアーマーにとって問題では無かった、問題はビームスマートガン。掠っただけでナノラミネートアーマーが焼き付いて使えなくなったと言う意味不明な火力だったのだ。トランザム中にはブロードソードごと右腕を蒸発させられたあの火力、彼処まで追い詰めただけでもあの機体の状態では上等だろう。
「次はABCマントと増加スラスターをセットにしようかねぇ、ABCマントとプロペラントタンクが尽きたらパージする感じの」
「マント継続は確定かよ……」
「今度は頭からすっぽり被るタイプじゃないさ」
「エンドレスワルツのサンドロックみたいなヤツか」
あのタイプはあのタイプで可動に制限が掛かりそうだ、ならいっその事全身増加装甲で機体重量に物を言わせた体当たりをするのも手では無かろうか。それこそ機動戦艦ナデシコのブラックサレナやブレイクブレイドのデルフィング第三形態の様に。もっとも、そうするとヴァルキュリアバスターソードがデッドウェイト過ぎるが。
「まぁ一先ずアレコレ考えたがねぇ、チームを組んで短所を補うと言うのも手じゃ無いかな」
「いきなり身も蓋も無いな、今迄の反省会何だったんだよ」
そもそも、チームを組めると思えないのだが。変態畜生のコミュニケーション能力もそうだが、何だかんだ俺のコミュニケーション能力も良くない。勧誘で躓くだろこんなん。
「ま、ヘルゲミーネが仕上がるまでは適当に持ってって良いよ。何なら前にあげたアレでも使うと良い」
「アレ使って壊れたら1ヶ月は寝込むから嫌だ」
アレとはコイツと付き合いが始まった時に渡されたとある漫画のキャラをガンプラで再現したもので、完成度が段違いで今もアクリルケースに入れて部屋に飾っている。ガンプラで再現している事以上に、そのキャラのスタチューが高額過ぎてお小遣いが足らず諦めた経歴が有る。それを壊したとなればマジで寝込むからな俺。
「壊れたら直すさ、それがビルダーの仕事だからねぇ」
目の前の変態畜生は何処か苦笑いしたような表情でそう言った。
なお、変態畜生は男です。