妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編 作:tom200
頂いたお題は
『ファンタジー系異世界にお兄様と深雪ちゃんが転生する話(例えば深雪ちゃんが小さな妖精さんになってお兄様と一緒に旅をするとか、お兄様と深雪ちゃんが魔王と幹部として過ごす日々とか思いつきましたが違う設定でも大丈夫です。)』
でした。
魔王と幹部等は原作の短編のドリームゲームにありましたので、被らないようゲームのネタに走りました。
小さい妖精と聞いてすぐ浮かんだのがこのマイナーゲームでした。フェイバリット〇ィアっていうゲームなんですけどね。
皆さまが恐らく知らないだろうゲームネタなのでちょっと解説。
主人公は新米天使(男女選択可)。ファンタジーシミュレーションRPGで、勇者をスカウトして10年内に復活する魔王を倒して世界を救うストーリー。親密度が高いと勇者と恋に落ちて羽根を返上して地上で暮らすエンディングが見られる。
勇者はほとんど暗い過去持ち。それを癒し、支え、導いていくのが天使のお仕事。…結構やることが多い。バッティングとか多すぎて任務達成できないでいると平和度が下がる。うじゃうじゃ湧く敵の探索に部下の妖精二人じゃ足りない。
声優が悪役めっちゃ豪華。勇者も今や何人か有名だけどね。時代だよね…。義賊の頭領と、竜に育てられた出自王子が好きでした。ショタ枠は12歳だったかな。今じゃ許されない。チャラナンパ騎士とか真逆の堅物騎士とか結構やりこんだ思い出。女の子キャラもみんな個性的だったなぁ。…これ説明じゃなくて思い出話だ。
続編は闇の皇子一択。黒髪無表情に弱いのはこの頃もか…。
転生先の配役は、
天使 マユミ
妖精 ミユキ
勇者 タツヤ
このゲームならお兄様も勇者できるんじゃないかと思いました。皆本業の片手間に勇者してたから。どれだけ依頼を断られたことか!とりあえず本(プレゼント)を読んで正義感上げて歩くスピード上げてくれ!そして依頼到着直前に式典の為に勝手に帰るな!依頼目の前なんだから依頼解決してから帰ってくれ!!…失礼しました。
マイナーゲームなので新鮮に読んでいただけるかなと思います。
首席で卒業をしたマユミは天使長ガブリエル様に呼ばれて、限られた者にしか入れない宮へと招かれた。
「まずは卒業おめでとうございます、天使マユミ」
「ありがとうございます、ガブリエル様」
マユミは緊張を表に出さないよう優雅な笑みを浮かべて首を垂れた。
そこには天使長ガブリエルのみならず、上級天使の方々まで揃っていた。それに、妖精女王のティタニア様までいらっしゃるではないか。
ただ事ではない。それは彼女たちの様子からも窺えた。
「あなたは極めて優秀な成績を修められました。だからこそ、この任務を与えられます」
錫杖を掲げたガブリエル様によってとある世界の映像が流れた。
緑豊かな…と言うにはところどころ地表が多く見えるような気がする。
「ここはインフォス。現在魔王が復活するかもしれない世界です。すでに侵攻が進んでいるようで、もって10年と言ったところでしょう。貴女にこの世界を守っていただきたいのです」
「わ、私がでしょうか?!ですが、私は卒業したばかりの新米です!そのような大役が務まるのかどうか…」
「あなたには資質があるのです。最後の試験で、それが証明されました」
(最後のって、あの『人が過ちを犯したら貴女はどう手を差し伸べるか』、とかの質問だったと思うけど…)
「それにね、むしろ新米でないといけない理由があるんだ」
そう口を挟んできたのは上級天使のラツィエル様だ。
「アタシら天使が直接人間界に介入できないのは知ってるね?人間界は人間に守ってもらわにゃならない。たとえ魔王が攻め入ろうと、世界を破滅に追いやられようと、アタシらにできるのは手助けだけだ。
だけど、そこにほんの僅か抜け道がある。それが新米天使さ。まだ力の少ないお前なら少しの間人間界に下りても問題にならない。徐々にその世界になじむように成長していけたなら、直接は無理でも、人間に魔法を付与して間接的に力を貸してやることができるようになる。だから、新米の中で極めて優秀で、資質のある者としてお前が選ばれたんだ」
続いて、レミエル様も前に出る。
「人間、それも勇者の資質を持つ者は、間に合えば死んでも生き返らせてあげられる。私なら、その命を呼び戻せる」
「アタシは武器や防具だね。それくらいのサポートならしてやれる」
どうやら人間の勇者をサポートし、世界を救う。それがアカデミアを首席で卒業した新米天使マユミに課せられた任務のようだった。
静かに見守っていたティタニア様が指を振る。それだけでキラキラとした光が宙に軌跡を描いた。
「もちろん、貴女一人にすべてを任せるのは荷が重すぎるでしょう。私もサポートに妖精を貸し出すわ。本来だったら二人のところ、今回は特別にもう一人つけてあげる」
「あ、ありがとうございます」
「でも、いくら優秀でも無理をさせちゃだめよ。後で紹介するからよろしくね」
「わかりました」
マユミに拒否権は全くないようだ。
とはいえ、世界滅亡の危機を知り何もしないでいるつもりもマユミには無い。
自分にできることがあるのなら、それをするまで。
マユミは確かに守護天使としての資質があった。
「では、天使マユミ。詳しいことは妖精たちに聞いてください。彼女たちにはすでにあなたが取るべき行動のすべてを伝えてあります。
天界と地上、人間界では行き来に時間を要します。こちらに来るときには注意するように。できるだけ地上付近にある宮で彼らのサポートをしてあげてください」
「はい。一生懸命努めさせていただきます」
サポート妖精が三人付くことは珍しいのだという。
己の顔ほどの大きさの妖精三人が顔のあたりまで浮かび上がり、自己紹介をする。
「私はリリィと申します。よろしくお願いいたします」
「フロリンはぁ、フロリンダって言いますぅ。頑張りますぅ!」
ヒョウ柄の衣装の、仕事のできそうな妖精はリリィと言い、索敵も勇者発見も得意のようだ。
ペンギンの、衣装というより着ぐるみを着ている妖精フロリンダは索敵は苦手のようだが特記事項として稀に高い攻撃力のパンチを繰り出す、とある。特化型のようだ。使いどころには悩みそうだが、切り札になるかもしれない。
そして最後は――
「お初にお目にかかります、天使様。ミユキと申します。精いっぱい努めさせていただきます」
鈴を転がしたような声に、透き通るような白い肌。キラキラと輝く黒曜石の瞳は見る者を魅了する――息をのむほどに美しい妖精、ミユキ。彼女の能力は――え?
「すべて最高値…それにサポートだけでなく、直接の攻撃力もすごい数値…」
「お褒めに預かり光栄です。ですが、申し訳ございません。私がここで直接敵を屠ることは出来かねます」
「!それは、どうして?」
彼女は申し訳なさそうに頭を下げることで彼女のつややかな黒髪がさらりと流れるように落ちる。所作だけでも美しいと思った。
「人間界に直接干渉してはいけないのは何も天使様だけではありません。上位の妖精も同じなのです。ですから我らが女王ティタニア様も妖精を送り込むことはできても直接関与はできません。私はまだ妖精として若輩者ですが、能力の高さから恐れ多くも次期女王候補の末席に加えさせていただいてます。直接的に魔のモノと対峙する場合、誓約に抵触してしまう恐れがあるのです。せめて、少しずつこの世界になじんでからでないと力を発揮するのは禁を犯すことになるやもしれないとご承知おき頂ければと思います。
今回同行させていただきましたのは、ある種の社会勉強の一環として、の意味合いが強く、天使様のサポートはもちろんさせていただくのですが、人間を知るためにサポートに付くことが私に課せられた任務になります」
「そう。でも有難いわ。サポートはしてもらえるんだもの。数は多い方が良いでしょうから」
「天使様…ありがとうございます」
「堅苦しいのはよして。あなた達は確かに私の部下になるけれど、仲良くしましょう。私のことは名前で呼んで頂戴」
「「「はい、マユミ様」」」
それから妖精たちにこれからすべきことを教わった。
まずは勇者の資質を持った人間に勇者になってもらうべくスカウトするところから始まる。
そもそも勇者とは何か。
それは魔王と戦う宿命を持つ者である。直接ではないにしろ配下の者たちによって身内を殺されたり、不幸にさせられた者たちが選ばれる。
この先十年も戦う可能性があるのだ。目的がある者でない限りモチベーションを保つことは難しいということもあるのだろう。
勇者となったものは一時的に年齢が止まる。強さは成長するが、歳を重ねることはない。肉体的に衰えないということだ。
これは天使の加護によるものである。
共に戦ってくれるのだから、そのくらいの特別措置は必要だろうとのこと。
「じゃあまず、勇者候補を探してきてくれるかしら。敵の探索は勇者をスカウトしてからじゃないと討伐依頼もできないものね」
「「かしこまりました」」
「かしこまりましたぁ」
こうして、地上と天界の狭間にある宮で、彼女らの報告を待ちながらこの世界のことを勉強し始めるのだった。
ここインフォスはたびたび魔王が復活するらしい。
数百年に一度、定期的、とは言わないまでも地上に悪意が増えるとそこに魔が付け込み自然と配下の四天王が復活。全員が全員同じ面子ではないようだが、必ず四人現れるのだそう。そして魔王ガープの復活の為暗躍、人々を不幸にし、それによって溜まった負のエネルギーが彼らの力となる。
ついでにその際勇者候補の芽をつぶすことも目的にしているようだが、大抵そこで生き延びた者が勇者となっているので彼らの策は失敗に終わっているのか、逆に芽吹かせているのか微妙なところだ。
前回が200年前。前任者の天使ラスエルの記録が最後だ。
良ければ詳しく話を伺いたいところだけれど、残念ながら彼は任務を終えた直後から天界に戻っていないそうだ。
アドバイスをもらえればと思ったのだが残念だ。
「明らかに新米天使にさせる仕事じゃないわよね…」
しかも前任者は任務を終わらせたと言っても行方不明。不安に思うのも仕方ないと思う。
「私に務まるかしら?」
不安を口にするのは、まだ勇者というものと出会っていないからか。
果たして自分が彼らを導けるか――。
「天使様、勇者候補を発見いたしました」
「!早速スカウトに向かいます!」
テラスから飛び込むようにやってきたリリィに、若干慌てつつ羽根を広げた。
私の初仕事だ。必ず成功させて見せる!
「……まさか、無視されるなんて…」
「て、天使様!それだけ彼が警戒心が強いという証拠です!なんでも鵜呑みにするのは危険なご時世ですから」
リリィの案内で勇者候補の下へ舞い降り、彼にしか見えないように顕現して声を掛けたのだけど、まるで聞こえていないように無視されたのだ。
ちらりとこちらを見たのだから、こちらの存在に気付いていないわけでもないというのに。
「あそこまで無視しますか!?本当に彼には勇者として世界を救う資質があるのですか?」
あまりに素気無くされたことでマユミも愚痴をこぼしたくなるというもの。
気持ちはわかる、と傍で姿を消して控えていたリリィも同情した。
「ですが、彼の能力はとんでもなく高いと見えます。観察している時、魔物を一撃で仕留めるのを見ました。この世界では珍しい、彼は魔法使いです」
「魔法、使い?人間が魔法を使うのですか?」
「人前では隠しているようですので、何か事情はあるのかと思いますが。複数の魔物相手に瞬殺する能力は、かなりの戦力になるかと」
「まだ天使の加護も与えてないのに魔物を瞬殺…とんでもないわね。わかったわ。彼のスカウトは諦めない。それと並行で他の勇者候補を探してきてもらえる?私は一度天界に行って武器やアイテムを調達してくるわ」
「はい。いってらっしゃいま――」
「天使様ぁ!勇者候補様を見つけましたぁ!」
勢いよく飛び込んできたのは――ウサギの着ぐるみに変わっていたフロリンダだった。
「…先にスカウトに行ってくるわ」
「お気をつけて」
彼女、用途によって着ぐるみを使い分けているのかしら。だとしたらあと何着あるのか、どうでもいいことを考えながらもう一度羽根を開いた。
初めてのスカウトこそ失敗したものの、その後の勇者の勧誘はうまくいった。
皆一度は天使という存在を疑うのだけど、羽根を見せて宙に浮けば納得してくれた。そして、ある者は熱心に、ある者は適当に、ある者は金次第だね!といった感じでそれぞれの思い(思惑?)を胸に勇者を引き受けてくれた。
そして、3か月も過ぎると5人の勇者を仲間にし、敵の討伐も依頼して上手く運営できるようになってきた。
残すは、あと一人――
「お疲れ様ですマユミ様」
「ミユキさんも、悪いわね。書類を手伝ってもらって」
「いえ、これくらいお安い御用です」
彼女の微笑みに癒されつつ、軽く肩を叩くパフォーマンスをすると彼女が肩に載って癒しの魔法をかけてくれた。温かくて、気持ちのいい優しい回復魔法だ。
彼女、ミユキさんは妖精界では名の通った妖精らしく、次期候補の末席などではなく最有力候補だったと後でフロリンダたちに教えてもらった。気品ある佇まいは確かに只者ではないと思わせる雰囲気ではあったが、それほどの実力者だとは。
恐らく私よりも階級は上なのでは?と思わなくもないけれど、彼女はマユミ様の部下ですので、と姿勢を崩さないのでせめて、とさん付けで妥協してもらった。
その対応にフロリンダたちが大きく頷いて賛成してくれていたので間違った対応ではなかったと思う。
彼女は事前情報の通りとても有能だった。
おかげで報告書も次の日に持ち越すことなく終わっている。これは他の二人にはできないので、彼女にはほぼ内勤という形で手伝ってもらっている。
「それにしても、どうして彼は頑なにスカウトを受けてくれないのかしら?」
「どのような方なのです?そのタツヤ様という勇者候補の方は」
「んーそうね?見た目は普通、と言うよりちょっと陰気な…じゃなかった。影のある雰囲気の青年よ。あ、でも年齢的には少年なのかしら。16歳だから。ということは相当苦労しているのね。あれなら20半ばと言われても信じるくらい貫禄があるわ」
「ふふ、マユミ様ったら。言葉の端々に棘が見えますね」
「だって!ミユキさんも見てみればいいんだわ!とってもふてぶてしいんだから」
「もう彼の勧誘が日課になっていますものね。大分親しくなられたご様子。そろそろ勇者様になっていただけるのではないですか?」
「もー。ミユキさんまで面白がって。確かに最近はちょっと会話をしてくれるようになったけど。最近になってようやく勇者とは何かと聞いてくれたのよ?と言ってもこっちが一方的に話しただけなんだけど」
「それでも、ご興味が無い、と?」
「勇者にならないと出来ないことだとは思わない、ですって」
天使のサポートと妖精のサポートの説明をしても必要ないってどういうことよ。
「…余程ご自身の力に自信がおありなのですね。天使様の加護はとても心強いと思いますのに」
「そうよね。怪我をしたら治してあげられるし、年齢だって一時的に止まると教えても、それが?って態度なの」
「武器の支給やアイテムの補充など、メリットは他にもありますのに」
「!そうよね。今度はそのことも伝えてみましょう。――ねぇ、良ければミユキさんも一緒に来ない?」
「え?ですが、勇者様ならともかく、候補の方に私たちは見えないのでは」
「いいのよ、私のお守りとして来てほしいの。幸運の女神さまが傍に居てくれたら心強いわ」
「女神さまだなんて、恐れ多いです。私は一介の妖精ですのに」
恥じらう彼女は可愛らしく、とても癒しだ。だからこれから心がささくれ立つだろう現場に向かっても、心穏やかに居られるんじゃないかっていう下心もあった。
「私でよろしければ、お力になれるかわかりませんが同行させていただきます」
「やった!貴女がきてくれたら百人力だわ」
「大げさですよマユミ様。では、参りましょうか」
「ええ」
この時の私はこのスカウト以外すべて順調にいっていたので油断していたのだろう。
あまりの出来事に流されて、大変な契約を結ぶこととなる。
――
「タツヤ、考え直していただけませんか?」
「あなたもしつこい人ですね。いえ、人ではないんでしたか。何度来られても答えは変わりませんよ」
「いいえ、今日こそは頷いてもらいます。前回お話した以外にもメリットがあることを伝えにきました」
勇者候補のタツヤは不遜な態度に見えるのに顔は無表情という、威圧的な態度を崩さない。一応敬うように敬語を使うが、形だけだとすぐに分かった。
一筋縄ではいかない男。それが彼だった。
いけ好かない男でしょう?と私の肩に留まり髪の間に隠れていたミユキさんに見せる様髪を持ち上げてみせると、彼女は黒曜石の瞳を見開いて彼を凝視していた。
こんなに感情をあらわにする姿は初めて見た。もしや彼女の鑑定眼に何か映ったのかと、そう思ったのだが――
「…みゆき…?」
「え?」
無感動無感情であった声に戸惑いの色が混じったように聞こえて振り返るとタツヤも同じように驚いた表情でこちらを――彼女を見ていた。
「って、ちょっと待って。貴方、彼女が見えるの?それに、名前…」
「――そうか。そういうことか」
こちらが大いに混乱している間に、彼は何かを掴んだらしく、これまた見たことも無い笑みを浮かべた。
「天使。俺は勇者になる」
「へ?ど、どうしたの?」
先ほどまでの取ってつけたような敬語が外れていた。だが、そんなことは気にならないくらい彼の発言に驚かされる。
「ただし条件がある。勇者のメリットの中に妖精のサポートが受けられるとあったな」
「え、ええ。任務中同行してもらうこともあるわ」
「ならすぐに任務をくれ。そしてそこの妖精を、彼女をサポートにつけてくれ。俺は新人の勇者なんだからそれぐらいの優遇措置はあってもいいはずだな」
「それはまあ、構わないけど――って、本当に勇者になってくれるの!?」
「それから、ほかにも妖精がいる様なら、彼女は俺の専属にしてほしい。彼女以外のサポートはいらない」
「ちょ、ちょっと待って!それは流石に横暴すぎるわ!」
「でなければ俺は勇者にはならない。むしろ相手側に回るかもな」
「?!そんな脅し文句ってある?!」
私も私で、彼の前では素が出てしまっていた。でもこれはしょうがないと思う。さんざんスカウトで振られていたかと思うといきなりOKが出て、その上思ってもみないような要求をされたら誰だって混乱すると思う。
「実際それらしい勧誘が無いわけではない。あっちは気づかれていることに気付いていないと思うが」
「それ本当!?」
「鼻は利くほうなんでね。それで、どうする?」
「どうするも何も!~~~わかった!わかりました!ミユキさんを貴方のサポートに付けます!ですが彼女が嫌がったらすぐに変えさせてもらいますからね!」
「わかった。交渉成立だ」
頑なに勇者になることを拒んでいた彼があっさりと手のひらを返したことに驚いて、あれよあれよという間に彼は勇者となり、現在まだ勇者が向かっていない任務を受諾。彼の指摘の通り勇者としての実力が分からないのでミユキさんにサポートを依頼する。
彼女はもう立て直していて、落ち着いた様子に戻っていた。
「いきなりだけど、お願いね」
「はい、マユミ様。お任せくださいませ。勇者の勧誘お見事でございました」
「…なんだか、私がしたというより彼が勝手になった、という気がひしひしとするんだけど」
「それもまた、マユミ様のお力ですとも」
「ありがとう…。そういうことにしておくわ。彼のこと、よろしく」
とにかく最後の勇者はそろった。
私は急いで彼が任務先に到着する前に武器や防具を揃えに天界に向かうのだった。
ラツィエル様のところへ向かうと、新しい武器が入荷されていた。
「銃、ですか」
「これは面白い武器だね。初めて作った」
どうやらこの武器は彼専用のモノらしい。
この世界にも銃器はある。長筒が主流だが、このようハンドガンタイプもある。
だが、決定的に知っている形状と違う箇所がある。
「銃口が無いのですね」
「火薬の弾を打ち出す物じゃないからね」
彼の魔法を安定させる補助の様なものだ、とか。
「まだ戦ったところを見たことは無いのですが、よく武器がお分かりになりますね」
彼は腰にナイフを携帯していたのは覚えているが、このような武器を持っているように見えなかった。
「うん。まあアタシはインスピレーションを受けて作るだけだから。これが彼にとって一番使い慣れた武器に違いないよ」
とりあえずそれとライトアーマーを購入して下界に戻る。
すでに数日経過していて、妖精たちからの報告書が並んでいた。
フロリンダは勇者と依頼先に到着、無事討伐したとの報告が。
リリィからは暴れているという敵の報告。このところ活発化しているらしく、ぽこぽこと敵が湧いてくる。
すぐに勇者に向かってもらわなくては。
ミユキさんが担当しているタツヤと言えば――
「え?もう任務達成!?あそこから現場まで距離があったはずよ。いくら彼女のサポートがあったからってこんなに早く着くかしら?」
これはさっそく何が起きたか確認しなくては!と戻ってきた妖精たちには次の指示を出し、まだ戻ってきていないミユキさんの下へ。取るもの取って地上へと降り立った。
――
着いたのは食堂だった。
勇者によって食事中は邪魔されたくないと、信頼度が下がることもあるのだが、彼はどうだろうか?
ドキドキとしながら中に入ると、…んん?
「み、ミユキさん!?」
「!マユミ様!このような姿で失礼します」
「っ、大きくなれるの?!」
大きな声を上げそうになって慌てて口元を押さえたけれど、驚愕が伝わったのだろう。ミユキさんは苦笑を浮かべている。
とても美しい姿だけど認識阻害がかけられているのか、注目する人は少なかった。少ないというだけで魔法を掛けていても注目を受けている時点で、その並外れた美貌だけでなく佇まいにも惹きつけられているらしい。彼女は姿勢だけでも美しいから。
――そう、一般人にも彼女の姿が見えているのだ。
「マユミ様もよろしければ姿を現してご一緒しませんか?」
「…ミユキ」
「だめでしょうか?」
「…お前がそれを望むなら」
「ありがとうございます」
…ちょっと、この短期間に何があったっていうのよ!?関係性が勇者と妖精じゃなくなっているじゃない!
タツヤがこんなに表情動かせるだなんて知らなかったわ。
不満顔から、お前がそう言うなら仕方がないな、と許す顔まで。なんとも以前より人間らしい顔になった。
…いえ、それよりもミユキさんね。事情を訊かないと。
もう一度入店からやり直し、人に見えるようにする。その時に認識阻害を少し掛けているから注目されずに済んだ。
「とりあえず、任務ご苦労様です。怪我もしていないようで安心しました」
タツヤに微笑みかけたもののいつものように反応は無い。どうやら変わったのはミユキさんの前だけのようだった。
そのミユキさんは、少し困ったように微笑みながら、私の言葉を拾ってくれた。
「危なげなく任務を遂行なさってました。いえ、圧倒的と申しましょうか。相手の攻撃などかすりもせず一撃で屠っておいででした」
「お前が見てくれていると思ったら張り切ってしまった」
「とても素晴らしかったのですよ!」
自分のことのように喜んで報告する彼女に、吊られて笑顔になってしまうけれど、待って。今タツヤは何かおかしなことを言わなかっただろうか?
「それからこの恰好のことなのですが」
「!そうね。教えてくれるかしら」
「ティアニア様とお会いになっておいでですのでお分かりいただけると思うのですが、強い力を持つ妖精はこのように姿を変化させることが可能です。ですが、耳はこの通りですので、髪で隠しております」
ちらり、と覗かせた耳は変わらず尖っていた。
「時折、マユミ様の宮でも大きくなってお片付けをするときがあるのですよ。掃除は魔法で何とかなりますが、このサイズでないと動かしづらいものもありますので」
「!そうだったの?ありがとう」
「いいえ。私がしたくてしていることですから」
流石優秀な妖精とあって細やかな気配りがすごい。
一瞬何をさせているんだと鋭くなった勇者の視線も彼女のフォローの言葉があったことですぐに和らいだ。もちろん向けられているのは彼女にだ。
「ですが、限られた時間しかこの姿に成れませんので、本日はもってこのお昼くらいなものです」
「もしかして力を消耗するの?」
だとしたらあまりさせられない、と思うのだけどそうではないらしい。
「多少消耗はしますが、大した量ではございません。ですが、誓約がございますので」
「あ!」
そうだった。彼女の力は強すぎて、誓約に、天界は地上に直接かかわってはいけないという決まりごとに引っかかる恐れがあるのだった。
「この度は、勇者様の討伐のお祝いとして希望の通り食事を一緒に、という願いを叶えているところでした。
なんと言ってもあの距離を、一月はかかるだろう距離をたった二週間で踏破されたのです。その向かう間、何度も邪魔が入りましたのにそれらもあっという間に蹴散らしてしまわれて。私がサポートするのは敵の察知と素早さを上げるくらいでした。
それでお祝いをさせていただきたい、と私の方から願い出たのです。それがこの食事会というわけです。
勇者様――タツヤ様は妖精の姿を想像されていらしたようですが、人に見えない存在と一緒では味気ないかと思いまして」
僭越ながら勝手にこのような形で同席させてもらいました、と殊勝に言うけれど、彼にとってはむしろご褒美だと思う。
そんなに長い付き合いでもないけれど、嬉しそうなことは伝わってくるから。ついでに、独占欲みたいなものを感じるのは気のせいではないと思う。
「なら、他の任務に向かっても問題は無さそうね」
「構わない」
「ミユキさんも、しばらくサポートについてもらっていいかしら。この辺りには年に一度必ずと言って良いほど現れる敵がいるみたいなの。恐らく今の彼にとっては強敵だと思うからフォローをお願いしたいのだけど」
「!はい、かしこまりました」
「了解した」
「じゃあ、とりあえずこれを」
そう言って取り出したのは購入してきたばかりの武器と防具だ。
すると、今まで私に対して変化の無かった――不満の表情はあったけど、ここまで大きく目を見開いて驚いてみせたのはミユキさんを初めて見た時以来だ。
「…これは?」
「ラツィエル様が作られた貴方専用の武器よ。なんでも貴方の力を補助するための道具だとおっしゃっていたけれど」
手に取って物珍しそうに見てはひっくり返してを繰り返していた。
「使えそう?」
「恐らく」
明言は避けたけど、問題は無さそうだ。
「それで、聞きたいことがあるんだけどいいかしら?――あなた達、一体何があったの?」
用件をすべて終わらせて、食事もあとはコーヒーだけとなったタイミングで本題に入った。
彼女の前にだけ甘味が置いてあることには目を向けないこととする。
「初めて二人が会ったのはあの時が初めてだったのでしょう?どうしてタツヤは彼女の名前を知っていたの?ミユキさんもミユキさんでひどく驚いていた様子だったし。もしかして二人は会うのが初めてではなかったの?」
「それは――」
「話す必要性を感じない」
バッサリと断られる。
これは、出会った頃のように取り付く島もない断り方だった。
拒絶。
まだ、踏み込めないということか。ミユキさんがおろおろとしているが、彼はこれについては譲る様子は見られない。
「わかりました。また話したくなったら教えてください。お力になれることもあるかもしれませんので」
その言葉に特に意味は無かった。天使としての挨拶のようなもの。
――だが、後にこの言葉を後悔する時が来ることを、この時の私はまだ知らない。
――
と、こんな感じで勇者様と妖精の二人旅が始まる。
手にした武器がまさかの拳銃型CADだったので驚いた。でもシルバーホーンではない。それは最後の武器。カスタムしたくても道具が無いので不可。でもないよりはまし。お兄様に金棒が与えられた。
元々チートだったのに更に無双が加速する。
お兄様は前世の記憶持ち。途中で思い出す。
出身はとある国の第一皇子だった。しかし、生まれ持った力に悪魔の力を持った子だ!と幽閉。悲惨な幼少期を過ごす。両親が存命の時はそれでも教育と食事は与えられていたが、叔父によって弑され、王座も簒奪されてしまう。
ここにいては殺される、とおめおめ殺されてやる義理は無いので出奔。放浪の生活に。
この生活の方が彼にとっては生きやすかった。武芸は一通りできる。教養も完璧。でも生まれ持った魔法『分解』と『再生』が最強すぎてチートなぬるゲー生活に。魔王ガープ?構成しているものが読み解ければ問題ない。レベル上げとは⁇
生まれてからずっと何かを探していて、心の中が空虚だった。
殺される気はないが生きている意味も無い。そんな感じだった。
でもある日、天使と名乗る不審者に追い掛け回されるようになり、適当にあしらっていたら運命と出会う。
最愛を見つけた瞬間、心が満たされ活力に変わった。
そして前世を思い出し、何が何でも妹を手放してなるものか、と天使と交渉と言う名の丸め込みを行い、一時的に手元に置くことに成功。
このまま妹包囲網を作る。
妖精?種族の違いに何の問題がある?
前世と違い他にも心動くことはあるはずなのに、妹にしか動かす気が無い。
この後なんやかんやあって叔父は敵の手下になっており戦う羽目になったり、妹が守ろうとしてふっ飛ばされたのを見てガチギレして一帯を更地にしかけたり。
お兄様は人前だとナイフを使う。近接得意。
剣も使えないことは無いけれど、移動の邪魔という理由で大抵使う時は敵から奪って使う。
どこの世界でも分解は最強。そらそう。
魔王ガープを倒したら、妹と結婚する。種族?天使が地上に降りて人間として結婚できるんだから妖精もできるはず(願望)。
リクエストで小さな妖精と見てからずっとこのゲームの設定しか頭にありませんでした。でもお兄様勇者って言葉が似合わない(笑)だけどこの世界だと盗賊とか賞金稼ぎとか不老不死の踊り子とかが勇者になるし、現役の王族も捨てられた王子も勇者になってたから何でもありだと思ってる。全ては資質!
――
おまけ
書きたいシーンだけ。
邂逅
「…不思議です。初めてお会いしたはずなのに、まるで初めてのような気がいたしません。…何故だか無性に泣きたくなるような」
「そうだな。俺も泣きそうだ」
「タツ…勇者様も…?」
「タツヤで良い。むしろそちらで呼んでほしい」
「では、タツヤ様、と」
「…うん」
天使や妖精たちよりミユキはこの勇者タツヤの話をよく聞かされていた。
とにかく不愛想で天使を名乗っても相手にしてもらえず、話さえ聞いてもらえない、と。
けれどここにいる彼はどうだろう。ミユキの目にはとても優しくてどこか懐かしさも感じる、好青年に見える。
それに、先ほども言ったが彼を見ていると胸が締め付けられるような、それでいて喜びで踊りだしたくなるような――とにかく胸が苦しくなった。
そのような変化は自分だけでなく、タツヤも何かしら感じているようだ。確かに彼の目にも光るものが見えた。
まるでずっと探しているものが見つかったような安心感――
「あ、あの、どうして名前を――?」
そう言えば彼は私の名を知っていた。それはどうしてだろうか。人間とまともに会うのはこれがほぼ初めてで、天使様の勇者様となった人以外と話すのも初めてだった。今は彼も勇者だが。
「それは――そうだな。今は心の整理がつかない。いつか説明するから待っていてくれないか?」
どうやら事情があるらしい。
気にはなるが、彼が今は話せないというのなら無理に聞き出すことも無い。
「かしこまりました。お待ちしております」
「ん。悪いな」
困ったように微笑まれるときゅっと胸を掴まれたよう。でも、痛いとかそういうことではなくて――これは嬉しさからくるものだ。
何故だかはわからない。でもこの人の笑みを見ると、優しさを感じると泣きたくなるほど嬉しくなる。
いよいよもって普通ではない感覚に戸惑いつつも、ミユキは自分の仕事を思い出した。
「それではタツヤ様、任務先までご案内いたします」
「ああ。初めての任務だ。少しあの天使を驚かせてやるか」
「驚かせる、ですか?」
「ミユキはここまでどれくらいの日数で到着すると思う?」
「そうですね、一月ほどもあれば到着するかと」
今までの勇者の経験を踏まえてそう判断すると、彼は指を二本立てた。
「二週間だ」
「…え?」
「二週間で到着したら相当驚くんじゃないか?」
「そ、それはもう!この距離を二週間なんて、かなり無茶です!」
「ここまで勇者になることを拒んだんだ。俺が使い物になるところを示しておかないと大した仕事を振ってもらえないだろうかなら」
「で、ですが危険です!任務が近いということはそこに負の感情が溜まりやすいということ。つまり周囲も敵が増えるということです」
「ウォーミングアップにちょうどいいだろう。それに――お前にいい所も見せたいしな」
「!!」
その言葉と笑みに、ミユキはカッと顔を赤らめた。
どうしてこんなに顔が熱いのか、何故こんなに胸が高鳴るのか。ミユキには初めてのことで何が何やらわからない。
その様子にタツヤはクスリと笑って手を差し伸べた。
「では行こうか、俺のお姫様」
「、ひ、姫ではありません!私は一介の妖精で――」
「こういうのはノリと気分だ。楽しんだ者勝ちなんだそうだ」
「楽しんだ者勝ち、ですか…?」
「それとも姫が嫌ならお嬢様でもいいぞ」
「お嬢様だなんて…」
「ふ、困ったミユキも可愛いね。――相変わらずだ。お前は何も変わらない」
「?何かおっしゃいましたか?」
「肩に乗ってもらうか、胸ポケットに入ってもらうかどちらがいいかと思ってね」
「えっと、自前の羽がございますので」
「さっき天使の肩に留まっていたじゃないか」
「あ、あれは!」
「俺もしてみたい」
「!あ、う…」
「(相変わらず俺の願いに弱いんだな)」
「…では、しばらく飛んだ後、お邪魔してもよろしいでしょうか」
「そうだな。まず二人の移動速度がどんなものか確認もしなくては。とりあえず走るから付き合ってくれ」
「は、はい!お供いたします!」
「…タツヤ様、体力は無尽蔵ですか?」
「いいや、人並みに疲れるが?」
「ですが、汗ひとつかかれていないご様子」
「『発散』させているからな」
魔法で汗を発散させていたということに驚くミユキに、達也は彼女が前世をほとんど覚えていないのだと気付く。もしかしたら次第に思い出すのか、はたまた全く思い出さないのか。
どちらでも構わないと思った。
彼女が彼女である限り、自分は惹かれることが分かったから。
「さて、そろそろ俺の仕事ぶりを見てもらわないとな」
「サポートならお任せください!」
「ああ、頼んだよ」
出来る事なら陰で隠れていてほしいけれど、ミユキが張り切っている。こう言う時拒んだりしたら拗ねるだろうから。
それに、この世界で彼女がどのようなことをできるのか目と眼で見ておかないと。
タツヤはナイフを構えた。
――
初任務は当然完勝。圧倒的強さに驚くミユキに可愛いなぁと、思うと同時にこんな姿前世では見たことが無いとこっそり眺めていた。妹は沖縄で初めての戦闘時驚いていたけどお兄様は見られなかったからね。その次からはお兄様のお傍に居るんだからこれくらいのことで驚いてはいけない!と構えていたのでこんな無防備に驚く姿、お兄様は初めて見た。
このことで、今まで見られなかった妹のあれやこれやの姿が見られるかも!と別の目的も生まれたとか。
天使、初めての急行
妖精を勇者に同行させるメリットは、戦闘のサポートが主だが、一番のメリットは勇者が任務先に到着する時に呼びに来てくれること。
妖精にサポートをお願いするのもいいが、天使の方がサポート能力が高く、むしろ妖精には戦闘に加わってもらった方が手数が増える分早く戦闘が終わるのだ。
「マユミ様!タツヤ様が敵地へと乗り込みます!」
「向かいます!」
天使マユミは羽根を広げて地上へと向かった。
タツヤの戦闘を間近で見るのは初めてだ。
報告書では概要はわかっても実際どんなかわからない。彼の魔法は聞いたことも無い魔法で想像もつかないのだ。
そして到着して、敵と思われる盗賊団から少し離れた茂みに身を隠していたタツヤを発見。傍に行くと、
「(おかえり)」
とミユキに向けて口を開閉させて笑みを浮かべて出迎える。
天使に対しては一瞥と軽く頭を下げるだけ。この差は何だろう、と遠い目になるマユミ。だが仕事のことを彼女は忘れていなかった。
「報告にあった人数と一致しますね」
「全員始末でいいのか」
「…もし可能なら対話をして、仕方が無く襲っているのであれば――」
「あの様子ではそれは無さそうだがな」
彼らは下卑た笑みを浮かべながら、今夜襲う予定の村の話をしていた。どうやら若い女がいることがその笑みの理由らしい。
「…そのようですね」
「では声も掛けずに片付けるぞ」
「よろしくお願いします」
マユミにもわかっている。救える人と、救えない人がいることを。
彼らは私たちの手を救いと感じ取れない人たちだ。もう、魔に飲まれていると言っていい。
魔王の瘴気は人を狂わせる。
だったら早く生まれ変わった方が彼らの救済となる。
「ミユキ」
「はい」
声を掛けると同時にミユキが魔法をかける。速度を上げる魔法だ。
茂みを飛び出し、タツヤは相手の人数分引き金を引いた。
敵がタツヤに気付くより早く、陽炎のように姿が揺らいだと思ったらぼ、と蒼い炎に変わって跡形も無く消滅した。
それが5つ。
彼らは声も発することなく自身に何が起こったのかもわからずこの世から消え去った。
それは苦しむことも恐怖することも無く死を迎えたことと同義だった。
「…なにが、起きたの…?」
「任務完了だ」
「お疲れ様でございます、タツヤ様」
マユミは目の前で起きたことが信じられずにいた。だが、彼らにとって目の前の出来事は慣れたことらしい。
「…これは確かに、報告書に記載が難しいわけだわ」
いかに優秀なミユキであってもこれはどう記録するかが難しい内容だ。
あの謎の報告書はなるべくしてああなっているのだと知った。
――
お兄様は自分ひとりだったら恐らく苦しませて怯えさせてから死なせると思う。
でも妹の手前そんな汚いものを見せる必要も無い、とさっさと分解することを選んだ。
お兄様なりの妹への優しさ。けして敵への慈悲ではない。マユミさんへの配慮でもない。
戦闘がいつも1ターンで終わってしまうお兄様でした。
イベント小ネタ
「あの、タツヤ様…依頼をお願いしたいのですが」
「どうした?随分言い辛そうだね」
「それが、その…三色スライムです。タツヤ様にこのような雑務をお願いするのは心苦しいのですが、ここからすぐのところでして、発見が遅れて間に合わず壊滅状態になりそうなんです…畑が」
「……まあ、勇者の仕事らしいんじゃないか」
※三色スライムは最弱の依頼。お兄様に依頼するのが心苦しかった。そして壊滅するのは町ではなく畑。お兄様なら魔法も使わず指一本で弾くだけで倒せそう。
「ミユキは?」
「ミユキ様はぁ、ちょっと、天界にお使いですぅ」
「なら俺一人で構わない」
「天使様から同行するようにと言われてますのでぇ、帰れと言われても困りますぅ」
「…」
ペンギンの着ぐるみ妖精フロリンダと一緒に任務へ行くことに。
そこで複数の相手を敵にしていると、フロリンダ必殺のカンガルーパンチがさく裂する!
「…なんだそれは」
「フロリンのぉ、必殺技ですぅ」
「カンガルーは何処から出てきた」
「?」
※そこは追及してはいけない。フロリンダの着ぐるみは謎がいっぱい。勇者が任務の現場に到着すると緊急で妖精が呼びに来てくれるんだけど、その時はウサギの着ぐるみに。普段はペンギン。戦闘は基本ペンギンだけど必殺パンチを繰り出す時はカンガルーになる。意味が分からない。
勇者を差し置いて最高の火力を持つ危ない妖精。よくストレスを溜めて失踪する。
「タツヤ様、今日は野宿になりそうですね」
「――今夜はミユキに贈り物があるんだ」
「?…これは?」
「ベッドだ」
「!そ、そんな!私だけこんな素敵なベッドで寝ることなど!」
「俺がミユキにしたかっただけだ。むしろ俺が用意したベッドに寝てくれるなんてこれほど嬉しいことは無い」
「う…す、素敵なベッドですが、この装飾は何ですか?まさか、本物の…」
「本当はこんな屑石ではなくちゃんとしたサイズを用意したかったんだが、それでは今のミユキのサイズには合わないからな」
※お兄様自分は構わないがミユキちゃんを野宿させることに抵抗があった。
クッションと布を厳選して職人に作ってもらった。ベッドには宝石(端切れならぬ、木端石を磨いたもの)をちりばめてもらった。
お人形さんに家具を用意する気持ちを知ってしまった。次にはティーカップとかを用意しようとする。でもティースプーンから飲む姿も気に入っているのでどうしようか悩み中。10年あるから最後の方には一式揃えてそう。
ちょっとした人物解説
ガブリエル様 天使長 無理難題を新米天使に押し付け――ゲフン、託す。
ラツィエル様 上級天使 武具を作ってくれる。後半はお高くて毎月通うことになる。値引きは一切しない。姉御肌。
レミエル様 上級天使 死者を生き返らせたり、天国にいる死者と対話させてくれる。それ以外接点が無いので会わない時は10年間会わない。
ティタニア様 妖精女王 勇者のことを教えてくれる。でも合っていない時もある。コイン好きっていうからコイン渡したら信頼度が下がるなんてことしょっちゅう。妖精の情報収集能力は疑うべき。
リリィ 妖精 頼れるお姉さん。ヒョウ柄の服と耳をつけてる。
フロリンダ 妖精 間延びした喋りが特徴なのだけど着ぐるみに全部持っていかれる。
お粗末様でした。