まばほむ短編   作:鶴(鳳凰)

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いってらっしゃい

 繰り返す。私は何度でも繰り返す。まどかを救うことができるまで、何度でも。

 砂時計をひっくり返し、時間を巻き戻す。あの日の朝、いつもの朝。見慣れた天井。

 無限にも思える繰り返しの中で唯一、彼女に会うことを許された日。

 着替えもせずに窓から飛び降り、魔法少女に変身して時間を止め、屋根の上を駆け抜け、事務所や駐屯地で武器を回収しながらある場所を目指す。

 かつて、一緒に時間遡行を共にした、彼女の家。窓の鍵を魔法で開け、彼女の部屋に侵入する。まだ、彼女は眠っている。こたつに包まって、目覚ましが鳴るまで。

 あなたをこのまま引き留めることができたなら、どれだけ良かったのかしらね。

 時間停止を解除して、目覚ましが鳴るのを待つ。

 

 3……2……1……。

 

 ジリリリリリ! 

 

 

「うぎゃぁぁぁぁあああ!!」

「まばゆ……っ!」

 

 どれだけ繰り返しても、この瞬間は耐えられない。当然だ。大切な人が魔女になる瞬間を、何度も、何度も、何度も、目の前で見てきたのだから。

 最初は引き留めようとした。でも、私には穢れが溜まるソウルジェムを浄化する手段が無い。

 始まりの瞬間に時間を止め、集められる限りのグリーフシードを集めたこともあった。でも、まばゆは私と同じ時間を共有しているから、集め終わった頃にはもう魔女になっていた。

 説得を試みた時もあった。私を一人にしないでと、泣き叫んだ時もあった。

 

 まばゆを助けることは、不可能だった。

 

 でも、私は止まるわけにはいかない。

 

 まばゆのソウルジェムがグリーフシードへと変質し、愛生まばゆは魔女になった。まばゆの部屋も、魔女の結界に飲み込まれる。

 

「……おはよう、まばゆ」

 

 魔女となったまばゆが、何かを叫びながら時計の針と鋏の刃を振り回し襲いかかってくる。魔女なのだから、当然手下も産まれてくる。

 でも、まばゆの手下は私と時間を共有していない。だから、時間を止めると手下も止まる。時間を止めれば、私とまばゆだけの時間。

 

「──前の周ではね、結構惜しい所まで行けたのよ」

 

 まばゆの攻撃を躱しながら、前周の出来事をまばゆに話す。事細かに、詳細を、何があったか全て。前回の一ヶ月で何をしたか、どう頑張ったか、チャートをどう書き換えるべきか、何をしたらどう変わったか。一日目から最終日まで、全て。

 

「美樹さやかは魔女になってしまったけど、何とか巴マミと佐倉杏子を生存させたまま、ワルプルギスの夜に挑むことができたの。結果はこのとおりだけれど……今度は何とか、美樹さやかも戦力に組み込んでみせるわ」

 

 まばゆの攻撃は止まない。針の攻撃も、鋏の攻撃も、全部を避けながら、まばゆとの会話を続ける。

 

「あなたのグリーフシードだけど、やっぱり使うことはできなかったわ」

 

 まばゆが一層叫びながら、激しい攻撃を仕掛けてくる。

 

「えぇ、わかっているわ。でもね、あなたをインキュベーターなんかに渡したくないの」

 

 まばゆは攻撃を止めてはくれない。元に戻ってはくれない。

 

「あなたとのお話しは楽しいけれど、もう時間なの。ごめんなさい……ごめん、なさい……」

 

 砂時計、一日分。これ以上は使えない。悲しいけど、まばゆとのお喋りはここまで。

 盾から手榴弾を幾つも取り出し、全てをまばゆに向かって投げつけた。

 

「──さようなら、いってきます」

 

 もう会わないことを、祈っているわ。




まばゆ魔女化概念を自分なりに形にしたものです。
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