まばほむ短編   作:鶴(鳳凰)

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どこかの周のどこかの日の閑話です。


二人の関係

 また、砂時計が回り、時間が巻き戻る。

 始まりの朝。目覚ましの音と共に目覚める朝。

 繰り返す度のルーティンとなった、映画の返却。

 いつからか借りなくなった、レアな掘り出し物の映画。

 歴史は変えられないと嘆く映画やアニメ、ドラマはよくありますが、実際に起きてみると些細なことで起きることは変わったり、私たちが干渉しなくても変わっていることもありました。

 なら、『絶対に変わらないもの』はあるのかと、ふと思いました。

 変わらないもの。例えば、今朝の目覚まし時計。しかしこれは、私が設定を弄らない限りは決まった時間に鳴る物なので、こういうのは除外。スケジュールに則って放映されている映画なんかも除外です。

 次に、お客さんが買っていくケーキの種類。巴さんはループ中に一度、必ずお店に来ますが、決まってレモンケーキとザッハトルテを買っていきます。

 ならば他のお客さんもそうなのかと思えば、そうとは限らないようで。もうなんとなく顔を覚えてきてしまった女性お二人組のお客様方は毎回同じケーキという訳ではなく、店先やらで宣伝されている種類の物を買う傾向にあるようで、私次第で買うものがまちまちなのでこれも当てはまりません。

 では、この繰り返しの中で『絶対に変わらないもの』とはどこにあるのか。

 

「どう思いますか、暁美さん」

「どう、って」

 

 只今、隣町の駅の喫茶店にて休憩中。グリーフシード稼ぎの前に寄りました。次の魔女が現れるまで時間もありますし。

 折角なので、机を挟んだ向かい側でアフタヌーンコーヒーをしている暁美さんにも意見を聞いてみました。

 

「『絶対に変わらないもの』です。あると思いますか?」

「キュゥべえの態度とか?」

「あー、確かに変わりませんね」

 

 あの詐欺師然とした態度、むしろアレ以外の態度で接させると困惑しそうです。今まで見てきたキュゥべえに個体差はなかったように思いますが、感情豊かなキュゥべえとか、色違いとか、サイズ違いとか、そういうのも居るんですかね? 

 あのキュゥべえが人間のように喋ったりとか、愛玩動物のように可愛らしく鳴いたりとか、想像もつきません。

 

「他には何かありますか?」

「……目覚ましの鳴る時間とか」

「そういう風に設定されているものは除外です」

「……絶対に変わらないもの……私たちの関係、とか」

「確かに、暁美さんと時間を共有している以上、運命共同体ではありますね」

 

 私と暁美さんの関係……友達……とは、言い難いですかね……。かと言って知り合いと呼ぶには、互いに互いを知りすぎています。

 良きビジネスパートナー、のような関係と思ってもらえているならば光栄ですが。

 バディ映画なんかでお馴染みの、気のおける相棒枠とか! なんて……にひひ。

 それはそれとして、私と暁美さんの関係が『絶対に変わらないもの』であるかどうか、となれば答えは当然ノーという訳ですが。

 人の関係なんて、変化しまくりなものの代表じゃないですか。

 絶対の親友! って言ってた人達も、些細なことから喧嘩して絶縁だったり、コイツとは絶対に馬が合わないと言い切ってた人達が、何かをキッカケに仲良くホームパーティする仲になってたり。

 

「人間関係が変化しなかったら、この世の探偵はペット探しが主な仕事になっていそうですね」

「それもそうね」

「他にはどうですか?」

「……思いつかないわね。あなたは?」

「私が思うに、そんなものは存在しないのではないかと」

「そうかしら」

「はい。例えば、時間遡行によって、私たち以外のものが『絶対に変わらないもの』だとするなら、今回の周にて上条さんが幼少からギターを演奏するギタリストだったことに説明がつきません」

「確かに、そうね。事故にあって腕を怪我してしまったのは同じだったようだけど」

「些末な違いはあれど、凡そは同じって事なんですかね」

 

 もしかしたら暁美さんの時間遡行は、単なる巻き戻しではなく、時間軸線を跳ぶ平行世界移動なのかも知れませんね。

 まぁ、こんなの考えるだけ時間の無駄ですけど。

 キュゥべえの技術によって生み出された魔法少女と、運命と引き換えの奇跡はキュゥべえ自身にも説明・予測不可能という、なんとも意味不明なものですし。

 

「私の、まどかを助けるという意志も、変わってしまうのかしら」

「……人の気持ちは、どれだけ固く決心していても、変わってしまうこともありますから」

 

 どれだけ強く想い、願っても、届かないことはある。他人の気持ちは変えられないけど、自分の気持ちは変わってしまう。

 だからこそ。

 

「今度こそ、鹿目さんを魔法少女にさせることなく、ワルプルギスの夜を超えましょう」

「ええ、そのつもりよ。そのための遠征だもの」

「まずは目先のグリーフシード、ですね」

「行きましょう、そろそろ頃合いよ」

「はい」

 

 この後、自分の気持ちは変わってしまうと思っていた私は、どれだけ恐ろしくても変わらない、替えられないものがあると身をもって知ったのでした。

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