妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編 作:tom200
アニメ4話ネタ。
「やはり、私には迫力が足りないのでしょうか」
「いきなりなんだ?」
お兄様と十三束くんの試合が終わり、生徒会室に向かう途中、ふと思い返してつぶやいた言葉に、お兄様が反応された。
原作では十三束くんからお兄様が試合に誘われるんだけど、お兄様は戦う気など無くて。
十三束くんにしてみれば、お兄様ほどの実力がある人が、何も知らない七宝君に馬鹿にされるのが許せないという思いがあって、実力を見せて欲しいと模擬戦に付き合ってくれ、と誘うのだ。
それでも乗り気しないお兄様が試合に参加する理由、それは私にお願いされるからだ。
にっこりと、黒いバックを背負って美しい笑みを浮かべる深雪ちゃんに、そろそろお兄様の実力が見たいです、と。
お兄様がたじたじになるくらいの迫力の笑みに、ブラック深雪ちゃんの恐ろしさが際立つお話なのだけど、私はうっかり見たいな~、と目を輝かせるだけでお兄様におねだりしてしまったのだ。
やってくれたら嬉しいな~、と気軽な気持ちで。
せっかく悪役をするチャンスだったのに。
「先日精一杯悪役を演じましたのに、お兄様には悪役には見えなかったと評価されてしまいましたでしょう?」
「まあ、そうだな。深雪を悪役、というには少し可愛らしすぎるというか、隙があるように見えるんだ」
…隙…。
おかしいな。誰もが恐れる冷酷な女王様!みたいな空気を出したつもりだったのに。
落ち込む私に、お兄様はすまない、と謝られるけれど、お兄様が謝られることなど何もない。
ただ、私には足りない何かがあったということだ。
「例えば先ほどのお兄様が試合を受けて下さる場面で、私がお兄様に強気に物を申してみれば少しはそう見えたのでは、と思いまして」
そう言うと、お兄様は思ってもみなかったと目をぱちぱちさせて。
「深雪が、俺に、強気に…?それは、興味深いね」
あら、いやだ。お兄様なんのスイッチ入りました?あまり学校では見せないお色気が駄々洩れております。お控えください。いくら人が見ていないからと言って腰を引き寄せないでくださいませ!
「一体どんな風に俺に迫ってくれるのかな」
いえ、迫るまでは言っていないのですが、お兄様のイメージは一体…?
でもお兄様からリクエストをいただいたのなら答えないと妹が廃るというものです。
立ち止まって呼吸を整え、あの雰囲気溢れる笑みを思い描いて。
「私もそろそろお兄様にお力を示してほしいと思っていたところです」
再現するのはあのシーン。
声も透き通る美しい声なのに、ヒヤリとする声色になっている、と思う。
微笑みを湛えているのに目は笑ってはいない。
(どうだ!これぞ会心の深雪様スマイル!!)
そう、思ったのに。
お兄様はまじまじと私を見つめると、ふむ、と一つ頷いて。
「迫力、か。確かに感じないこともないんだが――困ったな。もしそんなことを言われていたら俺は片膝をついてお前の命を受けて跪いていただろうな。我が女王の御心のままに、と」
ガーディアンの時のようにお嬢様、とは呼べないが、と。
どうやら残念なことに、お兄様は怯えるどころか鼓舞されてやる気に満ちてしまうらしい。
…一体何が悪いんだろう?威厳が無い、わけではないんだよね?
「お兄様に怯んでいただきたかったのですが」
「俺がお前に怯むのか。想像がつかんな」
私は想像つく、というよりそういうお兄様を知っているのだけど、どうにも私のお兄様は原作とはずれているみたい。
残念だ。
「お前の可愛さや演技派なところを知っているからかな。そもそも先ほどの笑みは四葉では見かけるものだし」
あ~、確かに。お兄様に対して不敬な態度を見ると顔を出してましたね。
お兄様への態度について大っぴらに注意することはできなかったので、私の前でそのような不愉快なものを見せるの?教育がなってないの?という嫌味をつけて。
おまけで一応こんなでも私の兄だということを忘れないで、と付け加えるとそこそこ言葉を控えるようになるそう。初めから嫌味なんて言わなきゃいいのにね。
しかしそうか。お兄様に向けられることはないけれど耐性が付いてしまっているのね。
無念。
「それに、」
クスリと笑うお兄様に、なんだろう、と首をかしげる。
「深雪が俺を好きなことはわかっているからな」
「!!そ、それは…そうですけど」
否定などできるわけもない。お兄様のことは大好きなのだから。
でもどうして今その話になるのだろうと疑問に思っていることもお兄様には筒抜けのようで。
「俺はどうでもいいが、俺を蔑ろにされるのを見て黙っているのはつらいのだろう?だから不満を抱いてしまうことがわかるからな」
「…申し訳ありません」
「謝らないでくれ。お前がそうやって俺を想ってくれるというだけで、俺は嬉しいのだから」
そう言って頭を撫でて、頬に手を当て落ち込む私を無理やり上に向かせる。
「それにな。俺に見惚れてくれる深雪の姿を見るのはもっと嬉しいんだ」
(ひ、人気が無いからってお兄様!本当に控えてほしい。私の息の根が止まってしまう!)
かすれた声に、瞳を細められてしっとり艶やかな雰囲気を醸すお兄様は大変色っぽくて視線をさまよわせたくなるのに魅力的過ぎて目が反らせないというジレンマ。
おろおろとする私に、お兄様は悪かったと苦笑して髪を少し乱暴に混ぜる。
「もう、お兄様」
「悪かった。先ほどのお前があまりに可愛すぎてな――深雪はジャケットを脱いだ姿の方が好きのようだな」
「!!」
その言葉にかちん、と固まった。
…その通りだった。お兄様のグレイのシャツに黒のベストがたまらなく好きだった。
しかも今回はダブルホルスターも下げられていてときめきポイントが高すぎた。クリティカルヒット。
格好良すぎですお兄様!と何度心の中で叫んだことか。
「途中俺が倒れた時ジャケットを抱きしめているのを見たときは困ったよ。すぐにお前を抱きしめて安心させたくてたまらなかった」
う…だって、心配でつい。
い、一応口元も抑えていたんだけどね。叫ばないよう。
でも手に力が入っていたせいで今はおられているジャケットが若干よれてしまっていた。
直したい、と訴えてもお兄様はしばらくこのままで、と直させてくれない。
「まあ、あれだな。深雪に迫力が無いわけではない。恐れられるのもまあ、深雪の力を知ればそう思うこともあるだろう。だがな。俺がお前に震える時は恐らく来ないぞ。お前が俺を好きでいてくれる限り、な」
「…では、一生お兄様を震え上がらせることなどできないということではないですか」
お兄様を好きでなくなることなんて一生ないのだから、と言えば、お兄様はふ、と笑われて。
「俺を一生好きでいてくれるのか」
「当たり前です」
「…そうか」
お兄様は私の手を取ると、口元へ運んで。
「一生好きでいてもらえる兄貴で居られるよう、俺も努力しないとな」
触れないキスを落としてそのまま手を繋いで歩きだす。
「お、お兄様!」
「確認した。この先生徒会室まで人とすれ違うことはない」
だから手を繋いでも大丈夫、とはならないはず、なんですけどね。
「私の無茶を聞いてくださったんですものね」
仕方がないから繋いであげます、と言外に述べると、お兄様はありがとう、と指先を絡めた。
(うーん、そこまでしていいとは言ってないのだけど)
恥ずかしい。でも無理やり乗り気でない試合をさせてしまった負い目もある…何より、お兄様と手を繋げるのは恥ずかしいけれど、私も嬉しいわけで。
生徒会室まで仲良く繋いだまま向かい、そこで家に帰ったらご褒美をねだられる宣言をされるのだが、この時考えもしない私はただ浮かれていたのだった。
お兄様のジャケット下ヤバいよね、っていうお話と深雪ちゃんのブラックスマイルをうちの深雪成主が浮かべたらお兄様がどんな反応を示すかを考えたらこうなった、というお話でした。
このお兄様だといくら深雪ちゃんが黒い笑みを浮かべたところで可愛いなぁ、深雪が言うならやぶさかでもない、とやって上げちゃう系お兄様に。
原作もある意味そうなんだけど、あちらはどっちかっていうと仕方ないな、の色が強いけど、こっちはやってあげるからには何をお願いしようかな、という強かなお兄様になってしまう。
そして困らせられる深雪成主。可哀想。がんばれ。