妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編 作:tom200
せっかくのバニーの日に何もしないのは、とひねり出した結果、なんだか可哀想な人が一人。申し訳ない。
…タイトル浮かばなかったので適当に付けたらひどいセンスだった…。
お兄様はプロフェッショナルである。
常に仕事は完璧に熟す。たとえ途中、どんなアクシデントが起きようとも目的は必ず達成する。
時にどんな無茶なことでも、己の身を犠牲にしようと目的の為なら手段を選ばない。
そんなお兄様を尊敬しない妹がいるだろうか、いやいない!
だから画面越しに、いつもは見せないキラキラアイドルスマイルを浮かべてマサキにウサ耳を押し付け付けてあげている姿は正に身を切って目的を達成する姿に他ならない。
(――お兄様…そこまでお嫌でしたか、ウサ耳)
チーム内でどちらかが付けなければならないと渡されたアイテムを悩むことも相談することも無く、お兄様は将輝君に擦り付けた。
(…将輝君、お兄様の笑顔に固まってた隙を突かれましたね)
彼も見ることのない笑みでしたから、硬直してしまったようだ。
なぜ、こんな事態になったかと言えば、今日は8月21日。バニーの日であり、ちょっとした罰ゲームとしてウサ耳の刑として被らねばならなかったのだ。
この番組はよくある番宣の絡んだクイズバラエティ番組。
俳優チーム、お笑いチーム、そしてアイドルチームでお兄様たちが出場していた。
丁度今週お兄様たちのシングル曲が発売されるのだ。
その宣伝を賭けての勝負だったのだが、中盤、お笑いチームが大番狂わせで上位に浮上する快進撃を見せ、結果まさかのお兄様たちが最下位に転落してしまい、最下位のチームにはこのウサ耳を付けるという屈辱的罰を受けなければならない特別ルールが適用されていた。
――恐らく、番組としても俳優チームの可愛い女の子か、アイドルチームのどちらかに付けさせるための演出だったのだと思われる。
やらせというなかれ。そういうおいしい画が無いと番組としても面白みが無いのである。
裏でお笑いチームを最下位から脱出させるためにカンニングさせるとか、そういったことはコンプラに厳しいご時世なのでできないはず。空気を読んだ芸人さんたちによるプロの本気がもたらした結果と思われる。
そしてその最下位のバトンがお兄様たちに回ってきたというわけだ。
誰か一人が辱めを受ける。
先ほどまで芸人さんたちは必死にそれを擦り付け合い、笑いを生んでは、こういうのは可愛い子か二枚目が付けるのが見たいんだよ!とスタッフの気持ちを代弁しながらキレちらかしていた。
おじさんのウサ耳も面白いものですよ、と興味もなくカップを傾けながらお兄様応援の手旗を振っていたのだけれど、今はテレビの前で正座をしてお兄様たちを見守っている。
てっきり二人でどちらが付けるか少しくらい揉めるんじゃないかと思っていたのだけど、まさかお兄様が被り物NGだったとは。
いえ、きっとこれがドラマ上の演出ならば付けていたはず。役に入れば自分ではないと割り切れるお兄様は、一度スパイの役どころで女装を披露した際もそれはそれは見事に化けていた。
(あれはお美しかった…。でもその放送の後、お姉様って呼んだら大変な目に遭ったなぁ)
お兄様ったらそう呼ばれることを予期して鬘まで用意して姉妹ごっこに付き合ってくれたまでは楽しかったのだけど、その後ごっこ遊びに付き合った代償を払わされて――だめだ。思い出しちゃいけない。
って話が逸れた。
画面では唖然とした将輝君がウサ耳を付けてお兄様を見つめたまま静止画のように動かなくなった。
うん、美少年のウサ耳は大変良くお似合いで、かっこかわいさを十分に発揮していたのだけれど、その表情がね。
お兄様はもうとびきりアイドルスマイルを消していた。
用が終われば無駄なことはしない。流石お兄様。最小限で大きな成果を出す。
残念ではあるけれど、お兄様らしいと言えばらしい。
そしてお兄様が次にとった行動は連続正解、最下位脱出だ。
見事な早押しで回答をしていく。…その本気を早く出していれば、と言うなかれ。お兄様もバラエティという物を知っていて、求められる画という物を理解していたからの行動だったのだ。
そしてアイドルチームのターンは終了。俳優チームにウサ耳のバトンは渡り、人気の俳優が「ええー、俺ぇ!?」と先輩命令で付けさせられていた。
番組は最終的にアイドルチーム、というかお兄様が一人回答をし、見事優勝。しっかり一分の番宣タイムを勝ち取った。
番組終了後、ファンの集うネット板を覗くと、「そこまでお嫌でしたかお兄様www」という私と同じ意見が乱舞していた。
それと同じくらい、「お兄様にあんなアイドルスマイルができるだなんて!」「デビュー当初もしなかったあのお兄様が!」「その笑顔よりもウサ耳嫌だったんだ」との言葉が並んでいた。
皆思うことは一緒だね。
あと、「マサキの石化が番組終了付近まで解けなかった件についてwww」も。
相当ショックだったんだろうね。幼馴染でもあのお顔を見るのは初めてだったんだろう。
「あんな呆然とした顔なのにカッコいいとか何なの?」「ウサ耳の違和感なかったわ」「イケメン滅びろ」とウサ耳は好感が持てたようで何より。
大変お似合いでしたとも。
…お兄様もきっとお似合いだと思うんですけどね。
(…お揃いにしたらワンチャン有りかな?)
ちなみにうちには白と黒のウサ耳がある。理由は――個人的趣味です。深雪ちゃんなんでも似合うから。あ、でもお兄様はこれを付けたところを見たこともなければ持っていることも知らないだろう。
あくまで個人的な趣味です。見せたことなんてございませんでした。
(今夜はそろそろ帰ってくるはず。お兄様みたいにうまくいかないだろうけど、驚かせた隙を突いて付けてもらおう)
イタズラをするなら黒ウサかな。とすちゃっと頭に耳を装着。お兄様のお帰りを待つ。
そして、
「ただいま――随分と可愛らしいウサギさんだ。一人は寂しかっただろう?安心しなさい。もう一人になんてさせないからな」
目にも止まらぬ速さで抱き上げられたかと思うとその言葉の通りずっと放してもらえなかった。
ご飯を食べる時もお兄様の上に座らされ、歯磨きも、着替えも――は、流石に目隠しをして、だったけどもそんなことをするくらいなら放して欲しかった。
でもそう抗議をすると、
「ウサギは寂しいと死んでしまうのだろう?」
深雪は今俺の可愛い黒兎だからな、とそのままベッドに下ろされて、お兄様も当然のように乗り上げてくる。
「お、お兄様っ」
「俺も今はお前の白兎なんだから、一人になんてしないよな?」
…お兄様の頭上には白のもふもふウサちゃんのお耳が鎮座していた。
「あんなに嫌がっておいでだったではないですか」
「深雪がいるならともかく、何故他の連中の前でそのようなことをしなければならない?」
深雪なら喜んでくれるんだろう?と言われ、確かに喜ぶべきなのだろうけど、ずっと密着されていれば喜ぶ暇もなく。
「…せめてお写真だけでも撮らせてくださいね」
「交換条件だな」
だが、今は一緒に眠ろう、と抱きしめられてぼふっと横になる。
「きゃ!」
「ふ、可愛い鳴き声だ。もっと聞きたいところだが、そんなことをしては眠れないからな」
…お兄様、今一体どんなドラマ撮影をされているんだろう?ちょっとお色気成分がいつもよりマシマシです。危険。
また禁断の恋的なモノかもしれない。
そういうドラマの時は大抵怪しい雰囲気が続くから不用意に近づけないのだけど。
「震えているのかい?もっとくっつくといい」
俺には温めてあげられる毛皮はないけどね、とウサちゃんジョークまで飛び出る。お兄様ウサギに関する引き出しが多い。
「おやすみ俺の黒兎」
「おやすみなさいませ、白兎のお兄様」
諦めて力を抜くと、その分抱きしめられて密着し温かな熱を分けられて眠りに誘われる。
その晩、黒兎のお兄様と白兎の私が陰陽のマークのように密着し、円を描いている夢を見た。
もふもふはとっても可愛かったのに、目を覚まして見えた人型の姿はあまりにも刺激的過ぎて悲鳴を上げてしまった。
力尽きました。
お兄様のウサ耳が見たかった。ら、何故か一条君が付けてた。お兄様、妹が近くにいないと付ける意味を見出せなかった。お兄様のキラキラアイドルスマイルには人を石化させる力がある(←
深雪ちゃんには白いお耳も似合うだろうけど黒いお耳も似合う。絶対可愛い。
お兄様も目を奪われたけどそれよりも早く捕獲しないと、と抱き上げていた。獲物は絶対に逃がさない。目は肉食獣のそれだったけれどすぐに抱き上げられてしまったので妹は気づいてない。
妹はお兄様の明日のスケジュールもあるし、無駄に足掻いて睡眠を削るのは良くない、と思っているようだけれどお兄様はそのことを踏まえての作戦だった。
この芸能パロのお兄様は常に傍に居られない分、姑息な手を使ってくる。
妹を独り占めできる世界。
夢の中で白と黒が入れ替わっていたのは白の方が生贄感あるよね、というイメージで。白がいるから黒いのは眠れるのです、なんて。
密着して丸くなるうささんは可愛らしいのにね。
お粗末様でした