妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編   作:tom200

53 / 119
婚約者で恋人後の二人の謎時空。
お兄様の出番は少なめです。
エンディング一つでここまで話が広がると思いませんでした。



続続 エンディングパニック

 

叔母様に呼ばれてお兄様と水波ちゃんと三人で四葉本邸に向かった休日。

世間は三連休の初日ではあり、本来であれば友人たちと約束していた日でもあったのだが、当主に呼ばれたとあっては予定をずらさないわけにもいかない。連絡をもらったのは一週間前ではあったけどね。

皆には悪いが、三連休の最終日に皆で遊ぶ約束に変更させてもらい、こちらを優先させてもらった。

とはいえ最近事件なども無く、何か注意、忠告をもらう時期ではないと思うのだけどなぜこの時期に呼び出しが?何か私が知らない事件が裏で起きているのだろうか、と緊張していると、お兄様が隣で手を重ねてくれた。

 

――心配することはない、俺が付いている。

 

言葉にされたわけではないけれどその気持ちが伝わってくるようなぬくもりに、頬が緩むのが分かった。

そうだ、何も心配することなどない。

お兄様とならどんな困難でも乗り切れられる。

水波ちゃんもいてくれている。大丈夫、問題ない。

そう思っていつかと同じ、お兄様と並んで威圧的な門をくぐる。一歩下がって控えて歩く水波ちゃんと、三人で。

 

 

 

 

と、三人で来たはずなんですけどね。着いて早々叔母様と二人きりにされました。

お兄様は葉山さんに連れられて別室に。

水波ちゃんはこの邸に着たら使用人に変身してしまうので恐らく使用人部屋で着替えてくるのだろう。

当然お兄様は私と離されることに渋ったが、

 

「女子会に男の人が入るのは無粋よ?」

「女子と呼ばれるのはこの場に深雪と水波だけと思われますが」

 

――一気に部屋が冷え込んだよね。あと暗くなった。

ミーティアライン発動するかと思ったよね。

お兄様勇者が過ぎるよ。喧嘩売りすぎだよ。ここ、四葉本拠地。

この地域ごと更地になる幻影が一瞬見えた気がしたけれど、叔母様は案外お兄様のこの反抗的な姿勢を気に入っていたりする。

すぐに見せかけの怒りを引っ込めて、そんなことだからしばらく恋人になれなかったのよ、とチクリと刺してから。

 

「女同士で話し合うことがあるのよ。それとも束縛していないと安心できないなんて幼稚な恋をしているわけではないのよね?」

 

叔母様、お兄様のトラウマご存じでしょうに煽る煽る。

でもお兄様も幼稚な、との言葉にはピクリと眉を動かしていた。

 

「真夜姉さま、私は何があろうともお兄様と添い遂げる覚悟です。四六時中一緒にいなければ切れるような、簡単なモノではありません。そうですよね、お兄様」

 

叔母様も二人きりで話がしたいからと、いつもより言葉が辛辣になってしまっている。

こういう言葉の応酬が時にひどい溝を生み出す原因になってしまいますからね。間に入って空気を入れ替えるのが未来の嫁の務めでしょう。

その行動のおかげか、二人の雰囲気はやわらぎ、次いでお兄様が小さくため息を漏らした。

どうやらこの場はお兄様が引いて下さることに落ち着いたようだ。

 

 

 

そして二人きりになったのだけど、私たちが二人きりになる理由は恐らくこれだろうなと予測はついていた。

――そう、ぬいである。

叔母様がすっと立ち上がって奥の机の引き出しから取り出したのは、以前作った深雪ぬいと真夜ぬいと深夜ぬいの花魁合わせコス衣装セット。

こちらは流石に髪型が普段のモノとは合わなかったため、改めてぬい本体を作った上で衣装を作った。…納得のいく頭部がなかなかできなくてしばらく着物が手に付かず納期も予定より遅くなってしまったが、こだわった分、大変愛らしいぬいになったと思う。

デフォルメも奥が深い。

精密過ぎてもいけないし、かといって簡略的にしてもいけない。さじ加減が大変難しい一品でしたとも。

しかしそれだけこだわったこともあって叔母様にも大好評をいただき、料金も気付いたら上乗せされてた。とんでもない上乗せだったから慌てて連絡とったよね。金額間違ってますよ、と。

叔母様にとっては正当な報酬とのことだったのだけど。ぶるじょわじー。

と、話が大分それたけれど、苦労して作ったそのぬいたちを持ってきて机に並べると、叔母様はぬいたちから目を逸らすことなく微笑まれて。

 

「私としては深雪さんのだけを作ってもらえると思っていたのだけれど、まさかこんな形になるとは思わなかったわ。三人とも柄の違う着物だし、着付け自体を変更できるって言うのもとっても魅力的。何度も楽しめてとてもお気に入りなのよ」

「ありがとうございます」

 

作った身としてもそれだけ楽しんでもらえていると報われるどころか嬉しくなる。

そう、叔母様から送ってもらった曼殊沙華のお着物だけ三人分作ることも考えたけれど、お揃いで作るのもいいけれどせっかくなら合わせの方がいいかな、と。着せ替えもできる仕様だから誰にどれを着せるかも選べるしね。

 

「でもまさか、ニリンソウではなく附子――トリカブトとスズランだなんて」

「いただいた生地がヒガンバナでしたから、どうせならそちらもお揃いにしてみようかと」

 

ええ。全部毒花で揃えましたとも。黒地に白、紫、赤。それぞれ違って皆良い。

流石にそれらは生地屋さんになかったので図案を描いたものをプリンターで印刷した生地になってしまいましたけどね。

便利な世の中ですよ。

 

「深雪さんの情熱にはいつも驚かされるわ」

 

…すみません。ただのオタクによる凝り性なだけなんです…。

予想外に褒められて縮こまっていると、叔母様はだからね、と気になっていた机の上にずっと鎮座していた小さなベルを鳴らした。

ちりんちりん、と小さいながらもはっきりと聞こえる高音は扉の向こうにもきちんと届いたようだった。

気が付けばぬいにはシルクと思われる光沢を放つ布がかけられている。

 

「失礼します」

 

そう言って入ってきたのは水波ちゃんを含めた使用人が4人。

手には大きな荷物を抱えている。…お着物、ですね。

たとう紙で包まれたものがいくつも重ねて運ばれてくる。

 

「貴女に感化されてね。とはいっても私の場合発注をしただけなのだけど」

 

そう言って広げられたのは、先ほどぬいたちに着せていた私考案の図柄のお着物だった。

 

「…これ、もしや」

「ええ、しっかりと染めて作ってもらったわ」

 

…流石真夜様、規模が違う。一体御幾ら万円かかりました?なんて無粋な質問はできないけれど、この短期間でこれだけのモノを作らせるなんて、相当な費用が掛かっただろう。

この時代、職人の数はさらに減少し、伝統を継ぐ者はわずかしかいない。それでも反物は世界からも人気が高く、予約など何年も先になりそうなものなのだけど、一体どんな伝手を持っているのか。

 

「と、言うわけでお着替えしましょう?」

 

手を揃えて首をかしげてにっこりと微笑まれてしまえば断れるわけもなく。

 

(どうやら着せ替え人形をするために呼ばれみたいだね…)

 

緊急の呼び出しではなかったことが確定し、今度こそ体の力が抜け落ちた。

 

 

 

叔母様との着せ替えは思った以上に盛り上がった。

なんと叔母様、水波ちゃんに事前に連絡を取り家にあった曼殊沙華の着物を持ってこさせていてたのだ。

水波ちゃんの荷物多いな、と思っていたのはこれがあったからか。

そしてここに三着ワンセットのお着物が2セット、計六着あるわけで。

 

「昔はこうして深夜と双子コーデをしていたものよ」

 

今度写真を見せてあげるわ、との言葉にぜひ!と食い気味に反射で答えていた。一瞬淑女を忘れてしまうほどだった。

 

(だって、お母様たちの双子コーデなんて!絶対可愛いに決まっている!!)

 

興奮を抑えきれないで感動している私に、叔母様はそれを咎めることなく微笑まれていた。

着物を合わせては写真を撮り、使用人に何回か下がってもらってまでぬいとのお揃い写真も撮り、一通り楽しんだらあっという間にお昼となって、元の服に着替えてお兄様と三人で昼食を。

話が弾むことはなかったが、割と穏やかな食事会だったと思う。たぶん、私たちの楽しそうな空気がお兄様の警戒心を緩ませたのだろう。

だが、デザートが運ばれていざ手を付けようとしたところで、爆弾は投下された。

 

「あ、そうだわ。水波ちゃんを明日までお借りするわね」

「…真夜姉さま、そのようなお話は聞いておりませんが」

「あら、言ってなかったかしら」

 

言ってませんでしたねぇ。

というか、絶対にお着物の件といい、水波ちゃんに口止めされてましたね?

通りで水波ちゃんの口数が少ないわけだ。四葉本邸に行くから緊張しているのかなと思っていたけれどそうじゃなかった。

 

「連休中、ちょっとご招待する方がいるのよ。そのお手伝いに人手が欲しかったの」

「それは――次期当主として同席する必要はないのでしょうか」

「ええ。まだ内々の話の段階だから深雪さんが参加することもないわ。だから二人は先に帰って構わない。むしろ見られない方が良いからこの後すぐにでも帰ってくれて結構よ」

 

…一体どんなお客を迎えるというのか。

その名を口にすることはないと言外に言われている雰囲気なのでそれ以上踏み込むことはなく、この後すぐにお暇することが決まった。

お兄様のもの言いたげな鋭い視線が叔母様を射抜くけれど、叔母様は動じることなく変わらない笑みを浮かべられていた。

 

 

 

この時の私は四葉内部で何か動きがあるのかということばかりに気を取られ、婚約発表後二人で過ごすことになったあの二日間と同じシチュエーションにされていることなど全く気付かず、着物を三着土産に持たされ帰宅するのだった。

 

 

 

 

「偶には二人きりで恋人の時間を楽しめばいいわ」

「奥様、何かおっしゃいましたか?」

 

真夜は見せかけのキセルと弄びながら月を見上げた。

世話役を頼まれた水波は、当主の艶やかな着物姿に努めて平静を保とうとするが、彼女もまだ女子高生。あまりに刺激が強すぎたので、できるだけ伏し目がちに直視を避けてやり過ごして任務に励むのであった。

 

 

NEXT→

 





エンディングパニックのコメント欄に真夜様を望む声がありましたのでちょっと出演していただきました。
真夜様はお兄様と妹推し。この二人の為に一肌脱いじゃおうってことで着物を送り付けてみたりした。
文字通り脱がせればいい、と画策しているのだけれど、思ったより息子の理性が頑固で作戦が未遂で終わる。
どうしてあんなチャンス逃すのかしら?とヘタレ疑惑がぬぐえないけど、お兄様としては真夜様の策に全乗っかりは抵抗がある。せめてワンクッション欲しい。ワンクッション挟めば美味しくいただく所存。
コメントのおかげでお兄様が美味しい思いをされるようです。燃料投下ありがとうございました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。