妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編 作:tom200
妹はチャームにかかった!
お兄様は魅了耐性スキルによって回避した!
喜び勇んでキッチンに来たのだけども、勝手知ったる、と思いきやこちらも部屋同様色々違いますね。それもそうか。
「何か足りない物でもあったか?」
お兄様は作るところも見てみたい、とついてきたけど、多分監視、監督の意味もあるよね。
流石に妹に甘いお兄様であっても、お話しと眼だけですべてを信じられるほど、お兄様もお気楽な性格ではないので。
申し訳ない。こっちはすでにトリップだろうな、と気楽に納得できているけれど、普通こんな状況はそんな簡単に割り切れるものじゃない。
私にやましいことは無いので心いくまで見ていってください。
「足りないものなどないのですが、こういうところに個性が出るのだと思いまして」
…私が凝り性なばっかりにいろんな調味料を各種取り揃えてたけど、基本のさしすせそさえあれば大抵のものは作れるのだから、あんなにいっぱいいらなかったのよね。
食器はほとんど変わりない。コーヒーメーカーも同じ。だから余計に不思議な感じだ。
知っているようで知らないキッチン。
ここにある食材で十分に作れるので問題は何にもない。あるとすれば…エプロンかな。
このスカート丈にこのエプロン?…えちえちですね。白磁を思わせる魅惑の足がちらリズム。リボンもひらひらで解きたくなっちゃうね。誘惑が多い。
これに靡かずにいられるお兄様ってすごいくない?よくこの猛攻に耐えられるものだ。
私には無理です。敵前逃亡します。だって、チラリズムやらひらひらやらで大変刺激される仕様になっていてとってもエッチなんだもの!
と、そんな煩悩は置いておいて。お兄様をあまり待たせるものではありませんね。ちゃちゃっと作りましょう。
お兄様のリクエストとか聞いてみたいけど、食材に限りもあるし、次の機会にしよう。
今はある食材で美味しく食べてもらうメニューを考えねば、と冷蔵庫を確認して、ふむふむ。ここはド定番で攻めましょうかね。
当たり前だけどストックも全然違う。
授業は同じだったから違和感なくトリップできたけど、私生活がこれだけ違ったら、タイミングが寝起きとかだったら戸惑っただろうな。まず部屋が違うのだから。
そう思えばいろいろとラッキーだな、と気分も上昇。楽しくなってきた。
何度も言うが結局こういったものは基本気楽に楽しんだ者勝ちなのだ。
ふんふんと三分でクッキングする番組の曲をハミングしながら材料を刻んでいく。
すべての工程を終える頃になってふと、背後のお兄様の視線を思い出した。…よくも忘れられたね私。
お兄様気配消してたっていうのもあるけれど、その上見られ慣れてて視線が気にならないって言うのもあるのだけれど、途中から結構ノリノリで鼻歌を歌っていた気がします。恥ずかしい…。
向こうではこれが当たり前でしたよ、と何でもないような顔をして食事をテーブルへ運ぶ。
「楽しそうに食事を作るんだな」
「料理は愛情ですもの。楽しく作りませんと」
すまし顔で言うけれど、内心恥ずかしさでいっぱいです。あまりそこを突かないでいただきたい。
お兄様は気付いているのかいないのか、どちらとも取れる微笑を浮かべられていた。
恥ずかしくなるので気にしないように視線を逸らしながら配膳を。
ご飯ときのこたっぷりのスープを並べて、今日はハンバーグ定食です。サラダと人参のグラッセ、ポテトとブロッコリーも添えられたファミレス仕様。
シンプルだけど外さないメニュー。栄養バランスもちゃんと考えています。
お兄様はそれらをためらわずに手を付けてくれた。
毒なんて元々持っても無いけれど、不審を抱かれずに食べてもらえて嬉しい。
私も続けて食べ始める。うん、ちょうどいい味付け。
お兄様を見ると、美味いよ、と返してくれた。良かった、お兄様のお口に合って。
「お兄様はどのような食事がお好みですか?」
「深雪が作ってくれた食事は何でも、と言いたいところだが、そうだな。――あちらの俺には好みがあるのかい?」
お兄様的に答えづらい質問だったのかもしれない。
昔あちらのお兄様もあまり食にこだわりのない方でしたから。
「そうですね。お兄様も似たようなことをおっしゃってくださいますが、中でも和食は好まれているようです。リクエストに芋の煮つけを頼まれたりもしました」
アレは確か夏休みのことだった。
お兄様が和食を好きなのは多分思い出補正もあるのだろうね。私の初めて作った料理がそれだったから。
「パンよりご飯派でした」
「ああ、それならわかるな」
ご飯の方が腹持ちいいですもんね。
今度がっつり飯を作ってみよう。ちょっとこのお兄様ががつがつ食べる姿を見てみたくなった。
食べ終えると率先して食器を片してくれる。こちらのお兄様も実にスマートに手伝ってくれるみたい。良き旦那様になりますね。
お礼を述べるとおいしい食事のお礼だ、だなんて。お兄様は妹を喜ばせるツボを網羅しすぎだと思う。推せない理由がない。
精一杯おいしいコーヒーを提供せねば、と気合を入れてコーヒーブレイクの準備。お茶菓子は私の好きなメーカーのクッキーがあった。私たちの嗜好は似ているようだ。
用意し終えてソファに運ぼうとしたら背後にお兄様。驚きはしない。よくあることです。
「ありがとうございます」
「いい香りにつられただけだよ」
行こうか、とソファに導かれ腰を下ろそうとしたのだけれど、自身を見下ろして気付く。…そうだ、丈が短いんだった。すぐ隣に座る勇気は、ない。
少し開けて座ると、お兄様はちらりと私を見たけれど、何も言わなかった、助かります。聞かれたら困っていた。
「それで、明日からの学校だが、大丈夫かい?」
「そうですね、だいぶ環境が異なりますが、生徒会でも業務は一緒でしたし、授業も変わりありませんでした。もし深雪さんと入れ替わっているのだとしたら、余計に休むわけにはまいりません」
なんとなくだけど、あの時の会話がトリガーとなってトリップしたと思うんだよね。
あの時の私は電波でも拾ってたのかな。何の前触れもなく、ふとお兄様とお話しした平衡世界の話。
もし、入れ替わりでこっちの深雪ちゃんが行ったとしても前振りをされたうちのお兄様ならすぐに対応できると思う。
だから頑張って深雪ちゃん。そっちのお兄様スキンシップ激しいだろうけど、生きて!
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