妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編   作:tom200

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当家番外編の芸能パロシリーズで書きました。

頂いたお題
『アイドルパロで某モニタリング番組の撮影で光宣君がたまたま来て3人の親子日常がテレビに流れ、それによる世間の反応(スレ形式)や片思い中の一条の反応が読みたいです』

あまりその番組を見たことが無かったのでちょっと設定がおかしいかもしれませんがその辺りは適当に見ていただければと思います。
ふんわりご都合主義です。…パロだからなんでも有りかと(笑)
あと、スレ形式が適当ですみません。よくやり方が分かってません!雰囲気で読んでいただければと思います


ドッキリ(芸能パロ)

 

:そろそろか

:わくわく

:この企画考えた人天才か

:CM見てびっくりした

:まさか我らのお兄様を観察できる日が来ようとは!

:し・か・もご自宅公開!

:ダイニングだけって話だがな

:それでも十分!!

:私生活の一部でも晒してくれるの有難い!!

:お兄様の謎の私生活!

:プライベートなことなんて妹様のことしかわからないもんなー

:そう!妹様だよ!ちらっとでも映り込まないかな?

:絶世の美少女の妹様!

:お兄様の大事な妹様!!

:掌中の珠を見せるようなことお兄様が許すわけないだろう!!

:そうなんだけどさ~

:期待はするよね

:せめて声だけでも!!

:後ろ姿だけでも!!

:手だけでもいい!!!

:おまいら必死かwwwでも気持ちはよくわかるがなー

:今北!さっき番組に出るって聞いてテレビつけたところなんだけど一体タツヤは何の企画に出るの?!

:おお、間に合ってよかったな

:これ見逃したらファンとして生きられなかったぞ

:タツヤが参加する企画は『妹に彼氏ができたら 認める?認めない?』という放送ギリギリ企画だ!

:見た時は死人が出るって思ったよなー

:彼氏が?タツヤが?

:妹に彼氏ができて血反吐を吐いて倒れるお兄様www

:彼氏は果たして生きて家を出られるのか…

:今のところファンたちの投票では彼氏が生きて帰れない方に90%賭けてる、じゃない。傾いてる

:90%www

:それギリギリじゃなくテレビ放送できないやつー

:でもそれくらいお兄様は妹様を溺愛されているからなー

:というか、つまり妹様は顔出しをされるという…ああ、しない方向で皆は考えてるのか

:そそ!

:お兄様は家の内部は見せられても妹様を出すわけがない!

:でもスタッフは見てるんじゃない?セッティングとか打ち合わせで顔合わせくらいしてるでしょ?お兄様が観察対象なのにお兄様に話を通すことって…あれ?でもそうするとお家を映す許可なんてそもそも――

:ネットの番組案内には、タツヤはライブ映像特典で妹とのランチ(当然妹顔出しNG)風景を撮影すると聞いているらしい。だから定点カメラも何も自分で設定して決めたそうだから。

:お兄様が他人を家に入れるわけが無かったwww

:妹様とのラブラブランチ!?その映像特典偽企画なの?!倍の値段払うから欲しいんだけど!!

:絶対甘々なお顔されてる…見たい…

:今回その企画の予定なんだから多少は見られると期待してる!

:!だな!

:ってここがタツヤファンばっかりだからそっちしか話に出ていないがマサキも出演するんだからちょっとは話に出してやれよwww

:ああ、別室で解説員

:モニター前で腕組んで座ってるのがちらっと映ってたね

:相方が特別解説!とかなんとか

:マサキに果たして解説ができるのか?

:お兄様の複雑怪奇な思考にツッコミは入れてるがwww

:お兄様天然でボケられるからwww

:つーか妹に彼氏、なんてマサキにも死亡案件

:マサキも仕掛け側だから大丈夫でしょ

:でもマサキの場合わざとってわかっていても悔しがりそうwww

:自分がその座に就きたかった的な?

:無理だわーwwwお兄様が騙されてくれるわけがない!

:(笑)だけどそうなると妹様のお相手役は誰なんだ⁇

:そもそも絶世の美少女の妹様の彼氏役が務まる奴なんかいるのか?

:お兄様!!

:お兄様

:お兄様しかいない

:お兄様以外誰がいると?

:いや、観察対象www

:お!そろそろはじまる!

:ワクワク!!

 

 

――

 

 

マサキさんはここでモニタリングしていてください、とマネージャーと二人通されたのはバンの中。

ここはテレビ局の地下駐車場だ。

目の前にはモニターが設置され、画面にはいくつもの定点カメラからの映像が映し出されていた。

それを隠し撮りのようだと(まさにその通りなのだけど)若干やましい気持ちを抱えながらドキドキして画面を視界に収める。

映し出されているのは完全非公開にしているはずのタツヤの家だと見ただけで分かった。

それをテレビで公開するようなことをよくタツヤが許可したな、とマサキは詰まっていた息を吐きながら思った。

 

――そう、これはテレビ番組の企画だ。

 

思っていないことが起きた時、人はどんな反応をするかモニター越しでチェックする番組。その解説役兼フォロー役として相方のマサキが呼ばれたのだ。

マサキにとってタツヤは仕事仲間以前に幼馴染であり、初めての友人でもあり、ライバルでもあり――恋敵でもあった。

アイツのことなら彼女以外では俺が一番詳しいのではないかとマサキは自負している。…というか、アイツはあまり人付き合いに頓着しないから、その場での適当な付き合いしかしてこないので周囲との交流が昔のまま広がらずにいるだけなのだが。

マネージャーのジョージも詳しいが、彼の場合私生活には最低限しか関わらないようにしているのでプライベートに関してはマサキに分があった。

 

「しかし、よくアイツがこれを許可したな」

 

モニターには家の家具が何をと使っているか特定できるものばかり――つまりブランド物ばかりということ――だがいいのだろうか。

ちなみに家の間取りや光の入り具合で家の場所を特定は不可能らしい。そのあたりのことはマサキには分らないがタツヤがそう言うならそうなのだろうと納得している。

 

「この撮影終わったら全部一新するらしいよ。模様替えするんだって」

 

それは逆に特定犯とやらに見つかりやすいのでは?と考えたが、その辺の事情には詳しいタツヤがそのことに気付かないわけはない。何かしら方法は考えているのだろう。アイツは何でもないようにさらっとやってのけるからな。

 

「で、俺たちもここでモニタリングされるわけか…」

「俺たちっていうか僕は運転しながらの声だけ出演だけどね。スタッフが入らないからって気を抜きすぎないようにね」

「そうだな。気を引き締めないとな」

 

そう言うと、ジョージはエンジンをかけてスタッフたちに頭を下げてから駐車場を後にする。

目的地は、彼らの家だ。

 

(ジョージと二人きり、移動車の中というのはどうにも仕事の感じがしない。ジョージは昔から家族ぐるみの付き合いだから余計に)

 

だけどこれはれっきとした仕事だ、とマサキは体を適度に緊張させた。

 

「だが、これだと彼女が映りこんでしまうんじゃないか?」

 

定点カメラは8つほど仕掛けられていた。

主にタツヤとその斜め向かいの席を中心に映すための構図ばかりだが、人は動く。うっかり映り込む可能性だって捨てきれないと思うのだが、ジョージが苦笑して大丈夫、と太鼓判を押した。

 

「彼女は仕掛けを知っているし、カメラに映りこむようなミスはそうしないと思うよ。それに、もし欠片でも映り込もうものならタツヤの開発したAIが瞬時に危険を察知して消し去るらしいから画面に映りこむことも無い」

「…なんだって?」

「彼女が画面に映りそうになったらその時点でAIが画像処理をするんだ。…だから許可したんだよ。絶対に映りこまない技術があるから。もしうっかりしゃべってもテロップに文字化されて音声は全く聞こえないようにもなってる」

「録画して編集する、ならわかるが、これは中継だろう?それとも俺は撮影編集されたものを見るのか?」

「いいや、中継であってる。…とんでもない技術だよ。こんなの現段階で世界のどこを探したってない」

「どこのテレビ局も欲しがるんじゃないか?」

「というかテレビ局のみならずどこの世界でも欲しがる技術だよ。下手をしたらこれによって覇権争いが巻き起こる」

 

起きてもおかしくない、ではない。覇権なんて婉曲な言い方をしているが実質戦争が起きると断言するジョージに、マサキは冗談だと笑い飛ばすことはしなかった。

 

「相変わらず何でもありだなアイツは」

 

昔から機械にはやたらと強かった。AIを自作するぐらいでは驚きもしないが、それにしてもこれはやりすぎだ。マサキは再度重い溜息を吐いて、膝に肘を置いて祈るような形で顔の前で手を組んだ。

彼女のためとはいえ、とんでもないことを平然とやってのける。この男がいるから、彼女は安全に暮らしているのだとわかっていても、マサキには立ちはだかる巨大な壁に見えた。

 

「彼女は出演NGで声も姿も出ないことになってるし、本人も出さない。会話をする時は端末で文字を打ち込んですることになっているんだ」

「それでも良く許可が下りたものだ」

「彼女が乗り気になっていたようだからね。彼女のお願いに折れたんだろうね」

 

いくら、何でもそつなくこなす完璧超人タツヤでも妹のお願いには弱いことを、マサキは知っていた。よく、知っていたしその気持ちも十分にわかる。

 

「…彼女にお願いされたらどんな無茶も叶えたくなるからな」

 

マサキも彼女にお願いなんてされたら何でも差し出すだろう。彼女から笑顔を貰えるならば悪魔にも魂を売り渡すかもしれない。それくらいの魅力が彼女にはあった。

正に傾国の美少女。それがタツヤの妹であり、マサキの幼馴染の女の子であり初恋の相手だった。

そんな彼女が今日は仕掛け人となって兄を騙す。

 

「タツヤはライブの映像特典の撮影と聞いてるんだったな」

「最愛の妹との食事風景を、とね。もちろん妹は出演無しで」

「そこにもし――妹の彼氏と名乗る男が一緒にいたら、か。――その男、無事で済むのか?」

 

今回の番組企画は妹が彼氏を連れてきたら兄は認めるか認めないかというもの検証する内容だった。

正直この企画を聞いた時マサキは芸能活動もこれで終わるか?と惨劇が脳裏に過った。

受け入れる入れないの問題ではない。虫がついたら排除する。そうするのが当たり前だと思っている男だとわかっていたから企画が成り立つのか?とテレビ放送が本当にできるのかが不安で仕方が無かったのだ。

だが、この敏腕マネージャーたるジョージも許可を出しているのだから、大丈夫な理由がちゃんとあることもマサキにはわかっていたのだが、それでも不安は完全にはぬぐい切れない。それほど危険な男なのだ、彼の幼馴染は。

 

「その、キャスティングは彼女がしたんだ。知り合いの方がリアリティもあるから、と。もちろん相手の彼にも許可は取ってる」

 

妹が選んだという言葉にひどく動揺したマサキであったが、ふと頭に疑問がよぎった。

 

「…それだったら俺でもよかったんじゃ…」

 

しかし、その言葉にジョージは残念なモノを見るような目で見つめた。

 

「マサキだと、冗談だって思われちゃうかもしれないからね」

 

マサキの片思いは本人の意図しないところで全国に知られている。

今更彼氏なんて言ったところで茶番にしかならないのだ。やらせだとすぐにばれることは番組の趣旨に合わない。

…とは流石のジョージも言えなかったので。

 

「幼馴染だと、そういう弊害があるから」

「…そうだな。いつか来る日を前にそんな冗談を言っていたら信ぴょう性も無くなるか」

 

ジョージは笑みを浮かべてスルーした。

 

「だが、相手は誰だ?そんな身近な知り合いを、俺が知らないはずは…」

「いくらマサキでも親戚関連はあまり関わってないんじゃない?」

 

その言葉には頷くしかない。

彼ら兄妹はあまり家族仲が良くないことは幼少期の頃から知っていた。

それでも一応名家であるから親戚との付き合いはあるようだし、うちも家関係で彼らの一族と多少のかかわりはあるが、そういう席で彼らと一緒に会うことは無かった。

だから親戚筋やその関係者が来られるといくら幼馴染とはいえマサキにも誰だかわからない可能性が高かった。

 

「くる相手は知ってるんだろ?」

「マネージャーだからね。でも今は秘密。君のリアクションも大事だから」

「…そのくらい演技するぞ」

「こればかりは仕事だから」

 

先に教えろという要求を突っぱねて、ジョージは運転席側にも設置されているモニターに視線を向けながら。

 

「まあ、独り言だけど。――その人は親戚ではなく彼らの親の恩師のお孫さんだそうだよ。体が弱くてあまり外に出られない子だったらしい。それで遊び相手として紹介されたのが彼ら兄妹だったんだって。文通だったりテレビ電話で親交を深めていたそうだよ。最近は外に出て仕事を始め、業界では超有名。トップに駆け上がった逸材だけど、やっぱり体は強くないから長期の仕事はできない。と、こんな感じかな」

 

話せないという割にはかなり詳しい個人情報を聞かされたマサキは、親戚筋でもないなら知り合うことも無いか、と浮かんでいたいくつかの顔を消した。

 

『一旦モニターを消しまーす』

 

スタッフからの音声がスピーカーから聞こえた。

スタッフを入れずにこれで指示だけをすると聞いていたが、こんなに一方的なことは初めてでマサキも戸惑いながらイスに深く体を沈めた。少しだらしのない格好だが、これから彼女が登場(と言っても画面に映りこむことは無いが)するかと思うと今のうちに脱力しておかないともたない、と思ったからだ。

そしてジョージもわかっているから咎めることも無い。

――咎められるわけがない。

 

(君はこの後大変なことになるんだから、今くらいはゆっくり休むと良いよ)

 

目を閉じて体を弛緩させていたマサキは、親友兼マネージャーから生暖かい目で見つめられていたことに気付かなかった。

 

 

 

――

 

 

タツヤがこの仕事を引き受けた理由はなんてことはない。

妹と一緒に居られて、しかも彼女との食事を時間をかけてゆっくりと食べられるというのなら、仕事という名目が付こうが構わなかった。

このところ立て続けに仕事続きで電話でしか声を聞けない状態。帰ることもままならず一緒にいられなかったことも有り、どんな手を使ってでも妹との触れあえる時間を確保したかった。

――そう、多少の禁忌を侵しても。

タツヤは周到に妹が人目に映ることが無いようにセッティングした上でOKを出した。

自作したAI――ピクシーは自我が芽生えてから急激に成長し、様々なことを学習・吸収していったので今やタツヤの右腕であり秘書のような存在となっていた。その彼女が全力で妹が映り込まないように映像をジャックしてみせると気合(?)を入れていたので心配はいらないだろう。

妹も彼女のことを気に入っており、時折おしゃべり相手としてとても可愛がっている様子にタツヤは仕事の合間にどれだけ癒されたことか。今も彼の耳には二人の今朝の会話が聞こえていたりする。

スタッフは決して家に入れない。家の場所も教えない。

それが最低条件。

妹の存在を外に出さないための措置だった。

妹はとても可愛い。そして何より美しい。

この宝石を一目見たら人は魅了され、狂った人間は欲望のままに求め、争いを起こす。

戦争の火種にもなり得るこの絶世の美少女を守ることが、兄としての使命だとタツヤは本気で思っていた。

前日の夜から料理の仕込みをしてたのを、ピクシーから画像付きで送られて知っていたので大分張り切っていることが窺えた。

きっと妹も楽しみにしているのだろう、そう思うとタツヤの足は自然と早くなる。

早く、妹に会いたい。その一心で足を動かした。

 

 

 

玄関を開けて中に入る。玄関には異変は無いように思うが、中には人の気配が。妹のモノだけではない。

タツヤは気にした様子を見せずすたすたと長い廊下を歩いてリビングの扉を開ける。

 

「おかえりなさい、達也さん」

『おかえりなさい、お兄様』

 

机の上にたくさんの料理が並ぶその奥で、満面の笑みで迎える男女が一組。

どちらもとびぬけた、と言うより異次元の美しさを持つ二人に、芸術の良さもわからない達也でさえほぅ、と吐息が漏れる。

真の芸術作品とは、知識も見る目も無くとも、人の心に感動を与えるものなのだと、タツヤは彼らを見るたびに思う。

 

「ただいま。光宣も、日本(こっち)に帰ってきていたんだな」

 

妹は動けない(・・・・)のでタツヤは真っ先にそちらに向かいハグしてから、次いで横の光宣にも流れるように軽くハグをした。

それはタツヤを知る者からすればかなりの衝撃映像だ。

握手をするところなら見たことはあるが、このように親しげなハグする姿など見たことが無い。相方のマサキでさえハイタッチくらいのものだ。

だから、モニターで見ていたマサキはぽかん、と口を開けて画面を凝視していた。

みのる、と呼ばれてタツヤにハグをされている男を、マサキは知っていた。

だが知り合いではない。一方的に知っているにすぎないが、あの顔は一目見れば忘れることなどできない。――彼女に匹敵するほどの美形を忘れることなど誰にできようか。

――世界でも話題のスーパーモデル、ミノル。

知らぬ者は秘境に暮らす者くらいだと言われるくらい今や時の人だ。

ただし、彼は体が弱く、あまり仕事に耐えられる体ではないと聞いた。だから売れっ子であってもほとんど表舞台に上がらないので、彼が現れるだけで大ニュースになるくらいには話題の人物であった。

いくらお金を積んだところですべては彼の体調次第。それでも彼に仕事が舞い込むのはその美貌がとんでもなく人間離れしていることと、彼自身の才能だと言われている。前者は見ればわかるが、後者はプロの目の話なのでマサキには分らない。ただ、映像で見た時、彼が光り輝いていて、奇抜な衣装を着こなし悠然と歩く姿は見惚れずにはいられなかった。ただ服を着て立っているだけではあそこまで見惚れることはなかっただろう。

足運びから指先に至るまで、何もかもが美しく見えた。素人目にもそう見えるのだから、プロが絶賛するのも当然なのかもしれない。

しかし、そんな情報今のマサキにはどうでもよかった。

タツヤが抱き合っている。それも妹ではない相手と。

これがどれだけの衝撃を与えたことか。

そして同時に息をのんだ。

正直この企画を聞いた時、タツヤは彼氏なんて戯言を信じないだろうと思った。

彼女に見劣りしない人間などこの世にいるはずがないと思っていたからだ。見た目は無理でも釣り合うような男なんて想像もできず、相応しくない男が傍に居て、彼女がいくら彼氏だと言ったとて信じられるはずがないと思ったからだ。

だが、これは予想外すぎた。

彼女の隣にいて――とは言ってもモニターには映ってはいないが――見劣りすらしない男がいるとは。

マサキは正直、自分であれば並び立っても多少見劣りはするがギリギリ許されるんじゃないかレベルだと思っていた。実際は並び立っても遜色は無いと言ってもいいのだが、彼にとって彼女は女神。並び立つのもおこがましい存在なのだ。

だが、これは次元が違う。

マサキは半分仕事のことを忘れモニターに釘付けになっていた。

この先の展開が全く読めない。視聴者と同じような気持ちで食い入るように見つめていた。

 

「日本には一昨日返ってきたんですが、昨日までベッドから起き上がれなくて」

「一日で歩けるようになったなら大したものだ。無理はしていないだろうな」

「はい!この通り」

 

そう言って手を広げて元気アピールを見せるミノルにタツヤは見たことも無いような温かい笑みを浮かべている。

 

(いや、厳密には見たことは、ある。ただしそれは彼女に向けられるもののはずで――)

 

「信じられん…彼は、一体タツヤの何なんだ」

 

始まる前、ジョージが呟いてくれたことをマサキは忘れたわけじゃない。だが、それだけでは説明がつかない関係性があることは明白だった。

そして何より、

 

(タツヤがこれだけ許している相手なら、彼女も――)

 

マサキが焦る気持ちを抑えているのはカメラが回っているからではなかった。

気持ちがカラカラと空回りして体が誤作動を起こしているから動けないだけだった。

猛烈に彼女の様子が知りたかった。だが同時に見えなくてよかったと思う。これでもし、自分が見たことも無い笑みを浮かべられていようものなら耐えられる自信が無かった。

相反する気持ちで揺れ動くマサキが固まって動けない間もモニター越しでは時は止まらない。

和気あいあいとした空気で画面上二人、実際三人は席に着いた。

 

「撮影が絡んでいると伺いましたが、いいんですか?」

「カメラは編集すればいい。この子がそう言って誘ったんだろう?俺もそう思うよ。お前とも食事できることは嬉しいことだ」

「…そう言っていただけて光栄です」

 

照れながらはにかむミノルの顔は恐ろしいことに男でも魅了されるくらい、可愛らしく見えた。

こんな彼のプライベートな姿を見たことはない。この映像が流れたらきっと世界中の病院に失神者が運ばれるんじゃないだろうか。そう心配になるくらいの映像だった。

 

「さて、料理が冷める前にいただこうか」

「「いただきます」」

「…これを食べると帰ってきたという気持ちになる。美味いよ」

「本当に。貴女の料理はいつも優しい味がして美味しいです」

「――」

「これくらいのことで恥ずかしがるなんて、可愛いね」

「達也さん、あまり言いすぎると困ってしまって食べられなくなってしまいますよ」

「光宣がいるからいつもより照れているようだな」

「ふふ、だと嬉しいですね。僕のせいで照れてくれるなんて」

 

ポンポンと交わされていく会話。

タツヤはあまりしゃべる方ではないと思われているが、親しい人間には結構しゃべる方だ。ただ、余計な口は噤むだけで。

そして妹相手には滑らかに口説き文句を口にする。そんな男だった。

対するミノルもモデルという仕事柄画面でしゃべる姿はほとんど見られない。インタビューでも必要最低限は話さない印象だった。

それがどうだろう。楽しそうに会話が弾んでいる。

それに嬉しいです、と言って浮かべたのは、ただ親しい人に向けただけの笑みには見えなくて。

運転中だというのにシートベルトを外して飛び出そうとするマサキに、ぎょっとしたジョージが制止の声を掛ける。

 

「マサキ!」

「!!す、すまん!」

 

鋭い制止の声に完全に頭から仕事がすっぽ抜けていたことに気付きマサキはすぐさま反省するが、目は離すことができずギリギリと歯を食いしばって画面を見つめる。

というか、走っている車から飛び出してどうするつもりだったというのか。

頭に血が上りすぎているようだった。

 

(なんで、達也は何も言わないんだ!!)

 

タツヤ、と呼ばずに達也になっている時点でテレビ撮影のことを忘れかけているが、まだ心の中だけで済んでいるだけまだ理性は働いているようだった。…車から衝動的に飛び出そうとしたことは彼の中でなかったことになっていた。

 

(こうなると彼女の反応が気になる…)

 

その思いが伝わったのか、タツヤがまるで解説するように言う。

 

「お前がそこまで照れるだなんて珍しい。まるで恋をしているみたいに見えてしまうよ」

 

この口調は冗談を言っているように聞こえた。

タツヤでも冗談を言うんだ、と思われるかもしれないが、案外彼はジョークを口にする。笑えるかは別として。

そしてこのマサキには面白くもないどころか怒りさえ覚えるジョークに対し彼は、面白い冗談だ、と笑って返した。

 

「達也さんも人が悪い」

「どうにも俺に冗談のセンスはないようだ」

 

ハハハ、と笑い合う様子がどこかしらじらしく見えるのは、マサキが穿ちすぎているせいなのか判断がつかなかった。

仕掛け人は、まだ恋人設定を話すつもりはないらしい。が、なんとも形容しがたい空気が流れていた。

いよいよそういう場面が来るのか、とマサキが固唾をのんで画面を見つめる。

タツヤが正面を見て、ミノルの前の料理を見た後、箸を一旦置いた。

 

「光宣、セロリをちゃんと食べなさいと言っているぞ」

「…端末を操作してませんでしたよ」

「言いたいことくらい見ていればわかるさ。合っているだろう?――ほら、頷いてくれているだろう」

「でも、苦手なんです」

「全部は無理でも、少しでも食べてほしいようだ。いけそうにないか?」

 

(…俺は、何を見させられているんだ?)

 

てっきり恋人かを追求すると思われた場面で突然始まったホームドラマのような会話に、さっきまでの焦燥を忘れてマサキはぽかんと口を開いていた。

 

(これは妹に彼氏がいたら兄はどうするかの実験だろう?…彼らは自分たちがしかける側だということを忘れているのか?)

 

そして画面ギリギリのところでミノルの服が不自然に引っ張られていた。隣から引っ張られているのだ。

次いで、横からセロリの乗ったスプーンが差し出されている。

ミノルの表情に困惑と朱が混じる。

 

「…ずるいです。そんな顔をされたら食べないわけにはいかないじゃないですか」

「断れるなら断ってもいいぞ。代わりに俺がいただく」

「食べてもらえるならそれもいいですが、期待されて断ることはできません…」

 

そう言って髪を耳に掛けながら顔を寄せるミノルはまだ十代のはずだが、妙に色気があった。照れた表情も初々しさがあり、見ている側まで恥ずかしくなるような空気だった。

マサキはまたギリギリと歯を食いしばる。

もし、俺があの場に居たのなら空気をぶち壊すのに!と達也は何で彼女の危険な行動を悠長に見守っているんだ!と理不尽な怒りさえこみ上げていたが、今度は何とか椅子の上で耐えていた。

しかし、羨ましい!彼女にそんなことをしてもらったことはない!心の中でマサキがハンカチを食いしばって血涙を流している間も、彼らは食事を進めていく。

 

「うう…口の中が…、あ、ありがとうございます」

「肉の油が甘いから中和される、そういうことだな」

「すごいな。そんなことまでわかるんだ。なんだかせっかく用意した端末も達也さんがいれば使いどころがありませんね。そういえば、達也さんは今撮影でお忙しいのでしょう?毎週見てますよ」

「なんだ。光宣もああいったのが好きなのか?」

「達也さんの作品なら全部見てますよ。でも、そうですね。特撮モノは初めて見ましたが、達也さんが最近ヒーローに戻ったところなので展開がとても気になります」

「ああ、今はその辺りらしいな。いつも今週のどこがよかった、と感想を送ってもらっているから放送がどの辺りかはわかっているんだが」

「実は僕たち、時間が合えば通話しながら一緒に見てるんです!互いに感想を言いながら。今日の達也さんはどうかっこよかったか!とかあの動きはすごかった!とか。一人で見るより盛り上がれて毎週見るのが楽しみなんです」

「楽しんでもらえているようで何よりだが、恥ずかしいな。まるで品評されているようだ」

「違いますよ!僕たちは応援しているんです!ね?」

「…そんな全力で頷かなくてもわかったから。応援してくれてありがとう、と言っておこう」

「わぁ!ブラックからのお言葉!ファンとしてこれは嬉しいです!お、…貴女も同じ気持ちなんですね」

「今撮影は最終回間際でな。このところ天候が悪くて撮影が滞っていたりもするから困っている」

「ええ?もう最終回を撮ってるんですか?!まだ先ですよね?」

「俺のスケジュールの関係もあってな。撮れるところを先に撮ってもらっている。流石に最後に全員集合でいないのはまずいからその撮影の時は次の撮影先を抜けることになるが」

「…相変わらずすごい世界ですね」

「光宣にも演技の才能はあるが、体に負担がかかりそうだからおすすめはできないな――お前もそう思うか」

「ふふ。二人に心配していただけて、僕は幸せ者です」

 

……。

 

「……仕掛けは、まだか?」

 

マサキは自身の精神がゴリゴリと削れる音を聞く。

何が楽しくて恋敵である幼馴染と、恋敵(偽)が最愛の人(ただし画面には一切見えない)と微笑み合っているのを見なければならないのか。しかも、彼女の手料理を囲んで。…許されるなら俺もその場にいたかった。

なぜ、俺は見ているだけなのだろう。

飢餓にも似た気持ちで画面を睨みつけながら、恨めしそうに零れた言葉は、もうテレビのことなど一切気にしていない怨嗟も込められていた。

ジョージはそれを、黙って見つめながらそろそろか、と信号で止まったタイミングでこっそり端末を操作する。

 

「光宣の話も聞きたいが、光宣はしばらく休養か?」

「一週間お休みをいただいています。次のお仕事の為に体調を万全に整えておく必要がありますので」

「なら数日うちに泊まっていくか?」

「!いいんですか!?」

 

喜びで満面の笑みを浮かべるミノルに対し、マサキは真っ蒼になって絶叫した。

 

「いいわけないだろう!?なんだ?!泊りって!!俺は誘われたことなんてないぞ!」

 

しかし当然ながら彼の悲痛な叫びは彼らには届かない。

 

「その方がこの子も喜ぶ。なあ?」

「ですが、ご迷惑になりませんか?」

「まさか!と言っているのが光宜もわかるだろう?むしろお世話をしたくてうずうずしている、そうだな?」

「正解なんですね。…嬉しいです」

「いいとも」

おずおずと、それでも嬉しそうに尋ねるミノルに、タツヤが鷹揚に頷いたのを見て、マサキはついに耐え切れないとばかりにジョージを呼んだ。

もう、車はとっくに家の前に着いていた。

「ジョージ!悪いが俺は行く!!」

「後のことは任せて」

振り返りもせずマサキは駆け出していた。

ジョージはその背を見送ってから車を降りて、トランクで幕のかけられているそれを取り出し、担ぎながらゆっくり歩く。――タイミングを誤ってはいけない大仕事が一つ残っていた。

 

――

りりりん、と変わったチャイムが鳴り響く。

俺が行こう、とお兄様が立ちあがってお出迎えに。その背を見送って扉が閉まって光宣君と顔を見合わせにっこり微笑み合う。

「これは、大成功ですかね」

『このチャイムの音は指のセンサーに反応して誰かを知らせてくれるようになってるの。今の音は将輝君で間違いないわ』

一応カメラが回ったままなので声には出さず端末で返す。

もちろんカメラにも映らないよう気を付けながら。

『光宣君も、こんなことに付き合わせちゃってごめんなさいね』

「いいえ、お二人と一緒にお仕事ができるなんて、むしろお金をもらうことも申し訳ないくらいです」

『あら。これは正当な報酬なんだから受け取らないとだめよ』

「ふふ、はい」

頭を撫でたくてつんつん、と服を引っ張ると屈んでくれたので頭を撫でさせてもらう。

「…不思議です。さっきからマサキさんの声しかしません」

『この家に入っていれば防音だから外には漏れないのだけど、ちょっとハラハラする声量ね』

将輝君の大音声がここまで響いてきます。対するお兄様の声が全く聞こえません。

「僕、馬の骨扱い初めてです」

『血統は間違いなく良い所の、彼のおうち並みなんですけどねぇ』

くすくすと笑い合っていると、徐々に声が萎れていく。どうやらお兄様の説明に燃え草が無くなってきた模様。納得させた、じゃない。だって、ネタバレしてないから。お兄様もカメラの無い前でしていいこととしてはいけないことはわかっている。

「種明かしってドキドキしますね」

うーん、光宣君が眩しい。とても可愛らしいです。

その気持ちよくわかりますよー。私も同じ気持ちだからね。

『心の準備は良い?』

「はい!」

彼の後ろにはぶんぶんと砂ぼこりを巻き起こさんばかりに振れる尻尾の幻影があった。

 

――

:マサキが耐えきれずに突入www

:確かに大混乱してたもんなー

:だけどそれは俺らもだけどな!

:お兄様のあんな優し気な表情妹様以外で初めて見た!もしやミノルが妹!?!?

:ミノルがwww妹www

:ありえないとわかっていてもあの美貌!タツヤがいつも妹の美貌を絶賛しているがあれなら納得する

:っていうかミノルだよミノル!!あの世界的モデルの!!!

:まさかお兄様と交友関係があったとは

:つかすげーよ。世界のトレンドにこの番組が!

:そりゃあミノルだからな

:あのミノルだもんよ

:国宝イケメンの

:しっ!それを言うと世界のミノルファンから総攻撃食らうぞ!

:ミノルは世界の宝だってやつな

:人類の至宝

:日本国民だけのものにすると戦争が起こるという

:うわ…こわ…

:でもそうなってもおかしくない美貌だもんなー

:老若男女関係なしの暴力的な美貌とか言われてたっけ

:納得しかない。アレは男でも見惚れる

:そのミノルがお兄様と妹様と歓談しているとか

:一体どんな関係なんだよ!!もう妹様の彼氏云々どうでもよくなってるよ!!!

:妹様の料理おいしそうとか言って見ていた初めが懐かしい…

:そこは無関係なのか!?本当に妹様の彼氏じゃなくて⁇

:そんなだったらお兄様があんな和やかなわけないだろう!

:そうだった!

:ん?マサキの声が消えたな。お兄様に〇られたか?

:物騒www

:なあ!ミノルの方手が途中見えないんだがこれ手が繋がってないか?

:妹様とおてて繋いでいるだと!?

:ミノル、一体お前は何者なんだ?!

:スーパーモデルとか、そんな答えは求めてない!君は一体彼らの何なんだ!

:天下のスーパーモデルをどうでもいいとか言いきれちゃう辺りすげーな。気持ちわかるけど。

:さあ!早く俺たちに回答をくれ!!

:マサキが発狂する前にwww

お兄様に連れられてきた将輝君はすでに瀕死の状態に見えた。それでも私を見ると手を上げて爽やかに口角を上げてくれる。うーん、アイドル様ってすごいね。ファンがいると体調が悪くても煌めけるってやつだね。

端末を操作していらっしゃいと返すとお邪魔してます、と律義に。声に覇気がないけれど、さっき大声を出して疲れちゃってるもんね。しょうがない。

「光宣、これはマサキだ」

…お兄様…流石にちょっとかわいそうな自己紹介だと思いますよ。

扱いが雑。

でもそれを受けた光宣君はとても嬉しそうに前に歩み出て。

「マサキさんですね。あの、特撮ヒーロー毎週楽しみに見てます!僕はミノルって言います。駆け出し一年目のモデルをしています。よろしくお願いします」

「…マサキです。君のことはニュースでよく活躍を見ています」

「僕の方がずっと後輩なんです。どうか敬語は使わないでお願いします」

「わかった。その、ミノルは…彼らとはどういう関係なんだ?」

おお。ズバッと切り込みましたね。

それを受けて、光宣君はきょとんとした後、満面の笑みを浮かべて――

「僕は、二人の息子です」

嬉しそうに答えた。

「………むす、こ…?…むすこ……息子!?」

「はい。僕は達也お父さんとお母さんの息子です」

はあああああ?!という絶叫が家に響いた。

私はこっそりお兄様と光宜君と自分の耳に保護するために魔法をかけたのでつんざくような絶叫を直撃することは避けられた。それにお兄様と光宣君が感謝の視線を向けてくれるのを微笑んで受け取りつつ、将輝君には苦笑を浮かべる。

うん。そうなるよねぇ。

でも、私たちにとっては事実なので。

「マサキ、いくら防音がしっかりしているとはいえ声はもう少し押さえろ。妹の耳に支障をきたしたらどうしてくれる?」

「す、すまん!…ってそうじゃない!ど、どどどういうことだ!?」

「どうもこうも、光宣は俺たちの可愛い息子だ。出会った頃からずっと」

「説明をしろ!」

「説明、と言われてもな」

「第一年齢もおかしいし、そもそもお前たちは兄妹だろう!!」

「仕方ない。光宣にとってこの子が母親で俺が父親なんだから」

「それが!わからないと!言っているだろうが!!」

将輝君がお兄様の胸ぐらを掴んでがくがく揺するが、お兄様は迷惑そうな顔をするだけで止めようとはしなかった。…普段だったら付き合わないけど、この方がテレビ向きだって計算されているのかな。

「お父さんは悪くないんです。僕が、彼らにお願いして家族になってもらったんです。幼少期のままごとをそのまま今も続けてもらっている、というところでしょうか」

助け舟を出す様に光宣君が言うとぴたりと将輝君が動きを止めた。

「ままごと…?」

「ええ。僕は昔から体が弱くて、外にも出られず、限られた人たちとしか交流できませんでした。そんな中お爺様が二人を紹介してくれて。…初めてだったんです。僕を可哀想と見ないで付き合ってくれた人は。僕を僕として友達になってくれた人は。もちろん体を心配はしてくれます。でも、叱ってくれたり、やってくれるのではなく手を貸しながらさせてくれたのは、彼らだけでした。僕はそれが嬉しくてたまらなくてすぐに二人に懐きました。それから付き合っていくうちに、二人がだんだんドラマで見る理想の両親のように見えてきて、お願いしたんです。僕の両親になってほしいって。幼い僕の戯言を、二人は叶えてくれました。それからずっと彼らは僕の両親になんです」

「そう、だったのか…」

将輝君の手がお兄様から離れる。

ホッとしたような、表情でしゃがみこんだところで、お兄様が端末を操作。そしてしばらくして、扉が開いた。

同時に部屋の四方からクラッカー音が鳴り響く。

「へ?!え?なんだ!?」

突然の破裂音に驚いて立ち上がった将輝君が周囲を見回して、真後ろに気付いた。

「はあ!?!?」

そこには、検証大成功!の文字の書かれたプラカードを持つ吉祥寺君の姿。…それ、検証じゃなくてドッキリだと思うなぁ。

「実はな、マサキ。これは俺の観察実験ではなかったんだ」

「な、なんだと!?」

「気になっている人に見知らぬ誰かが楽しそうに話していたら乗り込む?乗り込まない?という実験だそうだ」

「んな!?」

うーん、将輝君、驚きの表情のバリエーションがすごい。一つ一つリアクションが違って見える。これはお兄様にはできない芸当だ。

「お、お前の、彼女に彼氏ができたらどうなるか、じゃなかったのか?!」

「もし本当にそんなことになっていたら、お前は放映できると思うか?」

「思わなかったさ!」

即答でした。うん。まあ。お兄様だものね。流石幼馴染です。よくお兄様もことを理解されてます。

「僕が彼氏役に選ばれたのは光栄ですけど、お母さんにはお父さんがいますから」

「光宣だったら妹の彼氏にはなりえないことがわかっていたからな。何かする必要性が無かった」

「…何でそんなに信頼できるんだ。彼だって、その、彼女の魅力に惹かれないはずないだろう」

「お前、母親がいくら魅力的でも恋愛できるか?」

「彼らの間に血の繋がりはないだろう?!というかお前がそれを言うのか!!」

実の兄が妹を盲愛しているのを棚に上げて!と怒鳴るが、お兄様はどこ吹く風。

「兄が妹を愛して何が悪い?」

それからお決まりの言い合いが始まり、これはしばらく続くだろうと私は光宣君と、プラカードを疲れた顔で持ったままの吉祥寺君に手招きをして、カメラの無いところでお茶とお菓子を振舞った。

 

 

その後、この番組が放映されると、芸能界のみならず世間全体を騒がせたが、光宣君の、僕の大切な家族なんです、の幸せそうにはにかむ笑顔に騒ぎは収束。温かく見守ることとなった。

ちなみに、将輝君にはしばらく片思いに焦れる主役ばかりが回ってきたり、バラエティ番組でちょくちょくしかけられたりしてテレビで見ない日が無いほどの忙しさになっていた。

マネージャー曰く、「しばらく何も考えたくないだろうから落ち着くまで仕事があった方が良いんだよ」とのこと。

完璧なマネージングに拍手を送った。

 





ミステリアスアジアンビューティーモデルのミノル君爆誕(笑)。彼の美貌は世界をも魅了し、各国が彼を招待するためにありとあらゆることをして、後のファッション界に革命が起きることになる。ある意味代理戦争。
彼らの美貌は争いも生むが文明も生む。

アイドルパロに光宣君を出すことになるとは思いませんでした!
ひねり出したら世界を股に掛けるスーパーモデルになってた(笑)
妹をテレビ出演させるわけにもいかないし(お兄様がさせない)、どうやって家に招いて家族をさせようかと思いましたが、何とかなりましたでしょうか?
モニタリングの対象はマサキになりました。
お兄様ほど観察に向かない人間はいないので(笑)周囲の視線ある程度把握できてしまいますしね。かといって求められることができるかと言えば、そこはそれ。お兄様ですから。
ネットは大荒れ。お祭り騒ぎはしばらく続きました。
この後マサキと和解?し、五人でお茶をするんだけど、

「光宣、紅茶は砂糖二つでよかったか?」
「最近一つで飲めるようになりました!」
「そうか」
「コーヒーのブラックはまだ苦手ですが、お母さんの淹れてくれたコーヒーなら少しは飲めるようにもなったんですよ」
「子供の成長は早いものだな」
「……お前ら一つしか年齢変わらないんだよな?」
『マサキ君も、焼き菓子いかがです?こちらはバターたっぷりで好みに合うと良いのだけど』
「!い、いただきます」
「マサキさん、お母さんに横恋慕するのは構いませんが、本気で交際を申し込むなら僕も立ちはだかりますのでよろしくお願いします」
「なんでだ?!というか横恋慕って…」
「だって、お母さんにはお父さんがいますから。それに、息子にも権利があるでしょう?」
「当然だな」
「何!が!!当然なんだ!?」
「マサキ、声を落して。喉を傷めて今度のレコーディングで出ないことになったら困る」
「う、す、すまん」
『紅茶にはちみつでも入れましょうか』
「は、はい!お願いします!!」


とかそんな一幕があったとか。
それで、泊りの話で三人川の字になって寝ることを知ってまた騒ぐ将輝に今度はお兄様が実力行使で黙らせたりとか。
ほのぼの家族なんだけど、本人たちしかそれは理解できない。

この世界では一応魔法は存在するのだけれど、知っている人間はごくわずか。使うにしてもこっそりひっそり。
妹は前世の記憶を持っている。お兄様はまったくもっていない。
光宣君は初顔合わせの時に思い出した。お母さんとお父さん大好き。水波ちゃんは元は妹のメイドになる予定だったけど互いに一目惚れしたのに妹が気付き、叔母様を説得。水波ちゃんを九島家に送り出した(貸出)。現在はマネージャーも兼任しているメイドさんとなった。

ちなみに一式入れ替えた家具は、お兄様が分解して処分した。二酸化炭素を排出しないとってもエコな方法ですね(←
これが一番バレない方法。

説明が多すぎて長くなってしまいました…。

お粗末様でした。
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