まばほむ短編   作:鶴(鳳凰)

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魔女も、魔法少女も、キュゥべえもいない世界線。
入院中メガほむの趣味がDVDプレーヤーで映画を観る事だった世界線。




とっても素敵な一日でした

 真白い病室。ベッドの横のテーブルの上には、「退院おめでとう」と私の名前の入ったプレート付きのケーキ。仕事で来れない両親の代わりに、病院の人たちが祝ってくれたものの、残り。退院したら、この見滝原の中学校に転校する事になっています。とても不安です。ずっと病気で通院していて、友達なんて作れたことないから。

 そんな不安を追いやるため、枕元に置いてあるものを取り、開いた。DVDプレーヤー。入院生活は退屈だろうと、父が買ってくれたもので、これで映画をよく観ている。退屈な時や、不安になった時、映画が気を紛らわせてくれる。

 イヤホンを付け、プレーヤーを起動させる。

 今、これに入っている映画は有名なものらしい。タイムマシンな車に乗って、若い頃の両親に会っちゃう映画。

 映画を再生しながら、テーブルのケーキを取り、一口。とても美味しい。きっと作った人はさぞ有名なパティシエさんなのでしょう。

 それから私は、消灯だと怒られるまで映画に没頭していた。

 これからの不安は、やはり消える事はなかったのでした。

 

 退院し、転校しました。新しく通う学校は見滝原中学校。

 始めの挨拶から既に失敗し、教室の人たちの質問責めに混乱していた所を保健係の鹿目まどかさんに助けて貰ったり、数学では問題が全く分からなくて、体育では準備運動だけで貧血を起こしたり……私って本当にダメですね……。そんな私がお昼休みに教室に居れるはずもなく、荷物両手に逃げてきたのは屋上でした。見たところ、他の方々もいないようです。

 本当は駄目だけど……持ってきちゃいました、DVDプレーヤー。

 ガチャりと開き、映画を観ましょう。今日入っているのは学校物。有名なアニメの映画二作目で、学園祭の前日を繰り返すお話し。

 なんだかタイムマシンだったりタイムループだったり、近頃は似た題材のものを観ているような気がします。

 始まった映画を観ていると、画面に影が。ひ、人!? 

 

「あ! あのこれは、その!」

「もしかして映画ですか!?」

「ひゃい!」

「しかもこれ、有名なやつループ物のやつじゃないですか! 私まだ観た事なかったんです。ご一緒してもいいですか!?」

「ど、どうぞ!」

「ありがとうございます! では失礼して……」

 

 なんだろう、この人。急に現れて、すごい勢いで話してくる。あまりの勢いについ頷いてしまいました。

 

「あ、あの、この事は……」

「なんです?」

「ほ、他の誰かには、その」

「あぁ、言いふらしたりはしませんよ。私も映画は大好きですからね」

「あ、ありがとうございます」

「しかし昼休みは時間的に短すぎますね……このまま午後はサボりませんか?」

「だ、ダメですよ!」

「持ち込みしてるくせにそこは真面目なんですね」

「うぐ」

「そんなあなたに免じて午後もちゃんと授業に出てあげましょう。さ、続きを観ましょう」

「は、はい!」

 

 なんだか、不思議な人。きっと、誰とでも仲良くなれて、授業をサボっても勉強ができる人なんだろうな。私も、この人みたいになれたらな。

 

「もしあなたがよろしければ、放課後に続きを観させて頂きたいんですが、いいですか?」

「は、はい! 大丈夫です!」

「ありがとうございます。私は愛生まばゆといいます。あなたは?」

「あ、暁美ほむらです。今日転校してきて……」

「なるほど、通りで見かけない顔な訳ですね」

 

 この後、昼休み終了のベルが鳴るまで、映画を観ながら愛生さんとお喋りをしていました。相当の映画好きな方で、今度色んな映画を観せてくれる約束をしてくれました。こんな私に優しくしてくれて、憧れちゃうな。

 

 


 

 

「ま、まばゆさん? どうしたの、教室に戻ってくるなり机に突っ伏して……もうすぐ授業よ?」

「マミさん……今すぐ私を穴に埋めてください」

「あ、穴? 何かあったの?」

「何って……あああああ! 思い出すだけで恥ずかしい! いくらテンション上がってたからってグイグイ行きすぎました! これじゃ完全に変人じゃないですか! それにまた一緒に映画観る約束まで! 次はどんな顔で会えばいいのか全然分かりません!」

「どうしようかしら……」

「こうなったら記憶を消すしか!」

「冗談は程々にね、折角新しいお友達ができそうなんだから」

「うううう……」

 

 


 

 

 や、やっと授業が終わりました。

 何とか午後は失敗することも無く切り抜けることができました。

 えっと、愛生さんとの約束……そういえばクラスとか聞いていませんでした……どうしよう……。

 

「ほむらちゃん、良かったら私たちと一緒に帰らない?」

「あ、鹿目さん……えっと、その……」

 

 ど、どうしよう……考え事してたら鹿目さん達にも誘われちゃった……でも、約束は愛生さんの方が先だったから……。

 

「ご、ごめんなさい! この後、他の人との約束があるんです!」

「あ、そうなんだ。もしかして、お友達?」

「と、友達……でも、先輩ですし、今日のお昼休みに知り合ったばっかりだし……クラスも知らないし……」

「先輩なんだ。あ、さやかちゃん仁美ちゃん、ちょっとほむらちゃんとお話ししたいから、先行ってて」

「え、そう? じゃあお先に」

「まどかさん、暁美さん、また明日」

「うん、また明日〜」

「は、はい、さようなら」

 

 なんでか知らないけど、鹿目さんが残って、お二人を先に帰してしまいました。ど、どうしよう……。

 

「私にもね、先輩の友達が居るの。もしかしたら、ほむらちゃんのお友達の人の事も知ってるかも、ちょっと呼んでみるから少し待ってて」

「は、はい……」

 

 鹿目さんが誰かに電話を掛けてから、五分ほど。上級生が一人、私たちの教室に入ってきた。

 金髪で、とても優雅な人。

 

「おまたせ。そちらがさっき言ってた方かしら?」

「はい。転校生の、暁美ほむらちゃんです」

 

 鹿目さんに紹介されて、慌てて頭を下げた。

 

「初めまして、暁美さん。巴マミです。一個上の、三年生。それで、あなたが探してる人の事だけど」

「は、はい」

「その人、私の友達なんだけど……」

「え……そうなん、ですか?」

「えぇ、今日転校して来た子と仲良くなったって話してたわ。愛生まばゆさんでしょ?」

「そ、そうです!」

「すごーい! こんな偶然あるんだ! やったねほむらちゃん!」

「はい!」

「……その、今日、補習になっちゃって」

「──へ?」

 

 


 

 

 巴マミさんは、早ければ一時間かからないで終わると思うって言っていたけど、もうすぐ一時間半……。

 まだかかりそうかな……でも、約束したんだし、勝手に帰るのは……巴さんは気にしないで帰っていいって言ってたけど……。

 

 

 =====

 

 

『これは日々授業をサボり学校をサボっていたまばゆさんの自業自得。暁美さん、あなたが付き合う必要はないのよ?』

『で、でも、約束したんです。放課後も、一緒にって……』

『そう……分かったわ。早ければ一時間位で終わるから、私たちの教室の前で待っててあげて』

『は、はい!』

『ただ、まばゆさんがあまりにも遅いようなら、気にしないで帰るのよ? いいわね』

『分かりました。ありがとうございます!』

 

 

 =====

 

 

 ──まだかなぁ、愛生さん。

 

「もうサボるんじゃないぞ」

「善処しまーす……」

「あ──」

 

 私が待っていた教室後方のドアと反対の、前方のドアがガラリと開き、愛生さんが出てきました。

 

「あ」

「あ、あの……愛生さん、その……」

「 すみませんでしたぁ!」

 

 私と目が合うなり、凄い勢いで私の所まで走ってきて、土下座!? 

 

「勝手に約束を取り付けたくせに補習になってすっぽかして、挙句連絡もせずに長い間待たせてしまって本当に申し訳ありません!」

「そ、そんな事……か、顔を上げてください」

「ゆ、許してくれるんですか……? こんなダメ人間を……」

「そ、そんな事ありません! 愛生さんは私みたいなのに声を掛けてくれて、一緒に映画を観てくれた、素敵な人です!」

「あ゙、暁美ざん……」

「今日はもう遅くなっちゃったので、続きはまた今度にしましょう」

「埋め合わせは後日必ずします、ありがとうございます、暁美さん!」

 

 この後、騒がしくしてしまった私たちを注意しに来た先生から逃げるように下校し、今度のお休みの日、一緒に映画を観に行く事になりました。

 転校初日。辛いこともあったけど。鹿目さん、巴さん、そして愛生さん。とても大切な友達ができた、とっても素敵な一日でした。

 

 




あったらいいなこんな世界!!!!!


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