僕の姉は殺人鬼~そんな姉に溺愛されてていいのか!?~   作:あずきBAR

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第十一話 オリーブ

向日葵君は「罪人を裁く」と言った。それは危険な思想だが、その思想は僕にだってある。

加藤を殺した時の僕が、まさにそんな感じだったし、普段からターゲットを悪人ばかりに絞っているのも、そのような考えからだろう。

ただ、「罪人を裁く」ことを幸せだと感じたことはない。悪人であろうと、人は人。殺した後には不快感がつき纏う。それが普通の人より、ずっとマシというだけ。

大体の人間が、人殺しをするとしたら僕のような感じになると思う。が、向日葵君は「罪人を裁く」ことを幸せだと言った。

穢れを知らない無垢な天使のような表情で、まるで幸せを象徴するように。

 

「......そうか、それは良かったね」

「えぇ、私は元々この世界に罪人がのさばっているのが嫌だったんです。それが当たり前になっているのもね」

向日葵君が微笑む。

「まぁ、時おり国から無罪の人を殺せと言われるのは気にいりませんがね」

「それは僕も思うよ。向日葵君の徒花の必要性についての話を聞いて、さらに思う」

人口削減の必要性が薄いなら、老人ホームなど襲わせなくたっていいのに。

「邪魔だと思ってるってことでしょうね。まったく......罪深いですね。いつかまとめて断罪しなければ」

それは是非とも期待しておこう。

というか、そんなことができるのだろうか?

二ヶ月前、花育さんが、僕の冷徹のメンテナンスについてこようとした鬼灯さんに対して、謎の端末を使って、動けなくさせていた。あの謎の端末こそが国が徒花につけている首輪なのではないないかと、僕は考えている。

鬼灯さんは腕と足、つまり冷徹を動かせなくなっていた。だが、それ以外は普通に動いていた。だから、あの端末はきっと冷徹をコントロールできる端末なのだ。

僕は常々、国に対して思っていた。こんな力を持たせておいて、もしも反逆されたらどうするつもりだと。だが、違うのだ。この冷徹こそが、徒花を縛る鎖なのだ。

つまり、僕たちは国に逆らうことなどできない。向日葵君の予定は夢に終わる。

「できないと思いますか?」

向日葵君が僕の心を読んだかのように言ってくる。

「うん、できないと思う。この前さ、花育って人がなんかのリモコン?みたいなのを使って、鬼灯さんの冷徹を動かせなくさせていた場面を見てね。あれをされたら、徒花は反抗しようがないんじゃないかと思ったんだ」

「あ〜、"キルスイッチ"のことですね。実は、それを無効にするシステム"コマンド・リフューズ"が私の冷徹にはあるんです。他にもいろいろな機能がありますよ」

向日葵君はキラキラとした目で、自慢するように言う。

新たな用語が多くて、いまいち分かりづらかったが、つまりは冷徹を封じられることがない、ということらしい。

「そんなこと許されるのかい?」

「もちろん許されないですよ。だから自分でこっそり改造してるんです」

個人が改造できるような代物ではないと思うのだけど、さも当たり前のように向日葵君は語る。

冷徹の力を一方的に振るうことができるならば、たしかに可能性はありそうだ。その上、他にも機能があるというのだから、向日葵君の今回の仕事に対する余裕の態度も頷けるというもの。

ただ、それは油断ではないのか?

辺りを見渡す。今のところ、プレイヤーが仕掛けてくる予兆は感じない。空港だから、当然人がいて、ここでは仕掛けてこないだろうし、ヤツらの目的は僕らではない。が、狙われることだって十分に考えられる。今にも、通りすがりの人間が襲いかかってくるかもしれない。

ドンッ

考え事をしながら歩いていると、ふいに隣から人と人がぶつかる音が聞こえた。もしかして!と思い、焦って向日葵君の方を見るが、なんてことはなかった。

どうやら向こうから走ってきていた4〜5歳の男の子が、向日葵君にぶつかってコケてしまったらしい。

男の子は、知らない人にぶつかったことへの恐怖で泣きかけているが、そこに向日葵君が手を差しのべる。

「大丈夫ですか?ごめんなさい、私の注意不足です」

その優しい言葉に男の子は顔を明るくし、向日葵君の手を掴む。

その温かな光景に安堵する。

向日葵君は、過激な思想こそ持っているが、間違いなく根は良い子であるのだ。

この男の子も、こんな些細な出来事を何度も経験し、生きていくのだろう。自分が生きている世界の裏側で、人類選別が行われていることなど露知らずに、幸せに生きるのだろう。

そんな二人が手を重ねる。少し見とれてしまうほど平和で、今の僕には素晴らしい光景だ。

と、思っていた次の瞬間、男の子が唐突に小型のハンドガンを取り出し、向日葵君を撃った。消音装置がついていたのか、音はしない。

反応できずにいた僕が目にしたのは、向日葵君が銃弾を掴んでいる姿だった。向日葵君がそれを男の子の頭に投げると、男の子の頭に綺麗な穴が貫通し、後ろに倒れる。

向日葵君は急いでタオルを取り出し、男の子の死体の頭を包んで、ターバンのようにして隠し、持ち上げる。

「マズイですね。はやくこれをなんとかしなくちゃ。どうやら、プレイヤーは場所を選ばないようです」

「......え?」

この二人、ほんの十秒くらい前まで、手をとっていたよな?

なんで、その内の一人が死んで......は?

「椿さん!動きましょう!」

「...あ、うん。ごめん」

少し考えれば分かることも、一度に大量の情報を受けると、情報を整理しきれず脳がパンクする。

「徒花はね!脳がパンクしたとて動かなければ、今度は物理的に脳が壊れるから!困ったらとにかく動いてね!」とは鬼灯さんの言葉だ。

脳が壊れる......この男の子のようにか。




オリーブ
花言葉「平和」
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