妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編   作:tom200

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一年の謎時空です。
今年のボジョレーヌーボーは20日ですが、これを書いた年は21日でしたのでそのままにしてあります。


11月の記念日 11/21

 

11月21日

 

珍しく私は頭を悩ませていた。

いや、結構悩むこと自体はあるのだけど、今夜の献立について悩んでいるのだ。

 

(カキフライにするか、フライドチキンにするか)

 

和と洋、の揚げ物同士。

なぜ、記念日が重なるのだろう。

和と洋というだけであれば食卓に並べることに抵抗はなかった。ミックスフライの亜種と思えばいけなくもない、のかもしれない。

だが、いくらミックスフライという魔法の言葉があってもフライドチキンとカキフライは何というか、ジャンルが違う気がしたのだ。

それに、カキフライはメインでもフライドチキンはサイドメニューのイメージというのだろうか、限りなくメイン寄りの、でも唐揚げのようにご飯のおかずの主力とはならないような?

フライドチキンを出すならばやはりバーガーになるのだろうか。

だとするとやはりどちらかを選ばねばならないのか。

うぅむ、難しい。

さて、どうしたものだろう?

 

「おはよう。今日は朝から悩ましげだね」

 

憂い顔も可憐だ、と流れるように朝一のハグ。

今日のお兄様も朝からフルスロットルですね。おはようございます。

挨拶を交わすのだけど、今のハグって必要だった?との疑問は後回しにして。

 

「お兄様は本日の夕食、カキフライとフライドチキンのどちらを召し上がりたいですか?」

 

頭を悩ませるより、答えを直接聞いた方が早い、と直球に尋ねてみた。

 

「どちらも美味そうだな」

 

ちなみにうちのカキフライはタルタルとソース両方用意している。母がタルタル派、お兄様はソースの方がお好きそうだったので。

今回もしカキフライならばソースだけにしようか、と考えていたらお兄様も顎に指を添え悩まれていた。

朝から大したことのない悩みを伝染させてしまった。

お兄様なら何事も即決のイメージ(というか脳内処理が早くて答えを出すのが早い)だからすぐ返ってくるとばかり思っていたのだけど。

 

「すみません。お兄様を悩ませてしまいましたね」

「こんな贅沢な悩みならいくらでも構わないよ」

 

でも朝の時間の無い時に邪魔をしてしまうのもアレなので。

 

「そういえば本日はボージョレ・ヌーヴォーが解禁される日だそうですよ。とはいってもうちは未成年しかいませんから用意することはありませんが、赤ワインに合わせるならカキフライよりフライドチキンの方が――」

「そうだな、カキフライがいい」

 

…んん?

今私たち会話してた?それとも思考の海に潜っていたお兄様が急浮上したのかな?ともかく今晩はカキフライに決定しました。

 

「では今夜はカキフライにいたしましょう」

「期待している」

「ふふ、楽しみにしていてくださいませ」

 

そのままドリンクを一気飲みしたお兄様を玄関までお見送りして、朝のルーティーンに戻った。

 

 

 

あれま、うっかり。

帰宅してすぐに夕飯作りに取り掛かったのだけれど気が付いたら無意識にタルタルソースも作ってしまっていた。

 

(お母様、儚げな美女の姿をしているのに子供舌というギャップを持っていたなぁ。苦いものは嫌い、すっぱいものも苦手、だけど甘いモノは大好きで)

 

カキフライにタルタルソースをたっぷりのせて食べるのが好きだった母を思い出し、ふふ、と口元が自然とほころぶ。

 

「――ご機嫌だね」

「っ!…お兄様、驚かせないでくださいませ」

 

唐突に背後から声を掛けられ肩が跳ねた。ついでに心臓も前に飛び出した気がする。抑えて元の位置にあることを確認して。

 

(お兄様、今絶対気配消してた。だって、いつもなら深雪ちゃんのお兄様センサーが機能するはずだもの)

 

…まあ、思い出に浸りながら作業に没頭していたことも要因だろうけど。

 

「それで、何を考えていたんだい?」

「お母様のことです。お母様は、カキフライはタルタルソースで食べるのがお好きだったと思い出していたらつい作ってしまっていて」

 

お恥ずかしい、と告白するとぽん、とお兄様の大きな手が頭に乗った。

 

「きっと母さんも喜んでる」

「!…だと嬉しいです」

 

お兄様からの慰めの言葉に、心は舞い上がる。

 

(お兄様の中にもしっかりお母様が生きていらっしゃるんだ)

 

その事実が何よりも嬉しかった。

心の中でイマジナリーお母様に良かったですね、と話しかけると貴女を慰めるついででしょ!とプイっと横を向かれた。可愛いかな?

美女なのに。儚げなのに。それでいて可愛さを持ち合わせているなんて。恐ろしいお母様。好き!

…しかしこのイマジナリーお母様、私の願望が強く表れ過ぎてるみたいで、好き!の告白が筒抜けで耳が真っ赤に染まっていた。可愛いがすぎる。

 

「深雪?」

 

おっと、心の中のお母様を愛でていたらお兄様との会話も途切れてしまっていた。

 

「すみません。もう少しで出来上がりますので」

「わかった。机を拭いてくる」

「ありがとうございます」

 

自然に手伝いを申し出るなんてこと、男子高校生のみならず世の中の旦那様方でもなかなかいませんよ。

本当、婿に行ったら夫婦円満な家庭を築ける気配り上手なお兄様。いいなあ、お兄様の奥様になる方は。

お兄様となら互いを思いやり、充実した結婚生活を送れることだろう、と夢想する。が、今度は手を止めない。

お腹を減らしているだろうお兄様の為大急ぎで料理を完成させる。

そして――

 

「「いただきます」」

 

並んだのは味噌汁、お新香、きんぴらごぼうに本日のメイン、たっぷりキャベツに並ぶカキフライ、タルタルとソースを添えて。

食べ進みながら他愛ない話をしていると、自然と途切れ、お兄様がみそ汁と一口飲んでほぅ、とため息を吐いて。

 

「…実は少し不安だったんだ」

「不安、ですか?」

「今日の食卓にワインが並ぶんじゃないかって」

「え?…ああ、ボージョレ・ヌーヴォー解禁日でしたね」

 

そう言えば朝そんな話もしていた、と思い返す。

てっきり思考の海に潜られていたものだと思っていたのだけどお兄様ちゃんと聞いていたんだ。

でも、不安とは。

 

「いくら解禁日であっても私たちはまだ未成年ですよ」

 

母がいればまた違ったかもしれないが――と考えたけど、体の弱っている人にお酒は振舞えないね。

前世ではお酒は一缶も飲めば満足できるくらいだったのでそんなに量を飲めなかったが、お酒は楽しいものだと記憶している。

飲める年齢になったら飲んでみたい、とは思うけど今の体はまだ子供だ。未成年の飲酒は成長にどんな影響を及ぼすかわからないし、そもそも子供の舌で楽しめるかもわからない。

前世では、成人になって飲んだビールやワインを美味しいと感じられなかった。これが大人の味か、としばらくはいいかな、と遠ざけた記憶がある。

社会人になって働くようになると感じ方は変わったけれど、私はチューハイや甘いお酒の方が好きだった。

飲めなくはないし、すっきり辛口の日本酒もこれはこれで、と楽しんだけどね。でもどのみちすぐに眠くなっちゃうのでおちょこ一杯で満足していたっけ。

深雪ちゃんも原作を読む限りお酒にはあまり強くなさそうな描写、というかその空気だけで酔ってしまうシーンなどもあったから体質的に酔いやすいのかもしれない。

 

(…というか、あれは酔った勢いに任せてほにゃらら~、なことを期待していた、のよね?全部が計算通りではなかっただろうけど深雪ちゃん大胆過ぎる)

 

でも女子高生が好きな人と、誕生日に二人きりになったらまあ、期待するのはおかしくはない。

随分積極的ではあるけれど、せめてキスだけでも、と期待するのも当然に思えた。

ただ、あの時はまだお兄様にとっては可愛い妹であって、立場上婚約者を与えられたばかり。お兄様の心は複雑だったことだろうから。

 

「まだお酒の味を知るには早いかと」

 

とりあえず、いくら記念日だからと未成年しかいない食卓でお酒は出さない、と言えばお兄様はもう一度安堵したように溜息を洩らした。

随分と心配されているようだ。

今までお酒を飲むことは無かったものの、料理にはばんばん料理酒は使っているし、年始には甘酒も飲んでいる。

どちらもアルコールを飛ばしているから問題はないはず、…なのだが甘酒は酒粕を使っていることもあって飲むと気持ち良くなることはあった。

ふんわりふわふわと心地よくなるのだ。

甘くて美味しくて心地よくなる、あれはいい飲み物です。合法でこれを味わえるなんて最高では?とは流石に言えないが。

大抵その後眠ってしまっているので何が起きたか定かではないのだが、その際に何か迷惑をかけているということだろうか。

酒癖は悪くなかったと思うのだけど。

 

(お母様と飲んだ時だって、飲みすぎてはだめよ、と忠告はされたけれど禁止されるほどではなかったから淑女的にアウトなことは無かったはずなんだけど)

 

ただ、その日はお母様にたくさん撫でてもらった思い出。こちらが照れるくらい撫でまわされた。

お兄様からも、飲むときは絶対自分がいる時にしてくれ、となぜかぐったりしながら抱きしめられたりして。

――何か、あったのだと思うのだけど二人が詳しく教えてくれることは無かった。

ふわふわしてよく覚えてないから教えてほしいと言えば、その通りふわふわしていただけだと返ってきてよくわからないままになっていたのだけど、これを機にもう一度聞いてみた方が良いだろうか。

 

「お兄様、そんなに不安に思われるほどの何かをしてしまったのでしょうか?」

「…俺がいれば、もし外で飲むような場面があってもアルコールを分解してあげられるだろうから」

 

出来ればその前に視てアルコールが入っているようなら止めるが、と答えてカキフライにタルタルを乗せて召し上がられていますけど、…それは質問の答えではありませんねぇ。

論点をずらされている。

でも、これから社交の場に出ればお酒を出される場面もあるだろう。そういう時はお兄様が何とかしてくださるらしい。それは頼もしい限りなのだけど、お兄様は将来お外に出るので私がそういう公式の場に出る時にはガーディアンは水波ちゃんとなるはずだ。

その場合、水波ちゃんが用意したものしか飲まないだろうから、アルコールを摂取するようなことは無いのだろう。

珍しいお酒を飲めないのは残念だが、そこは四葉。後でいくらでも用意してもらえばいい。

水波ちゃんがそれに付き合ってくれれば何も言うことは無いのだけど、仕事中は飲んでくれないかな?とまだ傍にいない護衛との未来を思い描いていると、お兄様からの「これも美味いな」、の声が。

タルタル美味しかったですか。お口に合ってよかった。

結局甘酒を飲んだ私がどうなったのかを教えてもらうことはできず、ただ飲むときには注意するようにと念を押されるのだが、――ここまで言われると逆に気になるのが人というもの。

 

(今度固定カメラでも設置して飲んでみようかな。いずれ飲まなければならない場面も出てくるだろうし)

 

将来のことを考えたら自分の酒量限度や行動を知っておくのも必要だろう。

そんなことを考えたその時だ。

 

「――深雪」

 

何を言われたわけでもない。ただ名前を呼ばれただけなのに、それが忠告だとわかった。

 

(何でこっそりお酒を飲もうと考えたことが気付かれたんだろう?やっぱり心を読まれているのだろうか)

 

…ひとまず一人でこっそり実験はしない方が良さそうだ。

 

 

 






これでもし一人で実験をしたりなんてしたら約束を破ったとお仕置きをされるんでしょうね。
カキフライの日でフライドチキンの日でボージョレ・ヌーヴォーの日でした。
深夜様を勝手に子供舌にしてしまいました。色々と我侭であってほしい願望がつい…。苦いものは嫌い。でも娘に出されたら頑張らなくも、ない。
二択の際、ボージョレ・ヌーヴォーで、赤ならばチキンかとの発言に速攻でカキフライを選択。
妹にアルコールを飲ませると大変なことになるので阻止したかった。
飲む飲まないの話だけでも冷や冷や。…過去に何があったんでしょうね?深夜様には可愛らしく甘えたな娘の姿が見られたのかもしれない。お兄様には――全幅の信頼を寄せて甘えたし甘やかされた、とか?それはそれで読んでみたい(←
この頃の妹は、お兄様はいずれ婿に行くものだと思っているのでお兄様に頼らないように一人こっそり実験するつもりだった。お兄様の嗅覚は恐ろしいですね。
もし一人しかいない時に一人で実験して飲んだりしたら、お兄様を求めてお兄様のいないお兄様の部屋に入ってベッドでゴロン、としていたかもしれない。そして寂しくて丸まっているところにお兄様汗を拭う間もなく帰宅。妹を抱きしめる。
でもね、妹は何にも覚えてないんですよ、っていうね。

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