まばほむ短編   作:鶴(鳳凰)

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『サボり』の蛇足です。


日帰り温泉旅行

 長いこと電車に揺られ、着いた最寄りの駅から更にバスで数十分。ようやくたどり着きました温泉旅館。まあ旅館といっても日帰りですけどね。

 泊まりの方が良いのでは? とは思いましたが、泊まりとなると保護者同伴の必要がありますからね。暁美さんのご両親は難しいようですし、咲笑さんもお店があります。

 それに、もし咲笑さんがいたら、きっと暁美さんは気を遣ってしまうから。なので、今回は日帰りでプチ旅気分を味わって心身ともにリフレッシュ! という湯治作戦なワケです。

 我ながら完璧な作戦。誤算などありはしませんとも! ササッと受け付けを済ませ、いざゆかん温泉! 

 

「どうぞ暁美さん、館内着とタオルのセットです」

「ありがと……こういう所、来たことなかったから」

「私も似たようなもんです。家近くの銭湯くらいです」

「ただお風呂に入るだけ、とは違うのよね」

「そりゃあ当然です。さ、行きましょう」

 

 暁美さんを率いて更衣室へ。道中に卓球台やUFOキャッチャーなどの小さい娯楽場や、お食事処があったので後で行ってみましょう。

 ササッと服を脱いで、温泉入っちゃいましょ。

 

「まずは身体を洗っちゃいましょう。あっちにシャワーが並んでるので、そこで」

「わかったわ」

「お互い髪を洗うのに時間かかりそうですね」

「そうね」

 

 やはり、まだ浮かない様子ですね。前はもう少し会話が続いていたんですが……。とりあえず、早いとこ洗ってしまいましょう。

 身体を洗って、髪を洗い終わったらタオルで纏めあげて、よし準備完了です。

 

「暁美さん、どのお湯から行きますか?」

「どれでもいいわ」

「では、天然温泉から行きましょうか。と、その前に」

 

 髪の毛、そのままで行くつもりですか暁美さん。私が纏めて差し上げましょう。

 

「髪の毛は湯船に漬けないようにするのがマナーですよ」

「ありがと」

「いえいえ、さ、行きましょ(あっづ)!」

「45℃、結構熱めね」

「こ、ここは身体がもっと温まってからにしましょう。この隣の……炭酸風呂? こんなのもあるんですね」

「お湯が炭酸水って事かしら」

「入ってみましょう。おお? なんかシュワシュワします」

「なんだか、不思議な感覚ね」

「見てください暁美さん、身体に泡がくっついてます」

「付着した炭酸を湯の中で払うらしいわよ。壁の効能説明に書いてあるわ」

「へー、なんだか面白いですね」

「そうね」

 


 

 炭酸風呂を堪能し、お次に入るのは──

 

「シルク湯……?」

「白く濁ってるわね」

「あ、なんか書いてあります。超微細な気泡……? お肌が綺麗になるそうですよ。これで私もモチモチたまご肌に」

「あなたはもうモチモチじゃない」

「ひ、ひっはらはいへ(ひっぱらないで)……」

「……ふふ」

 

 咲笑さんといい、なぜ容赦なく私のほっぺを引っ張るのか。まぁ、暁美さんが楽しそうなので良しとしましょう。

 さぁ入りますよシルク湯。

 

「おぉ……いいお湯加減ですね」

「当然だけど、家の風呂とも、さっきの炭酸ともまた違う感じね」

「気持ちいいですねぇ……美肌効果は実感できませんけど」

「元々モチモチなのだからいいじゃない」

「暁美さんも白くて綺麗な肌ですよね」

「私のは日に当たってないだけよ」

 


 

「次は露天風呂行きましょう。なんでも施設の地下に源泉があって、そこから引いてきているらしいですよ」

「硫黄の匂いがするわね」

「暁美さんそういうのわかるんですか?」

「だって使うもの」

「あー、アレですか」

 

 そういえば爆弾は暁美さんお手製のものでしたね。

 

「ふぅ……結構熱いわね」

「ですねぇ……」

「でも、いい景色」

「はるばる遠出して来た甲斐がありますね」

 

 豊かな自然、流れる川、風に揺れる木々の音。風情があって良いです。

 

「どうですか暁美さん」

「……そうね、たまにはこういうのもいいかもしれないわね」

 

 


 

 まだまだ入りますよお風呂。女の子のお風呂は得てして長いものです。

 次は電気風呂とジェットバスです。

 

「ぐぅおおぅおおぉ」

「……大丈夫?」

「ビリビリきます」

 

 魔法少女になって完治したとはいえ、電気風呂を元心臓病患者にさせるのはどうかということで、電気風呂は私だけ。暁美さんは隣の浴槽で座れるタイプのジェットバスを体験してます。

 しかし、興味本位で電気風呂なんかに入っていますが、これなんか意味とかあるんですかね? あるから置いてあるんでしょうけど。探しても効能説明とか書いてないですし。

 

「も、もう出ます。お隣失礼しますね」

「ええ」

 

 電気風呂から上がり、暁美さんの隣のジェットバスへ腰掛けます。

 

「おおー、結構色んなところに当たるんですね」

 

 肩、腰、膝裏、腿、ふくらはぎ、足裏。至る箇所に水流が当たって気持ちいいです。体勢が体勢なだけに、なんか眠っちゃいそうな……

 

「──えい」

「どぅわ!?」

 

 い、いきなり水流の勢いが強くなった!? 

 

「な、何事……」

「ふふっ、ふふふふ……」

 

 あ、暁美さんの手元に勢い調節用のボタンが! 暁美さんが弄って最大にしたんですね!? 

 

「びっくりしました……」

「気持ち良さそうにしてたから、ついね。次はどうするの?」

「そうですね……一旦上がりましょうか。水分をとって、少し休憩です」

「ええ、そうね」

 

 少しずつ、調子が戻ってきましたかね。

 


 

 館内着は甚平タイプを選びました。浴衣は無かったので。甚平には甚平の良さがあると思います。

 そして、風呂上がりと言えばもちろんコレです。

 

「たったら〜ん、瓶牛乳〜」

「瓶に入ったのは初めて飲むわね」

「ではご一緒に……んぐ、んぐ、んぐ……」

「んく……んく……」

「ぷはぁ!」

「おいしい……」

 

 温泉上がりの瓶牛乳は最高ですね! 学校の給食とかで出る牛乳はそんなに美味しくないのに、こういうところの牛乳は特に美味しく感じるのはなぜでしょうか。

 

「とりあえず休憩所に行きましょうか」

「そうね」

「あ、そうだ。後で卓球しましょうよ卓球」

「卓球? やったことないけれど」

「私もです。いいじゃないですか温泉と卓球はセットみたいなものですよ」

「そういうものかしら」

「ですです」

「まぁ、いいけれど。汗をかくんじゃないかしら」

「それを流すためにまた入るんです。これが温泉界のマッチポンプ……」

「そういうものなのね」

 

 そんな雑談をしながら休憩所へ移動してきました。

 数に限りのあるマッサージチェアは全部埋まってましたので、一人用のソファチェアにそれぞれ座ることに。

 さっきチラッと見た時には気付きませんでしたが、書籍コーナーや、小さい子供向けのキッズコーナーもあるんですね。

 あ、キッズコーナーではアニメが流れているようですね。ネコとネズミが仲良くケンカしてます。

 書籍コーナーには小説や漫画がたくさん。

 

「暁美さんはなにか読みます──あれ、いない」

 

 どこ行ったんでしょうか。辺りを見回しても見つかりませんし。

 

「借りてきたわ」

「あ、おかえりなさい。なんの本を──」

「卓球するわよ」

 

 戻ってきた暁美さんの手には、二つの卓球用ラケットとピンポン玉がいくつか入ったカゴが。

 

「そんなにやりたかったんですか? 卓球」

「……いいでしょう、別に」

「あっちょ、拗ねないで下さいよぉ」

 

 スタスタと一人で卓球台の方に向かって行く暁美さんの背中を追いかけます。

 暁美さんからラケットとピンポン玉を受け取り、私のサーブからスタートです。

 

「愛生まばゆの超絶サーブ、行きますよ!」

「打ち返してあげるわ」

「はぁあぁあ、とりゃああ!」

 

 左手の玉を真上に高く投げ、タイミングを合わせてラケットを振り抜く!! 

 

 スカッ、と。

 

 …………。

 

「ふ、ふふっ、ふふふふ……」

「い、今のはまぐれです……そもそも初心者があんなサーブできるわけないんですよ。今度は堅実にいきますよ……えい」

 

 手元で軽くピンポン玉を打つと、狙い通り暁美さんの方へ跳ねていき、暁美さんも打ち返さんとラケットを構えて──

 

「ふん」

 

 スカッ、と。

 

「……」

「……」

 

 お互い、数秒の沈黙。

 そして、どちらからともなく吹き出して、一緒に笑いあいました。

 

「ふふっ」

「にひひ」

 

 その後もラリーを続け、レンタル期限の時間いっぱいまで、暁美さんと卓球を楽しみました。

 ただ──

 

「うぅ、痛いです」

 

「ごめんなさい、当てるつもりはなかったのだけど……」

 

 最後のラリーで二人とも熱くなってしまい、結構真剣な勝負になったのは良かったんですけど、暁美さんのスマッシュが私のおでこに直撃してしまいまして。とても痛い。

 

「気にしないでください。それよりも、思ったより汗かいちゃったので、またお風呂入りましょうよ」

「えぇ、そうしましょう」

 


 

 カポーン。

 風呂桶って本当にこんな音するんですね。

 体の汗を流したら再び温泉に入っていきますよ。

 今度は先程入れなかった熱々のところへリベンジです。

 

(あっつ)〜」

「でも、気持ちいいわ」

「ですねぇ」

 

 なんて言いましたけど、私も暁美さんも熱さに湯だってしまい、早めに熱湯風呂を後にしました。今回はこれくらいで勘弁してやると、心の中で捨て台詞。

 

「つ、次はぬるま湯にしましょう」

「そうね……さすがに熱かったわ」

「あ、ここのぬるま湯、香りがついてるようですよ」

「花の良い匂いね」

「ラベンダーだそうです」

 

 道端で咲いてるのをよく見かけますよね。

 お湯も名の通りぬるめで、こっちなら長時間入れそうです。

 丁度良いタイミングですし、暁美さんに今回の感想でも聞きましょうか。

 

「暁美さん。今回のこの温泉、どうでしたか?」

「……そうね。とても良かったわ。時間を、忘れちゃうくらい」

「そうですか。それなら良かったです。暁美さんが退院するまでの間に調べた甲斐がありました」

「……ねぇ、まばゆ」

「なんですか?」

「私は、また走れるかしら」

 

 湯船の中の私の手に、暁美さんの手が重なる。

 一度折れてしまって、不安なのでしょう。

 

「えぇ、必ず」

 

 私の手に重なった暁美さんの手を握ってあげる。

 大丈夫。何度心が折れたとしても、私が支えてあげます。精一杯、あなたの心を治してあげますから。

 

「……ありがとう、まばゆ」

「いえいえ、とんでもない」

「明日から忙しくなるわよ」

「え、明日からですか? 日帰り旅行は結構疲れるので明日はおやすみでも……」

「文句言わない」

「鬼! スパルタ暁美さんが帰ってきた!」

 

 それでこそ、暁美さんなんですけどね。にひひ。

 

 


 

「暁美さん、お土産買って帰りましょうよ」

「お土産……誰に?」

「誰にって……そりゃあ鹿目さんに」

「まどかに……でも、まだ転校してすぐで接点なんて無いわよ」

「保健係で保健室に案内してもらってるじゃないですか。その時のお礼とかでいいんじゃないですか?」

「そう……どれがいいかしら」

「家族で食べれる現地の名産品やお菓子とかがいいと思います」

「わかったわ」

「あ、そうだ。美樹さんと志筑さんの分も買っといた方が、三人と仲良くなれるかもしれませんよ」

「美樹さやかと志筑仁美……そうね、そうしましょう」

「私は……咲笑さんへのお土産だけですかね」

「あなたこそ、巴マミにあげたら?」

「へ? 巴さんにですか? 同じクラスで、魔法少女ってことを一方的に知ってるくらいしか接点ないですけど」

「この旅行は、今までのループでは確実に起きなかった事よ。あなたが巴マミにお土産を渡すことで、何かが起きるかもしれない」

「あ、確かに」

「それが良い事かもしれないし、悪い方向に転ぶかもしれない。でも、ここまで来たらやれる事はやっておいた方が良いと思うわ」

「分かりました。じゃあ巴さんへのお土産を──」

「そうしたら、一人だけお土産を貰えない人も出てくるわね」

「え、誰……まさか、佐倉さん!?」

「えぇ。彼女、食べ物にはよく食らいつくから」

「食べ物で釣るつもりですか!?」

「実際、レコンパンスの賄いで釣れたことはあるわよね」

「確かに……でも、まだ接点が……」

「挨拶の手土産に渡せばいいわ」

「あ、暁美さんも一緒に来てくださいね!!」

「ファイト」

「ひとりぼっちは寂しいですよぉ!!」

 

 




scene0 一周年おめでとう!!

これが一周年祝いのssでいいのかという疑問は尽きません。
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