アリウス生まれ、トリニティ育ち。   作:ぱんだひーろー

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忙しかった、ただそれだけ。


補習授業部SEASON1〔1000〕

「うぅ、私が何でこんなところに……」

「こら、コハル、泣き言言わない」

「で、でも!私正実なんだけど……」

「それ言うなら私だってティーパーティーからの派遣なんだけど」

「うぅ……」

「“リエ、あんまり言いすぎないように”」

「み、皆さんこれから頑張りましょう……う、うぅ……」

 

 補習授業部の面々が集まって用意された教室の机に座っている。ちなみに私とリエは教壇の上だ。一歩下がって部長のヒフミがいるが、少々自信がない様子である。

 コハルとリエのバトル*1をいったん止めた後、教室で誰がどのような状態なのかを見回す。

 ヒフミは個性豊かなメンバーに対して不安げ、アズサはすぐに合格できるだろうという自信だろうか、表情が読めないところがあってわかりにくい。リエとコハルは言葉の戦争第二ラウンド中、そしてハナコ、常にニコニコしていて正直なところアズサよりも心境が読めない。総じて、補習の態度などは不安が残るメンバーとなった。

 

 と、いうことで。

 不安は解決することなくそのまま補習授業は始まることになった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ハナコ、ここはどうやって解決するんだ?」

「そこは……ああ、数学ですね。まずここで3乗の公式を使って、あとは二項定理で展開すれば……」

「ん……できた。助かる」

 

「こ、ここは……ええと……」

「コハル、違う。トリニティ公会議は東暦325年」

「え!?う、嘘……」

 

 とはいえ助け合っているようで、不安で仕方のなかったヒフミと苦笑していた先生は心底安心だった。これなら第一次の学力試験で合格ができるかもしれない、という希望が見えてきたのである。

 

「こ、これなら第一次学力試験で合格出来るかも知れません……!」

「"皆しっかり勉強してて安心したよ。なんとかなるかもね"」

 

 そう、第一次学力試験にもし1人でも不合格になってしまったら、皆で一週間合宿コースになってしまうのである。ヒフミにとってそれだけはなんとしても回避しないといけないことだ。

 

 なぜなら!

 

 放課後がなくなったら!

 

 ペロロ*2の新作のぬいぐるみを買えないじゃないか!

 

 そういう事情がしっかりと(?)あるわけで。

 また先生にとっても、生徒が赤点をとらないというのは喜ばしいことなのだ。

 コハルは当然すぐに正実に戻ってやろうとやる気満々である。

 

 とまぁ、そんなわけでここにいる全員が補習授業部卒業にむけて必死であった。

 

 

 

 ……一人除いて。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 光陰矢の如し、とは本当のことらしかった。

 

 あれだけ放課後勉強に励んだ一週間はとっくに終わり、なんならテストを返却する日になっている。

 教室の机にドキドキしながら座る4人。先生とリエがテスト用紙をロボ教員から受け取り、持ってくる手筈になっている。

 

「う、うぅ……」

「どうしたコハル、もしかして結果が心配なのか?」

「だ、だって!合格できなかったら、正実に戻れないのよ!?」

「ま、まぁまぁ!皆頑張ったことですし、きっと大丈夫でしょう!」

「楽しみですね♪」

 

 少しだけ教室が騒がしくなったところで、教室のドアが開く。

 

「みんなおまたせー。じゃあテストを返そうか」

 

 先生が教壇に座ると同時に部屋が静かになっていく。

 

「合格点は60点、だったよね。じゃあまずヒフミ」

「は、はい」

「……63点。おめでとう、合格」

「よ、よかったです!あとは皆さん自信がありそうな様子でしたし……」

「アズサ。……43点。次はガンバろっか」

「ちっ。紙一重だったか」

「えええええええええ!?」

 

 あんまりなアズサの点数にヒフミは抗議の声をあげてしまう。

 

「17点差ですよ!?全然紙一重じゃないじゃないですか!?」

「次、コハル……28点。どうしたの……?」

「う、嘘……!」

 

 顔面蒼白である。だがこれがお前の実力だぞ、コハル。

 

「最後にハナコ……2点。うーん……」

「2、2、2点ですか!?ハナコさん結構教師役の方に立ってませんでした!?頭いいですよね!?」

「あら、そうみえたんですねー♪」

「あ、あ、あ、ぺ、ペロロ様がぁ……」

 

 そう言い残して、ヒフミは倒れた。享年16歳だった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「待っていました、先生。まずはティーでもいかがですか?トリニティの中でも有名なブランドですが」

「“悪いけど、アイスブレイクは苦手かな。何の用事があってこんな夜中に呼び出したんだい?生徒は寝ないといけない時間だよ”」

 

 トリニティ、ティーパーティのテラス席。満月が空のてっぺんに上るころである。長いテーブルの右にはナギサ、その横にはリエが。そしてその反対側、左の方には呼び出された先生が座っている。

 

「そうですか……では、単刀直入に話します。先生には話さなければならないことが多くありますから」

「“……それは、補習授業部のことかな?”」

「鋭いですね。では、できた理由からお話しします」

 

 そういってナギサは一度ティーで口を潤すと、話を切り出す。

 

「まず、補習授業部を作った理由についてです。先生は、エデン条約をご存じでしょうか?」

「“うん。前にリエに聞いたよ。長年いがみあっていたトリニティとゲヘナの講和条約……だったよね?”」

「その通りです。トリニティとゲヘナ双方にとって理にしかならないはずの条約……しかしそれを邪魔するものが存在します」

「“邪魔する存在?”」

「はい。トリニティ内で『裏切者』が存在することが分かったんです」

「“もしかして、補習授業部の子らは……”」

「本当に鋭いですね。ヒフミさんは一見善良な生徒ですが、過去にブラックマーケットでの目撃例があります。また白洲アズサさんは、転校生で転校前の経歴がぼかされており、やはり信用なりません。コハルさんは、ゲヘナに悪感情を持っているハスミさんへの牽制です。そしてハナコさんは、最近になって奇行が目立つようになりました。なにか企んでいるのではと疑ってしまいます」

「“……私にはどうしろと?”」

「先生。まだ2回チャンスは残っています。2回のテストの間には合宿もあります。どうかその期間の間に『裏切者』を見つけ出していただけませんか?」

「“ごめんね。私は先生だから、生徒を疑うわけにはいかないんだ。”」

 

 ナギサは一瞬虚を突かれたような反応をしたが、すぐに納得したような表情に変化した。

 

「今までの行動からそのような返答はするだろうな、とは思っていましたが……まさか本当にそう来るとは思っていませんでした。しかし先生、リスクを切り捨てるにはそれしかないのです」

「“それでも、と私が言ったら?”」

「……先生。補習授業部の設立にはシャーレの権限を組み込んでいます。多少強引なことはできるのですよ?」

「“……どういうことかな?”」

「3回目のテストまでに『裏切者』が見つからなかった場合シャーレの権限を用いて退学処分にします」

 

 先生は思わず息をのんだ。まさか、ここまでやるとは考えていなかった。そしてシャーレの大きすぎる権限を少し恨めしく思った。

 

「“私は私のやり方でやらせてもらうよ”」

「そうですか」

 

「先生。私は、ずっとあなたを見ていますよ」

 

 “退出する。”

*1
政治をやっているだけあってリエは淡々と理詰めでコハルを叩きのめしていた。やっぱりティーパーティーは強いようだ。

*2
Faust「様をつけてくださいデコスケさん」

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