妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編 作:tom200
妹ちゃんを第一、第二の試練が襲う!
部屋に向かって入ると、女の子らしい、可愛い部屋だ。
同じ部屋で、配置は一緒だけれど揃っているものが違う。
勝手知ったるようでいてちょっとずつ違う部屋に一つ一つ感動しながらクローゼットを開けて――絶句。
おおう…ほとんど丈が短いデスネ。流石深雪ちゃん。
布地が少ない。そして服の量が多い。ここは全くの別世界だった。
一応長いのもあるけれど、おしゃれ目で部屋着にしてはちょっと格が高い。お外で人に見せる用だね、これは。
布地の少ないものも、もちろんお兄様に見せる用で気合の入っているものなのだけど…これ、私が着るの?
(深雪ちゃん、やっぱり貴女は勇者です。勇気が凄い。私にはないものをお持ちです)
…でも、あれよね。こんな機会でもない限り着られない服、ではあるよね。
(チャレンジ、してみますか)
というわけでできるだけ初心者向けっぽいものを勇気をもって選んでみた、のだけど……
(可愛いよ、鏡に映る貴女は間違いなく世界一美少女だけれども!)
見下ろして現実を見ると、これを着ているのは自分だと認識してしまうわけで。
(肌色が多いです。白いお肌が匂い立つようでしてですね、とってもえっちぃのですよ…。目のやり場に困る…!!)
これを着てお兄様の前に?無理無理!恥ずかしい!!
自信が無いわけじゃない。深雪ちゃんボディはどこに出しても恥じることのない自慢のパーフェクトボディだから。
でもこの恰好はその、いわゆる女性を前面にアピールしている恰好なわけででしてですね、ちょっと刺激が強いと言いますか。
(上に何か羽織ろう。そうすれば少しは抑えられるでしょう)
足は長めのソックスで隠した。絶対領域になってしまうけれど、生足でいるよりはるかにいい。布があるだけで安心感。
素早くチェックしておかしなところは無い、と思いたい。
とりあえず気合を再度入れなおしてから部屋を出た。向かうはリビングだ。
当然だけれどすでにお兄様はソファで待機していた。悩んだ時間を差し引いてもお兄様の方がいつも着替えは早いものね。
いつもよりお待たせして申し訳ない。
「お待たせいたしました」
「……いや」
とりあえず遅れたことを謝罪するのだけれど、この服に落ち着かなくて、顔ごと視線をそらしてしまう。
不安と羞恥でカーディガンの袖の肘当たりを握ってしまうのだけれど、あとで皺を伸ばすから許してほしい。
「あぁ、もしかしてだが、そういった服も違うのだろうか」
「…あまり着たことがありません」
こんな露出の多い恰好はせいぜい夏のサマードレスくらいです。露出と言っても襟元が開放的なのと足の絶対領域だけだけどね。カーディガン羽織ってもそこは隠せなかった。…ボタン締めるとちょっと強調してしまうので締められなかったのだ。
「明日にでも服を買いに行くか」
「いえそんな!お兄様のお手を煩わせることは」
というか明日は土曜日でも学校有りますよ。早く終わるけれども。何よりお兄様にも予定があるのではないでしょうか。
それに、服はあれだけたくさんあるのです。何日滞在するかもわからないのに私のために買っていただくのはもったいない。
「あの!こういう服を着られること自体は嬉しいのです。着たことが無いタイプではありますが、可愛らしいと思いますし。ただ、その…お兄様に見られてしまいますと、…恥ずかしくなってしまって」
ううぅ…、私は一体何の告白をしているのだろう。恥ずかしい。穴に入りたい。
縮こまっていると、お兄様が立ち上がって私の頭の上にぽん、と手を置いた。
「とてもよく似合っているよ」
「…ありがとうございます」
頬が熱い。お兄様は思ったより自然に褒めてくれた。それはそう。お兄様はこの深雪ちゃんを見慣れているのだから。
…自意識過剰みたいでより恥ずかしい感じにはなったけれど、お兄様が気にされていないのならいいか、と私も覚悟が決まった。
「じゃあ地下に行こうか」
「はい」
覚悟って簡単に揺らぐものだね。
…計測は計測で恥ずかしいってことをなんで何度も忘れられるのか。
だってガウンだよ。下着にガウン。いつまで経っても慣れない。
いくら自信に満ち溢れるパーフェクトボディであっても、それを大好きなお兄様に見られると思うだけで恥ずかしくなる。
お兄様にそんなつもりがないとわかっていてもね、これは別問題。
平静を装ってますけどね。淑女教育の成果を今ここに!
横になって計測開始。呼吸法で何とか脈をコントロールして落ち着かせている。
時間はあっという間に過ぎて、お兄様の終了の声に身を起こす。
そしてここでも失敗が。いつもの癖でお兄様の動きを待っていたせいで、下着姿のまましばしお兄様と見つめ合ってしまった。
(…ガウンを着せてもらうのに慣れてしまっていたなんて…)
あちらではお兄様が素早くガウンをかけて下さっていたのでつい待ってしまっていたけれど、自分で着ていいものでした。
不自然でないようにガウンを手に取り羽織る。
「着替えてまいります」
「ああ」
お兄様はコンソールに向かわれて、キーボードに指を滑らせていた。
いつもの見慣れた姿だ。しばしその背を見つめてから着替えに行った。
戻ると、お兄様は少し難しい顔をされていた。どうやら私と深雪ちゃんには誤差では済まない違いがあるらしい。
「魔法式の構築規模に開きがある。…昨日までの深雪とはデータが異なるようだ」
昨日がちょうど測定日だったようだ。だから明確に差が浮き彫りになったことでお兄様もわずかに残る疑いが確信に変わった。
「だが身体の数値は変わりがない。…俺の眼から見ても深雪と同一なんだがな」
「つまり肉体は変わらず、精神だけが入れ替わったということでしょうか」
「わからないが、――深雪自身気づくことは無いか?」
「…申し訳ありませんが、特に体に違和感はありません」
「そうか」
うーん、残念だけど肉体ごと入れ替わっているかはわからなかった。同一人物だとこういうところがややこしいね。
一応借り物の体だと思って傷つけないよう細心の注意を払って行動することにしよう。
「その、お願いがあるのですが、よろしいでしょうか」
「そんなにかしこまらなくてもいいよ。さっきも言った通り、俺はお前の兄貴なのだから」
お兄様のお言葉に甘えさせてもらうことにした。
「いつものように夕食を作ってもよろしいでしょうか?」
「…それは、構わないけれど。そうか。そちらでも深雪は食事を作ってくれているんだね」
「はい。料理は私の趣味ですので」
始まりはお兄様とお母様のためでもあったけれど、今では私の精神安定剤だ。物を作っている時が一番、心が落ち着く。
「なら好きに使ってくれ。ここはお前の家でもあるのだから」
「ありがとうございます!」
お兄様の了承を得て、我が城に向かった。
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