妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編   作:tom200

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アニメ三期の一話ネタです。
これからしばらくアニメ関連の小話をUPしていきます。
本編のシリーズに絡むネタもありますので先に読んでいただければと思います。


ピクシーのお勉強 1(本編絡みあり)

 

 

「兄さん、ちょっと残ってもらっていい?」

「どうした?」

 

生徒会の仕事ももう終わる頃。

もう入学式関連の後始末の仕事も終わり、通常業務に戻っていたので昨日よりも早く作業は終わるところだった。

 

「業務とは違うのだけどピクシーの件で。ということですので会長、最後の戸締りは私たちがしますのでどうぞ先にお帰り下さい。ほのかも、今日は一緒に帰れなくてごめんなさい」

 

お兄様からは話している最中にわかった、と頷かれたので中条会長とほのかちゃんに先に帰っていいよ~、と伝えたのだけど、会長はOKだが、ほのかちゃんがね。

 

「え、私も残っても大丈夫だよ」

 

ピクシーの存在は怖いはずなのに――いや、苦手かな。とにかく一緒にいるのにまだ怯えているのに恋する乙女は少しでも傍に居たいと頑張りたいみたい。健気。だけどごめんね。

 

「以前のようなことがあってほのかに迷惑をかけるわけにもいかないわ。ちょっとした実験も兼ねてるから」

「!!そ、そっか…」

 

それじゃあいない方が良いよね、とほのかちゃん。そうだよね、勝手に力を使われるって感覚はどれほど恐ろしいものか。流石にほのかちゃんも断念せざるを得なかったみたい。

ばいばい、と皆を見送って残ったのは私とお兄様、ピクシーの三人。水波ちゃんはまだ部活に入っていないので図書室で時間を潰してくれている。

 

「それで、ピクシーがどうしたんだ?」

「ピクシーが気になったことがあったようで、教えてほしいと頼まれていたのです」

 

ピクシーには好奇心があった。特にマスターであるお兄様に関することは知りたいようだ。…お母様の影響かな。

いつもなら私に「こういう場合はどうなのか」、「マスターはどうしてこうしたのか」等々訊ねてくれるのだけれど、今回は言葉にすること自体どう表現していいのかもわからないようで、一体どんなことを聞かれるのか私にもわからない。

でもこうして教えて、と訊ねるピクシーは可愛くてつい、教えてあげたいと思ってしまう。

 

(すべてはお兄様のためだものね、この子も。そう思うとより一層愛しいわ)

 

ご主人様のためにという健気さが可愛い。どうしてこの子はうちで飼えないのか。こんなにお利口さんなのに。

 

「…深雪、何度も言うがピクシーはうちに連れて帰らないからな」

「!」

 

(心が読まれてる!)

 

お兄様の表情がけっして許しません、と言っている。残念。

隣でピクシーも肩を落としている。私に合わせて。最近こうやって真似るようになった。こういうところも可愛いのにね。でもお兄様が言うならしょうがない。今は諦めましょう。

 

「ではピクシー、本題に入りましょう。一体何を知りたかったの?」

 

学習能力の高いピクシーが言語化が難しいと言うということは、一体どういうことを訊ねたいのか。

するとプロジェクターが動き出し、部屋が暗くなる。

お兄様が寄り添うように私の斜め後ろにぴったりとくっついた。

 

「ひゃっ、す、すみません」

 

ちょっと急だったので驚くと、お兄様は驚かせてこっちこそすまない、と肩を抱きながら身を寄せて耳元にそっと囁く。

くすぐったいような感覚に身を震わせると、安心させるように肩にかけた手でぽんぽん、と宥めるように叩いた。

 

「深雪は驚かし甲斐があるな」

「もう、あまりイタズラをなさらないで下さいませ」

 

お兄様のイタズラは私の心臓に負担をかけるのだから。

 

「約束はできないが努力はしよう」

 

…それ、絶対約束する気が無いやつぅ。

お兄様をじっと見つめたけど、お兄様は素知らぬ顔でピクシーにいいぞ、と指示を出した。

こうしていた間待っていてくれていたらしい。

そしてモニタに映し出されたのは満開の桜と――

 

(!こ、これは――っ)

 

薄桃色の上品なスーツに真っ赤なヒールの女性が、新設されたばかりの魔工科の制服を身に纏った青年に声をかけている。

 

(――入学式のあの大事な再会シーンですね!)

 

七草先輩の二年目最初のラブイベントだ。

まさかこんな形で見られるなんて!ピクシー、本当にいい子!!

この場面、とっても見たかったけれど仕事をほっぽり出して覗き見るなんて真似できないしね。というよりお兄様に隠れてこっそり見学なんてできるはずもない。

だから見たくとも見られなくて残念に思っていたのだけど、こんな形で夢が叶うなんて!

 

「ピクシー、これは校門の防犯カメラの映像だな」

「はい」

「これの何を知りたいんだ?」

「この後の・お二人の・会話です」

 

会話、と言っても音声は入っていない。が、映像に字幕が出た。口唇の動きを解析して文字を当てはめて会話を起こしたのだ。

…ピクシー、できる子。どんどんスキルが上がってる。この子がいたら校内のトラブル全て解決しそう。使い方気を付けないと大変なことになりそうだけど。もちろん悪用なんてするつもりないけどね。

だけど、どの文章が気になったのだろう?

 

「ここ・です」

 

ここ、と画面を止めて見せたのは、お兄様の…これは一時停止したらよろしくないのでは?という文章がお兄様のお顔と一緒に映し出されていた。

 

「童顔だとか、幼児体系だとか、思ったことは一度もありません」

 

の、あの衝撃的な一文である。

 

「これの何がわからないんだ?」

 

お兄様平然とピクシーに尋ねられていますけど、どうして一つも動揺していらっしゃらないの?ぴったりくっついているからお兄様の心音に乱れが無いことが分かる。

だからこそ不思議。

お兄様、いじわる度ゼロでこの発言したのですか!?

てっきりからかっているのかと思っていた。お兄様ズジョーク。

そんなシーンを妹に見られたらたとえお兄様でも動揺すると思うのに。これの何がおかしい?と平然としている。

 

「マスターは・否定を・なさったのに、何故・こちらの・女性は・ショックを・受けた・のでしょう?」

「思い当たる節があったのだろう」

 

…お兄様、やっぱりイジワルで言ってたってことで良いの?そして堂々としているのは悪いことをしたと思っていないし何もやましいことが無かったからってこと⁇…そういえばお兄様、バレンタインで藤林さんに本命じゃないのか、とかも臆面もなく言ってたものね。こういうジョークを妹の前で言うことに抵抗が無いのか。

その答えに納得したのか、映像の続きを再生したのだけれど、落ち込んだ姿を見せた七草先輩が今度は怒った様子でお兄様に詰め寄るではないですか!きゃあ!近い!!あと数センチで触れてしまいそうな距離じゃないですか!しかもアングルのせいでもうね!もうね!!そうとしか見えないわけで。

ほぼ暗い部屋だというのに顔を覆って隠してしまう。

 

「深雪?」

「あ、いえ、その…」

 

こんなラブシーン(未遂)を本人の前で見ていて落ち着けるわけもなくて身をよじって離れたいのだけれどお兄様の腕から逃げられるはずもなく。

 

「何か誤解していないか?」

「ご、誤解だなんて///」

「背の低い先輩に胸倉をつかまれているだけだぞ?」

「そ、そうなのですね~」

 

知ってます。わかってます。それでもこのまま――と妄想は捗ってしまうわけで。

 

(やっぱり先輩お兄様にレディとして見られたいのね!)

 

せっかく着飾ったのに、「大人びて見える」とか「別人のようだ」は、誉め言葉として足りないものね。

 

「美しい」

「見惚れました」

「綺麗です」

 

このくらい、お兄様ならさらっと言ってもおかしくなかったのに。

期待していた言葉が出なかったことにショックだったんだわ!可愛い先輩!もうすっかり恋する乙女ではないですか。本人認めないけど。

 

「この距離よりも遠かった」

 

そんな思いに気を取られていたら、お兄様が首を前に突き出して頬にキスを落とされた。え、何で⁇

 

「お、お兄様!」

「これならお前にキスできるが、先輩との距離では触れることなど不可能だ」

「わ、分かりましたから実演はしなくて結構です!」

「お前に変な誤解をされたくないんだ」

「誤解なんてしておりませんから!」

 

何もないことは知っているのです!ただ、ただね!妄想が捗っちゃっただけで。

でもお兄様はそれが不快だったみたい。

 

「申し訳ありませんでした。もう変な誤解はしませんから」

「次にしたらその唇を封じてしまうからね」

 

……お兄様、それ、妹に言うセリフじゃないです。

そんな言葉をお色気たっぷりに耳元で言わないでいただきたい。心臓がね、とっても元気に走り回っちゃうんですよ。

 

「気を付けます」

 

…うう…妄想を封じられてしまった。

がっちりと逃げられないように抱えられ、映像は再開。

そして三人目の人物が映像の中に飛び込んできた。文字通り、フライング・ニー・ドロップで。

美少女がお兄様めがけて飛んできた。

倒れそうになった七草先輩を抱きとめている、お兄様にのみ向けられて。

直前までちゃんと抱き起しながらも飛来する美少女から目を離さないなんて、お兄様流石ですが七草先輩がちょっと蔑ろにされすぎでは?そのまま抱き寄せて避けたってよろしかったのに。

彼女の膝を掌で受けて、ぺいっと放った。扱いがぞんざい。ま、泉美ちゃんが近くにいたのもわかっていたのだからなのだろうけども。

どんな魔法かを見たかったなんて、お兄様はこんな時でも冷静に周囲を分析しちゃうんだから。

もっと他にも目を向けるべきだと思うのに。三人の美少女に囲まれているのですよ。襲い掛かられてますけど。あ、それと一人は美女でしたね。

しかし、映像はまだ止まらない。ピクシーはこの後どこを知りたいのだろう。

特異な七草双子の魔法を知りたかったわけではないだろうし。

もう一人の登場人物がしゃがみこんでいる香澄ちゃんの下へ駆けつけた。

そしてまた、彼女たちの口に合わせてテロップが流れるのだけれど。

 

「こいつ、ナンパ男のくせに強いよ」

 

ここで画面が止められた。

ん?ここで何がわからなかったの?

 

「ナンパ男・のくせに・強い。とは、ナンパ男は・弱い・のですか?」

 

そのようなデータはございません、とピクシー。

 

「ナンパ男・の意味を・調べましたが・マスターと・一致・しません」

 

意味が分かりません、と。

…うん。そうだね。勘違いを理解するのって難しいことだ。

 

「まずはお兄様はナンパをされていないから、貴女の認識は間違っていないわ」

 

お兄様は別に七草先輩を口説いてなどに無かったから。一体どの場面から見て勘違いしたんだろう?ずっと七草先輩から言い寄っているようにしか見えなかったのにね。

 

「恐らく彼女はいつもお姉さんにナンパ男が近寄って来るのを見てきたのでしょうね。だから勘違いした。お姉さんが襲われている、と」

「襲ったとまで思われていたのか?」

 

心外だ、とお兄様は私を抱きしめるように力を込めた。落ち込ませてしまっただろうか。申し訳ない。

 

「彼女にはそう見えた、と言うだけです。お兄様がそんなことをなさらないことはこの私が誰よりも知っていますから」

 

疑ってもいないよ、と言えば、腕が――うん、弱まらないね。このまま抱きしめて続行ですか。

 

「そして見るだけでなく撃退もしてきたのではないかしら。だから、彼女にとってナンパな男の人は弱い印象があったのでしょう。ちょっと脅しただけで逃げる、といった感じで。――お兄様、彼女は直前で攻撃を止める、寸止めの予定でしたよね」

「よくわかったね。その通りだ」

 

えへん。原作でもそうだったからちゃんと注目して見てましたとも。でも、これ寸止めって…お兄様がどかなかったら止まる予定だったの?飛行魔法は使うように見えなかったけど。避けなかった場合はどうする予定だったんだろう。泉美ちゃん頼り⁇

 

「攻撃を・当てる気が・無かった・のに・避ける・ことなく・往なした・ことで・強者と・見られた・ということ・でしょうか?」

 

あら、そんな考察までできるようになったの?賢い。うちの子賢いですよお兄様!

 

「賢いが、うちには連れて帰らないぞ」

 

ですから、何故顔を見上げただけで私の言いたいことがわかるのです?

 

「深雪の目は時折おしゃべりだからな」

 

…お兄様の前ではサングラスでもしないとまずいかしら。

その後、ツインズは七草先輩に拳骨を落とされていた。南無。

ピクシーの疑問も解けて、私もあのシーンを見られて大満足です!ありがとうピクシー。

 

 

 

「…ところでお兄様、ピクシーのあの映像、自主的に取得していたってことですよね」

 

大丈夫だろうか、いろいろと、と問えば。

 

「その辺は仕込んだからバレることはないと思うぞ」

 

あらあ。藤林さんと真田さんから仕込まれた技術がピクシーにも?お兄様ったらピクシーをどうするつもりなのか。やっぱり――

 

「うちでは飼わないぞ」

「…」

 

 

 

この攻防は卒業まで続きそうだ。

 

 

 

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