妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編   作:tom200

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婚約者後、恋人未満のふわふわ時空。
キスの日(5/23)だったのでキスをしてもらいました。
お兄様視点になります。

近々芸能パロを纏める予定です。


溺れるほどのキスを

 

夜、いつものように部屋に訪れた深雪は、少し緊張しているようだった。

何かあっただろうか。

夕食後のコーヒーの間は普通だったと思うのだが、その時に何かやらかしてしまったか?

このところ深雪への愛おしさが募るばかりでつい手を伸ばしては困らせてしまうことが多々あった。今夜もうっかり背を撫で、腰に腕を回し、長い髪に指を絡めてしまったけれど、深雪はただ顔を赤く染めて恥ずかしがるばかりで嫌がる様子は見受けられなかったと思うのだが。

あれらは俺の願望だっただろうか。その可能性は否めない。深雪は我慢強い子でもある上、俺を拒むことも苦手のようだから。

 

「深雪、こちらへおいで」

「…はい」

 

とりあえず部屋に招き入れると、素直に俺の示したベッドに座る。

いつも遠慮がちに座るが、今日は特に緊張しているように見えた。

 

「何かあったか」

「!いいえ、何も」

 

何でもない、と首を振るけれど、どう見ても緊張気味だ。何かがあることは間違いないのに深雪は隠したい様子だった。

さて、こういう時はどうするのが正解か。

無理にでも訊ねれば、深雪は困ってしまうだろう。気まずげに体を揺すっていることから、あまり隠す気も無いようだ。

ならここは、深雪が話すことを待ってあげるべきなのか。

気になってすぐにでも暴きたいところではあるが、問い詰めたら逃げてしまいそうだ。

嫌がる深雪を、というのは『待つ』と約束した身として選べない選択ではある。興味が無いわけではないが、ここはあきらめよう。

焦る必要はない。

 

「ならいいんだが。――勉強は順調か」

 

話題をわかりやすく変えてやると、深雪はほっと安堵してみせて微笑んで返した。

可愛らしい笑みに、つい手を伸ばしかけるが、先ほどソファで困らせてしまった手前、それは少しためらわれた。また緊張を振り替えさせても悪いだろう。

 

「はい。ですが、理論のところで少し分からないところがありましたので明日お兄様に教えていただけたら、と。よろしいですか?」

「構わないが、今夜でもよかったんだぞ」

「それは…」

 

ここに来る直前まで、深雪は勉強をしていたはずだ。もしわからなければいつでも聞きに来てもかまわないのに、遠慮したのか?だが、それにしては明日お願いしたい、というのは辻褄が合わない。

今夜はできない理由があった?それはこの緊張して――ん?それだけじゃないな。顔もほんのり色づいている。

何か恥じらうようなことがあっただろうか。

しかし、潤む瞳が揺れ動いて庇護欲が揺さぶられるな。守ってやりたい、抱きしめてやりたいという気持ちが沸き起こる。

あれだけ自制していたはずなのに気が付けば体は動いていた。

肩を抱き寄せて抱え込むように抱きしめていた。

 

「お、兄さまっ!」

 

焦ったような深雪の声に、離してやらないとと思うのに体は思うように動かない。

身じろぎしているが、大した抵抗も見られないのでそのまま抱きしめて。

 

「深雪の好きにしたらいい。俺はどちらでも構わないから」

「あ、ありがとうございます…」

 

耳元で囁くと一瞬体を強張らせてから体の力が抜けてしまうのは、深雪が抵抗をあきらめる合図だと気付いたのは彼女の耳や首元が赤らんでいたから。

初めは何度か確認してしまったが、今では良いか、とだけ訊ねればこくんと頷いてくれるようになった。

今夜も訊ねれば小さな頷きが――、と思ったのだが、我に返ったように体を震わせ首を振られた。

…今は流されてくれてもいいのではないか、と思わなくも無かったがいつもと違う反応が新鮮で、頬に伸ばしかけた手を引っ込める。

だが、深雪を抱きしめたままのこの状況は生殺しもいい所ではあるのだが。これも修行か?随分厳しい修行だ。

なら離せばいいと思うだろうが、この温もりを手放せるかと言ったらそう簡単な話ではなくて。

 

「さて、今日は一体どんな趣向をお望みなのかな。俺のお姫様は」

 

そう耳元にリップ音だけのキスを送るとビクンと震えた。相変わらず耳が弱い様子に体の熱が集中しだすけれどすぐに霧散させる。

これくらいならすぐに対処できるようになった。役に立つような場面が他にあるとは思えないが、有るに越したことはないだろう。

持つ分には選択肢が増えるということだからな。

 

「…お兄様は今日が何の日かご存じですか」

 

すぐさま自分の脳裏に過去の5月23日に何があったか検索をかける。

大したイベントごとはなかったように思う。確実に俺たちの中で記念日になるようなことも起きていない。

今日は平日であるし、学校でも特に話題に上っているようには見えなかったが。

 

「教えてくれないか」

 

今度は耳元ではなく離れて伝えたのは、これ以上深雪を困らせないため。

まだ深雪は俺に恋をしているか判断が付いていない。好きであること、愛していることは間違いない。だからこうして触れることも許可されているし、それ以上の触れ合いも時と場合によっては許されている。

ただ、本人曰く他の人を俺以上愛することはないことはないと理解している、らしい。

だから俺は待つことを決めた。俺以上好きになる人がいないのなら、彼女が恋に落ちてきてくれるのを待つだけだ。そして落ちかけているのを日々実感しているから待っていられる。

あと少し、もう少しで堕ちてくる。俺の下へと。その日を今か今かと待ちわびているのだが、それは今日かもしれないし、明日かもしれない。もうその時が近いことは自分だけでなく、深雪にもわかっているようだった。

深雪も俺の意図が分かったのか、軽く深呼吸をして心を落ち着けるとゆっくりと凭れ掛かっていた体を起こしながら。

 

「少しの間、目を閉じてくださいますか」

「いいよ」

 

即答してから目を瞑る。

この部屋でされる深雪のお願い事は何でも聞く。

それは必ず俺の為になるから。

いや、何時だって深雪の願うのは俺の為になることではあるのだが、たまにとんでもない危険なことに手を出したりするので全部を叶えるとは言えないことが辛いところだ。

だが、それもこの部屋では違う。ここで願われるのはもっと身近なことだから。

聞き分けの良い俺に、深雪が口元を緩ませたのが視える。

未だに深雪に目を閉じていても深雪のことだけははっきりと見えていることを打ち明けることはできないでいた。

卑怯だと思われるかもしれないが、このように無防備な深雪を視られるのは自分の特権だとさえ思っている。

今も、俺が目の前で目を閉じていることに安堵して気を緩ませる深雪が可愛くて仕方がない。

そして気合を入れるように息を吸い、俺の肩に手を添えてゆっくりと顔を近づけてくる。

瞼がかすかにふるえている。相当緊張しているようだが、深雪からの口づけは初めてというわけでもない。

目を閉じてと言われてすぐに閉じたのは、キスをしてもらえるからだと学習するくらいにはしてもらっていた。

何時までも慣れない様子にこれまた愛おしさが募るが、俺から動くわけにはいかない。

ただじっと待つのみ。

獲物がかかるその時を待つ狩人のように息をひそめてその瞬間を待つ。

柔らかな感触が己の唇に重ねられた。そっと、触れるだけの優しい口付け。ゆっくりと離れると同時にかかる吐息に食らいつきたくなるが、焦りは禁物だ。

獲物がちゃんと食いつくまで動いてはいけない。それが狩りの鉄則だ。

深雪が目を開くタイミングでゆっくりと目を開く。

視線が絡み合うと、深雪の頬が徐々に赤みを帯びていき、瞳もしっとりと湿り気を帯びてきた。

――美味そうだ。

舌なめずりしそうなのを堪えて深雪が口を開くのを待つ。

 

「本日はキスの日、だそうです」

 

恥じらい、最後には視線を逸らしてしまいながらも言い切った深雪はそれだけで達成した気分なのだろうが――キスの日、か。そんなものがあるなんて知らなかった。

そんな都合の良い日を知らずに今まで過ごしてきたなんて。

 

「それは素敵な日だね。俺からも、良いか?」

 

今度はこくんと頷いた。

がっつきそうになるのを慎重に距離を縮めて同じように触れるだけのキスをする。

何度も触れたくなる柔らかさだ。一回だけで満足できず、立て続けに口付ける。

 

「ん…」

 

音を立てたり、唇を食んでみたりと形を変えて何度も口付けを交わしていくうちに次第に深くなっていく。

添えるだけだった手はいつの間にかにしっかり後頭部に回っていて、腰も抱き寄せていた。

このまま雪崩れ込むように深雪の身体を押し倒しそうになったのだが――。

 

「だ、ダメです!明日は学校がっ」

 

どうやら今日はキスの日だからキスまで、ということらしい。

深雪が緊張して躊躇っていたのはこうなってしまうことを予期していたからなのだと今になって理解した。

理解はしたが、納得がいくかと言われればそれはまた別問題だ。

 

「そうだな。だからキスだけにしようか」

 

そう言ってもう一度口付けて、深雪を安心させてやってから。

顔のいたるところにキスをして、むずがる深雪を宥めすかして唇を再び堪能してから首に下りて――

 

「お、お兄様!?」

「キスだけだ」

 

そう言って徐々に下に降りて胸の上に口づけを落すと、深雪は血の気の引いた顔になった。――ようやく気付いたか。

さあ、我慢比べといこうか。

 

 

明日も学校なら夜は短い。

ここは短期決戦が望ましいな。ガンガンに攻めさせてもらおう。

 

 





お兄様のギラリと光る目に、妹はヒッと悲鳴を上げたとかなんとか。
待つって言ったじゃないですかお兄様!といつも妹は訴えるけれど、お兄様としては十分待っているつもり。
恋人未満なのにちゃっかりやることはやっているお兄様。でないと待ってられないもんね(←
キスの日なのでそういったネタを、とお兄様視点で書いたらそれだけで済まなかった件。
ごめんね。お兄様が止まらなかったよ…。
溺れるほどのってタイトル付けたけど、仕留めにかかってましたね。でも妹はきっとあっぷあっぷしてたから溺れてるのときっと大差ない(←

…なんというか、お兄様待ってるってわりに調きょ、げふん。妹ちゃんが順調に躾けられている気がひしひしと。もう逃げられないのでご愁傷さまとしか言葉をかけられない。強く生きてほしい。


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