妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編 作:tom200
高校入学してすぐくらいの謎時空の、暑い日のお話。
それは、ちょっとした女子高生特有のなんてことない話で。
「ねね、熱中症ってゆっくり言ってみて」
時代が変わろうとも、話すことは変わらないんだなぁ、とちょっぴり懐かしくなった。
エリカちゃんも女子しかいないから仕掛けた話だろう。
「「ねっちゅーしょう?」」
ほのかちゃんと雫ちゃんはこのネタを知らなかったようで、二人がユニゾンでさっそく言わされていた。
その間ちゃんと彼女たちの唇にロックオンしておりましたとも!
二人共かぁーいーね!so cute!!
「あら、美月と深雪は知ってたのね」
「有名ですよね」
「そういうエリカは引っかけられた口?」
「引っかかってあげたの。先輩を立てるくらい、私もするわよ」
エリカちゃんって付き合い良いものね。
それでかかったふりをして先輩を揶揄い倒したのかな?お肌が艶々している。
「ね、ねえ!これ何なの?!」
あ、しまった。
ほのかちゃんたちを放置してしまった。
種明かしは誰がする?と三人で視線を合わせていたら、雫ちゃんがお袖をツンツン。
…雫ちゃんは分かってるみたいねぇ。
んー、ときょろきょろと周囲を見渡して、お兄様がいないことを確認してから。
「ふふ、雫だけ特別よ」
と頬にキスをした。
ら、どこにそんなに隠れていたんだろうね、すっごい悲鳴が至る所から。
女子だけでなく男子のも上がってますね。…あまり変なネタにされるのは困るのだけど。主に、彼ら自身が。
そして悲鳴は近くからも二つほど上がった。
言わずもがな、美月ちゃんとほのかちゃんである。
二人共本当揶揄い甲斐があるねぇ。エリカちゃんも笑って――あれ?何でそんなうわぁ、って引いたお顔に?
ちなみにキスをされた雫ちゃんはご満悦の表情。とはいえ、恐らく周囲には無表情に見えるんだろうけど。私にはね、特殊な目がありますので。
「な、なななっ何やってるの!?ねえ、何やったの?!」
「何って、ちゅーよ」
「ね」
「ね」
ね~、と雫ちゃんと同じ角度で首を傾げたらほのかちゃんったらリアルぐるぐるお目目に。
「ど、どどどどーして、」
「どうしてって、だって、雫にお願いされたから」
「うん、お願いした」
ってことでここまで言ってわからなかったらしいほのかちゃんにかみ砕いて説明をば。
「『熱中症』をね、ゆっくり言うと『ね、ちゅーしよ?』になるのよ」
知らなかった?と問えば一瞬呆けたようにこちらを見つめて動かなくなったほのかちゃんが数秒後再起動をして――あらー、まっかっかに。可愛いね。
まあ、「しよ」は流石にこじ付け感が残るけどね。
「ほのかにも頼まれたのだから、雫にだけ、というのも悪いわね」
ほのかちゃんにもちゅーしようとしたのだけど…んん?表情が引きつってる?そんなにされるのが嫌なのかし――
「――さて、うちのお姫様は一体どんな悪戯をしようというのかな?」
「ひゃああ!お、に、兄さん!」
ほのかちゃんに夢中になっていたらお兄様の接近に気が付かなかった。
…これ、相当気配消してきていましたね?
うっかり皆の前でお兄様と呼んでしまうところだった。
危なかった…、…じゃないね、現在進行形でお兄様から危ない雰囲気がひしひしと。
「それで、一体何をしていたんだい?ここに来るまで死屍累々だったんだが」
…それは、先ほどの私の『悪戯』で悲鳴を上げて昇天していった人たちのことですね?
いい冥途の土産になったのではないでしょうか。
(これ、素直に話したところで助からない気配が…)
どう切り抜けたものか、と視線を走らせるとエリカちゃんが動く。
「答えてあげるから達也くんは聞いたら深雪を回収して帰ってくれる?」
「!エリ――」
「良いだろう」
「兄さん!」
これはまずい展開だ!エリカちゃんに売り飛ばされた!!
というかこの場合切り捨てられた、が正しいの?いえ、どちらにしても私がドナドナされたことには変わりない!
「…ほぉ、『熱中症』、か」
「ってことで続きは家でやって頂戴」
「わかった」
「兄さん?!」
ひょいっと持ち上げられて腕に座らされ、ものすごい勢いですたすたと大股で歩き出すお兄様。
エリカちゃんが強く生きなさいよ~、と白いハンカチを振っている。
ハンカチを常に持っているなんて、やっぱりエリカちゃんはいいとこのお嬢さんだなぁ、と現実逃避していたらあっという間に学校を出ていて――って。私まだ生徒会のお仕事が!
「一日くらい休んだって問題ないだろう。エリカたちが上手く伝えるさ」
ああ…売り飛ばした後始末はしてくれる、と…。エリカちゃん、七草会長のことあまり好きじゃないはずなのに、責任はちゃんと取ってくれるんだ…。そんなことよりもこの窮地の方を救ってほしかった。
「深雪はいけない子だ」
「え…?」
「人を揶揄って遊んではいけない、と兄である俺がちゃんとしつけをしなかったことがいけないんだな」
「え」
「今からでも遅くはない。しっかりとその身に覚えさせてあげるよ」
「ええっ!?」
ちょ、ちょっと待ってほしい!切実に待って!!
一体何がどうなってこんなことに!?
お兄様から不穏な気配が消えるどころかどんどん濃厚になっていく。
大変です!お兄様が歩く18禁に!!見たら危険なお兄様に!!
「も、もうしませんから!」
どうか許してください!と懇願するも、今日のお兄様は許してくれないらしい。
いつもの甘いお兄様は何処へ行ってしまわれたのか。
「だめだよ、深雪。悪いことをしたらちゃんと罰を受けないとね」
「ば、罰…」
い、一体どんな罰を受けさせられるというの?!
「そんなに怯えて…。かわいそうに」
…その口調は全然可哀想に、と憐れんでいるようには聞こえませんよ、お兄様。
「家に帰ったらまず、どんな悪いことをしたのか再現してもらおうか。
それから、それがどれだけ酷いことか、きちんと教えないといけないね。
心苦しいが、精いっぱい兄として叱ってあげよう」
その晩、私は気を失い、目が覚めたら次の日だった。
「深雪、『熱中症』と言ってごらん」
「申し訳ございませんでした!もう二度とそのネタで人を揶揄いません!」
「そうだね、まずは俺で試してから、人にしていいか判断するように」
「それは…」
何か違うのではないでしょうかお兄様、と思ったのだけれど、お兄様からの「ん?」の圧が強くて頷く以外の選択肢が無かった。
教訓:人を揶揄うのもほどほどに。
雫ちゃんはただの役得。
エリカちゃんが顔が引きつっていたのはお兄様を発見したから、かな。
エリカちゃんも先輩を返り討ちにしたけど、流石にキスまではしていません。
美月ちゃんは空気に徹しました。ここがアヴァロン(違う)。
――
分割版で感想を頂き、深雪成主に『ねっちゅーしょー』と言わせようとしたら、気付いたらこんなお話になっていました。
家に帰ってお兄様の前で散々言わされた模様。
「俺には『熱中症』にしか聞こえないな。もう一度、ゆっくり、言ってみてくれ」
散々羞恥を煽ってからのお説教が始まります。お兄様のSが発揮されてますね。
妹は意識を失いました。仕方ない。
皆様も熱中症にはお気を付け下さい。
お読みいただきありがとうございました!