僕の姉は殺人鬼~そんな姉に溺愛されてていいのか!?~ 作:あずきBAR
向日葵君と合流し、改めて空港を見回す。
地獄絵図という言葉がよく似合う風景が広がっていた。そこらじゅう、いたる所に死体、骸、亡骸、屍。見渡す限りの血の海。海がないところには、代わりに爆発跡と焦げた頭があった。
きっと、この空港にいた人は全て......いや、考えるだけ無駄だ。分かりきっていたことだ。
進むほどに死体の数が増え、地獄絵図が、より悲惨になっていく。
そして、最も悲惨なその場所に、彼と彼等がいた。
「...」
まるで、元からそこにあった彫刻のように、彼は立ったまま死んでいた。
身体中に無数の傷を負い、心臓と頭に穴が空いており、左足は無くなっている。
その彼の首には、同じく立ったまま死んでいる首なしの死体が、彼の首を求めて死んでいた。
両者ともに、どこの誰かも分からない死体を踏みつけており、あまりに冒涜的だ。
その他の死体もまた、死体の上に重なっており、まさに死体の山となっている。
「鳥花さん...」
その壮絶な死に方は、弁慶を彷彿とさせるが、弁慶だって、ここまでの惨状で死んではいないだろう。
とても一人間の死に方とは思えない。
その他の死体は、一般人も混じっているだろうが、おそらくプレイヤーのものが大半だ。
どうやら鳥花さんは、三十人ほどのプレイヤーを殺してしまったらしい。
そして、それと引き換えに死んだ。
死んだ。
死んだ...のか?
死ぬって、なんだ?
たしか僕は、両親が亡くなったときにも、こんな感覚になった覚えがある。
「死」の概念が分からなくなる、この感覚。
鳥花さんとは、話した時間も少ないし、決して家族と言えるような関係性とは言えない。
ただ、この日本の中で数少ない人類選別をしている徒花家であり、仲間であった。
その仲間が死んでいるのが、信じられなかった。
そりゃあ、人間というのは必ず死ぬようにできている。
その事は分かっている。
毎日どこかで誰かが死んでいるのも分かっている。
ただ、それが身内になるだけで、どうしてこんなに受け入れ難いのだろうか。
吐き気がする。
身体の震えが止まらない。
身体中が「死」を拒絶している。
胸の奥の方から、真っ黒な何かが僕の視界を埋めつくさんと、這い寄ってきている。
その真っ黒な何かは、僕が今一番知りたくないことを無理矢理に理解させる。
誰であろうと必ずいつかは死ぬ、と。
僕は今ようやく、徒花も死ぬという事実を理解したのだ。
そんな当たり前のことを、やっと理解した。
僕も、向日葵君も、そして鬼灯さんも、いつか死ぬ。
「ねぇ、鬼灯さん。鳥花さんって......」
「ツバキち」
鬼灯さんは僕を抱きしめ、囁く。
「帰ろう」
その言葉は優しく、でも力強く僕の中に流れ込む。
「鬼灯さん......」
「帰ろう」
「......はい」
僕も、向日葵君も、鬼灯さんもいつか死ぬ。
それでも今はただ、生きたい。
僕はこの人と一緒に、生きていたい。
イトスギ
花言葉「死」