妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編 作:tom200
こちらの作品は雫×深雪成主要素がございます。
本編のスティープルチェース編読了後にお読み願います。
本編の後夜祭の別ルートになります。
…途切れないね。うん。そろそろ踊るもの疲れたし、役目は十分に果たせたからいいかな、と思っていたら雫ちゃん達がこちらに。
誘ってくれている方々に失礼、と詫びて雫ちゃんとほのかちゃんの元へ。
私が踊っている間に二人ともお兄様と踊ってるのを見た。
ほのかちゃん真っ赤だったけどよかったね。雫ちゃんも楽しんでたよね。大変可愛らしいダンスでしたとも。よきよき。
「達也さんが、そろそろ休んだらどうかって」
流石お兄様!
お兄様から派遣されてきてくれたのね。ありがとう。疲れてたから助かりました。
「深雪、ずっと踊りっぱなしだったから」
心配した、という雫ちゃんにありがとうを感謝のハグを。今日はお礼を言ってばかりだ。
「私が男だったら深雪と踊れたのに」
「あら、雫は私と踊ってくれるの?」
「もちろん」
嬉しいことを言ってくれるね。私も雫ちゃんと踊りたかった。――あ。
「そうだわ。ちょっと待っててもらえる?」
「?かまわないけど」
雫ちゃんにそう断りを入れてから、お兄様の元へ。
お兄様は吉田くんたちと談笑していた。
「兄さん、ちょっといい?」
「どうした?」
「ジャケットを貸してほしいのだけど」
「寒い、わけではなさそうだが」
一番に額に触られて体温を確認されたけれど、そうじゃないんです。
って言うかさらっとそういうことしないで。悲鳴が起こるから。
とはいえいちいち何かをする度上がる悲鳴に私たちもだいぶ慣れたので気にもしないけどね。
「雫と踊るの。だからジャケットを貸して」
「お前が男役をやるのか?」
「ステップは頭に入っているから」
深雪ちゃんの優秀な脳がね!覚えているので。
お兄様は構わないよ、とその場で脱いでくださった。お兄様もためらいが無い。…私はお兄様の温もりを羽織ることにこんなにドキドキしているのだけどね。
平気な顔をしてお兄様にジャケットを借りて袖を巻くる。
肩幅も何も合っていないのだけどね。なんとなく他の男性陣に借りると恐ろしいことになりそうだったので。
本当は体格的にもケント君に借りるのが一番だと思ったけどやめました。皺になるけど許してねお兄様。
そして三つ編み作る時のゴムで髪を上の方で括って。サイドは垂らしたままの漫画やゲームでよく見る黒髪剣士スタイル。
…スカートのままだけどね。ほら、こういうのは気分の問題だから。
雫ちゃんの元に駆け寄って。
一歩足を引いて跪いて、雫ちゃんの手を取って。
「私と一曲踊っていただけますか、お嬢様」
できる限りの低い声で決め顔で誘う。…時間があればメイクもしたのに。
周囲からはきゃーっ!と悲鳴にも似た歓声が。皆好きだね。男装女子。特に、深雪ちゃんは顔がいいから。
「よろこんで」
雫ちゃんのお許しが出たのでフロアにエスコートを。
身長差が無いのが残念だけどね。
男性パートは女性パートとは全然違う。リードすることもそうだけど歩幅もね。先ほどまで踊っていたステップとは異なるのでなかなか大変だけれど、そんなものはおくびにも出さない。優雅な顔で雫ちゃんと見つめ合う。
「…深雪って何でもできるね」
「全ては君のためだ」
ウィンクして気障っぽいセリフを少々。黒髪長髪はあまりナンパなイメージ無いのだけどね。好きな子を口説けないのはちょっと。
「ん、いつも通りがいい」
でも雫ちゃんには不評だったみたい。残念。
「雫のお眼鏡に適わなくて残念。でもこっちの方が楽しめるわ」
表情もキリっとしてないいつもの表情に戻した。
雫ちゃんはご満悦の表情。
「何でもはできないけど、これはちょっと覚えたくて覚えたわね」
「どうして?」
「いずれ出会う可愛い女の子をこうして誘うためかしら」
おかげでこんなに可愛い女の子をダンスに誘うことができました。
「…深雪は女の子が好きなの?」
わあ。誤解をさせてるみたい。だけどほら、オタクにとって可愛い女の子も男の子も愛でるモノだから、自身の恋愛なんて絡まず崇める対象なのでね。
「恋愛なら異性だけれど、愛でるなら女子の方が好きかしら。男性のことを撫でまわすのはできないじゃない」
女子が女子を撫でまわすのは許容されるけど、女子が男子を撫でまわしたらそれはただの痴女扱いになる。
深雪ちゃんにそんなイメージつけられません。だからいくら可愛くてもケント君を撫でられないし、文弥くんも可愛がれないのだ。
許されるなら愛でたいのだけどね。
そんな邪なことを考えていると雫ちゃんが思案顔になってしまった。
「…」
「どうしたの、雫」
「ちょっと、複雑?」
雫ちゃんもよくわかってないのか疑問符がついてる。
くるん、と雫ちゃんを回してあげながら続きを待つ。
そして顔を上げた雫ちゃんの表情は、強い光を宿した瞳が印象で。
「やっぱり男だったらよかった。そしたら深雪にアタックできた。――想いも吹っ切れた」
んん?
「女子だからこうして深雪と仲良くなれた。…でも、だからこそこの想いが吹っ切ることもできない」
「…雫?」
どうしたの?と尋ねると、雫ちゃんは真剣に尋ねた。
「――深雪、私とキスできる?」
「え!?!?」
ちょ、え?待って。…あれ?こんな展開有ったっけ?
え、雫ちゃんほのかちゃんとえっちぃシーンならあったけどアレもギリギリ友愛とかじゃなかった?
ほのかちゃん相手じゃなく、深雪ちゃん相手に?何故に⁇
いやそこは後回しだ。えっと何を聞かれた?雫ちゃんとキス?!
「え…と、考えたこともなかったけれど」
「うん」
必死に頭をフル回転させる。まずはキスって何だっけのところから。
思い出したら、次は雫ちゃんと――…?
まじまじと雫ちゃんを見つめる。
可愛い。普段無表情系ヒロインである雫ちゃんだけど、私にとってはいつでもどこでも可愛らしい感情豊かな女の子だ。
今も表情の色は薄いけれど、うっすらとした緊張と、――息苦しそうな表情が見て取れた。
どれほど悩んでいるのかが伝わってくる。
「…たぶんだけど、することは、できると思う。だけどそれ以上は、できない、かな」
「……できるの?」
「……た、たぶん?」
……混乱して何を言っているのかな私は。
いや、でもね、真剣に聞く雫ちゃんに、私も真剣に答えないと、と思いましてですね?
色々深雪ちゃんの素晴らしい脳でマッハの処理能力に頼りながら考えてみたのですが…触れるだけの、キスならギリ、いけるんじゃないか、と。
それ以上は無理だけどね!?っていうか多分友達でもキスできないよ普通は!普通は!!
でも雫ちゃんにお願いされると思ったら…まあ、その……そこまでなら許してしまえるのでは、と…。
「…深雪、危険なこと言ってるのわかってる?」
わかってます。とっても混乱していますけど、わかっているつもりです。
こんなこと、考えずに無責任で言えるはずもない。
「……でも、雫に嘘は吐きたくないから」
雫ちゃんのさっきの言葉も、相当勇気が言ったことだと思ったから。
今現在触れている箇所が熱い。心臓は触れ合っていなくても互いの鼓動が早いことは伝わっていて。
「…安心して。しないから。――でも、応えてくれてありがとう」
「ごめんなさい」
「謝らないで。謝るのは私の方。…気持ち悪くない?」
「無いわ」
それは即答できた。
雫ちゃんはそのことに酷く驚いているようだけど。
「ねえ、雫。私、こんな見た目だからいろんな視線を受けてきたわ。中には気色の悪いものが数え切れないくらいあった。欲に塗れた視線なんてしょっちゅう。今日だっていくつも晒されてきたわ。そこに男性も女性もない。だから女性からそういう目で見られることは初めてじゃないの。
だけど雫は怖くない。そういう欲が、全くドロドロしたモノが見えないの。ただ純粋に、好きっていうのが伝わってくる。私を理解して、好きでいてくれていることがわかる。――それをどうして怖がれるというの?」
「うん。今のところ、私も深雪をどうこうしたいとは思ってない」
だろうね。でなければたぶんお兄様の害意センサーが反応していたよ。
こんな話をしていても、私たちは優雅に踊り続けていた。
ぴったりと身を寄せ合って、乱れることもなく、軽やかに。
「私、友達の恋は応援しないの」
「…この前も聞いた」
「雫のそれが、恋なのか情なのか、はたまた愛なのかわからないけれど、私はそれを否定しない。私は私のしたいようにするわ。それでもよければこれまで通り付き合ってくれると嬉しい」
「………深雪は、懐が広すぎるよ」
「あら、我侭だ、て言ってくれていいのよ」
かなり自分勝手なことを言った自覚はあります。
というよりこの関係壊すのが嫌だから、告白してくれた相手にこのままで、なんて酷いことを言った。
それなのに雫ちゃんは辛い顔も見せない。ただ、困惑している。
「深雪の我侭は、私に都合がよすぎる」
「…それ、兄さんにも言われたわ」
やっぱり雫ちゃんとお兄様って似てる。
「達也さんも苦労する」
「そうね」
ぶんぶん振り回してます。逆も多いけどね。
「私も、この関係を壊したくない。だけど好きだってことも忘れたくない」
「辛くない?」
「今は、全く。むしろ、受け入れてもらって嬉しい方が勝ってるかも」
なら、これはやっぱり恋じゃないのかな、なんて雫ちゃんは困惑しているけど、ここで否定するのは無責任だ。
「それはこの先育ってみてからのお楽しみじゃない?」
「お楽しみって…深雪、大物過ぎ」
「楽観的なのよ。すぐ答えの出ないものをいつまでも悩むなんてもったいないでしょう」
「そっか」
「そうよ」
「いいんだ」
「構わないわ」
曲も終わり、一礼する場面で、私たちは額をくっつけて笑い合った。
ざわめく雑音など、気にもならない。
「楽しかったわ」
「こっちこそ。ありがとう」
そして互いに手を取って私たちはほのかちゃんの元へ戻った。
ほのかちゃんは顔を真っ赤にしていた。…まあ、そうなるよね。
「な、なななな何をしてたの二人とも!」
「何ってダンス」
「楽しかったわよ。ほのかも踊る?」
「い、いい、私はいい!大丈夫だから!」
「変なほのか」
「変なのは二人だよ!」
ほのかちゃんが絶叫してる。混乱するほのかちゃんはやっぱり可愛いね。
「うん、可愛い」
「私また声に出してた?」
「ううん。ただ深雪ならそう思うだろうなって」
「正解」
「もぉー!何二人でわかり合ってるのよ!」
「「可愛い」」
「話聞いてー!?」
混乱するほのかちゃんを二人で愛でていたのだけれど、
「深雪」
あらー。お兄様のひくぅい声がですね。
「羽目を外すな、と忠告したはずだが」
…されてましたね、そう言えば。
「お、兄さん、ジャケットありがとう」
「あとでお仕置きだ」
「え!?」
「ええ?!///」
…ほのかちゃん、何でお顔真っ赤?そっち系考えた⁇良くないよその妄想は。
「達也さん、原因私だから許してあげて」
「…雫も。お前たちは一体何をやっているんだ」
お兄様からお説教の空気が。
ジャケットをいそいそと脱いでお兄様に渡すけど、羽織ることなく腕にかけていた。
皺ついてしまったでしょうしね。しょうがないのかもしれない。けど、言わせてほしい。お兄様のグレイのシャツって色っぽいよね。カッコイイ。
「深雪」
「ごめんなさい」
お兄様すぐ私の煩悩に気付く。恐ろしい。
後夜祭パーティーの後は一高のみの祝勝会。
中条会長が音頭をとって賑やかに始まった。
ダンスの話には誰も触れないけれど、周囲の熱視線は感じる。それをお兄様と水波ちゃんの鉄壁防御が守ってくれています。
誰もおいそれと近寄れない雰囲気だったけど、そこにやってきたのは泉美ちゃんだ。
「あ、あの、雫先輩とのダンスも素敵でした!も、もしよければわ、私とも踊ってくださいませんか?」
「ごめんなさいね。今日はもう疲れちゃって。最後と思ったからああして張り切って踊ってしまったのよ」
そう言うと泉美ちゃんはとても悲しそうな表情をしていたけれど、ごめんね。まだ踊ることはできるんだけど、お兄様からのね、圧がすごくて。
「じゃ、じゃあ来年!来年の予約をお願いします!!」
「そうね。来年も優勝できたら踊りましょう」
「!約束ですよ!!」
「ええ」
ごめんね、その約束は恐らく叶わないけれど。
泉美ちゃんはそれで満足したのか、香澄ちゃんに引きずられて消えていった。
それと交代するようにエリカちゃん達が。
中条会長のご厚意で今年も入れさせてもらった。
「聞いたわよ深雪。男装して雫と踊ったんですって?」
「そ、それもですけれど、達也さんとも踊られたとか!」
エリカちゃんと美月ちゃんコンビからの質問攻撃。
その対処をお兄様が窓口になって返していた。私は貝になって大人しくしている。これ以上余計なことは言えない。
横に控えている水波ちゃんも、何もさせないぞ!という気合が感じられる。…うう、主としての威厳が。
大人しく給仕されたものを食べています。
「あ、これ美味しい。水波ちゃん、食べた?」
「…後でいただきます」
この前は一緒に食べてくれたのに。寂しい。…自業自得か。反省。会場を騒がせた罰ですね。
楽しい祝賀会のはずだ、ただひたすら黙ってご飯の会になってしまった。
寂しい、と思っていたところにすっと寄り添う一つの影。――雫ちゃんだ。
今優しくされたら惚れちゃいそう。なんて、気軽に言える関係ではなくなってしまったけれど、オタクの思考は簡単に切り替えられないので。
ありがとう、と言葉にできない代わりにテーブルの影で手に触れれば、雫ちゃんは小指を絡ませてくれた。
視線を合わせなくても、寄り添ってくれることが嬉しかった。
「今のうちにポイントを稼いでおくことにする」
「困ったわ、そのポイントカードはすぐに埋まりそうよ」
打算と下心があるような発言だけれど、彼女から相変わらず何かをしたいという欲はうかがえない。
私のために寄り添ってくれているのだとわかるから、私も彼女を懐に入れてしまう。
「覚悟してね」
「お手柔らかにね」
小指を絡め合って指切りげんまんのようにするっと離れた。
美少女同士が隠れて指切りげんまんするシーンが見たかっただけの人生でした…。
初めに書いている最中にこっちを先に書いてしまい慌てて修正した思い出。
本編では入れられないお話だけれどこの二人は親友以上恋人未満であってほしい。
このお話だとリーナも似た関係性だけど、リーナは手を出すより出されるタイプですよね。
自分がまさかこのようなお話を書く日が来るとは思わなかった…。恐ろしい雫の魅力。可愛い。好き。
ちなみにお兄様には二人がいちゃついてるのが見えていたりしたらいいな。嫉妬心を煽ってくれたらいい。この後のお仕置きがどんどん重くなる(←
お粗末様でした。