妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編 作:tom200
おはようございます。トリップ二日目突入しました。部屋が違うってわかりやすくていいね。ここ、私の部屋じゃない!って目がぱっちり覚めましたとも。
服を着替えて階段を降りると、後ろからお兄様が。
「おはよう。早いな。もっと寝ていていいんだぞ」
「おはようございます。いつものルーティーンの癖で起きてしまいましたから。朝食はいつもどうしてますか?うちではトレーニングに出る前にスムージーと白湯をお出ししていましたが」
「そうか。では頼んでいいか。朝食はいつも帰ってからだ」
「ではそのように」
すぐ準備しますので、と昨日のうちにカットして冷凍していた果物と野菜を牛乳・ヨーグルトと共に放り込んでミキサーで掻き混ぜて。白湯は熱湯を程よい温度に魔法で冷ましてからお兄様に提供する。
「ありがとう。――てっきり深雪も着替えているから一緒に行くかと思ったが」
ああ、運動着ですからね。そう思われるのも当然でしょう。
でも流石に先生の前ではいろいろ誤魔化せないことがありそうなんですよね。ほら、先生って何でも知ってそうじゃないですか。色々見透かされそうだし、下手なことはできないので。
「ストレッチと、昨日できなかった分の勉強もしたいので」
そう言えばお兄様は納得したようで、手渡ししたドリンクを一気に飲み干した。
「では行ってくる」
「お気をつけていってらっしゃいませ」
玄関でお見送りしてさっそく柔軟をして体をほぐす。…うん、若干動きが違うような。もしかしてと思ったけれど、やっぱりこの体、深雪ちゃんのものですね。…ってことはつまり魔法は精神にくっついてくる要素ってことかな。サイオン量が違ったようだものね。
…なんだか叔母様にはバレちゃいけない精神構造のお話に繋がりそうですね。お兄様とだけの秘密にしなければ。
バレてはいけない24時が始まった。
勉強して、朝ご飯を作って待っていると玄関に気配!アンテナがビビッと反応します。お兄様のご帰還です。
「おかえりなさいませ、お兄様」
「ただいま。いい匂いだ」
「もうすぐ出来上がりますのでお兄様はお先にシャワーをどうぞ」
いい匂いと言われるだけでつい頬が緩んじゃいますね。お兄様ったら褒め上手。
朝から気分上々でお味噌汁を完成させて、朝の和定食は完成。
とは言ってもお魚が無かったのでメインは鶏つくねの照り焼きなのだけど。卵焼きはマストよね。
すぐに戻ってきたお兄様は並べられた食事に目を見張ってから席に着いた。
もしかしたら朝はパンの方が多かったのかもしれない。
ウチではご飯7割パン3割の比率でしたけどね。
お兄様は朝からモリモリ食べて下さった。いい食べっぷりです。気持ちが良い。
パンよりご飯にしてしまうのはお兄様がお好きなこともあるけれど、この姿を私自身が見たいから作っちゃうんだよね。
朝から幸せです。
ごちそうさまでした。
それから制服に着替えて家を出るのだけれど…そこでお兄様から一言。
「もう少しこちらへ寄ったらどうだ」
「え?」
「深雪はいつも触れるほど近くにいたから、この距離が珍しくてな」
ああ、そういえば密着してるようにしか見えないくらい距離が近かったんでしたっけ。
「では、失礼して」
少し身を寄せれば、お兄様は苦笑されて。
「失礼じゃないよ。もっとだ」
結構寄せたつもりなのだけど、お兄様にはもの足りなかったらしく更に距離を詰められた。
これってもう密着してるようではなく、密着してるんじゃないですかね⁇
あ、でもギリギリ触れてない。触れてないけど触れてないだけだよ!近い!!
するとお兄様がくすくすと笑って。
「深雪はシャイなんだね」
そんなところも可愛いよ、と耳打ちされて顔が真っ赤になった。
こっちのお兄様も不意打ちで酷いことをなさいますね!?妹を揶揄って楽しいですか!どこの世界でもお兄様のドS!!
「もう、お兄様ったら」
「お二人さ~ん、朝からちょっと二人の世界を作り過ぎじゃないの~?」
「エリカ」
「エリカ、おはよう」
エリカちゃんが合流しました。その後ろには西城くんと、美月ちゃんが小走りで追いついてきた。
いつもの登校風景です。
だけど周囲の視線が、ね。ちょっと痛い。兄妹で何イチャラブやってんだコラ!みたいな。
あっちではキャーがBGMだったからちょっと新鮮。っていうかそうだよね。普通朝っぱらからいちゃついてる二人組見ればそういう反応になるよね。感覚がマヒってたわ。
でも深雪ちゃんは気にしないだろうから、このまま継続だよね。…うう、お兄様に悪感情が向いてしまうのが申し訳ない。
「二人の世界だなんて、そんな」
とりあえず深雪ちゃんらしく恥じらってみる。
お兄様は苦笑。…頑張ってるな、の空気を察知。…恥ずかしくなるのでその温かい視線は止めて下さいませ。
エリカちゃんにはジト目を喰らいました。うーん、これまた新鮮な反応。でも原作ではこんな感じだったかも。
それから雑談をして皆で登校しました。
クラスに行くと司波さんおはよう、とよそよそしい挨拶に迎えられ、ほのかちゃん達とおしゃべり。
普通に授業を受けて、お昼。
「ところでさ、二人って何かあったの?」
さっそくエリカちゃんのジャブが飛んできます。
「何かってなんだ?」
お兄様が平然と聞き返しました。
エリカちゃんはんー、と首を捻りながら、なんとなく?と。
エリカちゃんの本能?直感ってすごいよね。詳しくはわかってないのに正解を導き出しちゃうんだから。
「二人の雰囲気が違うような気がしたのよ」
「そうかぁ?」
「あまり違うようには見えないけど」
他の皆もピンと来てない様子。良かった。特に美月ちゃんね。そのなんでも見えちゃうキラキラお目目で何か見えてるんじゃないかと思ってたけどおかしなところは無いみたい。
「何かあった、はあったかな」
お兄様!?いったい何を言う気だろうと振り向くと、お兄様は私に対して微笑んで。
「深雪の新たな一面を知った、といったところかな」
…お兄様ぁ。嘘は言ってない。嘘は言ってないけれどその笑みはちょっと意味深が過ぎますよ。
ほのかちゃんが声なき悲鳴を上げています。
直撃を受けた私も耐えきれず俯いてしまった。
その頭を撫でられればさらに顔は上げられなくなるわけで。
「昨日からこの調子で恥ずかしがってしまってね。それで雰囲気が変わって見えたんだろう」
「……何があったか聞いたら藪蛇になりそうだから訊かないでおくわ」
「そうか?それは残念だ」
思ってもないことを平然と、しれっと言い放つお兄様は素敵だと思いますけれど、もう少し手加減をしてくださらないと困る。
ご飯がいつまで経っても食べられない。
「確かに今日の深雪さんはちょっとふんわりしていますよね」
「ああ~、隙があるわよね。…物理的にじゃないわよ」
エリカちゃんの付け加えられた言葉にちょっとほっとしました。そんなに油断しているように見えたのかと思った。
だけど、ふんわり、ねえ。…気が抜けてるってことかな。可憐で完璧な美少女にあるまじき気の抜け方だったらまずい。
そろり、と隣のお兄様を見上げれば、今度はぽんぽんと頭を撫でられてそのままでいいんだよ、とその瞳は語っているようだった。
お兄様は本当、何でもお見通しだ。ありがとうございます。
こっちも目でお礼を言えばこちらも通じたみたい。嬉しいね。
また二人の世界~、とエリカちゃんに呆れられてしまった。こっちの世界じゃ見慣れた光景なのか、周囲の反応はドライだ。
私はまだ慣れないのだけれど、これが皆の見慣れている光景なのね。
慣れるまでここにいられるかわからないけれど、努力はします。…したほうがいいんだよね?なんていうか、彼らの呆れが、もうどーにでもして、と投げやりな感じなのが気になって。
ウチはほら、やれやれ、みたいな空気があったから。ここにいる時くらいは抑えた方が良いかなと思ったんだけど、お兄様は気にするな、と言って食事を再開。私も習って目の前のご飯の攻略にかかった。
放課後も特に変わったこともなく。こちらでは何も不審に思われることもなかった。お兄様が絡まなければそんなに違いがないはずですからね。
帰りに再度服を買いに行くかと提案されたけれど大丈夫です!こんなことで散財しないでくださいませ。
しばらくこっちで過ごすなら必要だと思うが、なんて。お兄様の気遣いが手厚い。でもね、そんなに長くないと思うので大丈夫です。
断ったらお兄様はちょっぴり残念そうだった。もしや選びたかったのかな?夏休みデートの再来?お兄様、妹の服選びに余念がないからなぁ。きっとそこはこのお兄様も変わりが無いはずだ。丁重にお断りした。
こうして無事、トリップ生活二日目を終えたのだけど――
「お疲れ様」
「…私は上手く深雪さんができていましたか?」
「お前がどんなに変わっても俺の可愛い妹に変わりはないよ」
そういうことではないとわかっているだろうにお兄様は!
(すぐにそうやって甘やかしになるのだから…)
恥ずかしくて隣に座るお兄様の肩に顔を埋めた。
今日も今日とて露出の多い服だけれどカーディガンと、昨日は思いつかなかったブランケットを掛けていれば隣に座ることができた。
お兄様からの提案です。私が気にしていた事に気付いて下さるなんて、ありがとうございます。
「俺を警戒しているわけじゃないようで安心したよ」
「…お兄様の存在は私にとって安心こそすれ、警戒することなんて…意地悪される時くらいです」
ないってはっきり言いきりたいところだけど、意地悪をするお兄様には緊張を強いられるわけで。
「そちらの俺は随分と構いたがりなのか?」
…構いたがり…。その表現はどうなんだろう。
お兄様はちょっと不思議そう、というより不安そうなお顔?それでいてちょっと複雑そうでもあった。
元は私からちょっかいを掛けていた――ハグとか、触れ合うことは仲良くなるきっかけになると思っていたからね――けれど、いつの間にか定着してお兄様から触れられるようになっていったのよね。
受け身のままが嫌だったとか?普段無関心だからわかりづらいけど、関心があるものに対してなら負けず嫌いの側面あるし。エリカちゃん達を揶揄い返しとかね。
「どうなんでしょう。気が付いていたら立場が逆転していたと言いますか」
「逆転、ねぇ」
お兄様は基本深雪ちゃんのことに関してはほとんど受け身ですからねぇ。ちょっと想像付きにくいかも?
「いいのですよ。お兄様が好きなように過ごして。私にとってもお兄様はどのようなお兄様でもお兄様なのですから」
先ほどのお兄様の言葉をそのままそっくりお返しすると、お兄様は肩を抱き寄せて。
「そうか」
「はい」
その手には、昨日のような遠慮はみられなかった。
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