僕の姉は殺人鬼~そんな姉に溺愛されてていいのか!?~   作:あずきBAR

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第十七話 ゴクラクチョウカ_満

まず初めに、絶叫で目が覚めた。どうやら自分は、あの吹き矢で気を失っていたらしい。

次に、絶対に自分が死ぬのだと分かった。ひどく気分が悪かった。

次に、絶壁かと思えるほどに重い扉を開けた。その重さは、自分が死にかけている証拠であった。

次に、絶海が見えた。世界が真っ赤になっている。よく見ると、全て血であることに気づいた。

次に、絶望して死んだであろう表情の死体を見つけた。たくさん。数えられないほど。

次に、絶景だと感じた。

最後に、断絶させてはいけないと思った。自分の意識を断絶させてはいけない。

こんなに美しい景色、もうちょっと眺めなければ、損だ。

思えば、自分はこんな超非日常を求めていたのかもしれない。

血の海。肉の道。どこかから聞こえてくる叫び声。

あぁ、良い。

これだ。こいうのが見たかったんだ。

ここにある死んだ命の全てが、一つ一つ必死に生きてきた、かけがえのない大切な命。

その価値に、値段なんてつけられない。ダイヤモンドよりも、世界遺産よりも、太陽よりも、尊い命。

そんな命が消える瞬間には、一生懸命組み立てたトランプタワーが崩れるときのような美しさがある。

そんな美しさが今、自分の視界を埋めつくさんと広がっている。

自分がなぜ、人を殺そうと思ったのか、その原点を思い出した。

自分は、見たかったのだ。

誰かが必死に積み上げたものが崩れる瞬間が。

こんなことを忘れて、人殺しをしていたなんて、馬鹿なことをしていたな。殺した相手に申し訳なくなってくる。

ただ、死ぬ前に思い出せて本当に良かった。

実に、晴れ晴れとした気分だ。

もうすぐ死ぬとはいえ、今は生きることが楽しくて仕方ない。

あの女にも、今の自分を見せてやりたい。「お前が言った通り、華々しく散れるぞ」と言ってやりたい。

冷徹とか、プレイヤーとか、徒花なんて、最早どうだっていい。

今はただ、死ぬまで楽しもう。

 

真っ赤な絶景に心を奪われ、恍惚としていると、

「◆*∀○¥^¥○○¥!!」

と何か叫ばれた。

おそらく中国語なのだろうが、何を言っているかはさっぱりだ。

勝手に意味を解釈して、返事をする。

「あぁ、一緒に楽しもうか」

当然、意味は伝わっていないだろうから、自己満足な返事ではある。

ただ、その言葉に乗せた想いは伝わったようで、

「▽▲△□◎○∥§!」

と言って、持っていた槍で突進してくる。

「せっかちだな。すまないが、先に逝っててくれ。俺もすぐに逝くからな。もう少し待ってくれ」

槍をハンマーで下から掬うように弾き、そのまま頭を叩き潰す。

その直後

グサッ

と音がした。

おや?自分の腹に鎌が刺さっている。

鎌を投げてきた者を探すため、周囲を見回すと、鎌の相手どころか、ざっと数えて三十人くらいのプレイヤーが自分を囲んでいた。

プレイヤーのポリシーがよく分からないな。

わざわざ殺害予告を出したため、正々堂々と殺しに来るかと思えば、吹き矢を使ったり、集団で囲ってきたりする。

そのやり方は、ちぐはぐで、イマイチ要領を得ない。

まぁでも、別にそんなことどうでもいっか。

相手が殺しに来た。自分は殺し返す。ただ、これだけのことだ。

 

銃を乱射してくる無粋なヤツがいたので、そこに槍を持っていたプレイヤーの死体を投げつける。

腹に刺さった鎌を抜き、アンダースローで投げつける。

 

 

自分の思考が他人に理解されるだなんて、思わない。別に理解されなくたっていい。

もしも、自分語りをすることがあれば、俯瞰視点とか、第三者視点での話でないと、きっと誰にも理解されないのだろう。

でも、それでよかった。自分の人生なんだから、自分だけが理解して、自分だけが楽しめればいい。

そう、思っていた。

 

 

次々に襲ってくるプレイヤーをハンマーでなぎ倒し、刀でしっかりトドメを刺してやる。

 

 

彼等は多分、自分と同じで退屈な日々にウンザリしていたのだ。

だから、きっとこれは復讐と題した、一種のゲームなのだ。

自分は昔、派手なアクションゲームの主人公になりたいと思ったことがあった。

彼等も、似たようなことを思ったから、人類選別という名のゲームに参加して、そのプレイヤーとなっているのだろう。

こんなに他人と分かり合えているのは、生まれて始めてかもしれない。

 

 

気づけば、自分の首と頭と心臓が破壊されていた。

まぁ、どうせ死ぬのだから、こんなのは些細事だ。

 

 

ふと、吹き矢の女に言われた「おじさんは、はたから見たら、ただの人間なんだろうね」という言葉が頭をよぎった。

そんなことを気にする自分の懐の狭さを恥じつつ、たしかに、そうだったかもしれないと認める。

今までの自分は、徒花家に受け入れられるように最低限、自分を律してきた。

だが、今の自分は違う。

いくら攻撃を喰らおうとも、鬼のように暴れ回る自分は、殺人鬼だ。

今の自分は、初めて会った時の鬼灯のように美しく、力強く、鮮やかに輝いている。

 

 

左足を切り落とされたため、とても動きづらいが、最後の力を振り絞って、残り五人となったプレイヤーにハンマーを叩きつける。

 

 

今の自分に、何一つ後悔などない。

最後に、こんなに楽しい殺人ができたし、殺人鬼になることができた。

自分は、自分が求める全てを手に入れることができたのだ。

 

 

殺したと思った最後のプレイヤーが、突如立ち上がり、自分の首を絞めつける。

ナイフで首を切り落とすが、なんと、そのプレイヤーは首がないままに、私の首を絞め続ける。

「ははは、面白いヤツらだな。凄いじゃないか」

自分にできる精一杯の笑みで、ここにいる全てのプレイヤーを称える。

あぁ、もう満足だ。

これ以上ないほど、最高の最後だ。

首なしのプレイヤーは、死後硬直しているのか、ピタリと動くことなく、なおも自分の首を絞める。

空へ最も近づけるこの場所で、みんなと一緒に、自分はあの世へと旅立つのであった。




ゴクラクチョウカ
花言葉「全てを手に入れる」
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