妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編   作:tom200

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婚約後の恋人未満だけど恐らく陥落寸前くらいの謎時空となっております。



11月の記念日 11/22

 

11月22日

 

 

「深雪にとっていい夫婦とどんなものだ?」

 

水波ちゃんが下がって、二人ソファで寄り添いながら淹れてもらったコーヒーを飲んでいるリラックスできるひと時。

つい先ほどまで今日のほのかちゃんのおっちょこちょいエピソードだったり、雫ちゃんとの実技でのあれこれを話していて、ふと会話が途切れたところでお兄様が足を組み、そこに組んだ手を引っかけて背もたれに凭れてからそう訊ねられた。

え、まって。

質問も気になるのだけど、そこよりもお兄様のそのお姿にキュンキュンきてしまうのですけれど⁇え、カッコいいですね?

 

「深雪?」

 

はっ!

思わずお兄様の普段見られない姿に見惚れてしまっていた。

お兄様はそれに気づいたのだろう、ちょっと苦笑と…照れくささ?やだ、お兄様が可愛さでも攻めてくる。

処理が追い付かずまだ動けないでいる私にお兄様は仕方のない子だ、とばかりに優しげな表情を向けられて更に追い詰められてしまう。

 

(うぅ…なんて目で見るのぉ―…)

 

とろりと甘い瞳に見つめられて心臓が痛い、苦しい。

胸の上に手を置いて動きを少しでも抑えようとするのだけど、全然治まる様子がない。

 

「あまりそのように隙だらけではいけないよ。俺が悪い兄貴だったらこのままぱくりといかれていただろう」

 

いえいえいえ、今にもぱくりといきそうな雰囲気溢れてますよ!危険!!溢れる色気に中てられてくらくらしている妹の姿が目に入っているでしょうに。

好きで隙だらけでいるわけじゃない。

お兄様が仕草で、声で、そして瞳で狙い撃ちされたことで息も絶え絶えになっている状態なだけ。

でも、お兄様は今日は絶対に手を出さないと決めているから、物理的にも手を出さないよう組んでいるということなのかもしれない。

何故かって?明日は年に一度の良いお兄様の日ですからね。いい子(?)にしていたお兄様へのご褒美の日――という、お兄様が一日私の世話をして過ごす日という謎の日だから。

意味が分からない?大丈夫、私もわからない。

だけどそのおかげで、この濃密な夜の雰囲気を引っ込めてくれたことで息がしやすくなった。

ふぅ…、顔が熱い。手でぱたぱたと顔を扇いで冷ます。

 

「ええ、と。いい夫婦とは、ということでしたよね」

「そもそもいい夫婦とは何を指す?」

 

おや?一般論も求められてる?

ちょっと考えてから。

 

「そうですね、片方が寄りかかるのではなく、互いに支え合えるような関係。互いが互いを思い遣れる関係であることが求められるのではないでしょうか。あとは互いの欠点を受け入れられる、とか」

「…欠点?」

「パートナーの嫌なところも愛せとまで言いませんが、それも含めてその人なんだ、と受け入れられたなら、それは素敵な関係なのだと思います」

 

盲目的な愛では本人を置き去りにしてしまって関係が壊れやすいだろう。

人が人に恋する期限は3年だという。それ以上続けられる人もいるのだろうが、大抵はそれくらいで落ち着いて冷静にパートナーを見られるようになるそうだ。

好きな人なら気にならないことでも、熱が冷めると急にそれが気になりだしてしまう。

些細なことで喧嘩となったりしてお別れ、なんてよく聞く話だ。

三つ子の魂百まで、と言うように人はそうそう変わらないもの。どれだけ妥協ができるか、となる。

でも、ずっと我慢ばかりでは疲れてしまう。それもまた関係をこじらせる原因の一つ。

 

「欠点…」

「お兄様?」

 

結婚って難しいなぁ、と前世の話も思い出しながら考えていると、お兄様はその手前で止まっていたようだ。

首を捻って考え中。

 

「何か気になる点でもございました?」

「…深雪には欠点なんて無いだろう」

 

どうやら私の欠点を探していたらしい。

お兄様、シスコンを極めすぎて盲目になってませんか?原作ではもう少し分析ができていて、ちゃんと深雪ちゃんの駄目なところも見えていたはずなんだけど。

 

「それは身贔屓が過ぎるというものですよ、お兄様」

「…美しすぎるところか?」

 

ひねり出してようやく一つ。

うん、まあ。それもある意味欠点だね。まともに外出できないことは不自由ではあるから。

どこに行っても注目も浴びるトンデモ美少女だから。

だけどそういうことじゃないんだなぁ。

 

「視野が狭くて、思い込んだらそのことだけしか考えられないところは十分に欠点だと思いますよ」

 

数少ない原作深雪ちゃんと私の共通点に、『思い込みの激しさ』がある。

原作でもなかなかだったが、私もそうだと気付いたのはお兄様から告白をされた後――お兄様は絶対そんなことをしない、を前提にすべての計画を立てていたことで見事計画が打ち砕かれたその瞬間、すべて自分の思い込みが原因だと気付かされたのだ。

 

(深雪ちゃんからの告白が無ければお兄様が彼女への想いに気付くはずがない)

 

深雪ちゃんがお兄様に執着することはあっても、お兄様が妹に対し執着を見せるようなことは無い、そう信じていた。

お兄様にとって唯一残されたのが兄妹愛だけだからこそ、お兄様からその関係性に変化を求めることはしないと思い込んでいた。

だが、これまで積み上げてきたもの、私たちの過ごしたこの数年でお兄様は原作とは違うお兄様に変わっていた。

その変化に気付けていたのに、それでもそこだけは絶対に変わらないのだと盲信していた。

キャラクターじゃない、今ココに生きているんだとわかっていたのに。

これまでだっていくつも原作に無いことが起きていたのに、頑なにありえないことなのだと思っていた。

 

「確かに、そういう点は見られるな」

 

よかった、ただ盲目に可愛い妹と思い込んでいるわけではないようだ。

 

「優秀過ぎて叔母上の目に留まってしまうことも欠点と言えば欠点か」

 

…ぽつ、と呟かれた内容にはちょっと頷きづらい。叔母様の目に留まったのは優秀だからというより『おもしれー奴』、として認識され変わったおもちゃ扱いなのだと思いますよ。

 

「だが、深雪の一番の欠点は己の価値を理解していないところだな」

 

深雪ちゃんの価値?それはもう高く評価しているつもりなのに、なぜそのようにまた仕方のない子を見る目を向けられるのだろうか。

 

「まだまだ足りないよ。もっと自分の魅力を自覚してほしいくらいだ」

 

言いながら頬に手を当てするりと撫でて離れていく。…その手つきのえっちぃこと。

一瞬の触れ合いなのに熱を上げるのをやめていただきたい。せっかく平常に戻ったのに。

 

「それはお兄様もでしょう?」

「俺にはお前のように周囲を虜にするような困った魅力はないよ」

「ただ種類が違うだけで、お兄様も十分魅力的で周囲を虜になさっているではないですか」

 

お兄様の方が無自覚な分問題だと思います、と訴える。

流石ラノベの主人公であるお兄様は鈍感じゃないつもりのようだけど、ばっちり鈍感ですとも。

敵意や嫌悪には敏感でも好意に関してはわかりやすいモノ以外には全く気付かない。七草先輩や亜夜子ちゃんがちょっと誤魔化しただけで騙されてしまうお兄様のどこが鈍感でないというのか。周囲にはバレバレですよ。

 

「買いかぶりすぎだな。深雪こそ身贔屓が過ぎる」

「まあ。それは聞き捨てなりません」

 

わざとらしく頬を膨らませて見せると、一拍置いた後すぐに悪かったと謝罪と抱きしめられたが…お兄様甘すぎませんか?

 

「可愛い」

 

可愛いが正義でしたか。それは仕方ない。この世の理です。

でもお願いですから耳元で呟かないでください。さっきの熱もまだ冷めてないのに。

 

「もう、お兄様ったら。話がどんどんずれていますよ。いい夫婦とは何か、のお話でしょう?」

「そんな話だったな」

 

お兄様が振った話だったのに趣旨を忘れた――というよりどうでもよくなっちゃったみたい。

お兄様、そういうところある。

 

「それで言うと俺は欠点だらけだからいつ見限られるか分かったものでは無いな」

「またそんなことを言って。お兄様に欠点があるとしたら、ご自身の価値を理解しておられないことと、向けられる好意に鈍感すぎるところ。そして一番は、ご自身に無頓着で傷つけてしまうことです」

 

そんなことは無い、とかお兄様は考えているんだろうけどお兄様の欠点なんて、そもそもお兄様本人のものというより副産物の方が原因のものが多い。

自身の評価が低いのはそう言われ続けて育った環境、好意に鈍感なのは衝動を抱けなくなったから。でも、最後の無頓着なのは自己犠牲の精神が混じっている。

自分が我慢すれば、この一瞬だけ耐えれば、と合理的に考え実行してしまうだけの忍耐力と決断力がそうさせてしまう。

その思い切りの良さも感情が薄いことに起因しているといえばそうなのだけど、己が身を顧みずに行動に移せてしまうのは自分の優先順位が低いから。

それは植え付けられた思想が全く影響していないわけではないだろうが、本人の意識もそうなってしまっているから。

 

「それだけは直してほしいと私はずっと横で苦言を呈さねばならないのでしょうね」

 

お兄様のそれが今後も変わるとは思えなかった。

いくら私が言ったところでお兄様はその時になれば取捨選択して自身を犠牲にすることを選んでしまうのだ。

想像できる未来に暗くなっていると、ふ、と漏れ聞こえた声に顔をあげる。

 

「…何故、笑っていらっしゃるのです?」

 

お兄様は幸せそうな笑みを浮かべられていて。

私はこんなに気落ちしているのに、と理不尽な不満を抱いた。

 

「すまない。お前を笑ったわけじゃないんだ。ただ嬉しくなったんだよ」

 

そう言ってぎゅっと抱きしめる腕を強くして。

苦しくはないけれど、より密着する体が温かい。

 

「ずっと、俺の横にいてくれるんだと思ったら、嬉しくて」

「……ずっと隣で苦言を言われ続けるのですよ?」

「俺のことを想って、心配して言ってくれるのだろう?」

「頬を膨らませて、そっぽを向いているかもしれませんよ」

「怒っているのに傍にいてくれるのか。俺の奥さんは優しいね」

「おくっ!?………気が早すぎます!」

 

奥さん、俺の奥さん!なんてパワーワード!!

心臓が今日一番に跳ね回っている。

 

「そうか、早すぎるか」

「そうです!まだ先です!!」

 

恥ずかしくてお兄様の胸に頭を押し付け顔を隠すことに精いっぱいの私は、お兄様がさらに頬を緩ませて幸せをかみしめていることに気付かなかった。

 

 

 

 





よかったねお兄様。妹はまだ恋人にはなっていないのに結婚は受け入れている模様。
早いってだけでいつかは奥さん。ほぼ確定した未来。
ということでいい夫婦の日でした。
本当は大人の日だそうなので大人とは何だろう?と話してもらおうと思ったのですが、そうするとちょっとえっちなお兄様が出現したので無かったことに。
大人って何だろうね?大人の階段を上らせようとするお兄様は悪いお兄様です。お帰り下さい。
結局妹のいい夫婦像を最後まで聞き出せなかったが、そんなことをしなくてもいい話が聞けたのでOK。
お兄様は明日の良いお兄様の日に向けて頑張って手を出さないように堪えていた。全ては明日一日妹の世話をするために!
…だから、良いお兄様の日ってなんなの…。
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