あの夏から時は流れ既に四月中旬。俺も無事高校に合格し、久奈浜に入学することになった。
FCも相変わらず週に一度葵さんに練習を見てもらうくらいで後は自主練習にあたっていた。
そんな日常が続くこと二週間。友達はできることもなく、俺は登校し少しばかり空を見上げる日が増えていた。
中学の時もそうだが、元々人付き合いはそこまで上手い方ではないのでこうやって一人でいることが多いのだ。
そうやってのんびりしているといつもと違う光景が流れてくる。
予鈴なった直後、空を飛んできたふたりきりを見つける。
一人は知らないがもう一人の先輩は見覚えがあった。家も近くで昔から交友のある先輩だった。
「飛べたんですね。晶也先輩。」
俺は微かに微笑み空を見上げる。雲一つ無い空が俺達の目の前にはあった。
「おーい。零。」
「ん?って葵先生どうしました?」
俺が廊下を歩いていると葵先生、俺のFCの師匠でもある各務葵先生である。各務先生と呼んでくれと言われたが、よそよそしいので嫌と答えたところため息を吐き頭を数回アイアンクローされたくらいでおそらく変えるつもりはないだろうと判断したのか諦めた。
「ん。ちょっとお前に頼みたいことがあるんだがいいか?」
「頼みたいことですか?」
「あぁ、久しぶりに公認指導員の仕事が入ったから任せてもいいか?」
「公認指導員?この時期にですか?」
「あぁ。実はな今日2年に新しい転校生が入ったんだが、晶也に公認指導員の指導頼んだからな。零は面倒だがその手続きの方を頼む。」
「うげっ。」
公認指導士。この島でのルールではあるグラシュと呼ばれるものになるアンチグラビトンシューズの使用を都会よりも使用が緩い。なので限定区域公認指導員としての資格を自治体から持っているのだ。なお手続きは指導よりもかなり面倒臭いし責任関係が発生する可能性があるため公認指導員でも外れの仕事だ。
「もう指導は始まっているだろうから零もすぐさま向かってもらっていいか?」
「あ〜やることは確定なんですね。」
「どうせやることなんて練習しかないだろう。それにこういった業務は零は慣れているしな。」
慣れているのは葵さんが押し付けてくるからということはぐっと我慢して俺は小さくため息を吐く。
仕方ないので渋々と俺は校庭に向かうとそこには四人の姿が話している姿があった。
……もしかして三人もやれってことではないよな?
恐る恐る近くとそうしたらそのうちの唯一の男性である顔見知りの先輩が俺を見る。
「……零?」
「お久しぶりです。晶也先輩。葵さんから頼まれて監査の方を頼まれました。」
「あぁ、なるほど。知り合いの公認指導員って零のことか。」
少し納得したようにしている晶也先輩を見るとそこには三人の女子生徒の姿があった。
「……?あのもしかして三人も書かないといけないんですか?」
「いや、そこの二人は知り合いだ。」
「零?もしかして日向先輩。早坂くんと知り合いなんですか?」
「ん?ましろ。知ってるの?」
「はい。同じクラスなんで。小学校の時も同じクラスでしたし。」
「……」
ましろと呼ばれた女子はどうやら同じクラスらしい。小学校も同じだったんだ。全く覚えてないんだけど。
クラスメイトなんて全く気にしてなかったので知らなかったんだが。
「まぁな。家が近所なんで昔から家族同士で仲がいいんだよ。それと、昔おなじスポーツをやってただけだ。」
「同じスポーツですか?」
あっ。そこまで話すんだと思いつつ俺は小さく苦笑する。昔は話すのも避けられていた時期があるので最近は挨拶くらいは返してくれるようになったのも懐かしい。
「一応教えるのは晶也先輩の方がうまいんで。俺はグラシュの設定とかしますね。そっちは俺の方が慣れてると思うんで。」
「あぁ。それじゃあいつも通りの設定にしてくれるか?」
「はい。それじゃあ、えっとどちらの方を?」
「倉科さんのを頼む。」
「だからその人が誰か分からないんですけど!?」
俺は小さくため息を吐く。そして苦笑し指をさすと赤みのかかった髪の女子を指差す。
「あの?」
「あっ。早坂零です。一応一年ですから敬語はなしで。」
「は、はい!倉科明日香です!!よろしくお願いします。それと靴渡せばいいですか?」
「設定自体はそこまで難しくないので。晶也先輩もできますし。」
物凄く笑顔の先輩に俺は少しだけ驚いてしまう。このような雰囲気は一回体験したことがある。
本当にあの人は。何もかもお見通しってことか。
「はじめまして〜2年C組の鳶沢みゆきでーす。常にお腹を空かせたキュートな女子高生でうどんとお菓子をくれたらどこまでもついていきまーす。」
「はいはーい。有坂ましろですっ、1年A組です。みさき先輩の配下というか、しもべというか。そんな感じで楽しくやってまーす!」
「……同じクラスだから有坂さんはいらなかったような。まぁ、とりあえず設定終わりましたよ。起動もしてあるので一言かければいつもの高さになるようになってます。」
「相変わらずはやいな。それじゃあ倉科さん飛んでみようか。」
「えっ?いいんですか?」
嬉しそうに目をキラキラさせてる姿は本当に昔の晶也先輩と同じような感じだ。
その姿に俺も少しだけ笑ってしまう。
そして倉科さんの初フライトは
「きゃあ、きゃああ!!落ちる!落ちる!」
と散々な格好で終わるのであった。