"呪霊"と遊ぶ男 作:かごめかごめ
仕事は?どうやって生計立ててるの?……んー、どうやってでしょう。
「……腹減った」
ゲンナリした顔で街を歩く。
先程まで花ちゃんに連れられて言った場所でおそらく特級の呪霊を払って街へと帰ってきた俺氏。
ほぼ死んでる。主に精神が。
「人とは酷なものだね。すぐに腹が減って動けなくなるなんて」
「呪霊と一緒にしないでよ。食欲は人の三大欲求のひとつなんだから」
「はあ全く……ほれ、そこに"ふぁみれす"があるぞ。さっさと腹を満たせ」
「あいあい、分かってますよって……あと、人前ではあんまり話しかけないで。あんたらのこと他の人たちには見えないんだから。会話してたら俺が変な目で見られる」
「いいじゃないか。元から変なんだから」
「俺泣いちゃおっかな…!」
そんな会話をしながらファミレスへと入店。
店員の案内で席へ。
4人席か。1人だけだけどここはファミレスだからね。4人席しかないもんね。
でも1人で4人席とかなんか寂しくない?
「隣に座るぞ」
「……なんでわざわざ狭くするの。対面座りなさいよ」
ま、1人じゃないか。花ちゃんいるし。
え?狂ちゃん?あの子なら普段は俺の影に潜んでるよ。
さて、メニュー表を手に取り早速選ぶ。
ガッツリ食いたいしなあ。何しよっかな。
「……………」
「……………」
「ねえ花ちゃん……狙ったよね?」
「……フッ、なんのことかわっちには分からないね」
半笑いの花ちゃんに頭が痛くなる。
俺の座る席から少し離れたところ。そこに居たのは袈裟を着た"1人の呪詛師と3体の呪霊"。
まさかの出会い。
あの"呪力"を感じないほど花ちゃんは鈍くない。分かってて俺をこの店に入れたんだろう。
4人分の視線を感じる。
そりゃ呪霊を連れ歩いてる男だ。"見える人"達からすれば異様なものなんだろう。胃が痛くなってきた。食欲がダウンだよ。
「……それにしてもここは暑い。あの火山頭かねぇ」
「でしょうね。あとあんまりそっちに興味持たないで。遊ばないから。やだよ俺」
「相も変わらずつれない男だよ主は」
つれなくて結構、コケコッコーってね。
俺はもうメニュー表だけに目を向ける。袈裟の男?呪霊?そんなの俺の視界にはいない。だから関わらないし、関わってこないでね。お願いします。
と、その瞬間だった。
店内が一瞬にして火の海になった。
店内がというより正確には店内にいた人達が一瞬で火だるまになったのだ。
反応出来てない俺だったが狂ちゃんがすぐさま呪力を俺の体に込めたことで俺は燃えずに、花ちゃんは"独特な形の刀"を手にすぐに立ち上がった。
「これは"遊んでもいい"んじゃないかい?」
「……出方次第でしょうよ。遊ばなくていいなら遊ばないよ」
「……………」
「やはり呪霊か。しかも特級を2体」
「夏油、この小僧どもは消しておくべきだろう」
夏油傑の皮を被った何かと、火山頭の呪霊"漏瑚"。
その後ろには"花御"と"陀艮"もいる。
「聞くけど、君の術式"呪霊操術"だったりする?」
「残念すね。俺は呪霊2人に取り憑かれだけの一般ピーポーなんすよね」
「それにしては呪力の量は目を見張るものがあるけどね」
「彼女に鍛えられちゃったもんで」
「なるほど……じゃあ最後にひとつ。君は高専側?それとも"こっち側"?」
「……どちらでもないっすね。面倒事はごめんなタイプなんで」
「そっか……よし、漏瑚。殺ろうか」
その言葉と共に術式を発動させようとする夏油さん方。
それに合わせて俺は指先に呪力を集めていく。
血を消費して威力を底上げ。射線が真っ直ぐだと街に被害が行く。少し上に向けて、倒すよりも目眩しと吹っ飛ばすを重点に。
「狂ちゃん逃げる準備して。花ちゃんは一緒に"虚閃"打って」
「はあ……予想はしておったが逃げ一択か。主はほんとにモテない性格をしているな」
「モテるよりも命ですぅ。いいから早く」
そう言うと刀の剣先に集まる呪力の塊。
2人揃って4人に向けてそれを突き出す。
──
打った瞬間に頭がクラっとして、そのまま狂ちゃんに抱えられ陰へと逃げ込む。それを追うように花ちゃんも。
ふと最後に見た破壊規模。
王虛の閃光だけで良かったかも。花ちゃんとの融合はオーバーキルだったかな。
まあ念には念をだな。
兎にも角にも逃げれたようでよかったよかった。
そのまま俺は意識を落とした。
▼▼▼
頭がフラフラする。
大量の呪力を消費+貧血で体がだるい。
「しっかり歩きな。だらしないね」
「……うぅ」
夏油(仮)と遭遇してから1日経ち現在。
俺たちは騒ぎが起こったあのファミレスへと来ていた。
警察や野次馬がそこかしこ。
俺らがぶっ壊した後も見えて……うむ、やりすぎたかもしれん。
虚閃は花ちゃんと作った術式とは言ったが、あくまで"呪力"を打ち出すだけのもの。故に花ちゃんも使える術式である。そもそも花ちゃんの指導の元作ったものだしね。
ただ、打ち出すだけじゃ威力はお粗末。だからこそ普段のように"1個体の呪力"を使う訳じゃなくて"正真正銘、自分の呪力"のみで使うことで威力の底上げをしているのだ。
総量を減らして威力を上げる縛り。
だからこそ普通の虚閃よりも呪力をかなり消費する王虛の閃光は1発使えば呪力も血液も生命活動ギリギリまで一気に無くなる。
これが燃費が悪いの正体だ。
つまり1発限りの大技。
しかもそれを俺より呪力の総量が圧倒的に多い花ちゃんと一緒に融合までさせたもんだからとんでもない被害になってる。
地面を抉ったりした訳じゃないが、発射の時の勢いと風圧で広い範囲に被害を受け広げてしまったっぽい。
まあ幸い、死亡者は漏瑚が燃やしたファミレスのお客さんのみで、他にはいないっぽい。よかった、人殺しにならなくて。
ふぅ、まあまあ俺の攻撃で死んだ人はいなかった。それを知れてよかった。
さて、家に帰るか。確かめたかっただけだし。
と、そんな時だった。
影からヌッと現れた狂ちゃんが服を引っ張ってきた。
「ん?」
「………」ニゲテ
「……不味いね」
手にしたボードに書かれた文字。
それとほぼ同時に花ちゃんも声を漏らした。
「………」ジュジュツシ、キテル
「早く帰るぞ」
花ちゃんに手を引かれ歩き出す。
……いや怖い。どした?珍しく遊ぶではなく帰ることを選択してる。
この2人がここまで警戒して逃げようとするって、まさか来てる呪術師って──
「あーいたいた。うっわ、やばすぎない君?」
「っ!」
「「……………」」
背中にかかる声。
このお調子者のような声。余裕と警戒が混じった声。
振り返ると長身の目隠しをした白髪の男性がそこにはいた。
五条悟。現代最強の呪術師。
「ちょっとさぁ……話、聞きたいんだよね」
「う、うへぇ……」
あ、胃が痛くなってきたかも。
設定作りがいちばん大変。