妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編 作:tom200
あちらはほのぼの仲良し兄妹に。こちらは…恋愛相談もできちゃう軽口飛び交う仲良し兄妹?
それから遅くまでお兄様と、私がいかにお兄様が鈍感で天然で困っているかをお話しした。
お兄様もお兄様で、深雪さんがいかに鈍感で天然かエピソードを交えて話してくださったけれど…
「流石にそれで気づかないのはおかしいだろう。…鈍感通り越してそっち系が死滅してないか?」
「そんなことございません!お兄様はちょっと鈍いと言いますか、妹からのアプローチを勘違いしないだけで…。そ、そちらの深雪さんこそ!あのような触れ合いをされて反応が薄いというのは女性としての危機管理能力が機能していないのだと思います!」
「深雪の危機察知能力は高いぞ。踏み込もうとするとするりと躱されるからな。…そう、躱すんだよ、あの子は」
…互いの心に重傷を負い、
「…すまん、言いすぎた」
「…いえ、こちらこそ申し訳ありませんでした」
互いに傷を舐め合って、
「お兄様は努力されていますとも。…ただ相手が強敵なだけです」
「深雪こそ、兄妹愛だと思い込んでいる兄に対してよく健闘しているよ」
互いの健闘を称え合って、
「きっと報われる時が来ます」
「そうだな、まずは帰ってきた時の反応が勝負だな」
そして互いに己を奮い立たせてから――がっちりと手を組んで仲を深め合った。
兄妹だから恋なんてできない、という大前提を見ないふりをしてした恋バナはとても楽しかった。
興奮して寝付けないのではないかと思ったけれど、そんなことはなくぐっすりと眠った翌日の朝。
残念ながら、私はまだお兄様の元へ戻れないらしい。
朝起きると、お兄様はもう朝の鍛錬に向かわれていて、それを寂しく思いながらいつものように朝の支度を始める。
朝食の準備と身だしなみを整えると、お兄様が帰宅の知らせが聞こえてすぐに玄関へ。
「おはようございますお兄様。おかえりなさいませ」
「ただいま深雪。昨日はぐっすり眠れたかい?」
「…はい、問題なく眠れました」
不安で眠れないかも、と思っていたけれどベッドに入ってすぐ意識が無くなっていました。
元々寝つきはいい方ではあるのだけれど、こんな非常時にでも発揮できるなんて。自分のずぶとさが信じられなかった。
「それはよかった。体調が整う分には悪いことなどない」
お兄様の慰めの言葉に、感謝と少しの恥ずかしさが混じるが、せっかくの慰めの言葉を無下にできるはずもない。
「ありがとうございます。あの、シャワーの準備はできています」
「ありがとう、入ってくるよ」
そう言ってお兄様が靴を脱いで上がるのだけど、その際にすっと私の身体を抱き込んでから、
「ああ、しまったな。了解を得る前にやってしまった。抱きしめていいか?」
いつものルーティーンなんだ、と自然に言われてもお兄様に抱きしめられてそれどころではない。
かちんこちんに固まってしまったのを、お兄様は苦笑してすまなかったねと謝って、抱きしめた時と同様さっと私の体を離してお風呂場に向かわれた。
…
……
(今!わ、私お兄様にっ……)
抱きしめられた体温、香りがまだ残っているような感覚に、ものすごい速さで全身に血が駆け巡る。
立っていられなくなってその場にしゃがみ込んで顔を覆ったけれど、熱い頬はすぐには冷めることは無さそうだった。
ぐるぐると頭の中でお兄様に抱きしめられたという事実が回っている。
でもいつまでもここで蹲っているわけにもいかない。
お兄様だけど知っているお兄様と違うとわかっていたはずなのに何という不意打ち攻撃。
動揺するなという方が無理だ。
(もう!お兄様絶対確信犯だ)
徐々に状況が把握できてくると、これがお兄様のイタズラだと気付く。だって、離れる際に見た顔は笑っていたから。
(でも、あれはお兄様流の私の元気付ける方法だったのでしょうね)
帰れないことに落ち込んでいたことに気付かれていたのだ。
だからあんな行動を取って気を紛らわしてくれたのだと思うのだけど。
…だからって、理解はしたけど納得はいかない。
こちらのお兄様の言動は積極的過ぎてはっきり言って私の手に余る。
あちらではもっとお兄様に触れてほしい、と思っていたけれど、ここまで来られてしまうと私には刺激が強すぎた。
…こちらの私は毎日のようにこんな日常を送っていたのだとしたら、あちらのお兄様がお相手では寂しくならないのかしら。
そんな考えがまたも頭を過る。
もしかしたら、それを盾にお兄様にお願いしてあんなことやこんなことをしてもらっていたりしたら!
「お、お兄様がそんなことするはずがっ…でも、こちらの私にお願いされたら押しに弱いお兄様のことだから…」
「――あのな、深雪。それは流石に俺の深雪を誤解しすぎだ」
「ひ!お、お兄様!もう上がられたのですか?!」
声を掛けられてびくっと体がはねた。
全く気配が感じられなかった…。
「いつまでも玄関にいるからどうしたのかと思ったが、随分と深雪も妄想がたくましいな」
「私も、ということはこちらの深雪さんも?」
というか、先ほどお兄様、さらっと「俺の深雪」って言いましたね。自分のことではなくともちょっとドキッとした。
何だろう、お兄様ではあるのだけど、兄妹のようなこちらのお兄様の恋愛事情を覗いている気分というのか。
(…お兄様の声で「俺の深雪」発言も堪らなかったのですけれど)
兄の恋愛事情にしても、愛する兄と同じ顔と声でときめくセリフを言われたことにしても、どちらにしても赤面案件だった。
けれど、何とかそれを頬を抑えて隠しながら気になることを尋ねる。
するとお兄様はふわり、と笑って。
「ああ。あの子も色々と妄想しては、楽しそうだったり難しそうな顔をしたり。見ていて飽きないよ」
…愛おしい、というのが溢れた笑みに、気恥ずかしさを覚えた。
お兄様は恋をすると、こんな表情になるんだ、と見せつけられたようで嬉しいような、恥ずかしいような。
向けられる対象が私でないことに別の動揺をするかと思ったが、嫉妬なども湧きおこらなかった。
「俺たちが似た者兄妹のように、恐らくそちらの俺と深雪も似たタイプなんだろう」
「…つまり、」
「互いに押しに弱く、相手を尊重するだろうから」
想像をしてみる。
「それは何と言いますか、…何も発展しませんね」
「それで発展されては俺たちの立場が無いな」
「確かにそうですね」
お兄様と頷き合って、頭の中の靄を振り払う。
「さ、朝食にしよう」
「はい」
いい匂いがさっきからしていたのが気になっていたんだ、とお兄様は私の肩を抱いてダイニングへ向かおうとするけれど。
(だから、ボディタッチが多いですお兄様!)
やっぱりこちらのお兄様の行動にはまだまだ慣れそうになかった。
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