妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編   作:tom200

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婚約前の二人。お兄様が少し不安定な頃のお話です。
不安定だからねじが緩んでいてもしょうがないですよね(←

アニメ三期を見て思いついたネタです。



汝、罪ありき

 

いつからか、お兄様に抱きしめられる時、必ず背中を擦る動作をするようになった。

背中、それも中央より上の、もっと詳しく言えば肩甲骨をなぞる様に触れられる。

今日もまた、お兄様の部屋でベッドに腰掛けて抱き寄せられるのだけど――ほら、また。

お兄様の指が肩甲骨を辿る。

まるで、何かを確認するように。

 

「お兄様」

「なんだ?」

「なぜ、いつもそこに触れるのです?」

 

別に嫌なわけではない。くすぐったくはあるけれど、それをすることでお兄様が安心?安堵していることは伝わってくるから。だからお兄様の好きに触れてもらっているのだけれど、そろそろ訳を尋ねても聞いてもいいかな、と。

お兄様の胸をそっと押して見上げる。

すると、困ったように笑う顔が。

言いづらいことなのだろうか。ならば聞かなかったことにしようと口を開きかけた時、眉尻を下げてふっ、と口元を緩めた。

 

「別に構わないよ。俺の勝手な妄想だから」

「妄想、ですか」

 

妄想なんて言葉、お兄様の口から聞くとは思わなかった。私なんてしょっちゅう妄想ばかりしているけれど、お兄様がそんな想いに耽ることなどあるのかと、驚きが勝る。

それが伝わったのだろう、くすっと笑いが漏れた。

 

「意外って顔だね」

 

片方は背中に腕が回ったまま、片手が頬をすり、と撫でる。その手が少しくすぐったいけれど我慢できないほどではない絶妙な触れ加減。少しだけ身を捩るとその反応に気を良くしたのか更に微笑みを深くした。

 

「現実的ではないことくらいわかっているんだ。だが、どうしても確認せずにはいられなくてな」

「確認…背中を、ですか?」

 

一体何を確認されるというのか。背中に怪我を負ったことはなく、何かを背負うことも無い。

体のバランスを確認されているのだろうか。利き腕で筋力などは変わるから若干のずれくらいはあるだろう。いくら遺伝子操作をされていても顔の左右対称だって努力をしなければ歪むのが成長というもの。それを歪ませないよう努力はしているつもりだけれど、体に関しては生活の癖が強く影響してしまうので完全に保つということは難しい。

お兄様は私にそこまでの完璧を求められていただろうか、と若干青ざめるが、続けられた言葉にそれが杞憂であったことを知る。

曰く、

 

「お前の背に羽が生えてしまうのではないかと、不安になるんだ」

 

………はね。

 

「お兄様。私とお兄様は実の兄妹で、同じヒト科だったかと」

 

思ってもみない発言に、思わず面白みのない返しをしてしまったのだが、お兄様は私の唖然とした様子が面白かったらしく、噴出して笑われた。

…お兄様、笑いのバリエーション増えましたねぇ。この数分でいろんな表情が見られて妹は大変嬉しいですけれど、心が追い付いてきていません。

 

「すまない。お前を笑ったわけではないんだ。我ながらおかしな発想だとわかっているんだがな。確認せずにはいられないんだよ」

「一体何故そのような発想に」

「…深雪の美しさもそうだが、時折お前の慈悲深さが人の物とは思えないのさ。だから役目を終えたらその背に羽を生やして帰っていってしまうのではないか、とね」

「私はそんなに慈悲深くはありませんよ」

 

美しさに関しては人の物とは言えないのは賛成です。深雪ちゃんの美しさは年を重ねるごとに更に磨きがかかって人外レベルだからね。でも、だからって天使の羽は生えませんよ。天使になったつもりもありません。

それに、

 

「私が優しく見えるのでしたら、それはお兄様にだけです。私の優しくありたいお相手はいつだってお兄様なのですから」

 

お兄様を幸せにする。そのことが、お兄様への恩返し。お兄様の妹として精いっぱい務めさせてもらうご奉仕ですとも。

そう、自信をもって答えるのだけれど、今度は…おっと、何かよろしくないスイッチを押してしまったのだろうか。お兄様からね、ちょっと危険な雰囲気と妖しげな笑みが。

 

「そういうところも、確認したくなる」

 

すり、とまたも背中を撫でられるのだけれど、今度は下から上に逆なでるように筋を辿って撫でられた。

ぞくり、と身を震わせる。

 

「天使の面も見えるのに、悪魔のように誘惑されそうになる」

 

肩甲骨をくるりと一蹴した指は、そのまま背筋を辿って今度は――

 

「ひゃっ!お、おおお兄様っ!?」

「尻尾も、生えていないようだ」

「当たり前です!」

 

真っ赤になって抗議すると、指は尾てい骨をとん、と叩いてからまた背に戻って添える形に戻った。

 

「俺としてはな、深雪」

 

羞恥を誤魔化すように怒って見せるも、顔が赤いから上手く誤魔化せてはいないだろうにお兄様は急に真剣な面持ちでまっすぐとした目で述べた。

 

「どちらでも構わないんだ。お前であれば、天使でも悪魔でも。ただ、俺の傍から手の届かない所へと飛び立たないでほしいと、そう思ってしまうんだ」

「……お兄様」

 

あるはずも無い幻想を見てしまうほど、離れがたいと想われているのだと思うと胸が熱くなる。

お兄様にとって妹がかけがえのないように、私もお兄様が大切だと伝えるように抱き返す。

でもね、これだけは言わせてほしい。

 

「…せめて、確認は背中だけにしてくださいませ」

 

尾てい骨はアウトです。

…行きつくまでにもそうだけど変な声が出るかと思った。妹の背を撫でまわさないでいただきたい。

 

「時折悪戯に揺れる尻尾が見えるんだがな」

「気のせいです」

 

というか私はお兄様ほど意地悪はしていない。

そう訴えるとお兄様は、

 

「確かに意地悪は滅多にないが、翻弄は得意だろう?」

「心外です。それこそ、お兄様の方ではないですか」

「俺はわざとだが、深雪のそれは無意識に仕掛けてくるじゃないか」

「無意識に、って私はお兄様を翻弄していません!いつだってされる側です!」

 

あとさらっとですがお兄様、わざと意地悪して翻弄してきたと自白なさいましたね。

ガバっと身を起こし――と言っても私に回されている腕は外れないのだけれど――お兄様と対峙した。

けれどお兄様には悪びれた様子も無く、むしろ私を責める。

 

「いけない子だ。本当に自覚していないのか?」

「じ、自覚って。そ、それは…以前は困らせたこともございましたが」

 

中学生の、まだ兄妹として暮らし始めた頃には意地悪をしたつもりはないがお兄様を困らせ、文字通り翻弄していた時期はあったかと思う。連日私の突拍子もない行動に戸惑われていましたからね。

でも高校に上がってから立場は逆転。お兄様に翻弄される日々。

今だって、頬に手を添えられていけない子だ、なんてお兄様の魅惑の低音ヴォイスで囁かれたら動揺しない方がおかしい。今現在翻弄されてる!これが証拠です!!

見てください。淑女教育で完ぺきだったはずの仮面が剥がれ落ち、視線は泳いで頬は赤くなり、隠しようのない心音は早いビートを刻んでます。

 

「ああ。あの頃も翻弄されっぱなしだったな」

「その言い方では今でも翻弄されているようではないですか」

「間違っていないよ。俺は今も惑わされているのだから」

 

そっと頬に手を添え親指で目元をなぞられる。

 

「一つ一つの仕草が、言葉が俺を惑わせる。それはお前にしかできない」

「!!」

 

心臓がひときわ大きく跳ねた。

 

「お前だけだ、俺の心をこんなに乱せるのは」

 

真っ直ぐと射抜かれる瞳に体を震わせる。

 

「だからどうか、このまま傍に居てほしい。どこかへ飛んでいくというのなら、俺も連れていってくれ」

 

その言葉に、朦朧としかけた意識が覚醒した。

お兄様が背中を撫で始めたのはいつの頃からだったか。あれは、兄離れ、妹離れを行動に移し始めたくらいだったような――…お兄様の為に離れようとしたことが、逆にお兄様を追い詰めていたのかもしれないことに今さらになって思い当たった。

 

「私に、自由に飛べる羽はございませんよ」

 

有り得ない、とくすくすと笑って見せる。

実際、私がどこかに行くことなど有り得ない。私は四葉の次期当主。心は自由なつもりでも、窮屈な生活を送ることは必然。

自由になるのは私ではなく、お兄様だ。

 

「心配でしたらいくらでもご確認ください。お兄様を置いて自由に飛び回るなどありえないのだと証明し続けます。でも、背中だけにしてくださいませね」

 

たとえお兄様でもそこはアウト判定です、としっかりとNOを突き付けておく。というか尾てい骨、と言い換えてますが妹のお尻を撫でるのはどう考えたってアウトです。お兄様疲れすぎて判断力鈍りました?ここ最近も忙しくされてたから。スキンシップ過多だな、とは思ってましたけど。

 

「だめか」

「だめです」

 

私はちゃんとNOの言える妹ですので。そもそも腰を撫でたり横腹を撫でたりするのもほとんどアウトに近いと思う。…というかアウトでは…?

 

「羽よりも先に尻尾が生えるかもしれないじゃないか」

 

…お兄様の妹はいつ人外種になりました⁇もしやお兄様も人外です?

無いとわかっていても確認で背中をさすってみる。肩甲骨に異様な盛り上がりは、ない。…でも筋肉のしっかりついた、良い背中ですね。

 

「もし生えるとしたら、お兄様の方が先なのではないですか?」

「俺にそんなものは生えないよ」

 

至って普通の平凡な男だから、なんてどの口が言うのか。いませんよ、『お兄様みたいな平凡』なんて。それは基準が狂った世界です。

 

「深雪、人の背中に羽は生えない」

「…お兄様、その言葉、そのままそっくりお返しします」

 

うん、これはだめだ。お兄様妹ストップです。どう考えてもお疲れで思考がおかしなことになってます。お前は天使だからな、じゃないです。やめてください、堕天させれば天には帰れなくなるか…?じゃないです!何かファンタジー物でも読みましたか!?

 

(大変危険な発想!堕天って何をさせる気です!?何故急に色男モードにおなりで?!)

 

警報が頭の中に最大音量で鳴り響く。

宗教関連の組織が人間主義の母体でもあるから資料として聖書等を読んだ?そこからの発想なのだとしたらお兄様意外と二次創作の素質が――ってそこじゃない。想いを馳せるのはそこではなくて。

 

「そんな資料を遅くまで目を通されていたら、いくらお兄様でも疲労してしまいます。お休みくださいませ」

「優しいな、深雪は」

 

優しさじゃないです、自己保身です。

ですからそのような手つきで頬を撫でないでください!ぞくぞくする!

慌ててお兄様の手を掴んで逃さないよう握りしめる。

 

「お兄様、悪戯はその辺にして、もう寝てくださいませ」

「まだ眠くないんだが」

「それこそ疲労がピークに達している証拠です。ホットミルクでもお持ちしましょうか」

「いいや、ここにもっといいものがあるだろう」

 

…そう言ってじっと見つめられていますけれど、警鐘も同時に鳴り始めましたね。頭の中が痛むほどうるさいです。

 

「深雪が抱き枕に」

「お兄様、最終手段ではありますが、冷凍睡眠という方法もございますよ」

 

にっこりと微笑むと、お兄様は漂う冷気に青ざめホールドアップする。

…まさか、七草先輩や藤林さんに嫉妬して向けるはずの「お兄様お仕置です!」をここで発動することになろうとは。でもお兄様と私の危機でしたのでね。

明日の朝のお兄様の心が心配です。

凍らせることはなかったが、お兄様には眠気が無くとも強制的に眠れる術があるのできっとすぐに眠れることだろう。

部屋を出る前に念押しをしたので早めに切り上げて眠ってくれるはずだ。

私も、今日は疲れたので部屋に戻って早々にベッドにもぐりこんだ。

 

 

次の日、予感は見事的中し、お兄様は早朝一番90度体を折り曲げて謝罪を受けた。

 

 

 

 

 






9話でお兄様青ざめてましたよね?
もし、妹に『ダー〇ンお仕置きだっちゃ!』をされてもこのお兄様なら甘んじて受けそう。むしろ喜びそう。かといってあえて食らおうとはしないと思うけど。というか、この妹ちゃんはお兄様愛されが好きなので嫉妬しないと思うのだけど、恋をしたらいつか嫉妬するんだろうか。…したらお兄様が大喜びする姿しか想像ができない。そして監禁へ。
うん、よくないね。
監禁以外の道のりが浮かぶまで嫉妬させられない。とはいっても本編ラストちょっとだけ嫉妬心を抱いてましたけどね。表に出したら危険です。しばらく隠しておいてください。

お兄様妹の肩甲骨撫でまわすのが日課。羽が生えてないかチェックしてた。
妹が天使すぎていつか天に帰ろうとするんじゃないかと気が気じゃない。
でも時折とんでもない誘惑もされるので悪魔かもしれないと肩甲骨と尾てい骨チェック。お尻撫でまわすお兄様、アウトです。
どうやって妹相手に堕天させるつもりだったんだろうね。このお兄様無自覚なのに(←
妹が距離を開けようとしているのを本能で察知し、本能で(物理的に)囲っていた。二人きりになると腕に閉じ込めちゃう。この時が一番妹危険な時だった。この地雷原をよく避け切った。…のに年末叔母様の爆弾によってとっ捕まるのだけどね。でもバッドエンドルートは避けられたからセーフ。…セーフだよね?でもフラグっていつでもいくらでも立つ。妹ちゃん、頑張って。

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