僕の姉は殺人鬼~そんな姉に溺愛されてていいのか!?~   作:あずきBAR

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第十話 ルドベキア

一週間前、鳥花のもとに、このようなメールが届いた。

【徒花極楽鳥花、我々は貴様を必ず殺す。今は亡き彼の者のために】

「いやー焦ったよな。身元が特定されてんだろ?もしかしたら俺の自慢の武器コレクションが荒らされちまうんじゃないかと、嫌な想像までしてしまった」

「...」

プレイヤーが到着すると予測されている空港を歩きながら、会話......というよりも一方的な自分語りを私は聞かされていた。

本当に嫌になる。武器を集めることの、なにが楽しいというのだろうか。私たちには冷徹があり、武器なんて使う必要すらない。無用の長物だ。長物......

私は鳥花がからっている巨大なゴルフバッグの中に入っている例の持ち手がやたら長いハンマーを思い浮かべる。

あの私たちには無駄なハンマーを無駄に奪ったせいで、これから無駄な戦いが始まり、無駄な時間を過ごす。そのせいで、私と椿は無駄に引き裂かれる。ああもう全部が無駄だ。無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄。

「ふむ。やっぱり椿が離れると目に見えてテンション下がってるな」

「......そうですね」

「淡白だな。まぁでも初めて会った時より、だいぶ喋ってくれるな。あの時は生きてるかどうか怪しかったからな。今も少し怪しいがな。ははは」

鳥花は「ははは」と言う言葉自体は発しているものの、全くもって表情は変わっておらず、相変わらずの無表情だ。私は鳥花のこういうところも苦手だ。なにを考えているか分からず、そのくせ、よく話しかけてくる。この人は昔から不気味だ。

その不気味だと思う人から、遠回しに不気味だと言われるようなことは、最早、徒花同士の醍醐味みたいなものだ。みんながみんな、自分以外のみんなを変だと思っているのだ。

「あぁ、そうそう。会話に花を咲かせるのは良いが、後ろに気をつけろよ」

鳥花が小声で話す。

「言われなくても分かってます」

あと、花を咲かせているのは鳥花だけだ。摘み取ってやろうか、そろそろ。

ああ、どうにもイライラする。

どうせ隣に私がいる状況では、プレイヤーはしばらく仕掛けてこないだろう。

私の心の健康のため、迅速な任務遂行のため、そして私と椿が再び会うために、ここからは別行動とさせてもらおう。

「鳥花さん。任せてもいいですか?単独の方が、お互い動きやすいでしょう?」

「あぁ、構わない。ただし、そっちにも行くだろうから、警戒しとけよ」

「分かってます。年上だからって子ども扱いしないでください。職歴は私の方が長いんですから」

「ははは。それもそうだな。そっちの心配はしなくてよさそうだ。そんで、こっちも心配はいらないかな?」

「...いるなら、なんのための冷徹ですか」

武器を大量に隠し持っていて、その上で冷徹まで持っているなら、油断しない限りは問題ないはずだ。

なぜなら相手は生身なんだから。

 

「プレイヤーは冷徹を持っていない?」

「はい、そうなんです。そもそも、冷徹をメインで使っている日本の方が世界的には特殊なんですよ」

「そういえば、なんで日本は冷徹なんて使ってるのかな?」

当たり前のように僕の身体に馴染んでいるが、どう考えても人を殺す上ではここまでの力は必要ない。

岩を豆腐のように削り、音速で飛びまわることができる冷徹は、人を殺すにはオーバースペックだ。

殺しすぎる程に殺してしまう。

「きっと、こういう事態を防ぐため、防げなくとも、余裕をもって対処するためです。日本は他の国々と違って、少子化の傾向を辿っていて、そもそも人口削減の必要性が薄いんです。だから、人類選別人の人数も他の国々よりも圧倒的に少ない。

それでも、わざわざ冷徹を使うのは、力を誇示するためです。くだらないですよね。徒花はそんなことに自分たちの人生を利用されてるんですよ」

向日葵君は憂うように、自分を嘲るように語る。

「僕には、できるだけ正しく生きることしかできない」

徒花の中にも、正義の心を持とうとする人がいたのか。そんな志を持つ向日葵君も、いつか枯れる時がくるのだろうか。殺しになにも思わなくなり、返り血で正義が赤く染まるその時が。

それは嫌だな。せめて枯れる日が少しでも先になったらいいなと思う。

「その正義は、絶対に無駄にならないよ。正しくあり続ければ、君には幸せになれる日がくるはずだ」

「ふふふ、ありがとうございます。優しいんですね」

柔らかく笑う向日葵君は、まるで天使のようだ。

「でも、僕はもう幸せですよ」

「え?そうなの?」

さっきまでの話だと、向日葵君は正義を持っていて、人殺しをよく思っていないはずだ。それなら、今の日々のどこに幸せを感じるのだろう?

「利用されているとはいえ、僕は本当に幸せです」

 

向日葵君の髪は動くたびにふわりと揺れて

 

「だって、椿さんや鬼灯さんたちと会えて」

 

その目はキラキラと輝いていて

 

「圧倒的な力を手に入れられて」

 

纏う純白の服は、まるで天使の翼のようで

 

「罪人を裁くことができるのですから」

 

その思想はイカれていた。




ルドベキア
花言葉「正義」
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