妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編   作:tom200

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一年生の頃の仲間たちとのお話です



11月の記念日 11/16

 

11月16日

 

 

「深雪さんって、達也さんの声お好きですよね」

 

お兄様のいいお声を堪能しながら紅茶を傾けていたら、唐突に美月ちゃんからそんな指摘を受けた。

 

「え、ええ。よくわかったわね」

「だって深雪さん、うっとり聞き入っているから。見ているこちらがごちそうさまと言いたくなるような」

 

そういう美月ちゃんもこっちを見ながらうっとり。

わかるよ、オタク目の前に推しがいるとそうなる。彼女の推しは私たち兄妹だと正面から応援されている。すごいよね、こっそりではなく真正面から応援してるって言えるって。つおい。

 

「マスター、コーヒーを…いくつ必要だ?」

 

西城くんが注文を取ると私たち兄妹と美月ちゃんを除いた皆が手を上げていた。

うーん、今回まだ甘いお兄様は出現していないのだけど、何がそんなに甘かった⁇

 

「こんな声なんかでよければいくらでもお前の為に囁こう」

 

……これを聞いてから注文するならわかるんだけどね。これは苦いコーヒーを飲んで中和しないと。

いや、これが来るのがわかって先読みをしたのか。流石西城くん。お兄様の親友。お兄様のことをよく理解してくれている。

甘いお言葉と共にとても素敵な笑みですね。こちらに向けられて心臓がバクバク元気に跳ねまわっております。苦しい。

 

「もう、兄さんったら。『こんな声なんか』だなんて。とても素敵な声なのに」

「いや、深雪そこじゃない。ツッコむべきはそこじゃないから」

 

いえね、私もそれはわかっているのだけどお兄様、自身の魅力をちっともわかってないから。ちゃんと伝えておかないと。

 

「そ、そうですよ。達也さんは聞き惚れちゃうくらいとってもいい声です!」

 

お、ほのかちゃんも参戦してくれる。だよねー。お兄様いいお声だもの。もちろんいい所は声だけじゃないけど。

 

「も、もちろん!達也さんの良い所は他にもありますよ!」

 

わあ。ほのかちゃん以心伝心?同じことを思っていたようで嬉しくなっちゃうね。

 

「深雪、顔」

 

おっと。お兄様とは反対に座っている雫ちゃんからつんつん引っ張られた。

緩みすぎてる?こねこね直さないと。

いつもの淑女のポーカーフェイスなんて親しい友人たちとの前では必要としませんので仕舞っております。

でも油断しすぎていたね。

直していたら雫ちゃんから頭にぽんぽんをいただきました。

私の親友が優しい…。引き締めようとしたのに緩んでしまいそう。

と思っていたら、

 

「深雪は?」

「、えっと?」

 

エリカちゃんからの質問が飛んできた。

聞いていなかった。いえ、お兄様の声を聞き逃していたわけではないので再生余裕なのだけど、ほのかちゃんがお兄様を褒めたたえ、それをお兄様が苦笑しながらやんわり距離を置くように肯定とも否定ともつかない言葉で濁していたらしい。

はっきり否定したいけど、興奮状態だとヒートアップして倍以上の言葉が返ってくるものね。適度に熱を逃がす方法を選ばれた模様。

で。私が名前を呼ばれた理由だけど、ほのかちゃんの空回りっぷりが可哀想になった?話の転換ご所望です?

 

「声以外で兄さんの好きなところをあげるの?」

 

ほのかちゃんとほぼ被るよ。とこてっと首をかしげるとさらりと黒髪が肩から滑り落ちる。

今日もサラサラキューティクルの自慢の艶髪です。

その様子にほう、とため息を漏らすのは美月ちゃん。好きだねぇ。私も好き。…ナルシストではないよ。ただ深雪ちゃんの姿だと思うとね、美しいこと間違いなしだから。

私の疑問にやっぱりいいわ、と降参ポーズをしたのはエリカちゃん。そして何度も頷く吉田君と苦笑を浮かべる西城くん。雫ちゃんは表情変わらずケーキを突き、ほのかちゃんはちょっとしょんぼり。お兄様の反応が予想より鈍かったからかな。

お兄様は、といえば。

 

「俺は帰ってからゆっくり聞くとしよう」

 

とても楽しそうなお顔ですね。

後でゆっくり、じっくりです?…わぁ。どのみちお兄様の好きなところ発表会は強制イベントらしい。羞恥心煽られまくるヤツ。…心臓持つかな。

 

「…エリカ」

「ごめん」

 

原因となったエリカちゃんに訴える様見つめると素直に謝られた。

この後私が何をさせられるか、エリカちゃんにも想像が付いたのだろう。できればもっと前に気付いて欲しかった。

それから美月ちゃんは聞きたかったのかな、残念そうなお顔。

 

「せめてその音声の録音でも」

「みぃづき~?」

 

馬に蹴られるわよ、とエリカちゃんが注意するけれど兄妹が仲良くしていても馬には蹴られないよ。

でも、

 

「音声…録音なんて考えたことも無かったわ」

 

録音すればいつでもどこでもお兄様の素敵ヴォイスを聞き放題だね。その発想はなかった。

ほのかちゃんもその手があったか!みたいな…というかこっちに期待を向けてるってことは便乗を狙って録音させてほしいってことかな。

お兄様のお声を好きな時に聞ける――とても魅力的だけれど。

 

「私はいらない、かしら」

「どうして?!」

 

おお、ほのかちゃん必死かな。でもね。

 

「だって、いつでも聞けてしまうならずっと聞いてしまうということでしょう?そうしたら何も手につかなくなるんじゃないかって」

 

耳元でずっとお兄様のいい声を聴く訳でしょ。うっとり聞き入って何もできなくなるのが想像できた。

この答えに美月ちゃんはぎゅっと叫びそうなのを堪えている。偉い。成長を感じる。

初めの頃は声が漏れていたからね。よく抑え込めました。後はポーカーフェイスを覚えましょうね。…素直過ぎるから無理かな。

 

「はいはい、ご馳走様ー」

 

エリカちゃんすでに食傷気味?いつもより早くない⁇まだそんなに話してないよ、と思ったのだけどこれはアレだね、この後に続くだろうお兄様のあまぁい言葉を言わせないためにぶったぎった、と。なら私は下手に突っ込まないでおこう。と、思ったのだけどあらぬ方向から追撃が。

 

「達也さんはお持ちじゃないんですか?深雪さんの音声」

 

美月ちゃぁん…。声は抑えられたけど好奇心は抑えられなかったみたい。

オタクの心理としては聞きたかったか。わからないでもない。でも持ってるって言われた場合私はどうすればいいの⁇

 

「深雪の音声を聞く暇があるならその分用事を片付けて早く深雪の下へ帰る」

 

…持ってなくても甘さは変わらなかった。いや、持ってると言われても困るけどね。…で、この話はどうオチを付ければいいの?

とりあえず赤くなっただろう顔を俯かせるしか隠す術が浮かばない。早く会って声を聞きたいと言われて照れないわけがなかった。

手で覆いたかったけどその前に制服を握りしめちゃったのでね。髪がカーテンとなって両サイドから隠してくれているはず。

かちゃ、とソーサーからカップを持ち上げる音がちらほらと。皆コーヒータイムですね、わかります。

 

「録音した声より生の声、ですね!」

「深雪の声もとてもきれいな声だからな。いくらでも聞いていたいという気持ちも分かるが、その時々の深雪の声に勝るものはない」

 

それに、とお兄様は言いかけて止めた。…何を言いかけたのだろう。気になるけれど皆が二杯目を注文するか相談し始めたので大人しく口をつぐんだ。

その後、エリカちゃんが無理やり話題を変えて賑やかな放課後のお茶会はお開きとなった。

 

 

 

 

聞くのがちょっと怖いけど、このまま放置しても気になって仕方がないので。

 

「それでお兄様、あの時何を言いかけたのです?」

「ん?ああ…。わざわざ録音などせずとも深雪の全ては記憶しているからな、と」

 

…お兄様絶対記憶をお持ちですものね。脳内再生余裕でした。

そう思うとなんだか気恥ずかしい。でもそうだよね、絶対記憶でプライベートを分けられるわけもない。

やっぱり聞かない方がよかったなぁ、と真っ赤になって縮こまるのを、お兄様がぽんぽん、と頭に触れてしばらく慰めてくれた。

 

 

 






妹がお兄様の声を録音しない理由――と見せかけてお兄様は脳内内蔵メモリがあるんだよなぁ、という話。
ということで録音文化の日で書いてみました。
お兄様はいつでもどこでも脳内再生余裕。でも生の深雪には敵わない、と離れたらすぐ帰宅したいお兄様。しかし妹はお仕事をきっちりこなすお兄様カッコいい!なのでお仕事はきっちり終わらせる。で、速攻帰宅する。子煩悩パパかな?いいえ、シスコンです。

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