生徒会へのカチコミ〔101〕
ナギサ様の命令を受け、私は羽川ハスミ*1、守月スズミ*2と共に連邦生徒会へと来ていた。のだが…
どうやら考えることはどこも同じらしい、日にちが被ってしまったのは全くの偶然だが、カチコミをする以上人数は多い方がいい、まさに僥倖としか言いようがない。
というわけで、カチコミ!
「たのもー!現在の状況に対して説明責任を果たせ!」
「行政の麻痺に対して納得のいく説明をいただけないでしょうか」
他にも三者三様の抗議を見せる。このまま生徒会長か、次点の行政官が出てくれば楽なんだが…
そんなことを考えているうちに、奥の方から話し声が聞こえて、連邦生徒会の純白の制服が姿を現す。主席行政官*5と…誰?
≪Side T≫
気付けば、キヴォトスにいた。そのままにリンに連れられ、サンクトゥムタワー*6のエレベータ内で説明を受けた。
ここは「キヴォトス」。数千にも及ぶ学園が集まって形成された「学園都市」である。そして私は「連邦生徒会長」なる人物に選ばれてここにやってきたそうだ。
チリン、と音が鳴り、エレベータの扉が開く。
~レセプションルーム~
ざわざわとしていた。奥の方を見ると、なにやら言い争いが起きている。リンに似た格好をした生徒がこちらに気付くと、表情が柔らかいものになった。反面、リンの顔はしかめっ面だ。
「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!」
「主席行政官。お待ちしておりました」
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、現在の状況について納得のいく回答を要求しています」
「待っていた、七神リン主席行政官。こちらも余裕がない、できれば早急に現在の状況を…あなたは?」
生憎とこちらは何も知らない。そんなマシンガントークをされても困るのだが、私は今蚊帳の外である。
「面倒な人たちに捕まってしまいましたね…こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員、その他時間を持て余している皆さん。こんな暇そうな大事な方々がここを訪ねてきた理由は、よくわかっています。今学園都市に起きている混乱の責任を問うために…でしょう?」
「わかっているなら話が早い、で、どうするつもりだ?矯正局からの脱獄者、ありえないほどに増加した武器の不法流通、治安の悪化、その他諸々」
「こんな状況で、連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐに合わせて!」
どうやらキヴォトスは今、未曽有の大混乱の最中らしい。それの責任を追及するため、学園の上層部が来ている、ということだろうか。
「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」
「えぇっ…」
「…!」
「やはりそういうことか」
「サンクトゥムタワーの最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。認証を迂回できる方法を探していましたが…先ほどまで、そのような方法は見つかっていませんでした」
しかもかなりまずい状況だった。
「それでは、今は方法があるということですか、主席行政官?」
「はい、こちらの先生こそが、フィクサーになってくれるはずです」
「?」
「は?」
「この方が?」
“私?”
蚊帳の外から突然に役者となり、困惑を隠せない。一体私は何をするのか、よくわからないのが現状である。
「ちょっと待って。そういえば、この先生は一体どなた?どうしてここにいるの?」
「こちらの先生は、これからキヴォトスで先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」
“そうだったの?”
「そうだったの、って…しかも失踪した連邦生徒会長が指名とか、ますますこんがらがってきたじゃないの…」
“先生だよ、これからよろしくね。”
「こ、こんにちは、先生。私はミレニアムサイエンススクールの…って、今はそんなことよりも!」
「そのうるさい方は気にしなくていいです。続けますと…」
「誰がうるさい方ですって!?私は
“うん、よろしく。”
「…こほん。先生はもともと、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました。その名も、連邦捜査部シャーレ。単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。なぜこれだけの権限を持つ機関を、連邦生徒会長が作ったのかは不明ですが…」
「シャーレは、ここから30㎞程離れた外郭地区にあります。今はほとんど何もない状態ですが、そこの地下にとあるものが持ち込まれています。それをとりに行くのが、現在優先度が最も高いことです」
そう言ってリンはどこかに電話をかける。どうやらホログラム技術も発達しているらしく、すぐに生徒が空中に映る。
「モモカ?シャーレ宛にヘリを出してほしいんだけど…」
「外郭地区の?そこ今戦闘中だよ?矯正局から抜け出した不良達が部室目指して進んでるの。まるでそこになにか大事なものがあるみたいだけど?…あっ、デリバリー来たから電話切るね!それじゃ、頑張ってー」
ぷち。ホログラムが消えるとほぼ同時に、リンのしかめっ面は最高潮に達した。
“だ、大丈夫?”
「えぇ、大丈夫です…ん?」
ユウカ達の方をリンが見て、それはそれはとてもいい笑顔を浮かべた。ユウカはその視線に一瞬で気付き、明らかに面倒ごとに巻き込まれることを察する。
「な…なによ、そんなにこっちを見つめて…」
「ここに、各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです」
「えっ?」
「キヴォトスの正常化の為に、暇を持て余した皆さんの力が切実に必要です。行きましょう、シャーレに」
~移動中に自己紹介~
~D.U.外郭地区~
見れば見るほど、戦場であった。そこかしこにグレネードが投げられ、辺りの建物は半ば崩壊している。
「なるほど、掃討戦か。望むところ…」
「いや、ちょっと待って!なんで私達が不良達と戦わなきゃいけないの!」
「そういうものだ、諦めろ」
「それは聞いたけど…私これでも、それなりの扱いなんだけど…!」
“ごめんよ、ユウカ。今はなりふり構っていられないんだ、協力してくれないかな?”
「ぇ、いや、まぁ、先生が言うなら?仕方なく、仕方なくですからね!」
“う、うん…?”
ユウカはさっきまで、「私嫌です!戦いたくありません!」というオーラを全面に出していたのに、もうずいぶんと絆されている。他の面々はこれを見て、詐欺に引っ掛かりそうだ、とか先生はずいぶんと女たらしだな、とかいろいろと思うところはあるが、マシンガンの斉射に身を隠す。
「い、痛っ、JHP弾*7じゃない!」
「先生がいますから、その点に注意しましょう。私達とは違って、銃弾一つでも致命傷になる恐れがあります」
「ん、そうだな、先生は安全なところに…」
“わかった。でも指揮はさせてくれないかな”
「ええっ!?先生、指揮できるんですか…?」
「うーん、まぁ、先生だし?本人から言っているし、やるだけやってみるか」
「よし、じゃあ行きましょう!」
“スズミ、閃光弾投擲!ユウカ、リエ、前の遮蔽物まで前進して、ハスミは2人狙いの敵を倒して!”
「先生、ユウカさんのEXスキルはシールド展開です、ユウカさんがヘイトを買っているので、使ってみましょう」
「ユウカ、シールド展開!」
「『Q.E.D』証明、完了!」
ユウカが遮蔽から飛び出し、ヘイトを買いながら電磁的なシールドを展開。それを囲むように不良が遮蔽から飛び出す。
「スズミさんのEXスキルは範囲攻撃です、ご参考までに」
“スズミ、閃光弾投擲!”
「『オーダーメイド閃光弾』逃がしません!」
不良の塊に投げ込まれた閃光弾は強烈な光を発して爆発し、先生の初陣は快勝で終わった。
~シャーレ付近~
「もう少しでシャーレね!」
「ふふ…連邦生徒会の犬がやって来ましたね」
そんな簡単にシャーレに入れるはずもなく、狐の面を被った和服の生徒が、いかにもな雰囲気を醸し出している。
「!気を付けてください、今回の騒動の主犯格と思しき生徒、狐坂ワカモです!」
「先生、注意して戦闘を行ってください!」
“うん、みんな、始めよう!”
「はい!」
“ユウカ、前進!スズミとハスミは援護を!”
「生徒には攻撃タイプと防御タイプが存在します。リエさんの攻撃タイプの『爆発』はワカモの『軽装備』に効果的なダメージを与えられます。リエさんのEXスキルは指定した場所に移動可能です、範囲内にワカモを入れて使ってみましょう」
“リエ、ワカモの近くまで突っ込んで!”
“リエ、ワカモの近くまで突っ込んで!”
「『Per aspera ad astra』邪魔だ!」
突っ込んでショットガンと小銃の一斉発射を行うが、ワカモは一部除いて回避。そのまま銃剣での鍔迫り合いにもつれ込む。
「チッ…」
「うざったいですね…犬のくせに…!」
単純な力比べであれば負ける気はしない、そのまま目一杯銃を押し込む。やはりワカモは単純なパワータイプあのいつもダル絡みをしてくるティーパーティーのホストのようなタイプではなく、どちらかといえば技巧派の人物だったらしく、1mほど下がって間合いをとる、という選択をとった。
「先生、ここは任せて先へ行け!」
“了解!あとで合流しよう!”
さて、これで完全な1対1、始め…いない
逃げ足の速い子狐である、私もシャーレに向かうとしよう。
~S.C.H.A.L.E前~
「お、どうやら、終わったみたいだな」
シャーレの前では、かちこんだ4人が先生を囲んで話をしていた。さて、この後シャーレはどのように行動をするのか。まぁ、詳しいことは本人に聞けばいいか。4人が帰るために駅に向かったタイミングで先生へ話を仕掛ける。
「逃がしてしまった。先生、シャーレはどうだ?」
“ありがとうリエ、助かったよ。無事に行政権を取得できた”
「ならよかった。一安心、といったところだ。それじゃあ、私は」
“あ、ちょっと待って。シャーレの部員にならない?他の子たちにも入ってもらったんだけど、それでも全然足りなくてね…”
予想斜め上の質問である。はてさて、どうしたものか。ま、連邦生徒会とのコネを作れるし、ありよりのありだ。
「いいよ、先生。じゃあ、シャーレに所属する、ってことで」
“人手が足りなかったからね、助かるよ”
そう言われながらシャーレに入室、そしてオフィスに案内される。
“はい、じゃあこれに必要事項を記入してね”
そう言って渡されたのは一枚の紫色の封筒。不思議な色の封筒だな、などと思いながら記入、先生に手渡す。
[☆☆☆]リエ
トリニティ総合学園、炎読リエ。よろしく、先生。
“うん、ありがとう。何かあったときはよろしく。”
「うん、よろしく。それじゃあ」
「…以上が、今回のシャーレの概要です」
超法規的組織。どこの学園の生徒でも所属が可能で、そのうえ自治区での戦闘などの制限の一切がない。しかもそれの管理者は正体不明の外部の大人。これだけでもきな臭い。
「わかりました。リエ、その先生を監視しておいていただけますか?」
「承知いたしました。しかしナギサ様、彼はそのような人物ではないと思いますよ?」
「いえ、念には念を入れるべきですから」
「はぁ…わかりました。探っておきます」
エデン条約のためにも、ここで横やりを入れられては困るのだ。
しかし、あの権力。利用できればかなりの効果を発揮するだろう。手中に入れるためにも、リエの報告が先決か。
あれの準備もしておこう。