妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編 作:tom200
タイトルのまま11月の記念日をネタに、ふんわり時空で書いてます。今回は一年生の秋のお話ですが、きっと横浜後にこんなほのぼのする時間はない。でも二次なので!創作なので!!で許していただければ、と。
こちらシリーズとしてまとめていますが、話は繋がっておりません。時間軸バラバラです。
中には何気ない日常話だったり、芸能パロなどが含まれます。
後半はネタに消化できない記念日が多く、途中で終わっておりますが書けるところまで書きましたので、そこまで連投できればと思います。
暫しお付き合いくださいませ。
11月というのはイベントラッシュである。
語呂合わせし放題の記念日だらけ。
企業はこぞって乗っかり商魂逞しく商売をし、オタクは妄想逞しく萌えを昂らせる。
そう、私も例外ではなかった――。
11月1日
「今夜は気合が入っているね。釜めしか」
「はい、今日は釜めしの日であり野沢菜の日であり、ヨーグルトと小豆の日でもあるので本日のデザートは温かい粒あんソースのかかったヨーグルトアイスになります」
「それはまた、美味しそうだな」
お兄様が一瞬呆れたような表情を浮かべたのを見逃さない。
記念日の豊富さに思うところがあったのか。…それに全乗っかりしてる私に呆れているわけではない、はずだけど、ちょっとやりすぎたかな。
「申し訳ございません、アイスは時期ではないですよね」
「いや、いつの季節でもいいんじゃないか?それに温かいソースが掛かっているならむしろ夏には食べられないだろう」
すぐに溶けてしまいそうだ、とすかさずフォローを入れてくれるお兄様。やっぱり優しい。好き。
そして真っ先に野沢菜の漬物に手を伸ばし、「ん、美味い」と。お兄様結構渋いおかずが好みよね。そういうところも素敵だと思います。
「しかし、日本には記念日がありすぎるんじゃないか?」
「ふふ、何かと理由を付けてはお祝いをしたがる日本人ですから」
花が咲いては花見と称して宴会を開き、夏は花火で納涼を、秋には秋の収穫に感謝をし、冬には新たな年明けを祝う。
「深雪がそうして理由を見つけてくれるから、こうしてお相伴に与れるわけか。なら感謝しなければならないな」
「あら。先ほどは呆れられていましたのに?」
「記念日には興味はないが、こうして深雪がイベントとして楽しんで俺と共有してくれるなら、どうでもいい記念日もいい記念日として記憶されるだろう」
「まあ」
うふふ、と口元を押さえて笑ってしまったのを、お兄様が箸をおいて深雪?と疑問を投げかける。
そんなに笑うことだろうか、と顔に書いてあるのがはっきり見える。深雪ちゃんEYEは今日も有能だ。
大抵の人にはこの細かすぎるお兄様の表情変化に気付けないだろうからね。変化に気付いたとしても不機嫌になった?と勘違いする人もいるかもしれない。
「なんでもない日が私たちの記念日になる、なんて。お兄様、それではまるでラブソングの一節ですよ」
「…それが何か悪いことか?」
「えっと、悪くはないですが…」
「ラブソング、か。愛の歌なのだから兄妹でも愛は愛だ。何もカップル限定で考えることも無い」
「そ、それは…」
どうなんでしょう?という言葉は続けられるお兄様の言葉で口の中に閉じ込められた。
「それに俺たちは恋人よりも甘い兄妹らしいからな」
…
……
…………
「はい?」
「恋人を超えるほど仲の良い兄妹ならラブソングが当てはまってもおかしくないだろう」
……いえいえいえいえ?!なんですその恋人を超えるほど『仲の良い』とか『恋人よりも甘い』とか!
「美月が教えてくれたんだ。どうやら4月の一件が色々と噂を広げ尾ひれがついたらしい」
学校ではそんなに触れ合ってもいないんだがな、とお兄様。
その通りだ。学校ではほとんどべったりなんてしていないのにどうして…やっぱりあの寸劇が劇的に愛し合っているように見えちゃった的な⁇あれ一回ぽっきりなのに。
もう11月だよ?その印象ももう消えてもいいはずなのに。人の噂は75日まででしょう?
「別に困ることも無いだろう」
「こ、困ります!」
その印象のせいでお兄様に恋人ができなくなったらどうするんです!
「現に深雪の良い虫よけになっている」
うっ…、ガーディアン的観点からでしたか。
うーん、ほのかちゃんは順調にお兄様のことを好きになってるし、七草先輩も気になってるみたいでよくお兄様にちょっかいを掛けているのも見かける。千秋ちゃんもお兄様に片思いしていたわけだし…噂があっても問題はない、のかな。
お兄様無自覚たらしだから。
「深雪は何か困ることがあるのかい?」
あらぁ。お兄様、なぜそんなに鋭い視線で疑うように妹を見つめているのです?
私が困ることは無い。無いけれど、
「お兄様、あまりシスコンと印象付けられてしまいますと将来困ることになるかと思うのですが」
「深雪を守れるならシスコン上等だな」
わあ、開き直ってしまいましたか。
なんでしょうね、お兄様の背景の両サイドに
「守っていただけるのは嬉しいですが、お兄様の時間も必要ですよ」
「十分自分に時間を使えているから何も問題はないな」
ぱり、と野沢菜のいい音が。ご飯がすすんでいるようで何よりです。いい食べっぷり。
なんだか問題視している私がおかしい、みたいな雰囲気に。
…原作ではそのせいで二人きりの世界が構築され周囲から遠巻きにされていたのだけれど、今のお兄様は睨まれることも無ければ蔑まれるような視線も向けられていない。
「俺にとっては有利な噂だから火消しする必要もない。堂々と深雪の傍に寄れるし、深雪を優先しても納得してもらえる。その上深雪に近づく不届き者がいれば周囲がそれとなく教えてくれるしな」
なにやら知らないところで協力的に動く人々までいるらしい。
なんだってそんなことに?
「俺たちは一科生と二科生の象徴にされているようだ」
「象徴、ですか?」
「優秀でいながらも努力を怠らず、二科生を侮ることなく評価する一科生の深雪と、魔法師の根本たる魔法力が乏しくとも知識と技術を研鑽し、二科であるにもかかわらず一科とも対等に渡り合える二科生である俺たち二人が仲睦まじく寄り添う姿が一高の理想の在り方ではないか――、と前生徒会長が演説したせいだろうな」
ああ、ありましたね、そんなこと。
一科生と二科生の壁を無くすべく尽力していた彼女にとって私たちは掲げやすい理想のモデルだったのだろう。
「随分担ぎ上げられてしまいましたね」
でもそのおかげで学校の雰囲気は原作と違って、差別が大分なくなり健全なものになっていた。
ライバル意識を持つのはいいけれど見下す環境はどうあっても悪い影響しか与えないから。
「お前ひとりで立たせるよりはいい」
その言葉がぐっと胸に迫る。
司波深雪という存在はどうあっても目立つ存在だ。
例え実力を隠そうと、出自を隠そうと、その端麗な容姿と品格が彼女を只者とは思わせない。
ただ立って息を吸うだけで人の視線を奪い、思考を奪う。
完璧な美少女の唯一の欠点はどうあっても目立ってしまうことだ。
どれだけ闇が深くとも、彼女の輝きは消えることは無い。
常に注目されるということがどれほどの負担か。
当たり前すぎて気にすることも無い、といくら本人が思っていても人の目に晒されることは必ず影響を及ぼす。良い視線も悪い視線も関係ない。注目され見られるという行為だけで触れられているのとあまり変わらぬ負荷がかかっているのだ。
それを、隣で寄り添うことでお兄様は負担を軽減させようとしてくれている。
私一人が矢面に立つのではなく、共に乗り越えようと手を引いてくれているのだ。
これが嬉しくないわけがない。
「お兄様…」
潤む瞳で見つめると、柔らかい笑みを浮かべてから味噌汁を啜る。
そういえば夕食中でした。野沢菜美味しい。釜めしの栗もほっくりして甘くてしょうゆ味のご飯によく合います。
口の中が一気に秋の味に。
「些細な記念日が、こんなに幸せにしてくれるんですね」
「そうさせているのは深雪だろう」
「一緒に楽しんで下さるお兄様がいてくださればこそ、ですよ」
そうか。
そうですとも。
二人して微笑み合いながら、最後のデザートを食べる。
すっきり爽やかなヨーグルトに甘く炊き上げた小豆が丁度いいバランスだ。
程よく溶けたアイスを口に運んでは口元を緩ませていると、目の前からふっ、と笑い声が。
「お兄様?」
「いや。ふと思った自分の考えがおかしくてな」
「どのようなことをお考えに?」
「うん。この白いヨーグルトアイスを深雪に見立てて、隣の小豆のように甘やかしてとろかせてやれたらな、と」
……お兄様は十分に甘いですし、お兄様のせいで大分思考も溶かされておりますよ。何も考えることができなくなっちゃう。
「色づいた深雪は甘くて美味しそうだ」
「もう、お兄様ったら!」
色男モードはお控えください!小豆の甘さはほどほどに、ですよ!!
ストレートの紅茶を飲みながら少しでも漂う甘さの中和を図るのだった。
何気ない毎日が記念日な二人のお話。
釜めしの日で、野沢菜の日で、ヨーグルトの日で、小豆の日で、紅茶の日だそうです。…かなり詰め込みましたね。
妹はその噂を何とかするためにもお兄様の傍から離れるべき?と過るのだけど、自身の直感とイマジナリーお母様がしてはならないと首を振るので離れる件は白紙に。
もし離れていればバッドエンドルートまっしぐらでした。お兄様は妹が離れるような行動を取ると無自覚に囲い込もうとする。
遠くで見守るつもりはどこへやら。離れて表情を曇らせるくらいなら離れなければいい。妹の幸せは自分の幸せ。傍にいるなら悲しませることはしない――何をしてでも。
お粗末様でした。