また、時間が巻き戻る。
ワルプルギスの夜を越えられなかったのは、何度目でしょうか。
何度挑んでも、届かない。紙一重なんてレベルじゃない、高く分厚い壁に阻まれている。
その壁の先、希望の光は、まだ。
夜を越えられず、朝を迎えた。あと何度、繰り返すのでしょう。
繰り返し、繰り返し、繰り返す。無限に続く迷路を手探りで進み、行き止まりに当たれば、スタートからやり直し。
その迷路の先、ゴールの歓声は、まだ。
一層特訓に励み、連携の練度を上げて、効率よく武器・グリーフシードを集める。全部使い切っても、越えられない。
夜を越えられなくて、巻き戻して朝からやり直す。
次の日を浴びるのは、まだ。
気が遠くなるほど、遠い目標。もし、一人だったら、とっくに諦めていたでしょう。
同じ時間を共有する人がいたから、狂うことなく歩いてこれた。
目の前に広がるのは、荒廃した世界。山よりも大きな魔女が、救済を掲げ、世界を更地に均している。
また、失敗した。
「暁美さん。もし、鹿目さんを魔法少女にさせる事無く、ワルプルギスの夜を超えられたら、したい事ってありますか?」
「ワルプルギスの夜を超えたら……わからない、あいつを倒す事しか考えていなかったから……」
「この繰り返しを乗り越えるには、モチベーションは必須です。この機会に考えてみませんか?」
「……えぇ、それもいいかもしれないわね」
そう言うと、少し考えている様子の暁美さん。
「そうね……海に、行ってみたいわ」
「おぉ、海ですか」
「病気のせいで、行ったことないのよ。泳げるかどうかなんて分からないけれど、一度行ってみたいわね」
「燦燦と輝く太陽の元、波打ち際の暁美さん。絵になりますね」
「絵?」
「あぁ気にしなくていいですよ、この調子で色々と考えてみてください」
「……海、ときたら、次は山かしら」
「山? キノコ狩りとかですか?」
「それもいいかもしれないけど、ハイキングとか」
「歩くんですかぁ……私はご遠慮したいですねぇ」
「そう……なら山はいいわ」
「え?」
「そうね……したいこと……」
「ちょ、ちょっと待ってください。なんで山やめちゃうんですか、いいじゃないですかハイキング」
「でも、あなたは来ないんでしょう?」
「へ?」
「あなたがいないなら一人で山に行っても意味ないもの」
「そ、そんなことは……」
「さて、次は……あぁ、映画館で映画を観てみたいわ」
「──!!」
「詳しいんでしょう、その時が来たらお願いね」
「ま、任せてください! なんならワルプルギスなんて待たずにすぐにでも!」
「そんな暇はないわ」
「……デスヨネー」
仕方ありません。一刻も早くワルプルギスの夜を越えて暁美さんを映画館へ招待しなくては!
暁美さんにもあの映画館独特の空気管を早く味わってほしい……あわよくば私と同じ沼に……にひひひひ……。
「いろいろ挙げたけど、あなたが一緒ならなんでもいいのよ」
「えっ」
「それじゃあ、次の周で会いましょう」
「あ、待って暁美さん、今のどういう────」
言い切る前に、暁美さんの盾の中の砂時計がひっくり返り、私の意識も途切れてしまった。