僕の姉は殺人鬼~そんな姉に溺愛されてていいのか!?~   作:あずきBAR

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第十八話 イトスギ

向日葵君と合流し、改めて空港を見回す。

地獄絵図という言葉がよく似合う風景が広がっていた。そこらじゅう、いたる所に死体、骸、亡骸、屍。見渡す限りの血の海。海がないところには、代わりに爆発跡と焦げた頭があった。

きっと、この空港にいた人は全て......いや、考えるだけ無駄だ。分かりきっていたことだ。

進むほどに死体の数が増え、地獄絵図が、より悲惨になっていく。

そして、最も悲惨なその場所に、彼と彼等がいた。

「...」

まるで、元からそこにあった彫刻のように、彼は立ったまま死んでいた。

身体中に無数の傷を負い、心臓と頭に穴が空いており、左足は無くなっている。

その彼の首には、同じく立ったまま死んでいる首なしの死体が、彼の首を求めて死んでいた。

両者ともに、どこの誰かも分からない死体を踏みつけており、あまりに冒涜的だ。

その他の死体もまた、死体の上に重なっており、まさに死体の山となっている。

「鳥花さん...」

その壮絶な死に方は、弁慶を彷彿とさせるが、弁慶だって、ここまでの惨状で死んではいないだろう。

とても一人間の死に方とは思えない。

その他の死体は、一般人も混じっているだろうが、おそらくプレイヤーのものが大半だ。

どうやら鳥花さんは、三十人ほどのプレイヤーを殺してしまったらしい。

そして、それと引き換えに死んだ。

死んだ。

死んだ...のか?

死ぬって、なんだ?

たしか僕は、両親が亡くなったときにも、こんな感覚になった覚えがある。

「死」の概念が分からなくなる、この感覚。

鳥花さんとは、話した時間も少ないし、決して家族と言えるような関係性とは言えない。

ただ、この日本の中で数少ない人類選別をしている徒花家であり、仲間であった。

その仲間が死んでいるのが、信じられなかった。

そりゃあ、人間というのは必ず死ぬようにできている。

その事は分かっている。

毎日どこかで誰かが死んでいるのも分かっている。

ただ、それが身内になるだけで、どうしてこんなに受け入れ難いのだろうか。

吐き気がする。

身体の震えが止まらない。

身体中が「死」を拒絶している。

胸の奥の方から、真っ黒な何かが僕の視界を埋めつくさんと、這い寄ってきている。

その真っ黒な何かは、僕が今一番知りたくないことを無理矢理に理解させる。

誰であろうと必ずいつかは死ぬ、と。

僕は今ようやく、徒花も死ぬという事実を理解したのだ。

そんな当たり前のことを、やっと理解した。

僕も、向日葵君も、そして鬼灯さんも、いつか死ぬ。

「ねぇ、鬼灯さん。鳥花さんって......」

「ツバキち」

鬼灯さんは僕を抱きしめ、囁く。

「帰ろう」

その言葉は優しく、でも力強く僕の中に流れ込む。

「鬼灯さん......」

「帰ろう」

「......はい」

僕も、向日葵君も、鬼灯さんもいつか死ぬ。

それでも今はただ、生きたい。

僕はこの人と一緒に、生きていたい。




イトスギ
花言葉「死」
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