僕の姉は殺人鬼~そんな姉に溺愛されてていいのか!?~   作:あずきBAR

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第七話 アイビー

鬼灯さんが変だ。前から変ではあったが、この前の老人ホームでの「お姉ちゃんって呼んで」という発言以降、特に変だ。

まず、あの日帰ってきてからすぐに僕の部屋へと自分の物を持ち込んできていた。

「あの、鬼灯さん。なっ、なにをしているんですか?」

「お引越し!仲良くなるために必要だからね!」

なんて言っていた。ベッドだけ持ってこないな、と思っていたら、どうやら捨てたらしい。僕と一緒に寝ると言っている。

こんな人だったか?前までは、僕のことをサポートしつつも生暖かい目で、少し離れたところから見守っててくれていたはずだ。距離の縮め方がはやいってレベルじゃない。

鬼灯さんは一体どうしたというのだろう。

 

ピンポーンとマンションのチャイムが鳴る。

「あっ僕でますね」

「私も!」

ここ最近、鬼灯さんと過ごす時間が増えていることに、少し僕は不安を覚える。チャイムにまでついてきている現状は、あまりよくない気がする。

そういえばここは一応仮の住居であるというのに、チャイムの音を聞いたのは初めてだ。

それもそのはず、そもそも来る人間がいないのだ。僕は表向きでは失踪したことになっているし、鬼灯さんは……まぁ普通の人と知り合う機会なんてないだろう。宅配は、情報秘匿のためにまず使えない。となると、来た人間は当然こっち側。

「おーす。メンテナンスの時間だ」

「花育さん、お久しぶりです」

「です!」

「あー?なんか仲良くなった?ベッタリだなー」

「でしょー!エヘヘ。部屋も一緒で、寝る時も一緒なんだ〜」

「......そうか。まー、んなことはどうでもいいんだ。椿...だったよな。借りてくぞ」

「あっ!私もついて...」

「くるな。お前はこの前メンテしたばっかだろー。今回は椿だけだ」

「別にいいじゃん!メンテナンスはいいから、ついてくだけだって〜」

「あーも、だりーな」

花育さんはポケットから何かの端末を取り出し、操作する。

すると鬼灯さんが前のめりに倒れる。倒れきるすんでのところで抱きとめると、鬼灯さんが悔しそうに言う。

「なんで〜!ケチー!」

「そんじゃ、行くぞー」

「?......えっとすみません。行ってきます」

よく分からないままに鬼灯さんを廊下の壁に寄りかからせ、急いで靴を履く。

「ツバキち!抱っこして連れてってよ!」

けっこう往生際悪いな、この人。

「無視だ無視。れっつごー」

 

外を歩きながら尋ねる。

「メンテナンス、って冷徹の?必要あるんですか?」

「そりゃーお前。機械なんだから必要だろー」

「でも壊れたりはしてないですよ」

「壊れてからじゃー遅いの。最低でも一ヶ月に1回はメンテしなきゃー。それ何億かするんだぜー」

「なっ!えっ!?これそんな高級品だったんですか!?」

僕はそんなものを振り回していたのか...加藤の時にはレインコートを着ていたとはいえ、レインコートから出ていた部分は雨にさらしていたし、そのまま踏んづけたり、殴ったりしていたっけ......もっと丁重に扱わなければ。

「そんなものを、よく人殺しのために使おうと思いましたね。どっかのお偉いさんは」

「"人殺し"じゃなくて人類選別。"使おうと思った"じゃなくて、そのために造ったんだー。それだけの価値があるんだよ。人類選別には」

「じゃあ、どうしてそんな重要なものを、わざわざ僕のために造ったんですか?一般人だったんですよ、僕。訓練を積んだ人とかがつけた方がいいんじゃ?」

「そもそも、多分お前が徒花になったのはー......あぁーいや、なんでもない」

何を言おうとしたのだろう?

「訓練を積んでからってやつも、たまにいる。ただ、実際に冷徹を使って慣れてく方がずっと効率的なんだ。それに、それはお前専用に造ったわけじゃないんだぜー」

「僕専用じゃない?義手とか義足って、人によって全然ちがうんじゃ?サイズとか太さとか」

「冷徹は、人につける前に予め造ってあって、これが10種類ほどあるんだー。だけど、そんな大雑把だと、お前の言う通り個人への対応はできない。そこで俺の仕事だ。個人の肩と股関節を冷徹に適合させる手術。つまり、冷徹と肉体の接着部分を造るんだ。後はそいつの元のサイズに近い冷徹をつけるだけ。お前専用に造ったのは肩と股関節だけー。冷徹は使い回しだ」

「使い回し?って誰の?」

「ついこの前に、死んだやつのだ」

「そうだったんですか。冷徹を持っていたっても、老いや病気に対してはどうしようもないんですね」

「寿命や病気で死んだ徒花は、俺の知る限りいないぞー。全員事故死か、人に殺されている」

「はい?冷徹があれば、銃を持つ相手にだって十分すぎるほどでは?前に軍隊に匹敵するって言ってたじゃないですか」

「徒花を殺すのは、大抵その徒花だ。なんなら、徒花を殺すための存在だっているんだぜ?」

「なんでそんなこと...」

「人ってのは過剰な力を持つと腐っていくんだ。徒花の半分、いやそれ以上のやつは、半年もしないうちに枯れていく。そして、そんなやつは世界にいらない。だから同じ徒花に殺される」

「そんな......僕もいつか枯れてしまうのでしょうか」

「さあなー、まぁでも、枯れても徒花を続けているやつはいる。マシな枯れ方をしたやつらだ。鬼灯とか正にそんな感じだ。まぁ、アイツはこれからマシじゃなくなるかもしれねぇがなー」

「鬼灯さんが?」

「さっきさー、鬼灯をついてこさせなかったのは、理由があってなー、俺はあの様子を見て、ちょっとマズイと思ったんだ。椿、お前もそう思ってるんじゃないか?」

「まぁ、はい。そうですね」

僕は鬼灯さんが、やたら僕に構うようになったのは、正直嬉しいのだ。というか僕くらいの年で、年上の綺麗な女性に好かれて嬉しくない人なんて存在しないだろう。

ただ、問題はその速度と大きさ。

このまま、これが膨れ上がっていけばいずれ、そう遠くないうちに爆発する気がするのだ。しかも、鬼灯さんだからどんな爆発の仕方をするのか検討がつかない。その爆発が僕は怖くてたまらない。

「これはなー、お前が今想像しているよりも非常にマズイ状況なんだよー」

「非常にマズイって、具体的にどうマズイんですか?」

「多分お前がどっかしらで死んだ時に、アイツも死ぬ。自殺するだろうなー」




アイビー
花言葉「永遠の愛、死んでも離れない」
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