日が沈み、夜がくる。
夜。呪い、怪異といった類いのものが活発になる時間。
つまり、魔女の時間。
そして、私たちは魔女を狩る魔法少女。
今日も今日とて、魔女を探して町中を歩き回る。
といっても、勝手知ったる地元の見滝原の街ではなく、遠征で出てきた隣町ですが。
前周の反省を活かし、未来視と時間停止を活用して上手いこと他所の魔法少女との縄張り争いを避けつつ、魔女を狩りまくり。
おかげでかなりの数のグリーフシードが集まってきました。
今回こそ、鹿目さんをキュゥべえと契約させずにワルプルギスの夜を倒して、ループを終わらせたいものです。
しかし、この町には初めて来たのですが、もう暗くなってきているのに人通りが多いですし、なんだか少し騒がしいですね。
道行く人も、皆さんワイワイと同じ方向に進んでいるようです。魔女の口付けではなさそうですが。
「暁美さん、何かご存知ですか?」
「えぇ、近くで花火が上がるのよ」
「花火、ですか? 時期、おかしくないです?」
「地元文化の一環とかじゃないかしら」
なるほど。昔から続いている伝統のようなものですか。
そういえばこの時期に遠くの方で小さく、ドーンドーンと音がしていたような気がしなくも無いです。もしかしたらこの町の花火の音だったのかもしれませんね。
ま、私たちにはあまり関係ありませんが。今日も今日とて魔女探し。ロマンチックに花火を眺める暇なんて無いのですよ。
ね、暁美さん。
「前の周でも、今日この日に花火が上がっていたの」
「暁美さん?」
「こっちよ」
暁美さんに手を引かれ、私の知らない / 暁美さんは知っている町の道を歩く。
暁美さんの手の熱と、私の手の熱が混ざって、同じ温度になっていく。
私の手のひらが汗ばんで、でも、離したくなくて。この熱が離れてしまわないように、ギュッと、握りしめて。
それに、暁美さんも黙って返事をするように握り返してくれて。それが嬉しくて、少し悲しくて。
なぜ悲しく思ったのか、それは分からない。
路地を抜け、小さな公園に着きました。
私たちの他には誰もいない、ベンチと滑り台しかない公園。
「ここ」
「……はい」
「前の周で、たまたま見つけた場所。花火がよく見えるわ」
暁美さんに手を引かれるまま、ベンチに並んで腰を掛ける。
暁美さんが、空を見上げるのと同時に、パッと空が明るくなって、大きな花火が私たちを照らした。
夜に咲いた花は、直ぐに散っていって。
それに感動と、少しばかりの切なさを覚える。
「前の周で、この花火を見た時。あなたと一緒に見たいと思ったの」
次々に上がっていく花火が、私たちを照らしては散っていく。
「あの時、私は……ただ、あなたに会いたかった」
赤、青、黄色、様々な色の花が咲き、火の粉となって散っていく。
駄目、それ以上言ってしまったら、私はきっとわがままになってしまいます。
「いつかの時にも言ったけれど、私を一人にするなんて、許さないわよ」
一際大きな花火が上がり、それもまた散っていく。
きっと、盛り上がる程の大きさだったでしょう。
けれど、私の目は暁美さんから離すことができません。
なぜ、あの時悲しく思ったのか、分かりました。
それはきっと、あなたを好きになりすぎてしまったから。
このまま、ずっとあなたと見つめあっていたい。
言葉より、ずっと見つめていてほしい。
「……終わってしまったわね。帰りましょうか、まばゆ」
「……はい」
また、暁美さんに手を引かれながら町中を歩いていく。その間も、ずっと手を繋いだままで。
こんな時間が、ずっと────
私の心の中は、あなたで溢れてしまいそう。
あなたの心には、私が咲いていますか?
「本気で、こういう毎日が終わって欲しいと思ってんのか?」