妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編   作:tom200

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時間軸としては水波ちゃんが来る前。
朝の鍛錬に付いていったある日の出来事。

アニメ7話ネタです。


神秘の宿るモノ

 

「なんだい、深雪君」

 

え、何がでしょう?先生。と、とぼけることもできたけれど、先生相手に誤魔化しは通用しない。

隠すことでもないのなら誤魔化すこともしなくていいだろう。

ただ、ちょっと恥ずかしいだけで。

 

「先ほど、お兄様の不意の行動に虚を突かれ、一瞬だけ先生の目が開かれましたでしょう?」

 

そうなのだ。

先ほどお兄様からの予期せぬ反撃に先生は一瞬開眼なされたのだ!

ほんのうっすら、とだけれど、赤い色がちらりと覗いた。

けれど形勢は逆転することなく、先生はあわてず騒がず捌いたように見えたけれど、倒した後に自身の後頭部をぺしぺしと叩きながらお兄様に良い動きだったと称賛の声をおかけになった。

肝が冷えたよ、という割に動揺した動きは見えなかったように思うのだけど、開眼したってことはそれなりの衝撃を食らったのだろう。

お兄様はちょっぴりむっとした表情。お兄様的にも思った手ごたえが無かったのか、はたまた期待した成果が得られなかったからか。

お兄様にこんな顔をさせられる人はほとんどいませんからね。先生、いつもありがとうございます。

こうしてお兄様が倒されているのに微笑めるのは、先生の指導がお兄様の糧になっているから。これからもお兄様の高い壁であり良き指導者で居てくださいませ、と願わずにはいられない。

と、話が反れたけれど、先生を見つめていた理由でしたね。

 

「先生の綺麗な瞳を思わず追ってしまいました。もう、見られないことはわかっていても、今一度その宝石の輝きを見たくて」

 

いやー、糸目、細めキャラの目ってどうしてこんなに魅力的なんだろうね。前にも見たことはあるけれど、何度見ても素敵なものにはときめきを覚えます。前世のオタク魂が荒ぶっている。

もうね、瞳が輝いて見えるもの。滅多に見られない柘榴石と見紛うほどの輝きにうっとりとしてしまい、その影を追ってしまったのだ。

恥ずかしい、と頬に手を当て先生から視線を逸らした。

いくら正直に告白したとはいえ、いや、正直に告白したからこそ恥ずかしいのだろう。

先生の目に惹かれてましたと本人に直接言ってしまっているわけだから。…そう思うとより一層恥ずかしいな?!

やっぱり口にするんじゃなかった、と後悔するも時すでに遅し、だ。

照れ照れとしていると、急に肩を抱き寄せられ抱き込まれた。目の前にはお兄様の胸板が。

ちょ、ちょっと待ってほしい!砂ぼこりの香りに交じってお兄様の汗がね、ダイレクトでね!?痴女じゃないのです!喜ぼうとしないで私!とても恥ずかしいことになってるから!!

必死に体の欲求を抑え込む様子を表に出さないよう、これまた必死になって抵抗を――したいと思っていても、お兄様の腕は鋼でできていますか?あの、その!と慌てふためいてもお兄様の腕は落ち着かせようと背を撫でるだけで外れはしない。

 

「いやぁ、参った」

「師匠」

「いやいや、そんな目で見ないでよ。僕だって照れることくらいあるんだから」

 

え、先生が照れる?見たい!と暴れるのをやめて顔を上げようとするのだけれど、今度は後頭部が押さえつけられ胸に額を押し付けている状態に。

この状態はよろしくないです、お兄様!と心の中で叫ぶ。口に出すことが叶わなかったのは体が硬直して動かず、口も開けなかったのだ。

嘆いている間にも二人の会話は続く。

 

「深雪君には恐ろしい才能があるね」

「師匠のような大人が惑わされないでください」

「僕の修業が足らないのか、深雪君がそれを上回っているのか。まだまだ精進しないといけないね」

 

参った参った~、と笑う先生に、お兄様の呆れた声が突き刺すような鋭さをもって向けられている。

そしてそんな中、腕の中に閉じ込められているのに蚊帳の外というこの状況。これ如何に?

 

「達也くん、そろそろ放してあげたら?僕が取って食うような人間に見えるかい?」

「不用意に触れないようにしてください」

「そこまで警戒しなくても」

 

君が守れればいいんじゃない?との軽口に、お兄様はぎゅっと私の体を抱きしめてから解放し、後ろに下がらせた。

…助かった。あと少し遅ければ息が続かなかった。あれ以上お兄様成分の摂取は毒になります。水中じゃないのに溺れるところでした。

顔の熱がなかなか引かない。

手でパタパタと顔を仰いでいると、その様子を先生はにやにやと楽しそうに見ていた。うん、普段通りの先生だ。

 

「しかし、血の色だとか穢らわしいとか言われたことはあったけど、宝石なんて言われたのは初めてだよ」

 

なんて軽く仰るけれど、

 

(…もしかして、先生が目を閉じられているのは――)

 

「あ、僕が目を閉じているのは単なる趣味だよ。人を怖がらせる時とかに重宝してる」

 

そんな繊細だったり気遣い屋に見えるかい?と言えばお兄様がありえません、と速攻否定が。まるで心を読んだようなタイミング。気を使っていただいたとことは間違いないと思うのだけど、口元に指を立てていることからこれ以上は問答しないということだろう。

そういえばアニメで藤林さん相手に開眼して震え上がらせてましたっけね。

先生の言の信ぴょう性がぐっと高まった。

でも、これだけは言わせてもらいたい。

 

「先生の瞳はとても綺麗です。濁りの無い、美しい赤。私は好きです」

 

ルビーの赤にも似ているけれど、先生の赤は真紅、先生の言うように血の色を髣髴とさせる赤であるならばガーネットの方が近いと思った。

ガーネットは神秘の石、神秘的でロマンが満載の先生にはぴったりだ。

掛け値なしの本気の言葉に、先生は困ったような笑みに変わった。

 

「これからは深雪君の前で目は開かないよう気を付けないといけないねぇ」

「え!?何故です?!」

 

突然のもう見せてもらえない宣言に絶望の声を上げるとカカッと笑われて。

 

「まあ、もっとも達也くんに驚かされるようなことが無ければそもそも開かない、か」

 

その言葉にお兄様の肩がぴくっと反応した。

いえ、先生。お兄様を挑発される前に理由を教えていただきたいのですけれど。

 

「今日のもまだ思い付きの段階のようだったしねぇ」

「――次は当てます」

「当たるといいねぇ」

 

煽って、煽られ。

お兄様に火が付きましたね。先生もやる気にさせるのがお上手ですこと。

これはもしかしなくても私はダシに使われただけであって、大した意味はなかったのか。

とにかく明日の修業はいつも以上にハードなものになりそうだ、という予感があった。

 

(今夜は精の付く食事を用意しよう)

 

そして、できればまた、先生の瞳を見てみたい。そんな願望を抱いたのだった。

 

 

 

「深雪は師匠の『瞳』が気に入ったのか」

 

帰り道、ローラーブレードの私より少し後方で走るお兄様がお訊ねになったけれど、『瞳』に強いアクセントが置かれていたような。単に息継ぎのタイミングだったのかな。

 

「ええ。とても綺麗に思いましたけれど、対峙されたお兄様には先生のおっしゃっていたように怖く映ったのでしょうか」

「いや。怖いと思いはしなかったが、次に何か来る、と警戒感を抱く気にはなったな」

 

ああ、開眼する時って本気を見せる時だものね。

ここぞって時に開くから。うーん、やっぱりロマンだ。

ウキウキしている私に、お兄様は追いついて目を合わせられ――

 

「確かに、深雪の黒曜石の瞳もいつまでも眺めていたいと思わせてくれる」

「!!」

 

お兄様の言動に動揺して魔法操作を誤るようなことはしないけれど、胸を押さえる行動は避けられなかった。

そのことに動揺が見破られ、お兄様が微笑ましそうに見つめてくる。

 

「お兄様、そのように揶揄われないでくださいませ」

「何故揶揄ったと思うんだ。俺は本気だ」

 

出来るならば誰にも見られることなく閉じ込めて独占したいくらいだ、と付け加えられたけれど、それはだめです。バッドエンドまっしぐら。よくない監禁エンドで見るやつですよ。…そもそも良い監禁エンドなんてないけれど。メリバ?バットエンドには違いない。

 

「それくらい、お前は魅力的だってことだ」

「褒めすぎですよ。ですが、ありがとうございます」

 

否定ばかりしていると先に進まないからね。好意は受け取りましょう。

 

「だから、お前が綺麗だから見たい、というのなら、俺は協力しよう」

「まあ!本当ですか」

「ああ。だからもし、成功したならばそのたびに一つ、ご褒美をくれないか」

 

やる気を向上させるためのご褒美、ということですね。

そういうことなら私も協力しようではないか。

食事のリクエストでも、肩もみでも何でもさせてもらいますよ!

 

 

 

――そんな軽い気持ちで引き受けたご褒美制度に、私は追い詰められることをまだ知らない。

 

 

 





先生、意外と意表を突かれたり楽しくなってくると開眼してくれそう。
いつかは乗り越えたい壁だけれど、今は妹にご褒美をもらうため日夜策を巡らせるように。
これによりお兄様のフェイント力は一気に高まったとかなんとか。
結果オーライ。しかし妹には…。どんまい。

アニメ七話を見て先生が長時間にわたって開眼してる!真っ赤なお目目綺麗ですねぇ!と書かねばならない気になってつい。
きっと自分に向けられたのなら恐怖で身が竦んでいただろうけど、第三者で見るならば堪能できたのではないかと。

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