妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編   作:tom200

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未来の家族のお話です。
妊娠中に光宣君たちとの会話。
一応設定としては大学を卒業した後かな?光宣君と水波ちゃんは原作通りパラサイト化しています。ガーディアンにはリーナちゃんが。
ほのぼの家族と友人たちのお話です。

頂いたお題
『婚約者もしくは結婚後の設定で子供はありなしどちらでも構わないので、光宣君との親子関係や水波やリーナといったメンバーのお話を読んでみたいです』
でした。


親子

 

妊娠した女性は美しく輝いて見えるというが、その通り、深雪は光り輝いて見えた。

これが生命力二人分の輝きなのか。

達也はソファに腰かけ大きくなったお腹を撫でる深雪をじっくりと眺めてから近づく。

 

「達也様」

「動かなくていい。隣に座っても?」

「どうぞ」

 

深雪の横に振動をなるべく起こさないよう慎重に腰かけると、くすりと笑い声が。

 

「そこまで慎重になられなくても」

「…慎重にもなるさ。初めてのことだ」

「達也様でもそうなるのですね」

 

なんだか新鮮です。とくすくすと笑う深雪からは、色気よりも慈愛が満ちていた。これが母親というものなのか。

まだ子供が生まれていないのに深雪からは母を思わせる雰囲気に包まれていた。

見つめるだけで涙が出そうになる。そんな不思議な感覚に達也は戸惑いつつも、手を伸ばす。

肩を抱き寄せ、熱を分けるように。

 

「明日、光宣と水波が顔を見せに来るそうだ」

「まあ。でしたら美味しいお茶菓子を用意しませんと」

「あまり張り切りすぎないように」

「はい」

 

頬をうっすらと染めて微笑む深雪はとても愛らしく、吸い寄せられるように唇を重ねる。

とても幸福な時間に、このまま時が止まればいい、と思うのはこの後まだ仕事が残っていることへの甘えか。

 

「達也様もあまり無理をされてはだめですよ」

 

甘えるように胸にしなだれかかる深雪は、自身が甘えて見せることで達也を許しているのだと思うと、更に愛しさが募り別れが惜しくなる。

 

「タツヤ、迎えが来たわよ」

 

いつもならリーナの気配に離れるのだが、あまりに離れがたくて手を離せなかった。

リーナもそのことに気付いたのだろう。呆れを飲み込んで親友に声を掛ける。

 

「悪いわね。せっかくの二人の邪魔をして」

「仕方ないわ。リーナは職務を全うしただけだもの。――達也様」

「…行ってくる」

 

最後に頬にキスを落して達也は座った時と同様に振動を極力控えて立ち上がり、部屋を出て行った。

それにリーナはいってらっしゃいと声を掛けるだけでついては行かない。

そのままくるりと反転して深雪の下へ近づいた。

 

「何か飲む?」

「ありがとう。ならホットミルクをもらおうかしら。砂糖は無くていいわ」

「ん、了解」

 

そう言ってキッチンへと向かい、しばらくするとカップを二つ持ってきたリーナが戻ってきた。

深雪に付き合って彼女もホットミルクを入れてきていた。

深雪がコーヒーを飲まないでいることを配慮しているのだ。

その心遣いが嬉しくて感謝を述べる代わりに微笑むと、リーナはウィンクして返す。

彼女たちはけして長い期間とは呼べないが四六時中共に過ごしてきた濃厚な生活を送ってきたことで言葉が無くても通じ合う関係になっていた。

 

「明日ミナミたちが帰ってくるそうね。私もここに残ろうかしら」

「あら、駄目よ。明日は皆とランチに行く約束でしょう?」

 

リーナは深雪の護衛だ。いくら水波が彼女の前任者のガーディアンであったとしても、現在はパラサイトである。自我が昔と変わらなくとも、何時豹変するかわからない未知の生命体。

特にリーナはパラサイトとの因縁が深く、信用ならないと思っている。

だからこそ予定を変更して傍に居ようと提案したのだけれど。

 

「大丈夫よ。達也様がいるもの」

 

パラサイトを軽く見るでも信用していると口にするでもなく、深雪は達也がいることを強調した。

彼が傍にいれば絶対に大丈夫。その安心感と実績を彼女は一番よく知っているから。

 

「…そーね。タツヤがいればワタシなんて」

「もう、リーナったら。拗ねないで。甘やかしたくなるじゃない」

「タツヤがいないうちじゃないと甘やかしてもらえないんだからいいデショ」

「あらあら。そんな可愛いことを言われたら、甘やかさないわけにはいかないわね」

 

あのつんつんとしていたリーナも、深雪に絆され、今では彼女の前だけではこうして甘えた姿を見せるようになった。

 

「大きくなったわね」

「幸せの重みを日々実感しているわ」

「…いいわね、ソレ」

 

深雪の表現にリーナは感心の声を上げる。

リーナは妊娠中、深雪が文句を言うところを見たことが無かった。痛い、とか苦しいとかはあったけれど、嫌だ、とか無理、とかネガティブなことを聞かなかった。

無理をしているのかと思ったが、彼女はそれさえも楽しんでいるように見えた。

それを凄いと褒めたら、彼女はふふ、と笑って。

 

「そんなわけないじゃない。痛くて辛くて大変よ。でも言葉だけでも明るくいたいじゃない。達也様の妻なんだもの。弱音なんて聞かせられないわ」

 

弱音くらい言ってもいいはずなのに、我慢をしているのか、と心配になったら闘っているのよ、と返ってきた。

深雪にとってその痛みは対戦相手のようなもので、負けてたまるかと奮い立っているらしかった。

相変わらず変わった思考を持っている親友に、リーナは呆れつつも面白いと思った。

実際深雪にとってこの痛みくらい笑顔で乗り越えてみせると妙な気合が入っていた。それは、これとは比にもならない壮絶な痛みをかみ殺してきた兄の姿を知っているから、この程度で負けられない、と意地を張っているだけなのだが物は言い様。淑女として当然、とばかりに隠し通していた。

だが、すべてが誤魔化しというわけではない。

お腹は日に日に重くて腰が痛い。けれど、この重みが生命の重み。お兄様と自分の子供の重みなのだと思うと、身体とは反対に心が軽くなった。

 

「明日は手土産を持って行ってくれるかしら」

「手土産って…もしかして作るの?これから⁇」

「冷凍庫に種はもうあるから後は焼くだけでいいの。包むのを手伝ってくれると助かるわ」

「ソレくらいなら手伝うケド…そうね。皆喜ぶと思うワ」

 

本当はこの家に彼らを招いて皆でおしゃべりをしたいけれど、セキュリティ上いくら信頼ができるメンバーでも許可はできなかった。

四葉家次期当主であり、現在妊娠中という彼女は今一番狙われたら危険な時。慎重に慎重を重ねるくらいでちょうどいい。

そうでなければ世界が滅びる。――達也が、滅ぼすのだ。

リーナはしっかりそのことを理解していた。

 

「エリカたちの近況をしっかり聞いてきてあげるワ!アソコも早くくっつけばいいのに!」

「楽しみにしてるわ」

 

それからしばらく二人で他愛ない話をして、深雪を寝室に連れて行き、リーナは本日の職務を終えた。

 

 

――

 

 

やっほー。スローライフを送っている深雪ちゃんでっすオッスオッス。ちょっとテンションがおかしいのはまあアレです。暇すぎてってやつです。

いえね、家を出なくてもすることはたくさんあって、決済だのなんだのデータは回ってきたりもするんだけどね。流石に最重要データなんかは送られてこないけれど、ある程度のモノならここのセキュリティ上問題ないから在宅ワークはさせてもらっている。

お兄様や部下たちの負担は少しでも減らさないとね。

あと多少運動はした方が良いと、マンション内のトレーニング施設に行ってはランニングマシンでウォーキングをしたりとか。このくらいの運動は必要だからね。

お日様にも当たってはいるけれど、周囲から狙われることのない秘密の場所でわずかの時間しか当たれないのでそれがちょっと大変かな。

引きこもりの暮らしに不満はない。インドアな人間にとってこれほど快適な生活はない。むしろ最高であるのだけれど、時折人と無性にコミュニケーションをとりたくなる。

お兄様とリーナが毎日構ってくれるけれど、二人にもお仕事があるから。

そしてそのタイミングで水波ちゃんたちがやってくる。…きっとお兄様によるお気遣いだ。

本当にお兄様にはすべて把握されているなぁ、と両頬を押さえて頬を隠す。誰に見られているわけでもないけれどそれだけ想われていると思うと照れてしまう。

クッキーやブラウニーを焼いて皆に持って行ってもらう分はリーナに手伝ってもらって包んで持って行ってもらった。メッセージカードも付けているのでどれが誰か間違えるようなことはないだろう。

一人一人元気?とか仕事は順調?とか無難なことしか書いてないけどね。皆の活躍はそれぞれ耳に入っている。

今日はもっと身近な話が聞けるだろうから楽しみだ。

 

「甘い香りだ」

「ふふ、朝からたくさん焼きましたから」

「一口」

「…一口だけですよ」

 

朝のトレーニングを終えたお兄様はさっぱり汗も流してきたらしい。気を遣って無香料のモノを使われているので微かにしか香らないが、洗い立ての匂いがした。

ちゅ、と音を立ててキスをして、すぐに朝食を並べるのを手伝ってくれた。

一口はお菓子じゃないのかって?…まあ、お兄様ですから。

本当はリーナもいつも一緒に食卓を囲むのだけど、今日は遠慮する、と朝食を持って自分の家に帰ってしまった。

確かに正解かもしれない。お兄様が朝から甘々です。

…ストレスあったかな。昨日も遅くまでお仕事をされていたようだった。

朝食を食べて、お兄様のコーヒーを淹れさせてもらい(お兄様は遠慮しようとしたけれど私が淹れたいのだと押し切った!)二人でソファでまったりしているとチャイムが鳴った。

お兄様が出迎えると、入ってきたのは光宣君と水波ちゃん。

二人とも変わりないようだ。

 

「おはようございます。達也さん、深雪さん」

「おはようございます達也様、深雪様」

 

だけど何も変化が無いわけじゃなかったみたい。

お兄様も気になったようで、小首を傾げて訊ねた。

 

「なんだ、光宣。改まった言い方だな。何かあったか?」

「いえ、何かあったというか…」

「よろしければ座ってお話されたらいかがでしょう。お茶を用意させていただきます」

「水波ちゃんのお茶も久しぶりね、楽しみだわ。お願いしてもいい?」

「もちろんです」

「そこに用意したお茶菓子も一緒にお願いね」

「こんなにたくさん…わかりました」

 

ああ、量はそこそこだけど種類が多かったものね。これは二人の為だけでなく皆に作ったからで、なんだけど。後で説明しよう。

光宣君はお兄様に案内されて私の隣に――座るのを躊躇った。

んん?これは、ちょっと…気になる反応。やっぱり何か…?

 

「光宣君?どうしたの?」

「えっと…その、僕は隣に座らない方が良いんじゃないかって」

「どうして?」

「それは…」

 

言い淀む光宣君はどことなく苦しそうで、尋常ではない様子だ。

お兄様と目を合わせてからもう一度彼に向き合うと、キッチンの方から水波ちゃんの声が飛んできた。

 

「私は気にしすぎだと言ったのですが、どうにも聞き入れられないようで」

「そうじゃない!水波さんを信じられないわけじゃない、んだけど…」

 

あらぁ。何かお悩みがあるのか。とりあえずお兄様が私の隣に、光宣君が隣に腰を下ろして、私の空いている隣に淹れたてのお茶を運んできた水波ちゃんが腰を下ろした。

そのことに光宣君が肩を揺らしたのを気付かないふりをして、お礼を言いながらお茶を受け取る。

 

「深雪様、お加減はいかがです?」

「心配してくれてありがとう。聞いていたほど大変でもないのよ。今はこの子も眠っているのか動きはないわ」

「触れても?」

「どうぞ」

 

水波ちゃんは恐る恐る触れて、それから撫でるように手を滑らせた。

 

「ここに、深雪様のお子様がっ…」

 

感無量!って感じで噛みしめられてる。

 

「私と達也様の子が、ここで眠っているの」

 

ニコニコと答えると、真っ赤になって手を引っ込めてしまった。

 

「と、とんだ御無礼を」

「無礼なんかじゃないわ。水波ちゃんだから嬉しいの。生まれることを喜んでくれる貴女だから」

「もちろんです!こんな喜ばしいこと、喜ばずにいられません」

「ありがとう」

 

うんうん。水波ちゃんはやっぱりこれくらい元気でいてくれないとね。調子が狂っちゃう。

そして、もう一人もね。

 

「光宣君。こっちへいらっしゃいな」

「!僕は、ここで」

「いらっしゃい」

「は、い…」

 

手招きをすれば、戸惑いながらもこちらに来てくれる。両サイドはお兄様と水波ちゃんで埋まっているから、彼は正面に立った。

 

「しゃがんでくれる?」

 

スッとしゃがむ彼は耳と尻尾が垂れ下がったワンコに見える。相変わらず、可愛い大型犬だ。

 

「ん、いい子」

 

頭を撫でる。

相変わらずふわふわでさらさらという不思議で最高の触り心地だ。トリミングに出したワンコのような手触り。

 

「そんなに青い顔をしなくて大丈夫よ。心配することなんて何もないんだから」

 

この言葉にばっと顔を上げると、そこには不安、悲しみ、そしてわずかな期待。複雑に感情が絡み合った表情を浮かべていた。

こんな彫刻があったなら、皆こぞって美術館に足しげく通うだろう。これはお金を払って並んででも見たいレベル。

私も払わせてほしい。

 

「ここにいるのはあなたの未来の弟よ」

「お、とうと…?」

「そう。男の子なの」

「あ、いえ…そうじゃなくて…弟って…」

「だって光宣君は私たちの子供でしょう?だから、貴方はお兄ちゃんになるの」

「…ぼ、くは、…だって」

「お父さん、私たちの子供が不安がっていますよ。慰めてあげてくださいな」

「困ったなお母さん。まさか光宣が俺たちの息子を卒業した気になっていたなんて」

 

お兄様が手を伸ばし、私が撫でた後をガシガシと力強く撫でまわす。

水波ちゃんは、ほら見たことか、と呆れた表情でほっと溜息をついていた。

正面の光宣君はと言えば、感情がぽろぽろと剥がれ落ちていき驚きの表情だけに変わっていく。

 

「何をそんなに驚くことがある?」

「…だって、お二人には正式なお子さんが生まれるから、僕はもう息子と呼んでもらえないんじゃないかって」

「「ありえないな」わ」

 

断言をするとぼろ、と大粒の涙が一つ零れ落ちた。

 

「急に改まったのは、息子じゃなくなると思ったからか?ばかだなぁ。そんなことあるわけないだろう」

「確かにこの子は四葉家の第一子として誕生するけれど、貴方は司波家の長男の光宣君でしょう?」

「……何時の間にそんなことになったんです?」

「だって、貴方は私たちが司波と名乗っていた時の唯一の子供だもの。外では別の名前を名乗るのは仕方がないけれど、貴方は九島の家を出てからはうちの子だったじゃない」

「まあ、正直設定なんてどうとでもなる。この子は確かにこれから俺たちの第一子として世間からは受け入れられ、書類上もそうなるだろうが、俺たちにとって光宣が可愛い息子であることに何ら変わりはないし、大事に育ててきたつもりだ。それはこれからも変わらない」

「僕は、お二人の子供のままでいてもよろしいのでしょうか」

「「もちろん」」

「この子は、僕の弟になるんですか?」

「ええ、そうよ」

「そしてお前はお兄ちゃんになるんだ」

「僕が、お兄ちゃん…」

 

もう片方の瞳からもボロリ、と涙が零れ落ちたのを皮切りに、たくさんの宝石のきらめきが流れ落ちていく。

 

「…不安だったんです。もう、お二人に子供として可愛がってもらえないと思ったら、僕は、もしかしたらその子に危害を及ぼすんじゃないかってっ…気が気じゃなかった!」

 

おおう…思っていたよりかなり思い悩んででいた模様。

パラサイト化したことで感情が表に出やすく、というか抑える必要が無く開放的になっていたことはわかっていた。

彼らは基本本能に忠実だ。人間でいた時の人格が主人格ではあるものの、パラサイトと同化するということはつまり生まれ変わるのと同義でもあり、いくら光宣君が魔法で縛りを結んで暴走しないようにしていても、強い願いに引っ張られやすいのは変わらない。人の禁忌なんてさっぱり消え失せてもいる。邪魔だなと思ったらナイナイしちゃえるレベル。

そんな彼は、光宣君は恐れた。

大切なものが奪われるんじゃないか、と。自分の居場所がなくなるのでは、と。

もしそんなことになったら、その原因を襲ってしまうのではないかと不安に駆られたのだ。

それが、私たちにとってとても大切なものだと知っているから。そんなことをしたら嫌われてしまうと思ったから。

 

「確かに血へのこだわりは魔法師にとって大事なことだ。俺たちも兄妹という血の繋がりを大事だと思っている。

だがな、家族は何も血の繋がりだけじゃないことも、俺たちは知っている。俺たちにとってお前も水波も大事な家族だ」

「わ、私もですか?!」

「もちろんよ。何をそんなに驚いているの?」

「わ、私は深雪様のガーディアンで、メイドで!」

「それでいて可愛い妹分で、心を許せる大事な家族よ」

「!!」

 

私の心からの言葉に、水波ちゃんは真っ赤になって俯いてしまった。俯く直前、彼女の目にも光るものが見えた。

 

「あなた達夫婦はそっくりね。涙もろい所も、優しい所も」

「……お二人もそっくりですとも」

「そうか?」

「追い打ちをかけてくるところなんてそっくりです」

 

うぅん、これは後で問いただし案件?慰めているつもりなのに追い打ちだなんて人聞きが悪い。

 

「ほら!お二人ともそっくりな意地悪顔です!」

 

指摘されてお兄様と顔を見合わせる。

二人して口角が上がっていた。これは確かに悪だくみをしている顔に取られてもおかしくないかな。

 

「だって、二人があんまりにも寂しいことを言うんだもの。家族じゃないとか息子じゃないとか」

「俺たちだって傷つくんだぞ?落とし前はちゃんとつけてもらわないと」

「さて、何が良いでしょうお父さん」

「そうだなぁ。しばらくうちで滞在して俺たちに愛でられてもらおうか。このところストレスが溜まっていてな」

「良いですね。可愛い子たちによるセラピーですか」

 

お兄様ナイスアイディア!かわいい子たちを愛でるのは活力になりますからね。

そして――ついでにお仕事を手伝ってもらうつもりですね?お兄様もようやく人を使うことを覚えられましたから。

信頼する彼らだったら安心して任せられるのかな。

パラサイトという不安要素ももちろんある。でも、お兄様には封印の術もあるし、いざとなれば私も――

 

「深雪は大人しくしていなさい。大事な体なんだから」

「何です?お母さん、また無茶をしようとしているんですか?」

「深雪様、今は大事なお体なのですから大人しくなさってください」

 

…お兄様、心を読まないでほしい。いざとなったら辛くとも私が止める、と覚悟を決めていることを先読みされてしまった。

水波ちゃんたちも、そんな心配しないで。というか警戒?私が何かすると思われてる⁇

 

「深雪様は昔から突拍子もないことをなさいますから」

「そうだった?」

「この自覚がないところが問題なのです!よろしいですか、深雪様は――」

 

わあ。水波ちゃんがお説教モードに。大変だ。

光宣君に助けを求めるも、彼は困った表情を浮かべるだけ。…止めようはないらしい。

でも久しぶりの水波ちゃんの説教だ。ぷりぷり怒る水波ちゃんの声をBGMに私はうとうととし、お兄様に肩を抱かれ、光宣君にぎこちない手でお腹を撫でられて夢の中へ。

 

(この優しい世界に早く生まれておいで。必ず幸せにしてあげるから――)

 

 

――

 

 

Sideリーナ

 

 

「こっちこっち!」

 

明るい声に振り向けばエリカが手を振っていた。

 

「お待たせ!」

「遅れちゃいないわよ。最後は――お、来た来た!おーい美月、ミキこっちよ!」

「エリカちゃん、久しぶり。リーナさんも!」

「久しぶりねミヅキ。ミキも」

「ああ、うん…」

 

ミキことミキヒコは複雑な顔をして応える。ミキって呼ばれるのが嫌ならそう言ってくれればいいのに、私に遠慮して言えないと知ったのは数年前。ワタシから言い出してもいいんだけど、なんとなく、エリカが楽しそうだからそのままにしている。

全員が席に着き、ドリンクを注文し、一息つく。

エリカ、レオ、ミヅキ、ミキ、ホノカ、シズク。ここに私の主であるミユキとタツヤがいれば高校時代のメンバーがそろうのだけど、仕方ないわよね。

ホノカは目に見えてがっかりするけど他のメンバーは仕方ないよね、と肩を竦める程度。

 

「で、深雪は元気?」

「ええ。安定期に入ってからは落ち着いたものヨ。昨日も惚気交じりの幸せな話を聞かされたワ」

 

わざとらしく片を上げ下げしてみせれば、想像がつく、と笑う友人たちは矢継ぎ早に質問を投げかける。

 

「ねえ、二人ってどんな風に過ごしてるの?」

「どんな話をされた?」

「リーナは中てられて大変なんじゃないの?」

 

まあ、二人の生活って気になるわよね。私もこんな立場でなかったら根掘り葉掘り聞いたかもしれない。

 

「ドウって…そうね。砂糖を煮詰めてその上にハチミツと練乳をたっぷりかけたような…歯が痛くなるような甘い感じ?」

「「「「「…ああ~」」」」」

「特にタツヤが甘すぎて、何度も立ち去りたくなる場面があるわね」

「それって高校時代の時よりヤバいの?」

「あんなの比じゃないわよ。私がいる前でべたべたすることは少ないけど、何より言葉と声と雰囲気が甘ったるくて。だから中てられて大変よ。こればっかりはどんな任務よりキツイわ…」

 

給料もよく、親友を守れるやりがいのある仕事ではあるけれど、唯一の欠点とも言えるのが、二人の甘々な空気だ。

ミユキは気を使ってくれて注意をしてくれるのだけど、タツヤは所かまわず、むしろ見せつけるようにしかけてくる。

ワタシがライバル宣言をしたのを未だに根に持っているのだ。

ミユキは今もワタシを親友として大事にしてくれるからそれも面白くないのかもしれない。

ミユキに関してはトッテモ狭量な男なのだ。

 

「独占欲が強すぎて、ミユキが憐れになるとこがあるけど、ミユキも甘やかすばかりで、ネ」

「うわぁ…目に浮かぶ」

「それをリーナが止めてるんだ」

 

シズクが労いの視線を向けてくれる。

学生時代、シズクも同じ立場だったことを思い出した。

彼女もよく深雪に注意をし、達也の手を叩き落とすのを幾度となく見てきた。

その立場になって知る苦労。だけどこの苦言をやめてしまえばワタシの親友が大変なことになってしまう。

 

「でないとあのままじゃミユキは何もさせてもらえなくなっちゃうわ。溺愛も過ぎれば狂気ヨ…」

「うわぁ…そのレベル?」

「深雪さん…」

「…昔はそれを羨ましいって思ってたけど、外から見るとその、危険な匂いが…」

「ほのか、アンタようやく目が覚めたのね!」

「うん、まあ…。目が覚めたっていうか、距離を開けて見られるようになったっていうか」

 

ホノカは盲目的にタツヤを慕っていた。だけど数年かけて想いを昇華させたらしい。それだけでなく、ようやく今になって現実が見えてきたようだ。

そうよね。タツヤの溺愛ぶりって一歩間違えたら大変なことになるって誰でもわかるわよね。

どうしてミユキは危機感が無いのかしら。

 

「まあ、なんだ。達也も今は忙しくておかしくなってんじゃねぇか?また大きなプロジェクト立ち上げたんだろ」

「達也のストレスの貯め込みは昔から危険だったからね。適度に発散させないと」

「…ミユキもそれで頭を悩ませてたけど、しばらくは落ち着くかも」

 

大っぴらには言えないので、仲間内にだけ通じる言葉で伝える。

 

「息子夫婦が今遊びに来てるのよ」

「「「「「!!」」」」」

 

今更だけど、息子夫婦で通じるってのも不思議な感じよね。彼らって一つしか違わないのに。ちょっと遠い目になってしまう。

でも、私が意識を飛ばしている間に、彼らも危機感を覚えたらしい。顔が強張っていた。

直接パラサイトとやり合ったことのある数少ない魔法師でもあるからね。ヤツらの危険度を知っている。

 

「それって、…大丈夫なのかよ?」

「二人は大丈夫って思ってるみたいだけどね」

「それで、落ち着くっていうのは?」

「深雪の話し相手、っていうのもあるだろうけど、たぶん仕事を任せるんじゃない?あれだけの魔法力がある二人だもの。…迷惑な頭の固い魔法師の秘密結社のお掃除とか依頼するんじゃないかしら?」

「…それってまさかだけど、海外が絡んでるっていう…?」

「最近不穏な動きがあるとは噂があったはず…」

「リーナ?」

「さあ?ワタシは詳しく知らないワ」

 

すまし顔で優雅にカップを傾ければ皆胡散臭そうに見つめつつ口を閉ざした。

 

(四葉って実質日本の防衛ラインよね。こんな恐ろしいものを相手にしていたなんて、当時のワタシに教えてあげたい。ま、シリウスの時代にそんなことを知ったところで上からの命令があればどのみち逆らうことなんてできなかったのだケド)

 

逆に知らなかったからこそ、ワタシは生き延びられたのかもしれない。

 

「リーナも染まったね」

「…そうね。そうかも」

 

でも、それも悪くないと思えるのは、その次期トップの座に親友がいるからか。

彼女がいて、彼が傍に居るならば、未来は暗くないと思える。

 

「あーあ。あんなに素直でわかりやすかったリーナが、ねぇ」

「悪かったわね!腹芸の一つもまともにできないで!」

「それが今じゃあ友人にそっくりに腹黒になって」

「チョット!私はまだあんな真っ黒じゃないわよ!!」

 

個室だっていうことを良いことに大声で楽しくおしゃべりをしたおかげでストレスも発散できてすっきりした。

偶にはこうして打ち明けられる友達とおしゃべりするっていうのもいいわね!とウキウキして帰ってきたのだけど――。

 

「あら、リーナ。おかえりなさい」

「…ミユキ?あー、その。ソレは何?」

「…うーん、そうねえ。お兄様レッスン?」

「ハイ?」

「兄の心得を教わってるんですって」

 

モニターを前に、講師役を務めているタツヤと、その前で端末に何かメモをしているミノルの姿が。

 

「…タツヤから何が教われるっていうのよ?」

 

タツヤから教われるとしたらそれは妹を恋人のように守る方法であって兄として、ではないでしょうが。

明らかに今度生まれてくるだろう弟の為にはならないと思うわよ。とジト目で見つめれば、ミユキはにっこりと微笑んで。

 

「大丈夫よ。うちの息子は賢いから」

 

つまりすべて鵜呑みにはしない、と。

 

「やっぱり、私はまだあなた達には遠く及ばないワ…」

 

 

 

 





光宣君、お兄様たちの間に子供が生まれることでちょっと不安定に。
息子が生まれたら僕はお払い箱?…そんなことはない。貴方は大事な息子よ!ってね。
なかなかラブラブな夫婦なお話になったと思うのですがどうでしょう?(当社比)
お兄様に優しくばかだなぁ、って言ってもらいたかった。こう、愛しさが溢れるように!

原作と違って色々と仲間に打ち明けてます。情勢がそこまでひどくならなかったことも影響しているのかな。
信頼できる仲間たちを遠ざけるのではなく、共に歩む感じ。

お粗末様でした。
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