空をかけること。それは俺にとって当たり前のことであり、いつも通りの習慣である。
「フライ。」
その一言でどこにでも飛んで行けるような気がしていた。
でも、理想とは俺はぜんぜん違うことも理解している。
フライングサーカス。略してFC。それが俺がずっと続けていたスポーツだ。
何度も何度も大会や練習試合をしていたが、俺は小学生までは優勝をしたことはなかったし、何なら小学生4年まで一度も公式戦で勝てなかった。
何度やっても超えられない壁を越えようとした。でも、一度も超えられなかった。
負け続けそして一勝もできないままでもずっと空を飛び続けた。
競争相手は天才を同じ師匠を持った一つ年上の先輩は天才と呼ばれどんどん力をつけている。
好きだった空を諦めそうにもなった。でも答えは出ないままであり、それでいても空はずっと待っていてくれた。
でももう一人の先輩は、空を飛ぶのを辞めてしまった。
そして中学で迎えた最後の大会。その最後の表彰式で俺は2番目に呼ばれることになった。
夕焼け空の下俺は待ち人を待っているとその人はいつも通りやってきた。
「お疲れ様。零。」
「…お疲れ様です。負けちゃいました。」
「あぁ。よく頑張ったよ。あんなに弱かったのに、今やここまでこれるなんてな。」
「……地区予選準優勝ですけどね。」
「それでも立派だよ。零はよくやった。」
「…うす。まぁ、この結果ですけど。」
これが今の全力。そしてこれが俺にとっての最終戦績になる。
「……君はこれからどうする?」
「えっ?」
「えっ。って君は高校に入ってもFCを続けるのか?君はこれからもFCを続けるのであれば高校はどうするんだと思ってな。」
「高校ですか?…えっと多分久奈浜に行くと思います。」
「久奈浜?零はFCはどうするんだ?」
「えっ?」
「久奈浜はFC部ないぞ?」
「葵さんがいるにも関わらずですか?」
「あぁ。それに私は晶也や零にしか教えていないからな。」
晶也先輩。その名前には俺も覚えがあった。
葵さんにとっての一番弟子であり、俺とは違い天才と呼ばれた少年。
「元気ですか?晶也先輩は。」
「気になるか?」
「気になりますよ。俺は晶也先輩に憧れていたんですから。」
晶也先輩にずっと勝てなかった。結局FCに勝ち逃げされてからも晶也先輩がFCに戻ってくるのを待っていているのだろう。
「…思い詰めるなよ。零はこの数年で着実に。いやこの世代では全国でも有数のプレイヤーだよ。」
「分かってますしうぬぼれる気はないですよ。ただ、負けたって悔しさはいつに経っても慣れないんで。」
「…あぁ。まぁ、それが零らしいか。明日はどうする?」
「多分動けませんよ。俺。」
「そうだな。」
苦笑する葵さんに俺はため息をつく。
「まぁ、テストは余裕だろうし明日はしっかり休めよ。零。」
「はい。ありがとうございました。先生。」
俺は葵さんを見送るとその場で立ち尽くす。
本当に終わったんだなぁ。
俺は海にめがけてに寝転ぶ。疲労感と頭痛で暫くは海水に浮かんでいたままでありたかった。
結局今回も負けた。負けてしまった。
久しぶりに決勝までこれたのにまたコレだ。
軽くめまいも感じているから、とことん自分でも敗因ははっきりしていた。
目頭が緩み嗚咽が漏れる。堪えていたものが目から零れ落ちる。
夕日が沈む中、俺の中学のFCはここで終わったのであった。