弱小麻雀プロの俺が美少女高校生からコーチに誘われた件 作:猫麻雀打ち
「勝敗は点数の合計でいいよね?」
「OKよ」
「OKっす」
メモをもつ黒髪の少女が聞いてきた言葉に二人は返事する。
怒っていた二人は案外冷静できちんと牌をとり理牌も完璧にこなしていた。
「案外冷静なんだ」
「そりゃあ心は激おこぷんぷん丸っすけど麻雀はクールにでしょ?」
「その通り 良いこと言うわね」
「それ俺が……まぁいいや」
俺が教えた言葉をいけしゃあしゃあとどや顔でいう様は少しイラついたがかっかさせて変な麻雀打たれるよりはマシだ。
それはともかく合計か……苦手だがまぁなんとかなるだろう。
俺は理牌した手牌に目を向ける。
東1局 南場 ドラ{五萬}
手牌
{二萬}{四萬}{四萬}{七索}{九索}{一筒}{一筒}{三筒}{四筒}{八筒}{八筒}{九筒}{中} ツモ{四筒}
(切るとしたら中かな……)
俺は中を切る。
「ポンっす!」
椿さんが素早くポンを発生し鳴く。
出た椿さんの速攻鳴き。
椿さんはめんどくさがりの性格からかすぐ鳴いて局を終わらせようとする悪い癖だ。
なお質が悪いのが役牌がよく椿さんの手には入っているということだ。
だがいつもという訳でもないので切らないわけにはいかない。
本当に厄介だ。
「あんた切られて何秒で発声してんのよ」
「素早い発声が素早い配牌を持ってくるんすよー」
またこれだ。
よく分からない験担ぎ。
だがこれで素早い配牌を貰ってるんだから案外間違いないのかもしれない。
「うーんこっちか、いやいやこれ!」
そう言い{五筒}を捨てる茜。
こんな最初から?
配牌がチャンタ系なのか純粋に一向聴とかそういうのだろうか?
「あ、茜ちゃんそれ必用牌……」
茜にもう一人の少女は慌てながらあたふたする。
「あっ! だ、大丈夫 切っても行けるし」
「はぁーまた……」
「まぁまぁ初心者なんだし」
呆れた様子でため息をつく紫髪の少女。
そして大丈夫だよと慰める黒髪の少女。
ごめんごめんといいながら笑う少女
こんな光景どこかで.……
俺は昔の記憶を思い出す。
「また間違えとる! ここは{九索}切りやろ!」
「ごめん師匠!」
「次やったらココア抜きや!」
「そんなぁ」
「まぁまぁ、葵ちゃん落ち着いて まだ夢くんは初心者なんだし……」
「おーい 次あんたの番だぞー」
「ごめん!」
その声で自分の番だと気づく。
俺は急いで牌を引いてきて{二萬}を切る。
「しっかりしてよね。ここにはまともな打ち手いないのまったく……」
紫髪の少女は呆れながら牌を引いてきて{白}を切る。
「私はまともっすよー」
「そうは見えないけどなぁーあ、その{発}ポン」
二人は話ながら麻雀を進行する。
やっぱり仲良く感じる。
「自分の所の法律忘れる奴がまともなわけないでしょ」
喋りながら{三索}を捨てる紫髪の少女。
「いやいやたまたま抜けただけっすよ ロン 二千点」
「げっ」
椿さんは手牌を倒す。
相変わらず手が早い。
不服そうな顔で紫髪の少女は点棒を椿さんに渡す。
だが会話は途切れず続いている。
どこか懐かしくも楽しい雰囲気を感じた。
楽しい対局はあっという間に進みオーラス。
「うーんこれどうするか……」
茜と言われた少女は迷っている様子だった。
状況は後一巡点差はトップまで8000点。
4翻以上アガれば逆転。
絶望的な状況だが彼女の目はまだ燃えていた。
「決めた! やっぱりこれっしょ! 立直!」
茜は{四筒}を切りリーチする。
「このまま行けば勝てるのになんでリーチするの茜ちゃん!?」
どうやら手の時点で4翻以上あったようだ。
ダマの方が勝てる可能性が高いのになぜ?
俺は疑問しか出てこなかった。
「男は勝負するときはリーチでしょ! それに一番下にお宝が眠ってるってあの人も言ってた!!」
「あんたは女でしょうが! それにまたその謎理論なんなのよ……」
その台詞は……
「アホか勝ってるのになんで立直すんねん! ダマやったら海底で放銃せずにすんだやろ!!」
「だって海底にはお宝があるって愛さんが.……」
「またあいつか! はぁおまえと会わせるのやめよかな……」
「そうだよな!!」
突然対面のお兄さんが叫んだ。
私はビックリした。
突然の大声もそうだしさっきまでと違ったキラキラした目をしていたから。
その目はまるで子供のよう。
驚いていると何故かお兄さんは手牌を倒す。
「待ちはまだ山に残っている中だ」
「何してるんすか!? 屋良ちゃんがそれを引いたら絶対でる所なのになんでそれを晒すんすか!?」
「俺も海の底にお宝を見たからさ」
「はぁ!?」
「なるほどお宝の奪い合いってわけですか!」
「おう!」
この人も私と同じだ。
お宝は一つなら対決するしかない。
それは決まり。
「二人で納得されても!」
「諦めなさい椿。もう無理よ」
そして紫髪の少女は引いてきた牌を確認して切る。
{一筒} 二人はロンしない。
いや出来てもしない。
「さぁ行きますよ!」
茜は牌を引いてくる。
そして雀卓へとたたきつける。
「ツモ! 立直一発ホンイツドラ2海底撈月」
駄目だったか……
だが不思議と晴れやかな気分だ。
なぜだろう。
負けたのに
そう思っていると茜は立ち上がり。
「私の師匠になってください!」
そう叫んだ。
ハァ!?
「ちょ!? なんでその男!? 師匠は葵おばちゃんだって言ったじゃない!」
「誰がおばちゃんやねん!」
そう言ってスリッパで紫髪の少女をたたく葵店長。
「ごめん! おばいやお姉ちゃん!」
葵さんに妹はいなかった筈だ消去法で親戚!?
そう言えばさっき椿さんも屋良とかって!
確か葵さんの旧制は屋良だったような……
「だましたな椿!?」
「ばれちゃったす! 先輩を立ち直させよう作戦!」
「そこまでばらすな!」
葵さんはスリッパで椿さんをたたく。
立ち直せよう作戦?
「あーまぁ、なんやお前もそろそろ前に進んで楽しんでいいと思うで? あいつもそれを望んどる」
店長は頭をかきながらそう言う。
まさか俺は楽しんで……あれそう言えば最後に笑ったのいつだっけ。
覚えている最後の笑いはあの人との最後の対局……
そうか俺楽しくなかったんだ。
あの人を失ってから楽しい対局なんて……
「もしかしてやっと気づいたんか? あいつを失ってからお前はこの店を守るために笑うって感情を無くしてしまってたんや。ほんまにすまん。お前の笑顔を奪ってしまって! あの時のわしはあいつを失って荒れとった。だからこの店を守れるのは自分だけやと覚悟を決めたんやろ?」
そうだあの人が一番好きだった場所守らなきゃ……
そのためなら……
突然柔らかい感触が身体を包み込む。
「もうええんや、もう私も大丈夫や。おまえは好きに笑ったらええ。好きに打ったらええ」
「葵姉ちゃん……」
「師匠って呼べっていつも言っとろうに……今日だけやで……」
俺はその日涙を流した。
あの日から流すまいと誓っていた涙を
「昨日はすみません!」
俺は昨日の動揺して抱き返した事を謝る。
「気にすることあらへんで昔に戻ったみたいにお姉ちゃんと呼ばれんのも悪くなかったでまた呼ぶか?」
「しません!」
俺はニヤついた葵店長から逃げるようにキッチンを後にする。
「ココア用意しとくでー!」
「あ、ありがとうございます!!」
やはり少し恥ずかしい。
「懐かしいっすねー ココア 私も飲もうかなーもちろんアイスで」
「き、聞いてたんですか椿さん!?」
「えぇもう最初から。私の事も昔みたいに椿お姉ちゃんって」
「ほら仕事しますよ!」
「待ってくださいよー」
今さら呼べるか!
「お邪魔しますー」
「お邪魔」
「お、お邪魔しますぅー」
昨日の三人が入ってきた。
「昨日はごめんね。おとなの泣き顔なんてキモかったよね?」
「別に私は……」
「私の方がキモいですし……気にしないでください!」
「大丈夫ですよ師匠!! 誰にも言いませんから!」
「ありがと 師匠!?」
俺は茜ちゃんのおかしな一言に驚く。
俺が師匠!?
そう言えば昨日師匠になってくれとか言われたような……
「茜の奴あんたを師匠にするって聞かないのよ」
「だって麻雀も上手いし熱いし師匠にぴったりじゃん」
「おれ認めてないから!」
「え? でも昨日否定しませんでしたよね?」
「いや昨日はそれどころじゃ.……」
時計がお昼の12時を告げるべく鳩が飛び出す。
「茜部活!」
「そうだった! また部活終わりにきますから~」
「あ、ありがとうございました!」
そういって三人はここを後にする
まるで台風のような三人組だ。
だがその三人が特に茜が俺の心の靄を吹き飛ばしてくれたありがとう……
「なぁーに上手いこと言ったみたいな顔してるんすかはやく仕事するっすよー」
「それ俺の台詞!」
俺は仕事を開始する。
笑顔で。