アリウス生まれ、トリニティ育ち。   作:ぱんだひーろー

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時系列的には〔11〕の少し前です


神秘の運用〔100〕

 進級、2年生となった。友人もでき、そこそこ顔が売れるようにもなった。学力もぐんぐん伸びている。

 

 しかし、ここで問題が。

 

 強さに限界が来た。

 もともと訓練は怠っておらず、正義実現委員会の委員長、剣崎ツルギ先輩との模擬戦でもそこそこの勝率(それでも2割行くかどうかだが)を出せるようにはなった。しかし、気づいてしまった。

「私、これ以上強くなれなくない?」と。

 

 圧倒的に搦手が足りない。

 

 それはそうだ。

 そもそも武器がショットガンと小銃*1であるし、戦い方もツルギ先輩とほとんど同じ。ならば、場数の多いツルギ先輩の方が勝ちやすいに決まっている。

 

 武器は変えられないし、戦い方も染み付いている。ならどうしようか? 

 手の小さな炎でコーヒーを沸かしながら考えていると、ふと気づいた。

 

 ……この炎だ。この炎の火力や形作り方でなんとか出来るんじゃないか? 

 

 そう考えた翌日から頑張って炎の出力増加訓練を始めた。だが、そうそう簡単にできることではない。最初は、まっっっっっっったく上達せず、せいぜいアイスコーヒーをぬるくするのが精いっぱいであった。

 

 これは独学では無理だ。そんなときであった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 いつも通りに放課後教室で悩んでいた私に、一人声をかける人がいた。

 

「君、浦和ハナコを知らないか?」

「? えっと、ハナコならこの時間は寮ですかね.というかあなたは?」

「ん? ああ、そうだったね。私は百合園セイア。サンクトゥス派の次期首長になるんだ」

「炎読リエ、フィリウス派です」

「そうなのか、いえ、予知夢で君が悩んでいるところは常々見ていたよ。軽いアドバイス程度ならできるけれど、どうかな?」

「では、席を移しましょう。これだと、フィリウスとサンクトゥスがつながっているように見えます」

「そうだったな。全く、話一つだけなのに面倒なことだ」

 

 心底面倒な顔をしながら心底面倒な口調で席を移した。これだからトリニティの政治体系は好きになれないのだ。ここだけを見れば、アリウスの方が団結力がある気さえしてくる。

 

「それで、予知夢とは?」

「そっちが先かい? それが私の少々特殊な能力だ。先の未来を夢で見る形で知ることができるんだ。残念ながら、指定はできないんだがね」

 

 なるほど。だからこの時期にリスクを負ってでも私に接触してきたのか。

 

「その様子だと意図に気付いたみたいだね? 随分と理解が早いじゃあないか」

「……そうやって仕組んだでしょうに」

「ああ、気分を悪くしたら申し訳ない。ただ、少しいじりがいがありそうなものだったからね」

 

 何だこの人。アリウスではこんな人を見たことがなかったものだから、対応の仕方が全く持ってわからない。心の中のA4用紙に新しく「少しだけ政治色が強い人用応答マニュアル」を書き留めておく。

 

 1つ、とりあえずいい感じに相槌を打つ。

 

「……なるほど」

「おや? 随分と呑み込みがはやいじゃないか。これならアドバイスも早く終わりそうだ」

 

 会話をしているうちに、二人は中庭に移動していた。中庭は、人気が全くなく、ここを普段私が使っていることさえも筒抜けになっているようだった。リエは密かにセイアを要注意人物(ストーカー)に指定した。

 

 さて、大事なのは駄弁った話ではなく、彼女のアドバイスである。すでにかなり行き詰まってしまっているものだから、早急な改善が求められる。

 

「して、神秘の極意というのは?」

「そもそも、神秘の利用というのは体内の神秘を能動的に放出する技術だ」

「なるほど?」

「そして、放出は本人のイメージによって達成される」

「つまり?」

「他人にアドバイスを求めても無駄だ、というアドバイスだ。自身のなかでイメージを膨らますといい」

 

 ……は? 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 絶句する私の顔を見て笑い転げながらセイアが去った後、リエは神秘のイメージを求めていた。アリウス暮らしであったリエには情報量が少ないのだ。そういうわけで、古書館*2に来ていた。

 

「失礼しまーす……誰もいないな」

 

 古書館。ただでさえ人が出入りしているところなんか見たことがない。そのくせ人の手が届きそうなところには埃が積もっておらず、まるで誰かが生活しているようで気味が悪い。そもそも古書専門の図書館なんて必要なのか? ていうかなんか息遣い聞こえない? 聞こえるよね? 幽霊? 

 そのようなことを思いながら奥の方へ進むと、なにやら作業をしているのか、ブツブツとなにやら話している声と、パラパラと本をめくる音が聞こえてくる。そしてさらに近づくと、本をめくりながらブツブツとなにかを話し続ける推定狂人が机に座っていた。

 

「……あのー」

「全く……この子たちをいつもいつもぞんざいに扱って……直すこちらの苦労も考えてくださいよ……全く」

「……すみません?」

「もう少しでこの子も治りますねえっと確かこの子は2列目の本棚の」

 

 ……全く反応しないではないか! フジャケルナ! モアイ! 

 流石に光量を変えれば集中力も切れてこちらに気付くだろう!

 

 カーテンをフルオープン!

 

「へぇぁあああああああっ!?!?!?」

 

 なんだこの声!?まぁそれはさておき。

 

「だ、だだだだだだだ誰ですかぁ!?」

「手荒な真似ですみません、私は炎読リエ、2年生です。ここには用があっt「そうですか!つまりこの子たちに興味があってきたと!」…あの、話聞いてます?」

「ああ、すみません。古関ウイです。そんなことより、この子たちに興味があるんですよね?そうですよね?」*3

「え?あぁ、まぁ…」

「そうですよね!?この子はXX年に書かれた現存していない────

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 というわけで、3時間ほど捕まって大量の古書を見せられた。後でアリウスからもらってきた*4古書を修復してもらおうかな。いや、違う違う、そうじゃない。大事なのはアイデアだ。幸いにも、これならイメージしやすいんじゃないか、というものは多く見せてもらった。

 

 天使の持つ剣。

 一度神を殺した槍。

 死神の鎌。

 

 だいたいこのあたりだろう。

 しかも、これらには強さ以前の、大事な大事な要素がある。

 

 カッコいい…!

 

 まず、頭の中でイメージをしてみる。炎の剣、かぁ…。刀身は燃えるように熱く、それでいて持ち手は手をつないでいるように暖かく。形は湾曲しておらず、芯のあるまっすぐさを。あとは形にするだけ…とセイアさんは言っていたが、どうだろうか。

 

 手からできる限りの大きさの炎を出して、イメージを手に集中させてみる。*5すると、みるみるうちに炎の形が変わっていく。手で握れるように細長く変化し、先が尖って変化が止まる。どこからどうみても剣だ、これは。目の前の木に向かって振ると、断面が焼けて切れた。大成功である。

 

 ちなみにその後の模擬戦では火傷一つ与えられずに大敗した。

*1
カスタムで圧倒的近距離用になっちゃったやつ

*2
他の自治区を探索する限りどこも図書館だったのにここは古書館である。不思議なものだ

*3
久々に古書に興味がある人が来て「ハイ」になっている

*4
パクってきたとも言う

*5
なにを言っているかわからないと思うが、本人もわかっていない。




さようなら7月。僕たちはこの夏休みを過ごしていくよ。
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