妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編   作:tom200

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婚約後で恋人後のお話です。いきなり事後から始まります…。



11月の記念日 11/24

 

11月24日

 

 

明日は休日ではあったがデートの予定もあったので、次の日に響かぬ程度に愛し合い、日付を跨ぐ前にピロートークに入ったのだ――が。

 

「…お兄様は変わってしまわれましたっ」

 

ベッドの上、腕枕におさまってくれている深雪がぷいっ、と顔を背けた。

口調は怒っているものではあったが、覗く耳は真っ赤に染まり、腕の中から出ていかないところを見るに本気で怒っているわけではないことがわかる。

達也はあわてず騒がず、ただ気になることを指摘した。

 

「兄呼びに戻るほど、俺は深雪を怒らせてしまったのかい?」

 

つい先ほどまであんなに名を呼んでくれていたのに、と思い出させるように身を抱きしめれば、深雪は体を硬直させて、そういうところです!と今度は顔を覆ってしまった。

可愛らしい反応に、さて困った、と達也は表情を全く変えずにわずかに腰を引いてどう機嫌を直そうかを考える。

達也自身、変わった、と言われるほど特別何かをした覚えがない。

むしろ明日のこともあるのでとそれなりにセーブをしていた。それでも十分に満たされるだけの心地であったし、深雪も同様に見えていたのだが、何かおかしかっただろうか。

心当たりのない達也の様子に、深雪はうぅ、と恨めしそうな声を出しつつ顔を覆ったままの為少しくぐもった声でぽつ、ぽつ、と語り始めた。

 

「た、達也様は…お兄様であった頃と、その、変わられてしまいました」

「俺としては今でも兄貴でいるつもりだが、恋人になったんだ。それは変わるだろう」

 

達也が妹に恋をしていると自覚したのはかなり遅かったが、無自覚に恋い焦がれていた期間はそれなりに長い。

その分だけ、つい最近恋心に気付いた深雪に比べれば重くもなる。

 

「だが、そんなに変わったか?」

 

先ほどは兄が恋人になったのだから変わって当然だろう、とは言ってみたが達也自身にはあまり変わったように思えなかった。

以前から触れたいと思った時には触れていたし、好きだと思った時にはそれなりに口にも出していた。

ただ、違うのはそこに欲を乗せているか否か。

 

(兄でいた時に妹に欲望を抱くなんて、ありえなかったからな)

 

そこは兄として堪えていたつもりだ、と達也自身は思っているのだが。

 

「…確かに、そう言われてしまうとそのような気もしなくも無いのですが…」

 

過去を振り返ってみて肯定はしているものの表情は納得していないようだった。

変化など大して思い当たらないと思っていた達也だが、案外そうでもなかったらしい。

未だ羞恥に身を焦がしている深雪の姿に兄として反省する達也だった。

 

「深雪は俺の何がそんなに変わったと思ったんだ?」

 

とりあえず反省は後でもできる。今は深雪をそう思わせた原因を究明することが先だ、ともう一度水を向けた。

 

「…お兄様の時は、その、感情表現が豊かになったといいますか…。困ることもありましたが、心が成長なされたのだと」

 

促されるままに口を開いた深雪は兄の変化について抱いている気持ちを語る。

深雪にとって兄の心の動きの変化はとても重要だった。

彼を幸せに導くために一番必要なポイントだった。

衝動を抱けるのは妹だけであっても、感情が全て失われたわけではない。

仲間を得、友情を抱き、友の為に行動を起こすことができると知っていたからこそ、――人を好きになることができることを知っていたからこそ、その伸びしろが彼にもっと変化を齎せるだろうと、まずは家族愛から深めるところから始めた。

希薄であった親子愛が深まるのを実感し、兄は人を愛せると――そこに衝動を抱くことは叶わなくとも他人を愛することができるとの可能性を示した。

だからこそ深雪は自分の方法が間違っていなかった、と愛情を注ぎ続け、満たされた兄が周囲にもっと関心を寄せていくだろうと思っていたのだが、まさかそこでありえなかったはずの妹への恋情が発現するとは予想だにしなかった。

 

(原作よりもお兄様からのアクションが多いなぁ、とは思ってたけど、まさかこんな結末を迎えるなんて)

 

だが、兄でいてくれた時はまだ、色気あふれてるなー、程度で済んでいたのだが(それでも慌てふためいたことは置いておく)、恋を自覚した途端、そこにはっきりと欲だと突き付けられてしまえば話は大いに変わってくるわけで。

 

「ですが、た、達也様が自覚されてからは…」

「表向き婚約者と発表されるとなれば隠す必要も無いからな」

 

言いにくそうな深雪の言葉を引き継いだ達也は、今腕の中にあるぬくもりを思えばあの選択は間違っていなかったと断言できた。

もっと深雪に負担のかからない方法もあっただろう。

だが、それでは時間がかかることは目に見えていた。

深雪には達也が愛する『兄』だったから。血の繋がった兄妹を、いくら愛しているからとはいえ恋人になり得るかと問われれば、それは常識的にありえない話だと達也もよく理解している。

今でも全く葛藤していないわけではないのだ。兄である心と、恋人としての心が同じ愛であっても衝突することはある。

例えば、――今この時のように。

 

(恥じらいながらも応えようとする姿は健気で愛おしい、のだがもっとその頬を赤く染め上げ瞳を潤ませる姿も求めてしまう。…だが、明日は予定がある)

 

デートを楽しみにしている深雪にこれ以上無理はさせられない。わかっているのに添えた手が今にも動き出しそうで。

心配だというならそれで手を外し、寝る体勢になればいいのにそれもできない。

そんな男の葛藤も知らず、深雪はぷっくりと頬を膨らませる。

それがまた達也の劣情を刺激するとも知らずに。

 

「開き直らないでくださいませ。…待って下さるとおっしゃっていたのに全然待ってくださらなかったではないですか」

「…それは心外だ。アタックはしたが同時に「待て」は守っただろう?必ず深雪の許可をもらったはずだ」

「あ、あんなに迫られて追い詰められればっ」

「――俺でなくとも拒絶できない、か?」

「!ありえません!!」

 

それは私に対する侮辱です!と先ほどまでは可愛らしく怒ったふりをしていた深雪も、今の一言でカッと目を開いて達也に向けて強く視線をぶつけて否定した。

もし、他の男に同様に迫られたら、などと深雪にはおぞましい話だった。

そうなる以前に近づかせることもあり得ない。

深雪が触れることを許すのは達也ただ一人だけなのだから。

一方視線をぶつけられた達也はと言えば――

 

(強い意志を宿した深雪は美しい)

 

愛おしい唯一の存在の、苛烈さを纏った美しさにただただ見惚れていた。

反発の視線をぶつける深雪に対し、愛おしさを滲ませる達也の視線はしばらくにらみ合いのように見つめ合っていたが、徐々に深雪の視線が弱まっていく。

 

「た、達也様っ…」

 

気が付いたら視線だけでなく手が深雪の体を撫で、深雪が身を捩らしていた。

すまん、無意識だったと謝ろうと思ったが、その前に放たれた一言に固まって言葉にすることはできなかった。

 

「た、達也様の変化はお兄様のそれとは違って成長ではありません!進化です!!姿かたちまで変わられてしまう、蛹が成虫になるような劇的な変化です!!」

 

別に虫扱いされた、とかそういったことで驚いて固まったわけではない。

劇的な変化をした、という表現に多用される例であることはわかっていた。

ただ気になったのは、

 

(深雪のことだから昆虫の『変態』が『変態性欲』に掛けられた、等ということは無い――はず、なんだが…)

 

達也は自身の行為を振り返る。

今日のみならず初めてそういった意味合いで触れた時からの全てを瞬時に思い返し、把握し――血の気が引いた。

自身の行いは、結構…というかかなり執拗であり、言い方を変えればねちっこく、深雪の言うように追い詰めるような愛し方が多かったように思う。

それは偏に深雪からも求めてもらいたいという欲求により焦らしてしまうのだが。

しかし達也の焦りに気が付かない深雪は言葉を重ねる。

 

「お兄様の時からその、妹に向けられるモノではないと思うことは多々ありましたが」

 

(…そんなに、だったか?)

 

だが、今の達也に記憶を遡る気力は無かった。

直接的ではないにしろ、思いのほか深雪からの変態発言(妄想)にダメージを食らっていた。

 

「それでも妹を慈しむモノに変わって最後には落ち着かせてくださいました。ですが、今の達也様にはちっとも心落ち着く暇もありません!」

 

慈しんでいないわけではない。そこは否定したいが心休まる時を与えてないと言われればその通りだと痛感した。

もっと、と欲するあまり、余裕がなくなっていることを今になって自覚した。

先ほどまでも、短い時間しかないことで、明日に響くような真似は、と無理はさせたつもりはないが、その分いつもよりじっくり熱を上げるように触れ合い、内容としては濃密だったことを思い出す。

特に最後の方の乱れ様はいつも以上に艶やかで自身を鎮めるのに苦心したものだ。

 

(…と、今思い出すのはそこではないというのに)

 

心は落ち込んでいるのに体は裏切るように元気になっていく。その事実がさらに達也を打ちのめした。

 

「…すまん」

 

ぽろっと漏れ出た言葉は力無く零れ落ち、怒っていたはずの深雪に動揺を与えた。

 

「あ、あの、別に達也様が悪いとか、そういうお話ではなくてですね…えっと…確かに達也様はその…愛情をストレートに表現されるようになって、受け止めるにはその…おっ、大きすぎて受け止めきれず…で、でも嫌ってわけじゃなくて!えっと、その…」

 

だから、と言葉を選びながら慰めようとする深雪の必死さに心救われる思いもあるのだが、一部言葉のチョイスと恥じらいながら潤んだ瞳で訴える仕草に本当に作意が無いのかと疑いたくもなるが、いくら瞳を覗き込んでもこちらを心配している色しか映しておらず――

 

(これは、兄としても教育的指導をしなければならないだろう)

 

唯一のストッパーである兄の思考もGOサインを出してしまえば誰も達也を止める者はいない。

明日の予定?多少予定の変更は余儀なくされるが問題ない。

まだ言い募ろうとする口をできるだけ優しく封じ込め、しっかりと腕の中に抱き込んで。

 

「え?あのっ」

「深雪はその無自覚に煽る癖を、気を付けなければいけないよ。おかげで明日の予定は少し変更することになった」

「え!?」

 

 

戸惑い混乱する深雪に教育的指導を行い、今後気をつけるという約束を取り付けた頃には日付が変わっていた。

 

 

「もし、約束を破って無自覚に煽るようなことがあれば――わかるね?」

 

こくこく、と涙目になって頷く深雪の頭を優しく撫でてお説教はおしまい、と抱きしめてから安心するようとんとんと、背を叩いてやりながら達也は考える。

 

(…お仕置きは何がいいだろう)

 

きっと近いうちに約束は破られるだろうことは簡単に予測できた。

自覚しろと言ったところで無理な話だ。そういうのは無意識のうちに出てくるものだからいくら本人が注意したところで無駄なのだ。

これまで彼女の無意識の言動に誘惑され続けた達也は確信していた。確信したからこそ約束を取り付けた。

 

(確かに、こうして利用することを覚えたことは成長ではなく進化と言えるのかもしれんな)

 

兄であった達也には妹を利用するなどありえない発想だった。ただ成長しただけならばこのようなことを考えつかないだろう。

進化とは、環境を利用し自身に都合の良いよう適応すること。

これが果たして深雪にとって良い変化だったのかはわからないが、たとえ悪かったとしても深雪は達也を受け入れるだろう。

 

(深雪は情に厚く、優しい子だから)

 

だからこそ愛おしく、憐れまれずにいられない。

 

(こんな男に掴まるなんて可哀想に)

 

だが、手放すことなどできはしない。

初めから達也にはできるはずも無かったのだと自嘲する。

すぅ、と力が抜けて腕の中で眠る深雪の額に口づけを落して達也も後を追うように目を伏せた。

 

(俺の力の全てをもってして深雪には幸せになってもらおう)

 

それだけがこんな自分にできる唯一の罪滅ぼしだと己に誓いを立てて――。

 

 

 

次の日、達也の予測通り、深雪はいつもより遅い時間に目覚め、恥じらい縮こまる姿が可愛すぎて抱きしめてしまい、更に羞恥で身動きが取れなくなり予定が多少ずれることになるのだが、それはまた別の話だ。

 

 

 






誓いを立てなかった場合、お兄様はヤンデレに進化する。
囲っちゃおうね~、皆の目から隠しちゃおうね~、となる。
罪の意識があって、ちゃんと幸せにしてあげようとするならバッドエンドルート回避。
罪の意識があって酔いしれて依存させちゃおうってなったらアウト、バッドエンドルートへ。
Bボタンキャンセルが効かない。
ということで進化の日、でした。
お兄様が進化をしたらどうなる?デロ甘の婚約者兼恋人兼お兄様になる。どこに出しても(溺愛される妹が)恥ずかしい。特に知人の前だと居たたまれない。友人だとわかってくれるから大丈夫なんだけど知人だとお兄様が威嚇・警戒するからね。人前だろうと関係ない。妹一番を隠しもしないし見せつける。
…なんて。
お兄様にもそれなりに一般常識はあるのでTPOは守る…はず。
はずだけど、デート前日にもイチャイチャ()が堪えられなかったお兄様でした…。

お粗末様でした。
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